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「あ……」
水面はキラキラ輝いていて、美しかった。痛みはなく、出血のせいでただ、眠かった。やっと解放される気がして、冷たくて、気持ちいだろうなって。
吸い込まれていった。
「聖園さん!」
結局、陸路を選択したミダス側は囲まれてしまい、逮捕に至った。
「特別組織対策法違反で逮捕」
瞠は他の警察官にミダスの男らを任せ、十数mほど離れた海の上の一艇の船を見つめる。
遠くの方で海保の船が迫っているのがわかる。
「聖園さん……あっ」
梛が船から落ちる様子が見えた。辺りの水は赤く染まっていく。
「聖園さん! 早く!」
しかし、瞠は待つことしか出来なかった。
「救急車……」
瞠は震える手でスマホを操作し、119番に繋げる。
「はい。119番。火事ですか? 救急ですか?」
「救急です。拳銃で撃たれて、海にも落ちて……」
「唯川さん! 唯川さん!」
原田の声、消毒液の匂い、真っ白な空間。気づけば瞠は病院に居た。
「あ、え……?」
瞠は辺りを見渡した。手術室の前にいることに気づく。類と愛渼あいみも隣に居た。
「聖園さんは……?」
「今、手術中です。銃弾、2発も喰らって、真冬の海にも落ちて……かなり危ない状況の様で……」
原田は次の言葉が紡げずに居た。
「生きてはいるんでしょう?」
「はい、まだ」
手術中のランプが消え、医者らが出てくる。類と愛渼は立ち上がり、医者に駆け寄る。
「あの、梛は……」
「なんとか、一命は。こちらで詳しくお話しさせて頂きますのでどうぞ」
医者に連れられ、2人は別室に連れられていった。
生きている、ということに梛と原田は力を抜く。
ここ十数年で銃撃で運び込まれる患者は増え、銃創の手術経験のある医者もかなり増えたとはいえ、梛の状態は酷かった。
「良かった」
瞠はベンチに座り直し、大きく息を吐いた。
「はい、良かったです……唯川さん、一回帰りましょう」
「でも……」
「仕事は残ってますし、唯川さんも何か食べた方がいいですよ」
原田はここまでの瞠の取り乱し方を見ていた。
「聖園さん……みそのさっ……!」
船がこちらに着いて、下ろされる。
「息はしています。出血が心配ですが……救急車は?」
乗組員がそう聞いてくる。しかし、瞠は梛に縋りついて応答が出来なかった。
「さっき呼びました。もう来るかと」
代わりに近くの警察官が答える。
「追加で4台お願いできますか? マルスのメンバーが負傷していまして」
「わかりました」
あっという間に最初の救急車がやってくる。
「同行者は?」
「私、私が乗ります。上司です」
少し正気に戻った瞠は救急車に乗り込んだ。
それから、8時間ほど経っていた。午後の日差しが寒い冬ながらほんのり暖かい。
医者は言った。目覚める保証は無い。前の事件の怪我や無理し続けているせいもあったようだ。
瞠の脳みそにこびりついている梛が自分から落ちていったようなあの、光景は瞠をも蝕んでいっていた。
聖園さん、私は、覚悟出来てます。なんだって、やってやる。やってやりますから
警視庁、捜査一課。3ヶ月後、瞠はまたその場所に戻ってきていた。
しかし、一連の事件に囚われギラギラと輝く目は以前の一見して穏やかで、しかし熱く優しい心を持った唯川瞠では無くなっていた。
側から見て、狂ってるとしか言いようが無かった。