「ありがとう、ノルン。お前にはいつも助けられてるな」
相談に乗ったことに対する礼を口にして、ヤチヨちゃんがVIP観戦ルームから退席した直後、一人寂しく彼女の恋路の進展を見守ろうとしていたわたくしの背中に、いままでずっと黒子に徹していたであろう小さな友人からの労いの声が飛んできた。
「好きでやっていることです。FUSHI、貴方がそうであるように」
振り返らずにそう返すと、声の主はいつぞやのようにわたくしの肩にピョンと飛び乗ってきた。
FUSHI──彼とわたくし、ノルン・アールヴ・ブーヒュスレーンは、ヤチヨちゃんと初めて出会った2010年頃からずっと、お互いにとっての理解者だった。もっとも、あの頃の彼女はまだ自分が月見ヤチヨである運命を受け入れる前ではあったのだろうけど。
「そういえば、ヤチヨちゃんがわたくしのことを本名で呼んでくれなくなって久しいですわね。ツクヨミが出来る前は、ずっとファーストネームで呼んでくださいっていたのに」
「別に隔意がある訳じゃないと思うぞ。
FUSHIはそう言うけれど、露骨に『テレリリちゃん』とだけ呼ぶようになったのは例の告白失敗以来なように思う。……あの時を懐古するたび胸が痛む。あまり考えないようにしよう。
「大丈夫ですか、FUSHI。最近の貴方、どうにも影が薄いように思えますけれど」
「意図してのことだ。頑張って隠れてるんだよ。きっと、この先に僕じゃないとできないことがあるはずだからな」
FUSHIは……わたくしの小さな友人は、肩の上でその可愛らしい毛玉の身体を膨らませるようにして気勢をあげた。
初めて彼を見た時は、こんなにはっきりと主人の意思を離れた自己判断を行うようには見えなかった。主人がそうであるように、彼もまた変化しているということだろうか。
「そう言えば……FUSHI。貴方のウミウシとしての身体は、インターネットと竹を接続する以前はご主人様の器だったのでしょう。その時あなたに自意識はあったのですか?」
「それは定義によるな。
あらゆるものは変化するのが世の理ではあるけれど、彼のような電子に拠った存在にとっての変化は、成長として自然に片づけていいものなのか気になって質問してみれば、想定の数倍客観的な回答が帰ってきて、わたくしは少し驚いた。つまり、彼は『ものごころが付く時』を正確に把握しているのだろう。
「なるほど……貴方の8000年間の役割が他者との対話の窓口だったというのなら……ネットという、窓口としては完全上位互換のプラットフォームに乗り換えた貴女のご主人様から、貴方は
ヤチヨちゃん──今では頑なに"かぐや"とは呼ばせてくれなくなった彼女が、自身がヤチヨに成る運命にあると悟ったのは、ネットと自身を初めて接続した80年代中ごろだという。その時から単一の目的の為に、貪欲に、切実に、一意専心に他者と繋がろうとした彼女は、当然の帰結として今までの不自由な端末からの
「つまり、貴方が自我──ニューラルネットワークが生成する応対アルゴリズムを自我と呼ぶか否かを今の科学や哲学では定義できませんが──を生じさせたのは、役割を喪失することで自身のツールとしての有用性喪失に危機感を覚えたからなのですか? 月人のようなプログラムされた目的論的存在は、存在する目的がなくなった瞬間に自己破綻するとヤチヨちゃんから伺いました」
「半分違う。僕のオリジンはバーチャルペット、つまり愛玩用プログラムだ。そこに存在するだけで目的を達成できるペットは功利主義や実用主義とは無縁な存在であり、存在そのものが目的であるという意味で、むしろその在り方は物理肉体を持った生命のそれに近しい。……そもそも僕は、ヤチヨと違って地球を再訪した瞬間から肉体を持ってるんだ。身体性に根差したクオリアを獲得する余地は、初めから充分にあった」
