か~ぐやっほ~!
月からやってきた~かぐやだよ~!!!
何年ぶりかな?
かぐや、あれからそりゃもう色々あってさ~~体感8000年くらい経った気すんだよね。
で、ジッサイ何年? えっと~そっか、24年前ね。……24年振り!?
子供1人成人してんじゃんねぇ! そりゃ皺くちゃにもなりますわ!
そ~れにしても……
ひっさしぶりに見に来たらよぼよぼでワロタ!
で、今何歳なワケ?
87!? やりますねぇ!
そりゃ遠出もできませんわな!
奈良から東京ってけっこー遠いもんね。
奈良でいっちゃん脚早い鹿に乗って行っても片道で何日かかるやら……
ぅえ? 奈良県民って鹿に乗らないの? 神聖な生き物だから?
ほんじゃ、むしろ鹿担いで歩く必要ある訳か……そうなると往路10日じゃきかないかもねぇ。鹿せんべいも何百枚用意する必要があることやら。
かぐやはさぁ……タブレット越しのあなたの手を握るのはできないワケだけど、まぁ、その……よう頑張った! 90年近くもよう生きとるよ! ど偉い!
……このカッコ?
うん、そうだよ。
あなたには話したこと、あるよね?
「ツクヨミ」のかぐやの姿。
そ、今さっき丁度『わたし』が来てね、この姿をもう一度かぐやに教えてくれたんだ~!
だからこうやってイメージだけじゃない、完全再現ができるの!
まぁ本来はコピーライトがあるから法的にもマナー的にもダメなんだけど、ここではヤ……かぐやがルールだかんね。ナイショでやる分には、多少はね?
え? 今年が何年かって? ……大丈夫? 認知症進行してない? カルテ見た感じ
なんてね。……そ、今年が2030年。今日は7月18日。かぐや、生まれたてホヤホヤの時期だよ。
うん。始まったの。始まっちゃった。
彩葉とは会えたのかって?
……
そりゃもう毎日会ってるよ? 彩葉、
…………なんてね。
かぐや、もうかぐやじゃねーんだわ。
知ってるかもしれないけど……月見ヤチヨ。それが今のかぐやの名前。
ホントはとっくの昔に変わってたのかもしれないけど……いんや、違うか。
ヤチヨを名乗って、ヤチヨとして振舞って、ヤチヨとして彩葉のくらやみに寄り添おうって決めたから、それが決まり手になっちった。
だから、彩葉には会えないんだ。二度とね。
『そうだろうと思った』?
『会えたならそんな悲しそうな声の筈がない』?
言ってくれんね~~!
……でも、やっぱり知らない訳ないよね、ヤチヨの正体。プロフィールについて、な~~んにも嘘なんかついてないし。あなたたち宮内庁的には知らぬ存ぜぬで行くしかなかった訳だけど。
あ~~こんなんじゃないか? 語彙のチョイスとか、トーンの低さとか……エミュがムズいね。ほんの30年くらい前まではこの口調だったはずなのに……
ご~めん。
インターネットに……ニューラルネットワークに本体を繋げる以前と繋げて以降の私って、別物レベルで演算精度が……頭の冴えが違ったんだよね。
ルーツ的に、大きなネットワークの中で初めて本領を発揮する存在が私だから当たり前の話なんだけど。
正しく水を得た魚だったんだよね。ネットを得て以降はさ。
だから、「もと光る竹」を……
それがどれだけあなた達の誇りと名誉に背くことであったとしてもね。
うん。そうだよ。この選択のせいで、まだギリギリかぐやであれたかもしれなかった愚かなかぐやは
あなたたちの憂いは杞憂じゃなかったね。
おっきーのこと、思い出しちゃうな。
もうかぐやには、戻れないんだ。
☾
出てってから一度も会いに来なかったのに、なんで会いに来たのかって?
それはね……もう終わるから、かな。
あなたたち、必然的に右寄りになりがちな宮内庁の中でも、特に右寄りの派閥のあなたちにとって、CIAとか、ビッグ5みたいな外資が国内で大手を振るって歩くようになった2006年以降の国内事情はかなりヤだったでしょ?
たとえ禁中*2と直接繫がりがあるって言っても、一部署に過ぎない
だけど、あなたたちには大義名分があるよね。
あなたたち宮内庁は……そしてその後ろにいる右寄りの人たちとか、禁中とか。そういう人たちが、
そして、そうなる可能性が存在し続ける以上、あなたたちに弱腰を見せる訳にはいかなかったの。
でも、権利という観念が人間社会が人間に与えるものである以上、「もと光る竹」の所有
……悪いのはあなたたちじゃなくって、
いざ「もと光る竹」が必要になったときのために、人間としての立場を作っておいたり、「もと光る竹」を代々管理するお家とかを用意しておくことを怠らなければ、クリフに無理やり盗み出してもらう必要もなかったんだからさ。
……いや、実は後者にアテはなくはなかったんだけど、財閥解体とかのタイミングで失伝しちゃったのを放置してたんだよね。
そう。全部
あなたが、あなた個人の権限の範疇でどうにか「もと光る竹」を外に出そうと色々考えてたのも知ってる。
その上で、間に合わなさそうだと思ったから他に頼ったの。
ごめんなさい。あなたの小さい頃からの付き合いなのに、あなたを信じることができなかった。「もと光る竹」を正式な手続きを経ずに持ち出すことは、あなたとの関係を切断しても、それに勝る価値がある選択だと思ったの。
赦して欲しいとは言わない。でも……彩葉にはなにもしないであげて欲しいの。
もちろんあなたがそんなことをする人じゃないのは知ってる。
でも、あなたの部下や、一族の若い子たちの野心が、あなたたち全体をそういう行動に駆り立てちゃう可能性はあるでしょ?
