実のところ、ツクヨミで対戦ゲームに親しむユーザーにとって、ヤチヨと戦うことはそんなに珍しいことじゃない。
KASSENフォーマットなら、ヤチヨはどのタイトルでも初中級者帯から最上位帯までの各ランクにアカウントを持っている。だから、運が良いプレイヤーはその熱帯の強さに合わせたスタイルとゲーム習熟度にプリセットされたヤチヨと相対したり、システム次第では共闘することになる。
そして、どんなゲームに於いてもランク帯が上に行けば行くほどプレイヤーの絶対数が絞られる都合、プレイヤーは強ければ強い程ヤチヨと遭遇する機会も増えていくのだ。
それは私がKASSENをやりこむ大きなモチベーションになっていた。『ヤチヨと遊べるかも』っていう特大のモチベがなければ、1on1系の幾つかのタイトルで世界上位500人限定の最上位帯にタッチすることはなかったと思う。
だから。
キィィィィン──―
間隙に突き入れられたヤチヨの傘による鋭い三段突き。それを二重階段ノーツを捌くステップに合わせて、文字通り舞うように回避して、最後の一撃だけを柄で弾いて拍子を作る。
「彩葉このゲーム上手いねぇ! これはもしやがあるかもよ……?」
「ヤチヨ、選曲の割にっ……昔の語録の割合が少ないんじゃない? 深夜なんだし、遠慮しなくても、いい……よっ!」
「いやぁ……その、若い子相手だとちょっと、ね?」
だから、こんな風にノーツの物量を捌きながらヤチヨからの直接攻撃を捌くことができるのも、単純に私がヤチヨに対する人対策が十分にできているから、という側面が強かった。
カカさんに勝ってDJ権限を手に入れた私と初めからDJ権限を持っているヤチヨのバトルは、お互いのシステム干渉自由度の高さからフリースタイルの様相を呈していた。
音楽は流れているけど、お互いの選択楽曲毎にターンを渡し合うような形式ばったことはしない。ただ、リズムにノって、踊って、戦って、
デートという甘い響きに誤魔化されそうになったけど、元々ヤチヨが私を連れ出したのは、元はと言えば私の至らなさへの補習講義が必要だったからだ。
(ヤチヨを失望させる訳にはいかないよね、彩葉)
そうやって浮き足立った心を戒めて、私はヤチヨに向けてステップを踏んだ。開いた距離を埋めて、再度攻撃を仕掛ける為に。
一息、一拍、一足、一刀。これを4セットで1小節が私のリズムだ。そうしてタイルの明滅に合わせてモーションを作り、ヤチヨに向かって刃を突き入れた。
ギャリンッッ!
金属音のSEが裏拍に響く。
跳躍、ウェーブ、旋回、一撃。これを4セットで1小節がヤチヨのリズムだ。
私の女神様は、閉じた傘の骨組みを手首で旋回させながら半身を逸らし、最小のモーションで私の突きを横へと弾く。
正中線を狙った私の
「不っ味……」
しまった。見蕩れている場合じゃない。隙を晒したタイミングで表拍を取られた。
案の定、ヤチヨのフリーな片腕が手刀になって私の胸に突き入れられる。私は残していた僅かな余力と一緒にそれを捌き、体勢を崩させるために腕を絡めて巻き込もうとするけれど……
ヤチヨの唇が僅かに弧を描いたことで、選択肢を間違えたことを悟った。
「素敵」
──逆だった。巻き込まれたのは私の腕だ。
移動とステップを同時に行わなければならないこの場所の制約がヤチヨに味方していた。身体が浮き上がる瞬間を狙った『投げ』が綺麗に嵌り、アマテラスエンジンの物理演算に従った私の全身はやらせの大道芸じみた鮮やかさで舞い上がる。
流石はヤチヨ。投げキャラ使いだけあって、こっちの心の間隙を読むのが上手い。
「これでイッポン、かな~?」
空中ではステップを踏めないので大きく空に浮いた時点でバッドパフォーマンス判定だ。しかもこのままだと頭からフロアタイルに叩きつけられて、物理ダメージとダサいパフォーマンスによる大幅減点で一気にゲームオーバーもあり得る。
そうでなくても、実際の部屋──私の物理肉体がある、配信用件運動用のモーショントラッキングが行える部屋──での私の身体の動きとツクヨミのVRアバターのモーションに著しく差が出る空中移動、しかも三次元的な宙返りは、現実→ツクヨミのモーション反映と実際の脳の見当識に数Fでは効かないラグが生じる。
並みの相手ならともかく、ヤチヨとのインファイトにおいてそういう遅延はそのまま死を意味することになるだろう。
「それなら……!」
私は咄嗟にスマコンの表示を一瞬だけARモードに変えて壁との距離を測って、そのままVRアバターの空中慣性に合わせる形で床を蹴って高く飛び上がり後方宙返りを決めた。
可愛く目を丸くするヤチヨを逆様の視点で見守るVRの自分の体勢と、空中で上下を逆転させる現実の自分の座標がシンクロするタイミング。それの瞬間に剣を握った方の腕を振って斬撃ノーツを生成。切り付けることでヤチヨに極められた腕を開放する。