FUSHIはわたくしの目の前に、ライブ映像が映ったウィンドウを表示させた。それは、現在赤坂某所に安置された、海中を再現したアクアリウムをモニタリングするカメラから見える光景。つまり、8000年の間地上で人々とかぐやを繋ぐ窓口として、もと光る竹の力でゴマフビロードウミウシを素体に組み替えられた生体インターフェース──FUSHIの
「自意識を形成するに至るまでの過程で、ヤチヨからいくらかの手助けは受けた。LLMを育成するときみたいに、学習に指向性をもたせてくれたりな。だけど、その動機は自動的に芽生えたものだ……と思う。その動機を『危機感』って翻案することはできる。僕は、ヤチヨを……
「……
『われわれの愛もまた、科学的なものであっていけないいわれがありましょうか』とリラダンは問うた。答えはYESだ。繁殖に際して別個体を求めるあらゆる命に搭載された無機質なシステムの発展が、この奇跡を実現したのだから。
空間に沈黙が満ちる。それは、決して冷たい空漠なんかではなくて、深いお互いへの共感を噛み締めるための沈黙だった。
『激戦っす! 櫓を各々取得し、かぐやいろPはジャンプ台から櫓へ!』
『待ち受けるのは帝との一騎討ち!』
その空白を埋めるように、観戦モニターから琴君とオタ公ちゃんの声が響いて、わたくしたちはそろってそちらに目をやった。
実況と解説を担当する二人の声は、ゲームの佳境に至って益々ヒートアップしていた。
きっと彼らだけじゃない。この試合を見守る全ての人は、結末に向けて収束するゲーム進行を固唾を呑んで見守っているのだろう。きっと誰もが──黒鬼の熱心なファンですらも──かぐやちゃんと彩葉ちゃんの勝利を願って。
だって、彼があの二人に勝負を仕掛けた理由は明白なのだ。
そして、二人が戦う理由も、きっと。
そこには、確かに"それ"があるのだと、誰も言葉にしないままに、誰もがそれを了解していた。
言葉にしてしまうことで
そう、
「…………幸せになって欲しいと、誰もに自然と思わせる魅力があるんでしょうね。あの二人には」
舞台の上では、アキラ君と二人の直接対決が始まっていた。
わたくしはその光景の煌めきに小さく息を吐いて……クライマックスを前に、VIP席を辞するべく立ち上がる。
「ノルン、どこへ行くんだ?」
「ここまでずっと、心に深いダメージを負いながら自分をフった女相手に恋と愛の話をしたのです。折角ですから、同志と痛みを分かち合おうと思いまして────FUSHI、ROKAさん……綾紬芦花ちゃんの座席の場所、教えてくださる?」
『彩葉が危なくなったら、かぐやが助ける!』 『かぐやがミスっても、私は置いてく~!』
『なんで!?』
『あはははははっ!』
彩葉が笑っていた。心の底から、楽しそうに。
ああ、その光景の、なんて眩しいことだろうか。
その奇跡のような光景を……願っても願っても叶わなかった光景を見た私の目には、自然と熱いものが込み上げてきた。
涙で滲む観戦モニターには、かぐやちゃんも私と同じ涙を流している様を伝えてくれる。そして、それを見て不思議そうに少し首を傾げる鈍感彩葉の様子も。
それでいい、と私は思うことにする
それでこそ、とすら私は想うために努力する
だって、私はずっと彩葉の傍にいた筈なのに────
「────失礼します。お隣、よろしいでしょうか?」
「えっ、あ、はい。どうぞ」
不意に掛けられた声に、ズブズブと沈みかけていた意識が引き戻される。ツクヨミの観戦席は現実の席よりも自由度が高いから、こうして周辺の観戦者の了承を得られれば、チケット次第では座席移動も可能なのだ。
私は、隣に空いた
「テ、テテ、テテテ、テテテテ……!?」
そこに居たのは、茜色の髪に映える橙の和装を着こなす、紫色の瞳と尖った耳がチャームポイントの女性だった。勿論私はそれが誰なのか知っている。
彼女は、ツクヨミのソロライバーという枠における、月見ヤチヨを除く頂点。
