え~~っ? わたしの視点~? ……別にいいんだけど~……芦花の流れじゃなかった?
わたしはさ~~、彩葉と、芦花と、かぐやちゃんとは親友だと思ってるし、手伝えることは手伝うけど~~こういう主人公的なのをやるのには、ちょっと力不足かなっていう自覚があるって言いますか……
なになに、時間稼ぎ?
そういうことならいいけど、それ撤退戦じゃないの?
まあいっか。頑張ってね、芦花。
──そいじゃ、諌山真実、行かせていただきま~す!
[2030/7/18/16:31]
「ごめん! 帰る! ありがとね、ごちそうさま! 埋め合わせはするから!」
そういうや否や「かぐやちゃん」の手を引いて、すごい勢いでお店から出て行った彩葉に、わたしたちは茫然と見送った。
「行っちゃったね~~」
「……うん」
「彩葉、結局一口も食べれてなかったね、パンケーキ。かわいそ」
「…………うん」
「あ~あ、彩葉がスケジュールギチギチに勉強とバイト突っ込む前に、夏休みに皆で遊ぶ計画決めときたかったんだけどな~~……」
「……………………ん」
「喋らなくなっちゃった」
わたしは目の前のパンケーキの上に乗ったアイスの溶け具合からそれを口に入れるベストタイミングを待ちながら、横目で芦花の様子を伺った。
芦花はぼんやりと出口を見つめながら、何事か物思いしてるみたいだった。
わたしは彩葉や芦花と違って目の前の現実について難しく考えることをしないけど、それでも一年間も付き合っていれば、芦花が何を考えてるのかくらいはよく分かる。
「あの子のこと、気になる?」
「うん……真実は気にならないの?」
メレンゲのように舌の上で溶けるふわふわやわらかパンケーキは、ちょっと溶けたアイスと一緒に口に入れた時にそのフルパワーを発揮する。
この辺かな? ってタイミングで鮮やかな黄卵色の生地にナイフを入れながら、わたしは気もそぞろにドアの向こうに意識を飛ばす芦花に答えた
「すっっっごい可愛い子だったねぇ。キラキラしてて。そこに居るのに現実味なかった」
「そうだけど、そうじゃなくってさ……」
「彩葉が"親戚"ってわたしたちに言ったんなら、そういうことでい~んじゃないの? 悪い子じゃなさそうだったし、それに……」
『かぐやちゃん』とわたしたち二人はごく短いやり取りしか交わさなかったけれど、それでも必要なやり取りはしたつもりだったし、あの子もわたしたちの意図を汲んでいた思う。
「彩葉、ちょっと距離近かったよね。あれ、わたしたちの前から人をのかすときのやり方じゃないよね~~……芦花が気にしてること、それでしょ?」
「……うん」
公立武蔵川高校は都内有数の人気校で、一にも二にもお金とお家柄を要求される上の方の私立校よりも生徒に求められる資質のハードルは満遍なく高く広い。そしてその中でも特に上澄みって言っていいくらいの、可愛さ含めた資質に……人間的な魅力に満ちた彩葉、芦花、わたしの三人組は、有形無形有害無害の区別なく色んな人が周りに集まってくる。
だからわたしたち三人は、近づいてくる相手がどれくらいお話になりそうで、どれくらいお話がわかりそうで、どれくらいお話が楽しいかを短時間で確認して、仲良くなったりはねのけたりするワザを持っている。いわゆる一軍女子・アイなのだ。えっへん。
……加えて言えば、三人組の中でも彩葉のそれは抜きんでて厳正かつ鉄壁と呼んでもいいくらい強固だった。わたしのことも芦花のことも、過保護なくらい何度も何度も彩葉が守ってくれたのだ。
(彩葉がもし男の子だったら流石に今カレから秒で乗り換え希望だった~~という話をわたしが冗談で言った時の芦花の目が怖すぎて、二度と言わないことに決めている)
そして、あのみたことないレベルでかわいい娘は、そんなアイアン彩葉の服を着てわたしたちの前に現れて、彩葉の下の名前を呼んで、最初に彩葉のパンケーキを食べてみせることで、普段だったら蟻一匹通さないはずの彩葉の身内であることをわたしたちに伝えた。