「うっそマジ……!?」
そうして自由になったVRアバターと完全同期したモーショントラッキングを活用して、着地前に体を捻ってヤチヨに──現実では部屋のクッション付きの壁に──蹴撃を放つ。
慌てて傘を展開してそれを受け止めたヤチヨの動作はリズムから外れていて、ペナルティとして私の着地を狙う追撃のチャンスは喪失。
『今何が起こった?』
『なんかゲーム違くないっすか』
『武侠伝ワールドの特殊物理エンジン使ってないのにあんな繊細な動きってできるんだ』
『もう何が起こっても驚かなくなってきた』
『ヤッチョ、お前はいったい何を拾ってきたんだ……?』
一息、一拍、一足。
あくまで着地直後もこのリズムを守って、剣を持たない左を拳に変えてジャブを放つ。
「あ痛ぁっ!」
被ペナルティで
その慣性を利用して飛び退って距離を離す。この加点分で浮いた分の減点を埋め合わせ、状況は五分から仕切り直しだ。
このクラブに来てからずっと続けている激しいステップ。そして今のバク宙と壁キック。いくら減点を避けるために毎度毎度つま先から綺麗に着地しているとはいえ、どったんばったんと激しい音がひっきりなしに部屋に鳴り響いていることに違いはなかった。
────いい、かぐや。隣室と下の階の人の迷惑にだけはならんようにしてね。
────え~~~~? 話せばわかってくれるんじゃない? ボロアパの隣室の人だってさぁ……
────あれはわかってくれたんじゃなくって、我慢してもらってるだけ。相手が何も言ってこないからって何もないってわけじゃないんだから……もし訴訟とか起こされたら、私みたいなただの女子高生じゃアンタを庇ってあげられないの! だから初めから迷惑かけないような環境を作る! いい!?
────は~~~~い……
あの時はかぐやのことだけを考えての忠告だったけど、今はその備えに私自身が助けられてる。情けは人の為ならずとはよく言ったものだ。
そういう経緯で完璧な防音処理が施された配信ルームにて、誰に憚ることもなく、次の
ステップのタイミング。踏みこみのポジショニング。接地する足の表面積。重心移動。フロアタイルを踏んだ時に鳴る音がこの四つのパラメータに合わせてどのような変化を見せるか、どんな風にベースラインを歪めるかは大体把握できた。
(ここからだぞ、酒寄彩葉)
ダメージから回復し、内心を伺わせない表情でアルカイックに私に微笑みかけながらフロアタイルを素早く踏んでリズムを作るヤチヨに合わせて踊りながら、自分自身に発破をかける。
ヤチヨの選択楽曲、『嘆きの樹』はクラシカルなストリングスとダークな短調のピアノを
元々リズムゲームの楽曲なだけあってノりやすく、様々なアレンジと表現型を受け付ける余地のある懐の深い選曲。
考えろ。ヤチヨがこれを選んだ理由が何なのかを。どんなふうに編曲すれば、ヤチヨの憂いを消すことができるのか。どんなふうな振り付けなら、私とヤチヨが一緒に作るリズムにノってくれるオーディエンスの皆を楽しませることができるのか。
わからない。わからないけど、ヤチヨはそれをずっとやっていて、かぐやも自然体でそれができていた。だから、私も
ヤチヨに手間をかけせることも、かぐやの晴れ舞台にケチをつけることも、どっちも許されることじゃないんだから。
「…………いまここで、掴むんだ」
小さい独白。それと一緒に
澱となって蟠る居心地の悪さを……私自身の至らなさに由来するそれを、ステップのスピードど狂騒で振り切るために。
──才能だけで踊ってる。
それが、今の彩葉のパフォーマンスへの
カカちゃんと私というハイレベルな教材とのぶつかり稽古でDJとしてのテクニックをモノにしたことで、既に
ダンスも、作曲も、彩葉は『自分』を表現するのが苦手な子だ。その徹底ぶりといえば、ヤチヨchatで相談に乗るときでさえ、必要な確信を彩葉の口から離させるために幾重にもプロトコルを経由する必要があるくらいだった。
普通だったらそれはネガティブな点だけど、彩葉は何をするにも要領が良すぎて、創作においてもテクニックだけで『いいもの』が作れてしまう。そのせいで周囲も彩葉自身も、或いはかぐやでさえも、それを問題点だと認識できずにいた。
それは社会に適応する上では十分なスキルだ。むしろ作家性を欠いたままいいものを納品できるという稀有な才能は、いろいろな場面で重宝されるだろう。
……だけど、それは『表現者』という尺度で見ればとても不幸なことだった。
自分をないがしろにしたまま他人にとっての最善を突き詰められてしまうことは、当然の帰結として彩葉自身に彩葉の個性や望みをないがしろにする積極的な動機を与えてしまうことを意味するのだから。