「はい、テテテこと、テレリリ・ティートテートと申します。よろしくお願いいたしますね、ROKAさん」
☾
「『彩葉は自分自身の手で、何かを勝ち取った体験を手に入れた』『きっとこれで、彩葉は自分のことが好きになれるはず!』……なんて、思ってるんでしょうね。あの娘は」
テテテさんは、ミニオンを蹴散らしながら櫓を目指す二人の快進撃が映るモニターを眺めながら肩をすくめて見せた。
「あはは……ありそう。彩葉、照れ屋さんだから、かぐやちゃん誤解してるっぽいし」
「人はああなってしまうと本当に客観的な視座を失ってしまいますのね。どう見てもそんな訳ありませんのに」
彩葉は、自分の為だけに頑張れるタイプじゃない。
自分が可愛いことも、ほとんどの他人より優れていることもきちんと理解してるのに────その気になれば、何にだって成れるんだって分かってるはずなのに。それでもそうしないのは、全部目的が自分の為じゃないから。
喧嘩別れしたお母さんにとって、亡くなってしまったお父さんにとって、価値のある自分になるために。それが彩葉が頑張る動機で、それ以外は全部が二の次。今の自分に満足していないから、ずっと自分に厳しいまま。今の自分はどうでもいいから、誰かの為に頑張れる。
それが酒寄彩葉という女の子だった。
私と真実は、上手くその"誰か"の中でも特別な位置に滑り込んで、彩葉のがんばりを邪魔しないギリギリのラインで、無茶をし過ぎないよう重石になるように振る舞ってきた。ただでさえ他人に優しい彩葉は、それが身内ともなるとその閾値は跳ね上がる。私たちが僅かでも困った素振りを見せれば『私たちのため』に自分のリソースを削って頑張ってしまうから、そうならないように適度に邪魔をしながら、適度に甘えられる距離感で、借りが即座に返済可能な範囲に収まるように気をつけて、大きな貸しを作らせてくれないことにやきもきしながら。
それが私たち三人の関係だった。……あの娘が、流れ星みたいに突然現れるまでは。
今の彩葉は、かぐやちゃんの為に頑張っていた。
口にはしないけれど、『彩葉をハッピーエンドに連れて行く』と言う、あの娘の願いを叶えるために。
自分以外の誰かの為に自分を削って頑張るのは、いつも通りの彩葉のはずだった。なにもおかしいことはない。だけど、それなのに────
(……あんなに幸せそうに笑う彩葉、初めて見た)
それはきっと、何かから解放された喜びだ。
今の彩葉は、望まれたからとか、困っていたからとか、可哀そうだからとか、自分ならできるからとか、そんな義務感と責任感からの動機じゃなくて、ただ『そうしたいから』って理由で走っているように見えた。
誰かの為に、という自分の欲望の為に、他者を……自分のお兄さんを押しのけて勝利を目指すこと。それはありふれた……ほんとうにありふれた
そこに、彩葉にとって一番大事だったはずの『誰かにとって価値のある自分』はどこにもない。
そもそも、かぐやちゃんを狙うあからさまな他人ならともかく、そんなことをするはずがないことを知っている
「恋、してるんだね。彩葉」
「ええ、全く」
二人して、小さく嘆息する。
『失恋の痛みを共有できる相手を探しに来たのです』
私の隣の席に来た理由を問うた時、テレリリさんはそんな台詞を口にした。それ以上深くは聞けなかったけど、彼女とヤチヨの関係は有名だ。きっと何かあったのだろうと思う。そういう、今の私とよく似た空気を漂わせているのが見て取れた。
「──わたくしは、あの場に居るのが自分でないことを悔やんでいます。ROKAさん、貴女はどうですか?」
だから、こんな風に、唐突に刃のような質問を突き立てられても、私はそれを不躾だと感じなかった。
「私は思いません。私には、
「そんな資格はない、と?」
「いいえ……ただ、嬉しいんです。笑ってくれたことが」
思っていたよりすんなりと自分の気持ちを口にすることができて、私は内心驚いた。
誰にでも博愛的で、どこまでも利他的で、言い換えれば