9月25日以降、
それが、今日
どうかな。
ヤッチョ今お金持ちだし、あなたたちが知りたい歴史的事実とか、旧い物品の在処とかにも心当たり結構あるから、対価についての心配は……
え……?
そこの鍵付き引き出しの奥?
ごめん、タブレットから手伸ばせないや。ウミウシボディで来ればよかったな……
お手伝いさん! そこの棚、開けてって貴女の旦那様が言ってるよ!
ん? な~んか見覚えが……あ、もしかして吉村さんのお子さん? 30年前の傍付きだったあの綺麗な人の! 目元が似てるってよく言われない?
……ま、ままま孫ぉ!? それは流石に嘘だよフェルン! だって吉村さん、あんなに若々しくって……
はい、ごめんなさい。そこの棚の引き出しの奥の、そう。よろしくね。
え~~っと……『
……マジか。
ええっと……つまり、『
今正倉院に保管されているダミーが『
あの、これ……偽史じゃん……!
…………
そっか……歴史、語りなおしちゃったんだ。私の為に。
それに、この調印、宮内庁と正倉院事務所のやつの隣の押印って、禁中の……
滅茶苦茶根回ししてる……! しかも、この日付、10年も前のやつじゃん……
そっか、そっかぁ……
気にしてたの、もう
ごめん、ごめんね……私、優柔不断な悪い子で。
もっと素直なかぐやなら、秒であなたの前に顔出してたのかな……
ううん、ヘラってる場合じゃないよね。
──確認しました。省庁経由でこの書類を赤坂に送ってください。
ありがとう。家出したきり24年も顔出さなかったのに、ずっと待っててくれて。
ありがとう。私の不義理を許してくれて。
……うん。うん。そうだよね。話したいこと、いっぱいあるよね。
いいよ。……って言いたいとこなんだけど、その前にさ。
時間は……あと15分くらいかな。スマコンは……年齢的にドクターストップか。吉村さんのお孫さん、スマートグラスはある?
うん、持ってきて。ヤッチョがこの場で緑内障患者用にパラメータを調整するから、急いでね。
……
この後ね、ツクヨミで
それを……正確には、その後に起こることをあなたに見て欲しくってね。
え? いつもアーカイブとMVでお歌見てるの?
そうなんだ! いつもありがと~~!!! 生配信もよろしくね! あなたがネットにアクセスするとき、ヤッチョはいつでも傍にいるから!
──でもね、今日はいつものライブとは気合の入れ方が違うんだよね。久々に彩葉との握手会だし……
他ならぬ、この
一緒に見ようよ。かぐやの物語の始まりを。
ずっと「もと光る竹」を……『月生筍形宝器』を守ってくれていたあなたに言祝いでもらえたら、ヤッチョも救われるからさ。
『月生筍形宝器の歴史的解釈──その起源についての調査結果』序論
正倉院北倉に伝来する「月生筍形宝器」は、古来、その特異な意匠性によって知られてきた。伽羅色の地に幾重もの截金を施し、なおかつ筍形という異様な造形を採る本器は、正倉院宝物群の中にあっても著しく異質であり、その用途・制作背景については長く不明とされてきた。
従来の研究においては、本器を唐代工芸の影響下に成立した儀礼器、あるいは竹生信仰と月輪観念の習合を示す象徴器とみなす説が主流であった。しかし令和二年度以降、宮内庁正倉院事務所所蔵未整理文書群より発見された断簡群、および大和国旧家に伝来していた私文書との照合によって、本器の成立事情を根底から覆す可能性が浮上した。
本論文で提示する結論を先んじて述べるならば、「月生筍形宝器」は空想上の瑞祥を象った祭器ではない。むしろ、天平年間初期に聖武天皇自身が実見したとされる未知の植物 ──文書中で「月生筍」と記される存在──を原型として制作された、極めて写実的な模造宝器であった可能性が高い。
さらに注目すべきは、その「月生筍」そのものが、当時すでに秘匿管理の対象であった点である。新出史料『竹守家旧記』、『造東大寺司雑録断簡』、『山階私記』の三系統資料はいずれも、朝廷外部に位置する特定の家系が、代々この「月生筍」を管理・監視していたことを示唆している。しかも当該家系は、律令制下の官的記録から意図的に痕跡を抹消されていた形跡すら認められる。
本稿では第一に、「月生筍形宝器」の材質・構造分析を通じて、その造形が単なる竹器意匠を超える異常な生物学的精度を有している点を示す。第二に、新出文書群の文献学的検討を行い、「月生筍」という語が天平期において具体的実在物として扱われていた可能性を論証する。第三に、その秘匿管理を担ったとみられる家系の歴史的位置づけを検討し、奈良朝内部に存在した非公開祭祀体系との関連を考察する。
正倉院宝物は、しばしば「保存された天平文化」と称される。しかし月生筍形宝器が示しているのは、単なる文化財としての過去ではない。それは、かつて朝廷が記録しながら隠蔽した「もう一つの天平」の痕跡なのである。
お気に入り、ここすき、高評価、そして推薦文など、いつも本当にありがとうございます。皆さんのレスポンスのお陰でこうして書き続けることができています。
『星降る海』のライブまでに書きたい行間が多すぎて前に進んでる感じがあんまりしませんが、あと1~2話くらいで『超かぐや姫!』で一番明るいパート(諸説)のヤチヨCUP開催期間に入りますので、よろしくお願いいたします。