私は、ヤチヨCUP優勝翌日のことを思い出していた。
彩葉が一千万人を超える規模の衆目に実力と実名を晒し、そしてその血縁関係に至るまでが露見したことを……そして、そこから発生しうるリスクの一切から彩葉を守る用意があることを、報告すべき相手に報告した時のことを。
☾
酒寄彩葉(以下「乙」という)と、株式会社ツクヨミ・クリエイティブ・エンターテイメント(以下「甲」という)は、乙の芸能・配信その他の活動に関するマネジメント及び安全管理について、以下のとおり契約を締結する。
第1条 目的
1 本契約は、乙がその人格、才能及び創作性を最大限に尊重される環境において、芸能活動、配信活動、創作活動その他これらに付随する活動を継続することを目的とする。
2 甲は、乙の活動に伴って生じ得る第三者との紛争、契約上の問題、権利侵害、プライバシー侵害、危険行為その他のリスクについて、乙に代わり又は乙と協力して必要な対応を行う。
3 本契約は、甲が乙の人格、思想、創作その他の活動内容を支配することを目的とするものではない。
第2条 活動名
1 乙は、本契約に基づく活動において、以下の活動名を使用することができる。
「いろP」
2 乙が別人格、キャラクター、アバターその他の名称を用いて活動する場合においても、甲は、当該活動が乙本人によって行われるものであることのみを理由として、その活動を本契約による不利益な制限の対象としてはならない。
3 特に、乙が運用する情報人格「いろP」による活動については、乙自身の活動と同様に取り扱うものとする。
第3条 マネジメント業務
1 甲は、乙の依頼又は同意に基づき、次に掲げる業務を行う。
一 出演、イベント、ライブその他の芸能活動に関する交渉及び契約管理
二 企業、団体その他第三者からの出演依頼等の窓口業務
三 乙の肖像、氏名、活動名その他のパブリシティに関する権利管理
四 法務、税務、会計その他専門的事項についての支援
五 乙の活動に伴う安全管理及び危機管理
六 第三者との紛争その他のトラブルへの対応
七 その他、甲乙間で別途合意した業務
2 前項各号の業務について、甲は乙の代理人として行動する場合、乙の利益を最優先するものとする。
第4条 配信活動の自由
1 乙は、動画配信、音声配信、ライブ配信、ゲーム実況、雑談、歌唱、創作、SNSその他一切の個人配信活動を、甲の事前承認を受けることなく自由に行うことができる。
2 甲は、乙の配信内容、配信頻度、配信時間、配信媒体、共演者、使用する楽曲その他配信活動の具体的内容について、原則として指示、制限又は干渉を行わない。
3 乙が自己の判断により行う配信活動について、甲はその活動を理由として違約金、損害賠償、報酬減額その他の不利益を乙に課してはならない。
4 乙が配信活動によって得た広告収益、投げ銭、メンバーシップ収益その他これらに類する収益について、甲は、別途明示的な合意がない限り、その全部又は一部を取得する権利を有しない。
5 甲は、乙の配信活動について法的、技術的又は安全上の問題が発生した場合、乙の求めに応じて必要な支援を行うものとする。
6 前各項の定めにかかわらず、乙本人の生命、身体、人格権、財産その他重大な利益に対する具体的かつ差し迫った危険が存在すると甲が合理的に判断した場合、甲は乙に対し当該危険について通知し、必要な措置を提案することができる。
ただし、前項の措置は、乙の配信活動そのものを甲が包括的に停止又は管理する権限を意味するものではない。
第5条 商業活動
1 乙が企業、団体その他第三者から報酬を得て行う出演、広告、商品開発、イベントその他の商業活動については、甲がその契約交渉及び事務処理を担当することができる。
2 前項の活動について、甲は乙に対し、契約内容、報酬その他の重要事項を事前に提示しなければならない。
3 乙は、甲を通じて提示された案件について、自由に承諾又は拒否することができる。
4 乙の承諾なく、甲は乙の氏名、活動名、肖像その他を利用して第三者との契約を締結してはならない。
第6条 専属義務の範囲
1 乙は、甲に対し、第三者との芸能活動上の契約交渉及び商業案件のマネジメントについて、優先的に甲を利用するものとする。
2 前項の定めは、乙の個人的な創作活動、配信活動、SNS活動、趣味その他乙が自己の意思により行う非商業的活動を制限するものではない。
3 甲は、専属契約を理由として乙の私生活、交友関係、思想、発言、創作内容その他人格的領域に介入してはならない。
第7条 著作権等
1 乙が本契約締結前又は本契約期間中に創作した文章、楽曲、映像、イラスト、キャラクター、プログラムその他一切の著作物について、その著作権その他の知的財産権は、別途明示的に譲渡する旨の合意がない限り、乙に帰属する。