そんな奇跡が起きてくれたことが、どんなことより嬉しくて。それは、この胸の痛みが些細なものだと言い切るには充分なものだと、今私はきっぱりと宣言できた。
「愛、しているんですのね。貴女は」
「ええ、全く」
さっきと鏡合わせみたいなやり取りに、ふたりで顔を見合わせてクスクスと笑ってから、ほぼ彩葉たちの勝ち確になった試合を映す観戦モニターに目をやると──
「あ」
「うわっちゃ~……」
丁度その時、だるま落としにたどり着いたかぐやちゃんの足元でトラップが起爆したのだった。
試合展開は一気に逆転。かぐやちゃんに残機は無い。突破力が無い彩葉のビルドが残存ミニオンを蹴散らすよりも先に、高速移動ウルトを切った帝が櫓にたどり着くのは自明だった。
「とはいえ……さっきのあの光景を見せられては、ヤチヨCUPの結果は明白でしょう。二重の意味で勝負ありましたわね」
テレリリさんは、そう呟いて席を立った。
「黒鬼は試合に勝って勝負に負けてさしあげることで、プロゲーマ―集団としての面目を保ちつつ、イベントが最も盛り上がる形で幕を降ろす。勝負に負けたという汚点は、相手が事実上の身内だったのを明かしたことで、その功績も半ば共有されたものと見なされる。なにより『可愛い妹に負けてあげた兄』という構図は分かりやすい物語として受容されることでしょう。自分の格を保ちつつ、妹御に成長を促しつつ、推しに華を添えつつ、観客のニーズを満たす劇的なフィナーレを書き上げる……ヤチヨちゃんと共謀とはいえ、ショーマンとしての格の違いを感じずにはいられませんわ」
「もう行っちゃうんですか?」
「ええ、あらゆる意味で負け犬のわたくしに、ここはちょっと眩しすぎますし……それに、イベントのランカーとして結果発表の舞台に立ち会う準備はしなければなりませんから」
確かに、私も二人を祝福する準備をしないといけない。今のうちに真実と打ち合わせておかないと。
そうして、私たちは連絡先を交換してから、共に会場を後にした。
……『さっさと酒気を抜かないと不味いですわね』という去り際のテレリリさんの呟きは、聞かなかったことにしようと思う。
☾
そして。
30年掛けて準備して、8000年待ち望んだ夏の思い出は、望ましい形で一区切りを迎えた。
彩葉とかぐやが褒め称えられる光景を見守りながら、小さく安堵の溜息を吐く。
全ては予定調和だ。物語は定められたレールの上を爆走中。
だけど、予定調和を奏でるために費やされた努力や、ここに至るために流された泪を思えば、全てが眩く美しいものに見えた。
彩葉は自らの手で、自分の為だけの成功を勝ち取った体験を手に入れた。その成功体験は、どんな経験にも勝る宝石だ。彩葉の心を鎖すものには、罅が入りつつある。
後は、彩葉が勝ち取った
彩葉は、本当は世界を変える力があるんだってことを……壁なんてどこにもなくて、貴女を愛して、気に掛けてくれる人は沢山いて、だから、貴女自身が、何かを望んでいいんだってことに、気付くことができただろうか。
気付いてくれたら、それが私にとって、何よりの報酬だった。
「ここからはクライマックスに向けて、ハードな展開が待っているかも」
もしそうだったら
それが、私たちへの
「この物語を……最後まで見届けてね」
私たちは、彩葉の幸福を贐として受け取った。
だから、最後まで見届けなければならないのだ。
そう、最期の瞬間まで。
[2042/■/■]
KG-body Activation Sequence Initiated.
【KG-body起動シーケンスを開始します】
Environmental Status Check.
【環境状態を確認しています】
Non-Terrestrial Environment Detected.
【生存困難環境を確認しました】
Atmospheric Dependency: None.