それを見て、漂わせる雰囲気とかも含めて『大丈夫そう』と判断した芦花は、自分のパンケーキを差し出して自分が敵ではないことを証明して出方を伺う。そしてかぐやちゃんは受け取ったケーキを大げさに(彩葉のものを食べた時よりも)『美味しい』ことを喜んでみせた。差し出された食べ物を受け取って口に運び、喜んで見せるのは石器時代から変わらない友達サインだ。これで芦花の取るべき確認は終わっていた。
そして、彩葉の口から開示された築地出身という情報を聞いたわたしの「あなたに興味がありますよ」というサインと、「わたしは食べ物の話題が好き」という自己紹介も兼ねた「美味しいお寿司屋を教えて?」という声かけ。それにかぐやちゃんが適当な回答を返せれば、わたしのチェックも完了だった。
性急ではあったけど、彩葉の身内であればチェックに時間を費やすこと自体が彩葉に悪いのでこの辺りで十分だったと思う。それに、ずっと楽しそうに可愛く笑っていたのも大きな判断材料だ。
芦花も、わたしも、そしてかぐやちゃんも、あの場に同席することを受け入れていた。後はお互いがお互いに興味があることと、自分のことを知ってもらうことの二つを通底するだけのガールズトークをいくらかすれば、わたしたちは友達になれた。そのくらいの魅力があの娘にはあったし、わたしたちが半生をかけて培った人相嗅覚のダブルチェックをあの娘はほとんど通過していた。
──だから、あの場で異常な行動をしたのは彩葉だけだった。
別に、京都から越してきて一人暮らしをしている彩葉の前に、一年の間影も形も話題に出てこなかった、電車で一時間しない駅在住の親戚が出てくるのはいい。誰にだって話したくないことはあるし、嘘のひとつも吐かないことが親友の条件だなんてナイーブな考えは芦花もわたしも持ってない。
3人デートの場をキャンセルされたのも別にいい。埋め合わせは別にするって言ってくれたし、そのくらいで腹を立てるような浅い友情じゃない。
わたしの関心は……それと、芦花の懸念は別のところにあった。
「彩葉、あの娘と距離近かったね。あの場にあの娘がいると都合が悪いです~~! っていうサインとか出してくれなくて、あの娘のことだけずっと見てたし~?」
「うん……わたしたちとの時間を切ってでもあの娘を連れてくことを優先してた。お母さんとか、お姉ちゃんとか、そういう保護者っぽい感じの判断。……あんな彩葉、見たことない」
「そだね~」
芦花が気にしているのはそこだ。
さっきの彩葉の行動は、わたしたち三人の前から人をどかすときの対応としてはとっても不適当で不思議だった。見栄っ張りな彩葉の、自分のがんばりとか疲れとかを隠そうとするいつものやつって風でもなさそう。
というより、あれは……
わたしが皿の上のラズベリーソースをナイフで一所に集めて、そこに残ったパンケーキの半分をもっていく間も、芦花はずっとドアの向こうに意識を飛ばしていた。
「本当に親戚なのかもね……むしろ、芦花的には
「────かもね。ごめん、真実」
流石につまらなくなってきたわたしが言葉の肘を入れたら、ようやく芦花はドアから視線を切ってテーブルに向き直ってくれた。
「ん~。……どうする? ショコラ、もいっこ頼む? ぜんぶかぐやちゃんにあげちゃったでしょ?」
メインゲストは居なくても、ここはパンケーキ屋さんなのだ。美味しいものと、それをシェアする大切な相手を疎かにするのはご法度である。
「うん。もう一皿お願い。……かぐやちゃん、すっっっごく美味しそうにしてたから、実は超気になってたんだよね」
「わかる~~! 人生で初めてこんなおいしいものを食べました! ってくらい気持ちいいリアクションだったね。店員さ~~ん!!! …………ショコラトリプル二つお願いしま~~す。あとアイスコーヒー。ミルクとガムシロは別で──それじゃ、今夜ツクヨミで彩葉に色々聞いてみよっか」
