Greyscale   作:零音霖

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はじめまして!カクヨムさんで元々書いていましたが、こちらでも、と思い立ち投稿しました。
ハーメルンさんに関しては本当に昔に登録なしでハリポタの二次を読んでいた記憶があります。私はオリジナルでの投稿にはなるのですがよろしくお願いします。


Monochrome 警視庁公安部公安総務課第6公安捜査第11係
EP1


 痛い、痛い、痛い......。目の前は血の海だ。ベレッタのグリップをぎゅうと握り直す。あれからどれほどの時間が経っただろうか。

 目の前がチカチカする。あの日の記憶と目の前の惨状がリンクする。

 玄関の扉を開けた途端漂う鉄の匂い。居るはずの両親のただいま、と言っても帰ってこない返事。リビングへの扉を開けた先の惨状。

 もう何もかもが最悪だ。

 

 あの問題児がついに追い出されるらしい。という噂が警視庁捜査一課を駆け巡る。

 唯川瞠は捜一の問題児だ。ノンキャリの最短で警部に上り詰め、何人もの犯人を捕まえてきた。唯川班は捜一の中でも検挙率トップ。優秀過ぎるが故に見えているものが違うのかすぐ突っ走って無茶な捜査を行い少々煙たがられていた。

 警視庁捜査一課にいる時点で皆優秀なのだ。1人減ったからとどうということはない。

「それで?みはる〜どこ行くんだ?ここから追い出されるんだろ?」

 生田班班長。生田春樹。瞠の同期だ。

「公安部だそうです」

「公安部?そんなとこ行ってやる事あんの?結構派手な事してるじゃん。バレてるでしょ」

「なんか大丈夫らしいですよ。表立って公安と言って捜査するらしいです。相手もかなり訳アリだそうで」

「そのお相手さんに同情するわ。このクソ暴れ馬の相手しなきゃならないなんてな」

 瞠は春樹を軽くどつく。

「うるさいですよ」

 

 警視庁の13階の小会議室。ここが俺たちに割り振られた部屋だ。

 他にないから仕方ないらしい。まぁここを使うのはもう1人だけ。

 部屋に着いたがまだその人はついていない。とりあえず荷物を下ろして部屋に入ろうと重たい段ボール箱を置いた途端、声が掛かる。

「初めまして」

 後ろからの声に振り返るとそこには派手な格好をした若い男がいた。

 肩を越したぐらいの長髪をポニーテールにし、サングラスを掛け、服はシャツとネクタイと普通かと思えば派手なニットに黒いロングパーカー。そして足も悪いのか杖もついていた。

「......初めまして」

「このメガネは遮光メガネ。色が分からないのですがその分光に弱いのでつけています。この杖は足を怪我してしまって。その内走れるようにはなると言われているので安心してください。詳しくは言えませんが僕は休職していたのでこれが復帰初日となりますがどうぞよろしくお願いします」

 不信感を抱いていたことに気づかれていたのか。

 

 小会議室に入り、とりあえず荷物をそれぞれに配置したところで自己紹介が始まった。

「改めまして。捜査一課から参りました。唯川瞠です」

「聖園梛、警部補。元は......警察庁にいました」

「キャリア組ですか?そうとなるとまたすぐ向こうに行ってしまいますね」

「準キャリアです。すぐ向こうに行くのは事実ですけど」

 

 一通りの自己紹介を終え、聖園から業務説明があった。

「僕たちが配属されたのは警視庁公安部公安総務課第6公安捜査第11係。今まで顔出しで捜査をしてきている以上、警察だと知っている裏社会の人間だって少なくないはず。だから表から堂々と公安だと名乗って捜査する。ほとんど独立部署みたいなものだから遊撃部隊として行動する。それで主な事件だけど、ヴァルキリーの残党処理。もちろん他の事件だって多いけれどヴァルキリーの元構成員関連の事件は後を絶えない。だから専門捜査の係が作られたわけ」

 ヴァルキリー、一年半ほど前に起きた【警察官拉致監禁事件】の現場にヴァルキリーの幹部が居たことによって、20年間どの国も解決の糸口を見出せなかった大型犯罪組織の崩壊への一歩となった。その事件がきっかけになり、芋蔓式に逮捕されていった。リストに載っているボス及び上級幹部は逮捕出来た。しかし下っ端や下級、中級幹部の中には逮捕出来ていない人物も存在する。そんな元構成員が起こす事件が逆に被害に遭う事件が後を絶たない。というわけで、この係が出来たというわけだ。

 俺らがまずやったのはヴァルキリーの関連事件の資料を読み込むこと。俺はほとんど初めてだからとにかく顔や名前や関係を頭に叩き込んでいく。その中でも目につくのはこれだ。ヴァルキリーが崩壊したきっかけとなった警察官拉致監禁事件。それは一年半前、聞き込みをしていた私服警察官の被害者は怪しい人物を見つけ、応援を呼び、追いかけるも途中で殴られ深山運送が所有する廃倉庫に連れ去られる。その中で被害者は暴行されるも最後の最後にSatが乗り込み、被害者は助かった。その中にヴァルキュリーの幹部がいたために芋づる式に組織崩壊に繋がった、というわけだ

「唯川さん......唯川さん?」

「あ、はい。事件でしょうか?」

「あの、現場捜査初めてなのでよろしくお願いしますね、唯川係長」

「こちらこそ。よろしくお願いします」

 