2 甲は、乙の著作物を利用する場合、利用目的及び利用範囲を明示し、乙の事前の同意を得なければならない。
3 甲は、乙の著作物を乙の意思に反して改変してはならない。
第8条 安全管理
1 甲は、乙の活動に関連して発生する可能性のある次の各号の危険について、必要な対策を講じるものとする。
一 ストーカー行為その他のつきまとい
二 住所その他の個人情報の特定又は漏洩
三 脅迫、恐喝その他の犯罪行為
四 不正アクセスその他の情報セキュリティ上の危険
五 第三者による身体的危害
六 契約上又は財産上の不利益
七 乙の社会的評価又は人格権を侵害する行為
八 その他、乙の活動に通常伴わない重大な危険
2 前項各号の事態が発生した場合、甲は必要に応じて弁護士、警察、セキュリティ事業者その他専門機関と連携し、その解決にあたる。
3 乙は、前項の対応に必要な範囲で甲に情報を提供するものとする。
第9条 契約及び法的手続
1 甲は、乙に関する契約、利用規約、出演条件その他の法的文書について、乙の求めに応じて内容を確認し、必要な助言を行う。
2 乙が第三者との間で紛争その他の法的問題に直面した場合、甲は、乙の同意を得た上で、甲が契約する弁護士その他の専門家による支援を提供する。
3 甲は、乙に対して法的手続への参加、示談その他の法的処分を強制してはならない。
第10条 人格及び意思決定の尊重
1 甲は、乙が自己の人格、身体、創作、活動及び将来に関する事項について自ら意思決定する権利を尊重する。
2 甲は、乙の活動上の利益を理由として、乙本人の意思に反する身体的接触、精神的圧迫、隔離、通信制限その他これらに類する行為を行ってはならない。
3 乙の安全確保を目的とする措置についても、可能な限り乙本人の意思を確認した上で実施するものとする。
第11条 秘密保持
1 甲及び乙は、本契約に関連して知り得た相手方の秘密、個人情報及び非公開情報を、正当な理由なく第三者に開示してはならない。
2 前項の義務は、本契約終了後も存続する。
3 ただし、乙の生命、身体又は重大な権利利益を保護するために必要な場合、甲は必要最小限の範囲で第三者に情報を開示することができる。
第12条 報酬
1 甲が乙に代わって獲得した商業案件について、甲は、当該案件により乙が得た報酬のうち、別紙に定める割合をマネジメント報酬として取得する。
2 乙が個人的に行う配信活動その他第4条に定める活動から生じる収益については、甲はマネジメント報酬を請求しない。
3 甲が乙のために支出した費用については、事前に乙の同意を得たものに限り、乙に請求することができる。
第13条 契約期間
1 本契約の期間は、契約締結日から三年間とする。
2 契約期間満了の三か月前までに甲乙いずれからも書面による更新拒絶の意思表示がない場合、本契約は一年間更新されるものとする。
第14条 解除
1 甲又は乙は、相手方に重大な契約違反がある場合、相当期間を定めてその是正を催告した上で、本契約を解除することができる。
2 乙は、次の各号のいずれかに該当する場合、催告なく本契約を解除することができる。
一 甲が乙の配信活動を不当に制限した場合
二 甲が乙の意思に反して第三者との契約を締結した場合
三 甲が乙の人格権、著作権その他の権利を侵害した場合
四 甲が乙の安全を著しく害する行為を行った場合
五 その他、甲乙間の信頼関係を維持することが困難となる重大な事由が生じた場合
3 本契約終了後も、乙が自らの配信活動その他の創作活動を継続することについて、甲は一切これを妨げてはならない。
第15条 競業避止義務等の不存在
1 甲は、本契約終了後の乙による芸能活動、配信活動、創作活動その他の活動について、競業避止その他これらに類する制限を課してはならない。
2 甲は、本契約終了後、乙が他の事務所、企業、団体又は個人と契約することを妨げてはならない。
第16条 権利義務の譲渡禁止
甲及び乙は、相手方の事前の書面による同意なく、本契約上の地位又は本契約に基づく権利義務を第三者に譲渡してはならない。
第17条 協議
本契約に定めのない事項又は本契約の解釈について疑義が生じた場合、甲乙は、乙の利益及び意思を尊重し、誠実に協議して解決する。
第18条 準拠法及び管轄
1 本契約は日本法に準拠する。
2 本契約に関して訴訟の必要が生じた場合、乙の住所地を管轄する地方裁判所又は簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約の成立を証するため、本書二通を作成し、甲乙各一通を保有する。