「彩葉は今日プラベ来ないよ。ヤチヨのミニライブのチケ、久々に取れたって叫んでたでしょ」
「あれ今日だったか~~……そいじゃ、明日ね」
「うん。……真実、それで二品目だけど、大丈夫?」
「いいのいいの! 夏だし! 多分!! ……多分ね」
「一枚くらいなら食べてあげる。真実が駄目そうだったら、だけど」
「あり~~~……あの子誘って、もっかいここ来たいな。彩葉に邪魔されちゃったし」
もし、あの可愛い娘が、わたしと芦花の推測通りに、彩葉にとって
「仲良くなっておきたいよね。彩葉に無茶させないためのブレーキ、もっと増やしたいから」
きっぱりと、自分に言い聞かせるような口調で言い切る芦花に、わたしもアイコンタクトで同意を送った。結局のところ、わたしの関心と芦花の懸念はそこに集約されるのだった。
それに、そういう打算の一切を抜きにしても、彩葉の大切なものはわたしも大切にしたかった。
芦花ほどしっとりしてはないにしても、わたしもそれくらいには彩葉のことが好きなのだ。
「…………えっと、それで、なにがあったんだっけ」
アタシは、上がった血糖値とややキャパオーバー気味に入れてしまったアルコールでぼんやりとした頭で、自分が腰を下ろしている大きなソファーに身をうずめて考える。
かぐやちゃんと一緒に、明日に彩葉と大切なお話をするレストランの下見をして、日替りコースをデザートまで堪能して、それで……
『ねぇ見て芦花~! バスルームの壁、ホントにガラス張り! 漫画で見たまんま! オモロ!!!』
出てくるボトルがやたらと軽くて飲みやすくて、酒豪のかぐやちゃんが目の前でカパカパとグラスを空けるものだから、明日の不安を忘れるためという名目でいつもより飲んでしまったのは覚えている。
それで……
『芦花~! よくわからんボタン押したら湯舟ん中がイルミネーションし始めてめちゃおもろい! 芦花も一緒に入ろ~よ!』
「アタシはさっき入ったよ―! ホテルの人が後で大変だから、あんまりはしゃいだり変なボタン押したりしないでねー!」
『りょ~!』
大声を出すと頭がガンガンと痛んで意識の靄が強まった。アタシはこめかみを抑えながら回想を続ける。
ええっと、それで……コースをデザートまで食べ終わって、まだ遊びたいってかぐやちゃんが駄々を捏ねて……作戦会議がまだ終わってないって名目でアタシを別のお店に引っ張っていって……
『うわはは! 上から薔薇降ってきた!!! 本物? イミテーション? どっちにせよどういう需要なワケ?! ただただオモロいだけじゃね? ──ねぇ見て芦花~~! 今のかぐや、ローマ皇帝味ない?』
「かぐやちゃん、それ多分有料のやつ……」
そうして連れていかれた居酒屋で、どう見ても未成年の姿のかぐやちゃんと一緒にそういうお店に入ることの事案っぽさに身を縮こまらせて、どうしてかその光景に気をとめない店員さんやお客さんの様子から『ああ、ヤチヨさんのお友達系列のお店なんだな』と察しながらまた飲んで……その後、どうしたんだっけ?
『うおおお! 電気風呂!
「…………」
たしか、もう時間だし一緒に家に帰ろうとした矢先、かぐやちゃんがいつものノリで、とんでもないことを言い出したんだった。
──ねえ芦花! かぐやお酒回ったしちょっと疲れちゃった! あそこのホテルで休憩しな~い?
──いや、ここ立川だよかぐやちゃん。家はすぐそこだから……
──え~~! 行こーよ芦花! 彩葉とリアルでデートする時、その辺のスケジューリングもバッチリなこと多すぎて全然こういうシチュやったことないの! かぐやつまんな~い!
──さ、流石に多方面に不味いよかぐやちゃん! というか、そんなことした翌日にアタシは彩葉とどんな顔で会えば……ってうわっ力つよっ!