 現場となったサクラグラントーキョーへと向かう。超がつく高級ホテルだ。名門と付く幼稚園から入学試験があったようなボンボンの自覚がある俺でも流石にここのスイートルームは泊まった事がない。

「聖園さんは泊まったことありますか?スイートルーム」

「ええ、ありますよ。誕生日に」

「ボンボンですねぇ。聖園食品の御曹司は」

「貴方が言わないで下さい。唯川グループの御曹司さん。後、僕は養子ですから」

「それぐらい知ってますよ。それでもボンボンでしょう。20年前の松濤で起きた、か......」

「その話はまた今度。今は事件に集中しましょう」

 

「酷いですね。聖園さん。大丈夫ですか?」

「......はい。マスクもありますし」

 高級ホテルの最上階スイートルームに滅多刺しの男性の遺体。部屋の至る所に血が飛び散っている。

「相当の恨み、反撃したは良いものの目覚められては自分が殺されるとの恐怖故でしょうか」

 それにしても酷い有り様だ。殺されたベッドだけでなく床や壁が血で真っ赤に染まった様子は酷いとしか言いようがない。

「やっぱり居たか、瞠」

 聞き馴染みのあるその声に振り返ると春樹が居た。

「この事件、貴方が担当してるのですか」

「ああ。んで?そいつがお前の新しいバディ?」

 春樹は目で聖園を指す。

「あ、はい。どうも、聖園梛です」

「うわっ」

 春樹は俺と肩を組んで、バンバン背中を叩いてくる。

「コイツ、かなりの暴れ馬だからよろしくな。ああ、俺は生田春樹。瞠とは中高の幼馴染なんだ。大学から離れたけど結局警察学校で同期。まぁとにかく仲は良いんだよ」

「はぁ、痛いですよ」

 春樹から無理矢理離れてスーツの皺を直す。

「それで、お前らは現場で何するんだ?」

「気にしないでもらって大丈夫です。人員が2人増えたぐらいに考えてもらって」

「そうか、まぁとりあえず今んとこわかってることだけ言っとくわ」

 それから春樹により説明が始まった。

 

 被害者である雪嶋道信は今回このホテルに泊まる際、雪嶋道信でなく竜美徳と名乗っていた。もちろん偽の身分証明証も雪嶋の鞄から出てきていた。

 死亡推定時刻は朝の7時半から8時。第一発見者はチェックアウトの時間になっても出てこない雪嶋にホテリエの若葉澪。凶器はおそらく刃渡り20cm程度の三徳包丁。刺創は20個。

「それで、容疑者の目星はそちらでついてるんですか?」

 

啓央大学に着いたが、かなり騒がしかった。テレビカメラ、群がる記者たち、制する警備員。

 事前に連絡していたので、スムーズに応接室に通された。

「それで、警視庁の方がどうしてこちらに?ここは神奈川ですが......」

 対応でバタバタしていたらしい教授は詳しくは聞いていなかったらしい。

「先ほどサクラグラントーキョーで雪嶋道信という人物が殺害されまして。死因は滅多刺しかと思われたんですがアーモンド臭、つまりは青酸カリによる毒殺と見られてます。そこで最近紛失事件が起こったのと関係があるのではと我々は疑ったわけです」

「あぁ。そうなのですね。とりあえず現場にご案内します。着いてきてください」

 教授の案内で盗まれた青酸カリも置いていた薬品庫に案内された。

 電子キーにより入退出者が分かるようになっている。

「部屋の中には監視カメラは?」

「一応ありますが、死角はかなりありますので......神奈川県警の方にも見てもらいましたがわからないと」

「では疑いのある人物全員を一人一人話を聞くしかありませんね」

「SNSや闇サイトでの取引がないか探るのも手でしょう。急にご連絡したのに現場を見せていただき本当に今日はありがとうございます」

 

 翌日、登庁の途中だった。9月も終わりが近づき夏の暑さが少しマシになった朝8時。信号待ちでふと横のビルを見た次の瞬間、何かが落ちてくる。衝撃音、響く叫び声、あたりに散らばる肉片と血。ぐちゃぐちゃになってしまった人。飛び降りだった。自分の前でも車から降りてくる人も数人いた。僕も警察として対応すべきだと判断して急いで駆け寄る。

「警察です。皆さん、離れて」

 とにかく遺体から群衆を離れさす。そうこうしているうちに制服警官らがやって来る。

「あの、貴方は......?」

 警察手帳を見せる。

「あなたと同じ警察です。つい先ほどこの女性がこのビルから落ちてきました。幸いにも他に怪我人は無し。僕はこれから出勤ですので、後の対応は宜しくお願いします」

「はい、お気をつけて!」

「はぁ......」

 朝から散々としか言いようがない。

 

「それは本当に散々ですね。ああ、これですね」

 さっき港区で起きた飛び降り自殺と見られる事件。

「飛び降りたのは啓央大学院生......!?」

「しかも理工学研究科。薬品庫に入れますね」

 

 署に行って話を聞くことにした。もしこの飛び降りた人物と青酸カリを盗んだ人物が同一人物ならば何故、自分から飛び降りた?バレることを恐れての恐怖か?ならば何故盗んだ?何のために盗んだ?殺すためか?金稼ぎか?そこまでして私立最高峰の啓央というブランドを捨てれるか?とにかく彼女のことを詳しく聞かない事には背景を考えたとて意味が無い。

 

「唯川さんは帝都大法卒というブランドを何故捨てれたんですか?」

 

 

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