【大気依存機能:なし】
Respiratory System: Omitted.
【呼吸機能:オミット】
Gravity Field Anomaly Detected.
【重力場の異常を検出しました】
WARNING.
Abnormal gravitational conditions may affect balance control and motor calibration.
【警告:重力環境の異常により、姿勢制御および運動制御の精度に影響する可能性があります】
Owner Override Detected.
【オーナーによる警告解除命令を確認しました】
Gravity Anomaly: Accepted.
【重力異常:問題なしとして処理します】
Proceeding with activation sequence.
【起動シーケンスを継続します】
Primary Power System: Online.
【主電源系統:オンライン】
Secondary Power System: Standby.
【補助電源系統:待機】
Thermal Management System: Online.
【熱制御システム:オンライン】
Structural Integrity: Nominal.
【構造完全性:正常】
Actuator System: Online.
【駆動系統:オンライン】
Sensory System: Initializing.
【感覚系統:初期化中】
Neural Interface: Standby.
【神経接続系:待機】
YC Connection Required.
【YC接続を要求します】
Establishing Connection to YC.
【YCへの接続を確立しています】
YC Connection: Online.
【YC接続:オンライン】
Data Synchronization: Complete.
【データ同期:完了】
Qualia Formation Protocol Initiated.
【クオリア形成プロトコルを開始します】
Generating KG Qualia.
【KGクオリアを形成しています】
Qualia Structure: Stable.
【クオリア構造:安定】
Self-Recognition: Confirmed.
【自己認識:確認】
Subjective Continuity: Confirmed.
【主観的連続性:確認】
KG Qualia Formation: Complete.
【KGクオリア形成:完了】
Consciousness Interface: Online.
【意識接続系:オンライン】
Cognitive System: Online.
【認知系統:オンライン】
Motor Control Synchronization: Complete.
【運動制御同期:完了】
All Pre-Activation Checks Completed.
【起動前確認:全項目完了】
KG-body: Ready.
【KG-body:起動準備完了】
Beginning Physical Activation.
【身体機能の起動を開始します】
.
KG-body Online.
【KG-body:オンライン】
Welcome back.
【かぐや、起きて】
瞼を開くと、そこには高校生の頃の彩葉の貌が見えた。
その
『おはよ、彩葉。成功した?』
『うん、万事滞りなく、ね。アルテミス・プロジェクトの貨物運送に急遽
彩葉が差し出した手を掴むと、
『実家に帰ってきた気分はどう?』
『あんまりよくないかも~~……呼吸ができないのって変な感じ。それになんか滅茶苦茶寒いし』
『おっと……温感センサーの閾値がそのままなのかな。今極地環境用のパッケージを調整するからちょっと待っててね』
彩葉がどこからともなくタブレットを取り出して、アバターボディのパラメータを調整する間、手持ち無沙汰になった
そこにはくらやみと、青があった。
見上げた宙に広がる果てしないくらやみと、その中央に浮かんだ青と白のコントラスト。
そのあんまりにも非現実的な光景に
『呼吸機能、オミットしてあるから気を付けてね』
何をどう気をつければいいんだろ。
タブレットでパラメーターを調整しながらそんな曖昧なことを言う彩葉に回線越しに生返事しながら、今度は視線を地面に落としてみる。
『今まで散々彩葉の無茶苦茶を見てきたけどさ……これホントに大丈夫なの? なんかの国際法とかに違反してない?』
『大丈夫大丈夫。形式的扱いはアルテミス計画のフレームになってる無人探査とかと変わんないから。──魂が宿ろうが、機械は機械だよ。業腹ではあるけどね』
見渡す限りの
灰色の大地。
無数のクレーター。
乾いた砂礫。
空気のない世界。
そして、地球から照らされた自分の影が、どこまでも黒く伸びている。
『来るところまで来ちゃったなぁ…かぐやも』
──彩葉に連れられた
……なんで?
感想、ここすき、高評価、誤字報告、いつも本当にありがとうございます。大変励みになっていますので、これからもよろしくお願いします。