湯船に浸かっているはずなのに、時折ガタンとかバタンとかピピピー! とか騒々しい音を立てているガラス張りのバスルームから全力で目を逸らしたアタシの視界に飛び込むのは、壁に埋められた何インチなのかわからない巨大なモニターと、部屋の中央に鎮座する天蓋付きキングサイズベッド。何故か回転機能も付いている。
そして、そんな胡乱な機能がついたベッドを部屋の真ん中に置くような宿泊施設なんて、アタシはどれだけ考えても一種類しか思い当たらなかった。
「芦花~上がったよ~~! ドライヤーとヒートブラシ持ってきたから髪乾かして!」
「お姫様の仰せのままにー……」
アタシはちょっとヤケクソ気味にコンセントに刺さっていた、ベッドの上をムーディーな色味で照らす間接照明に繋がるコードを引っこ抜いてドライヤーを繋げる。
この部屋、スイートということもあって快適さという点で特に文句はないけど、それ以外のツッコミどころが山ほどあるせいで、気がいまいち休まらなかった。
……いいや、それは半分嘘だ。
アタシは、この心底愛おしい恋敵さんと一緒に、彩葉に黙って
「いや~~ラブホって聞きしに勝る楽しさじゃんね! ねえ芦花、今度彩葉も誘って3人でもっかいここ来ようよ!!!」
「本気でも冗談でもやめてね……」
オーダー通りにかぐやちゃんの濡れたハニーゴールドに手櫛を入れてドライヤーを当ててながら、もうどうにでもなれという気持ちで細く長いため息を吐いたのだった。
☾
「おお~……髪が輝いている~~!! さっすが彩葉のししょー! 美容院ばりのワザマエ!」
「ホット芦っ花ービューティをご利用頂き誠にありがとうごさいま~す。でも、かぐやちゃんのヘアケアに関しては、彩葉の腕の方が数段上だと思うけどね」
アタシが彩葉とかぐやちゃんの絆を褒めれば、かぐやちゃんは分かりやすくその相好を姿勢ごと崩して、ぐでっとアタシの膝を枕にするようにしてソファの上で横になる。
自然な重みと体温が、かぐやちゃんとお揃いのホテル備品のバスローブ越しに伝わって……サラサラと、水気を飛ばしたばかりの金髪が、その実家でするようなだらけ具合に合わせてアタシの膝の上であくまで自然に広がった。
「……ねぇ、かぐやちゃん」
「ん~?」
アタシは膝枕で少し乱れたかぐやちゃんの髪を撫でるようにして手櫛で整えながら、ずっと握られっぱなしだったリードを奪い返すべく、本題を切り出した。
「何を企んでるの? アタシをこんなところに連れ込んで」
「チッ……芦花、かぐやがお風呂入ってる間に酒気が飛んじゃったな? 身持ちが固いんだからも~~! このまま勢いで行けると思ったのに……」
かぐやちゃんはお酒に強い。それが宇宙人としての性質なのか、それとも彼女固有の性質なのかは分からないけど、かぐやちゃんがお酒を飲めるようになってからなんども一緒に飲んだアタシは、彼女が酔っ払っているところを一度も見たことがないのだ。
──ねえ芦花! かぐやお酒回ったしちょっと疲れちゃった! あそこのホテルで休憩しな~い?