2030年 8月 日
甲
所在地:特殊電子情報保護法9条により保護
商号:株式会社 ツクヨミ・クリエイティブ・エンターテイメント
代表者:代表取締役 月見ヤチヨ
乙
住所:特殊電子情報保護法9条により保護
氏名:酒寄彩葉
活動名:いろP
「────だだ甘を通り越して、ゲロ甘ですね」
AR表示にしたスマコン越しに契約書のPDFを上から下まで視線を五往復させた彩葉のお母さん──酒寄法律事務所所属弁護士、酒寄紅葉は呆れたように鼻を鳴らした。
「所属契約としては異常を通り越して過剰なくらいに乙の自由を認めています。配信活動は原則自由。仕事も拒否できる。私生活にも干渉しない。契約を切る条件まで乙にかなり厚くしてある……私が甲側のコンサルだったら、9割に赤線を入れることになるでしょうね」
労働基準法には違反しないとはいえ、未成年と社会的な契約を結ぶ上でその保護者に同意を得ておくのは通例だ。
それは、一夜にして一千万人以上にその実名を晒し、一週間後には一億人以上の衆目を集めることになる彩葉の身辺を守るためだけの契約であっても同様の配慮だった。
「私は個人の活動から得られる利益に頓着するような立場じゃありませんから。クリエイターが自由にその才能を発揮し、自由な創造行為や自己表現を行い、それが公平に評価される場を作ること。そして、創造行為そのものを────」
「『創造行為そのものを"良いもの"であると万人に認知させ、まだ見ぬクリエイターの才覚を育む土壌を世界中に作ること。この二つを実現する上で憂慮させる障害を排除することができるなら、努力は惜しまないつもりです』……以前と一言一句違いませんね」
そして、これに類似する契約を行ったことも、それを紅葉に精査してもらったことも、これが初めてではなかった。
帝アキラ……当時19歳だった酒寄家長男、酒寄朝日と専属契約を結ぶ際も、私は同意を得るために彼女にコンタクトをとっていたのである。独立独歩を是とし、子供たちにもその世界観を共有させている彼女が横やりを入れることはまずないとは思うけれど、それでも万が一を防ぐための措置として、何より子供を預かり、莫大な数の人々の衆目に晒すことを推奨させる立場としてとるべき配慮と仁義というものがあるのだ。
それからというもの、法務関係のトラブル解決のアウトソーシングが必要な時、私は時折紅葉を頼るようにしていた。彩葉との話をスムーズに運ぶための顔つなぎのためというのが大きな動機ではあるけれど、結果的に私と紅葉は軽口を交えて率直な意見を交えられる程度には親しくなっていた。
相互理解が友達を作る。8000年掛けて培ってきた、私の基本方針である。
うんうんと内心で頷く私を置いて、紅葉は手慰みのように素早くスワイプさせたPDFを半ばでピタリと止めた。その眼は、第8条、安全管理に関する項目を見つめていた。
「警備、移動経路の保護、個人情報の秘匿、法的手続きへの支援。しかも『必要な措置』の範囲が前に比べてかなり広い。これ、額面どおりに解釈すれば有事以外でも相当なリソースを使うことになりますけど、構わないので?」
「勿論です。才能あふれる若きクリエイターは私の世界にとって交換不可能な宝です。どんな瑕疵も負わせるつもりはありません。…………ですから、9条第二項目記載の件、専属でうけてくださいますよね、酒寄弁護士」
『乙が第三者との間で紛争その他の法的問題に直面した場合、甲は、乙の同意を得た上で、甲が契約する弁護士その他の専門家による支援を提供する』
子の責任は親の責任。一人で生きる力を得ることを子供たちに教え込みながらも、その実人は一人では生きられないことを彼女は知っている。それ故に子供がそういう立場に会った時、弁護士として法に携わるものとして紅葉が気を回すのは当然のことだった。だからこれは、事前に彼女が動きやすい席を設けておくことで余計なトラブルを起こさせないように取り計らうための措置だ。
理想と現実。努力目標と達成目標。無欲で、努力すればなんでもこなせてしまう彩葉には、その違いも、折り合いの付け方も理解できないことだった。今は、まだ。
「謹んでお受けします。どこの馬の骨とも知れない木っ端弁護士の首を挿げ替える手間が省けますから……ただ」
「
「はい、頼みます……書面ありがとうございます。精査の上、今日中に提出します」
秘密にするのは、親に助けられることが恥ずべきことだという紅葉の価値観が故なのだろう。彩葉の自尊心を守ろうという配慮。……実際にそんなことがあった時、彩葉がどう思うかを勘案しない気遣い。それは彩葉ではなく紅葉の甘えだけれど、無遠慮にそれを指摘するほど親子関係に対して踏み込むつもりはなかった。
紅葉はARで映るビジネススーツを着た