なのにかぐやちゃんはこう言った。衝動的な行動なら、わざわざ嘘を吐く必要がない。言葉よりも先に行動するのがかぐやちゃんのスタイルなのだから。
「──かぐやはね……これはヤチヨもだけど、芦花のこと、マジのマジで応援してるんだよね」
かぐやちゃんの指が、アタシの首元に伸びる。そこに掛けられた、アタシが片時も離さずに身に着けているネックレスのチェーンの先に。
「いいな~~それ。彩葉、かぐや達にはくれないんだよね。あのブレスレットがその証だからって」
チェーンには、リングコネクターを介して指輪が一つ飾られていた。
それは、■年前のアタシの誕生日の翌日に彩葉から贈られたエンゲージリングだ。役所にある機械でスキャンすれば、内部に彩葉の記名済み婚姻届のデジタルデータが読み取れるようになっていた。
『芦花とはずっと友達だから。何があっても、何を望んでもいいんだよ。……だから、芦花が私に望むなら、好きな時にこれに名前を書いてお役所に提出して。拒んだりなんてしないから……ただ、論文記名との差異で後々厄介なことになるから酒寄姓を変えることはできないんだよね。綾紬彩葉になるには学会と戦う必要があるから、被害を増やさないためにもそこは大目に見て欲しいかな』
いつものように誕生日を彩葉に祝ってもらったあの日。今日みたいにお酒が入り過ぎた時のことだった。アルコールで麻痺した中枢神経に自制心の箍を緩められて、アタシが彩葉の膝の上で漏らした……本当に漏れ出てしまっただけの、ティーンエイジャーの告白未満の慕情の吐露。空調の音にすらかき消されそうな、ウィスパーボイスの想いの丈。
いっつも鈍いくせに、アタシの積年の想いや、それを隠そうとしてきた理由なんか一切思い当たらないくせに、彩葉はアタシのグズグズに煮崩れるまでにゆっくり加熱された想いを異様な耳聡さで捉えて、挙句の果てに何の迷いもなくそれを肯定してしまった。聞き間違いとか、聞かなかったふりとか、明後日方向への解釈とか、そういう逃げ場をアタシに用意してはくれなかった。
以来、綾紬芦花はずっとこの指輪に呪われているのだった。押すことも引くこともできないデッドロックに。
「明日、それを彩葉に返しにいくんでしょ?」
「……そうだよ。今度は甘えたりなんかしない。正面から想いを伝えて、
「それで決闘ってわけね。流石芦花先生! カッコいいぜ……でもね」
指紋をつけないように気を付けながら、チェーンを摘んで指輪を眺めていたかぐやちゃんは、急に膝上から身を起こすと────
「…………あの。あの、かぐやちゃん?」
「芦花はさ、多分彩葉には勝てないよ。かぐやとヤチヨが彩葉に勝てないみたいに、こーゆーのは先に惚れた方が大幅不利対面だから。いつも通り泣かされて終わるだけっしょ」
かぐやちゃんは、その非人間的に整った、見るものの心のガードを強制的に下げさせる顔を、混乱して硬直するアタシの顔に近づける。それはかぐやちゃんのファンだったらその場で魂ごと蒸発させるレベルの破壊力。アタシでも彩葉が居なかったら危なかった。
「でもね、一人なら無理でも三人なら~~って故事があるっしょ? かぐやにも、ヤチヨにも、今の彩葉の暴走というか……神憑りっぷりってーの? あの無敵モードを破る手段が欲しいの──彩葉、最終的にまた全部ひとりで背負い込もうとする悪癖がでてる臭いがすんだよね、今回も。やりすぎる前に止めてあげなくっちゃ」
「だからさ、一緒に戦おうよ、芦花。その為にさぁ……」
かぐやちゃんの琥珀色の瞳が、超至近距離でアタシを射竦めていた。
「その為に、ちょこっとだけ……ちょこっとだけかぐやに浮気、してみない?」
……『子は親を真似て育つものなんだな』と、アタシが現実逃避気味に考える。今アタシをソファーに追い詰めているかぐやちゃんが漂わせる雰囲気は、彩葉のそれによく似ていた。
あの誕生日以来、綾紬芦花のリビドーを察するたびにそれに赦しを与える彩葉。中途半端に伸ばしたまま躊躇う腕を引きよせながら微笑む彼女の、私の心を磔にする母性的包容力と艶美さを綯い交ぜにした表情と、そっくりだったのだ。
第二部は読んでの通り二つの時間軸を並行して進めたり進めなかったりする群像劇仕立てにチャレンジしています。毎回毎回新しい試みをしているのでこれが面白いのかどうかの自信があまりないのですが、面白くするために頑張っていきますので、これからも楽しんでいただければ幸いです。
もし面白いと思っていただけたなら、感想やお気に入り、そして高評価などいただけると正のフィードバックを得られます。もうすでにされている方は本当にありがとうございます。