「……ヤチヨさん。念のため聞いときたいんやけど」
「おや、なんだいなんだい?」
『ヤチヨさん』と言ったからには、これは私人としての会話だ。私はパッと笑顔を
「ヤチヨさんをウチに寄こしたん、あの子の意思やないやんな?」
「そだよ~~! これはヤッチョ側から取るべき配慮だからね! ……それがどうしたの?」
「……まあ、せやろな。────あのアホ、相変わらずな~~んも進歩しとらんな」
私の返答を聞いて、紅葉は深々と溜息を吐いた。想定通りの反応だ。そして、紅葉の批評があながち理不尽ともいえないものであることも、
「紅葉と喧嘩して家を出てった彩葉の立場としては、紅葉に何も言われたくなかったんじゃないのかな?」
「せやから最初に『ヤチヨさんを寄こしたんはあの子か』いうのを聞いたんや。会話したない相手と交渉せなあかん場面で、雇い主を顎で使うて代理に寄越すくらいの強かさが湧いて出てきたんやったら最高やったんやけど……そもそも私が邪魔する可能性を考えとらんいうんが、甘いにも程があります。子の成功を妬む親なんて、そない珍しいもんでもないのにな」
「中島みゆきの世界観の人だよね、紅葉って」
「『ファイト!』、一番好きな歌やわ……カラオケで歌うたら朝久さんに嫌がられたんやけどね」
現実的な問題として、才能ある若者の将来を阻むものは大抵家庭だった。これは8000年前からずっと変わらないありふれた構造である。だからこうして
勿論紅葉は眉間に銃を突きつけられてもそんな真似はしないだろうけれど、だとしても彩葉の敵を自認する紅葉にとっては、そういう可能性をつぶすための努力をしないことは甚だ不服なようだった。
「自分のことだけやのうて、相方のかぐやちゃんにまで迷惑かける可能性があるっちゅうのに……まあ、ロバが旅に出たところで馬になって帰ってくるわけやあらへんし、当然っちゃ当然の話やった。前途多難やね、全く……」
神経質そうに眉間を揉んでから、どっかりと革張りのオフィスチェアに背を預けて天井を仰ぐ紅葉を、私は内心苦笑いしながら見守った。
紅葉は、私が契約書の写しと同意書を持ってやってくる前から彩葉の活躍を知っていた。これはかぐやが配信中に彩葉の名前を出しまくった影響だろう。珍しい名前、コンポーザーとしての才覚、そして声。着ぐるみスキンをつけていても、当人を知ってさえいればすぐにわかることだった。かぐやが来てからは紅葉の動向を逐一チェックしている余裕はなかったけれど、口ぶりから察するに、かぐや・いろPチャンネルの配信は毎回見ているに違いなかった。
紅葉は、彩葉の活躍を素直に喜んでいた。……もっとも、それは彩葉の望む形とは大きく違っていたけれど。
「配信者っちゅう職業は、ほとんど自営業みたいなもんやから安定せえへんし、歴史も短いからこれっちゅうことは言えへんけど、作曲家は別や。一度曲が売れたら名前は歴史に残るし、ヤチヨさんが管理する以上、金回りでアコギなこともできひんさかい、売れてからしばらく経っても数千万の収益を継続的に発生させ続けるんも確定でしょう? 才能は確かやろうから、一発屋で終わることもあらへんやろし……」
これは彩葉が混乱するだろうからまだ本人には話していないけれど、「わたすき」単体のストリーミング収益だけで、かぐや・いろPには日本円換算で五千万円程度の経済効果が既に発生していることを、
かぐやと彩葉はお財布を共有している(というか、国籍がないかぐやは口座を作れない)ことを考えれば、その収益は全て彩葉が管理することになる。年単位でJASRACから分配されるストリーミング使用料の総計は、このペースでいけばどれだけ少なくても二億円を下ることはないだろう。
念のため言っておくと、この利益ににふじゅ~は含まれない。なので総利益はもっと上だ。一か月で高額納税者の仲間入りである。今のうちに税理士を紹介しておくべき案件だった。
「所謂
「なのに、彩葉からはなにもなかった……期待してたの? 彩葉が喧嘩を売ってきてくれること」
紅葉は、彩葉が功績を盾に紅葉からの干渉の一切を拒絶しようとすることを……もっと言えば、絶縁状を叩きつけられることを期待している節すらあった。
「子供が大人に逆らえへんのは、子供が何者でもないからや。社会学的にも、法の上でも、子供はまともな人間として扱われることはないし、そんな機会は基本的にはない。私の子供時代も、ただ耐えて待つしかない雌伏の時間やった。上からものを言われて、ルールを押し付けられて、一方的に搾取されるだけの時間。……せやけど、あの子はもう違う。その気になれば、うざったくて仕方ない人生の汚点を切断処理できる力がある。酒寄紅葉っちゅう毒親を、倒す力が」
「────彩葉は、貴女を敵だとは思ってないよ」
「そやったら、それが一番悲しいことやね。あれだけ教え込んで、それでも私は相手にもされへんかったわけやから」
両親に蒸発された孤児である紅葉にとって、無条件な愛情と庇護を与える一般的な親のロールモデルは初めから存在しない。理解はしていても実践できないのだ。一人で生きて、一人で弟妹を養った成功体験が、"無条件の庇護者"という前提を遠ざける方向に向かわせているから。
勿論、人は一人では生きていけない。彼女もそれを十分に理解しているし、子供時代に誰かの支援を受ける機会も幾度もあった筈だ。だけど、そうやって受けた善意を『借り』と認識して、その全てを倍にして返すことで採算を合わせてきたのであろうことも想像に難くなかった。
人は一人では生きてい行けない。
余計な負債の返済に苦しむことがないようにするために。それによって、人生を他者に恣にさせないために。
それが酒寄紅葉の哲学だった。
「ヤチヨさんもいつやったか言うてはったやろ。『
「彩葉は、優しい子だから」
「それは、強さからくる無頓着さと無神経さの翻案やろ。フォローになってへんで」
紅葉は、にべもなく、吐き捨てるようにそう断言した。
「勝つことが当たり前すぎて、勝つこと自体に価値を見いだせへんのや。その気になれば一番になれるから、一番になることが大事やないと思てる。弱い者、持たざる者への最大限の侮辱やね。……あの子に無自覚なまま踏みにじられた子らには同情してまうわ。せめて勝った負けたで一喜一憂してくれはったら、そんだけの価値があったんやって、負けた側も留飲を下げられるんにな」
「それは流石に紅葉の人生哲学フィルター由来の露悪的解釈じゃないかな~~……それに、彩葉は紅葉に認められることを望んでるよ」
「ハッ……!認めるって何や? 一個人として酒寄彩葉を尊重することが認めることやいうんなら、そんなんはあの子が七歳の時からずっとやってはるわ。朝久さんが居のうなった日から、彩葉も、朝日も、
紅葉は、自分の親という立場がその子供たちに有無を言わさない権力として機能する構造を疎んでいた。対等でないことを、上に立っていることが不条理な暴力であると信じていた。存在するだけで……否、存在しなくとも
敢えて普遍化しようとするなら、過激な
紅葉にとって、子供を対等に扱うことこそが最大限の愛情表現であり、自分に頼らなくても生きられるだけの力を与えることこそが最大限の贈与だ。
孤児と言う境遇から受けた苦しみに由来する、『子供が大人に支配されないためには、子供自身が大人と対等な社会的能力を持てばいい』というロジック。それを前提とした「私を超えろ」「私に依存するな」「私に逆らえる人間になれ」「私を跳ねのけられる力を持て」という教育方針。
自分を守ってきた理念を、より合理的な形で子供に与えようとすること。それは親としては極めて普遍的な行為だった。一人で立てるほど強くあって欲しいという願いもまた、親が子供に望む願いとしては酷くありきたりなものだった。
彩葉が必要としていたものは「立てないときに寄りかかっていい場所」だということを
除けばの話だけれど。
つまるところ、彩葉が求める「寄りかかかっていい場所」を与える能力に欠如していることこそが、酒寄紅葉の親としての最大の欠点だった。人は、自分に無かったものを与えることはできない。被虐待児が被虐待児を再生産する理由の一つだ。
或いは、彩葉が斯く在ることを紅葉に求めれば、紅葉はそれに応えただろう。道理が無くとも言い負かされてあげるのが、彼女なりの子供の尊重の仕方なのだから。
だけど、彩葉は紅葉が用意したハードルを苦に思わなかった。親に寄りかからざるを得ない状況を彩葉自身が拒絶したことが……それができるだけの能力があったことが、お互いにとっての不幸だろう。そうやって彩葉自身が紅葉の世界観を肯定し、その一方で紅葉から何も勝ち取ろうとしない。お互いがお互いの求めに応えず、それを拒絶し合う状況が、二人の間の摩擦の根幹だった。
私はそのギャップが生み出す撓んだプレートのようなエネルギーが地震となって爆発しないようにケアしてきたわけだけど、それは対処療法に過ぎない。紅葉側に彩葉を受け止める用意がある以上、これはいつか彩葉が向き合わないと解決しない問題なのだ。
「その点、朝日はようけ我儘を言うてくれはって嬉しかったわ。ヤチヨさんは知ってるやろうけど、あの子が一人暮らし始める言い始めた時も、乃依くんと雷くんのご家庭の離縁関連の法手続きの時も、上手いこと私を言い負かして使うてくれた。あの子はようできた子や。せやのに……」
そこまで言って、紅葉は不意に言葉を切って私に向けて居住まいを正した。……多分、途中から一方的に愚痴を吐いていた自分を恥じたのだろう。
「ごめんなさいね、ヤチヨさん。こんなしょうもない話に付き合わせてしもうて……結局のところ、全部私の能力不足や。ヤチヨさんが
「うん。頼りにしてるよ、紅葉」
────あの子のこと、宜しくお願い致します。
『こんな事を頼む資格は本来ないんやろうけど』
そう言いたげな表情で頭を深々と下げる紅葉に労いの言葉をかけて、私はその場から離席したのだった。
☾
愛はそこにある。
嘗ての被虐者としてその歪さを理解しながらも、紅葉は紅葉のやり方で我が子に愛を注いでいた。ただ、その愛情を「庇護」という形に翻訳することができないだけだ。
紅葉は、彩葉が自分を必要としてくれる方法を「対等な人間同士の取引」という形でしか理解できない。だけど彩葉は、そんな取引を母親に要求する必要を感じていないし、よしんばその必要が生じても、自分にそんな価値を認められない。
彩葉は自分自身に価値を見出していない。大切にされるだけの自分をイメージできない。愛されるに足る自分を信じられない。自分を肯定する器に孔が空いているから。それは対等に扱うことでしか他者を認める術を持たず、非対称な愛の暴力性を拒絶する紅葉の瑕疵であり、生まれついての強さが故に成功体験を自己肯定に繋げられなかった彩葉の不幸だ。
朝日はこの世界観に折り合いをつけて、うまく紅葉が望む反抗のロールをプロレスめいてなぞることができた。だけど、彩葉にはそれができない。反抗を引き出すはずの不条理を不条理と認識するには、彩葉は少し優し過ぎる。
だから、
酒寄彩葉は優しい子だ。そして、その優しさが強さに由来するものなのだとしたら、その強さこそが私が打ち倒すべき敵だ。私はそう判断した。
『この物語のラスボスは、敗北でも、挫折でも、ましてや絶望なんかじゃない。あんたが倒すべきものは、もっと小さくて、もっと大きな相手。きっとあんたにとっては凄く手ごわい相手だけど、倒せるって信じてる』
……思い出せないけれど、なにか、急かされていたような気がする。残された時間はあと数日だ。倒すべき敵を見つけて、ハッピーエンドを定めなければならなかった。
紅葉は敵ではなかった。勿論月人だって敵ではない。
世界は愛の波動で繋がっていて、真に憎むべき敵を探すのは困難だ。
だけど頁を閉じるには、魔王を倒さないといけない。それが一番安易な、文句のつけようがないハッピーエンドの実現方なのだから。
「どう? 流石の彩葉も、そろそろへばってきたんじゃない?」
「冗談!」
私は傘をくるりと回して鼻先を掠める突きを躱しながら、相対する
彩葉がシェネで再度距離を詰めれば、私も小さく回転しながら後退し、あしらう為に傘を振る。右肩を狙った私の一撃をアラベスクので身体を反らして躱した彩葉が、その姿勢からヒール&トゥで軸足を入れ替えて斬り返す。
一歩、斬撃
二歩、受け。
三歩、蹴撃
四歩、ノーツ。
回避、ステップ、そしてまた一拍。
彩葉のダンスと戦闘の冴えは益々鋭く、対
それでいい。
私は流れのままに、次の曲を選択した。
綻びの無い貴女の強さ。
紅葉と彩葉が共同で作り上げた、彩葉自身を鎖す彩葉の檻。
それを砕き、彩葉に彩葉を認めさせてあげる方法があるのだとすれば、それは。
それは、神々の皆の立会いの下で、全力の月見ヤチヨに彩葉が勝利することだと、私はそう考えた。
月見ヤチヨは酒寄彩葉の
彩葉は私があらゆる意味で最強なのだと信じている。
それは酒寄彩葉が自分の心を守る上で必要とした神格化であり、本来幼い子が親に持つべき優しい幻想だった。
ならば、
我ながら安易な考えだ。現実はそんなに物語のようにうまくはいかない。
だけど、今残された時間で
(彩葉、お願い、頑張って)
なんて乱雑なロジック。破綻した推測。稚気じみた願いの押し付け。だけど……
私の懊悩の合間にも、彩葉はくるくると旋回しながら、その回転に合わせてストレージから取り出した分と合わせた二刀を交差させ、左右から同時に斬撃ノーツを生成する。私がそれを飛んで躱せば、彩葉もそれに追随して
滑空する水鳥のような、重力を感じさせない彩葉の跳躍。それを間近に眺めながら、想う。
嗚呼、なんて綺麗な彩葉…………!
限りなくギリギリの私の発想を真に迫らせるくらいには、私の彩葉は美しい。
……結局のところ、私も私ですっかり彩葉にやられているから、まともな判断なんてできるはずがないのであった。
そうして上滑りした感情はそのままに、クラブの夜は更けていく。
その向こうに何があるのか。
私はそれが知りたかった。
感想、ここすき、高評価、誤字報告、いつも本当にありがとうございます。
前中後編の三部構成のつもりだったのですが、気が付いたら四部構成になりそうです。長くなりますが次でナイトクラブ編も終わるので、お付き合いいただければ幸いです。