Greyscale   作:零音霖

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EP2 豪雨、逸脱 後編

 一応今日の分の操作会議が終わるが気づけば1時だった。

「寝ます?」

 未莉は欠伸をしながら太一に聞く。

「場所がない。仮眠室は県警の人にも貸し出される」

「起きて防カメ映像確認か寝て起きて防カメ確認か……」

 榴輝は疲れた結果ぶつぶつと言葉を繰り返していた。それを見た圭一と太一は2人がかりで引っ張っていった。

「唯川係長も、ちゃんと寝てくださいよ」

 そう言い残して大会議室を去っていった。

 未莉、雪乃、燈の女性陣も仮眠を取ることとなり、部屋を出ていった事により、5係で残っているのは瞠1人になった。瞠はぐぐっと伸びをし、資料を片付け始める。鞄に資料をしまい、鞄はそのまま席に置く。ただトイレに行くだけの様に見せかけて瞠は警視庁を後にした。

 

 しかし、すぐに電話がかかってくる。ナビの液晶をタッチし、受ける。

「はい。もしもし。唯川です」

「唯川ですじゃないですよ!? 何処いるんですか?」

 榴輝焦っていた。

「かけてくるならわかってるでしょう。それとかけてくるなら私用でなくPⅢピースリーに……といいますか、どちらも電源切る事ないので安心してください。何かわかればPⅢにちゃんと情報送りますので。それでは」

「それではじゃ……」

 榴輝はすべてを言い終わる前に切られてしまった。

 

 数十分後、瞠は恵比寿第二中央病院にいた。話を聞く為だった。

「すみません。お忙しい中こんな夜遅くに」

「いえいえ、こちらのセリフです。もうすぐ神庭さんも目覚めるかと思いますが」

 そういった会話をしながら慈雨の個室へと向かう。

 

「神庭さんは本当にギリギリと言ったところでしたけど、運が良かった。急所は全て避けていました。ただ……」

「ただ?」

「かなり鈍い刃物で刺したみたいで、ぐちゃぐちゃでしたね。縫合が大変でした。後深さから普通の三徳包丁でしょう」

 これまでの事件も、松濤での事件も、かなり研がれた刺身包丁で刺されていた。松濤の件に関しては刺した後かき混ぜもしていた。

「わざわざ刃物を変える理由……」

 そう瞠が呟いた瞬間、う、という声が静かな病室に響く。慈雨が目覚めたのだった

「良かった。神庭さん。ここは病院です。助かりましたよ」

 医者が慈雨に優しく説明した。そして慈雨はスーツ姿の異質な瞠に目線が行く。

「警視庁の唯川、という者です。詳しいことはまた明日お昼頃に他の刑事も来ると思うのですが……少しだけお話頂いても?」

「え、あ、はい」

「犯人に心当たりとかはないでしょうか? それと身長、自分より低い、高いで構いませんので」

「芸能人やってると身に覚えのないところで恨まれたりしてしまうので……身長は……そうですね。自分が178で……目の位置に頭がきてたので……170ないくらいでしょうか。男だと思いますが」

「そうですか、ありがとうございました」

 

「それで? 被害者に話を聞きに行っていたと?」

 警視庁、捜査一課。イライラを隠せずに榴輝は上司を問い詰める。

「主目的は主治医に話を聞くことでした。運良く目覚められただけで」

「わかった事あるんですよね?」

 そうじゃねぇと許さねぇぞ、と暗に示していた。

「今までは落ちていたので刺身包丁とわかっていましたけれど今回は研がれていない鈍った三徳包丁が有力だそうで、縫うのにかなり苦労したとか。それと綺麗に急所を外していた様で。今まではちゃんと急所に刺さっていたのに」

 

 昼3時。2回目の捜査会議。防犯カメラから犯人らしき人影を追ったが結局は分からずじまい。範囲を拡大する事になり、さらに膨大な数の映像データが集まる。

「コンビニとか、自動販売機とかで買い物してくれていればもうちょっと、ねぇ」

「フィギュアは確かに番組内でも使われた物によく似ているは似ているらしいんですけど……‥犯人が自分で作ったんでしょうね。最近は3Dプリンタは個人でも買えますし」

 犯人の男にも一応中背は当てはまるだろう。しかし、その時の目情は小柄な男。その男が厚底のブーツでも履いていた、のだろうが……犯人はかなり軽装で大きな靴を入れておける様な鞄は持っていなかった。防犯カメラの死角で捨て、そのまま逃亡したのが有力だろうが、その様な靴は未だ見つかっていない。今も捜索はしているが。

 SSBCだけでは正直言って人手が足りない。つまりは半分は警視庁で映像を、もう半分は聞き込みと証拠の捜索にあたっているが、本部組はそろそろ精神に限界をきたし始めていた。

 

「あっあー!」

 雪乃が大きな声を出す。

「何があった」

 うるさい、と耳を押さえながら圭一が聞く。

「フィギュアの3Dデータの配布をしている人、見つけました! 個人取引の様なので直接連絡したら情報が聞けるかもしれません!」

「わかりました。私が連絡入れてみますね。ありがとうございます」

「はい!」

 雪乃は褒められた事と役に立てた事でとても嬉しく、興奮し、捜査への気力を取り戻した。

 

 次の瞬間、瞠の私用スマホに着信が入る。相手は聖園類からだった。

「この時間に……何かあったのでしょうか。すみません、直ぐ戻りますので」

 そういって瞠は廊下に出た。

「はい。唯川です。どうかされましたか?」

「ああ、よかった瞠くん。ちょっと緊急でね。嬉しい事だよ」

「嬉しい事?」

「ああ、梛、目覚めたよ。やっと目覚めたんだよ」

「……よかった……よかった。直ぐ向かいます」

 感情を抑えきれないなか、なんとか瞠は返答する。早足で部屋に戻り、荷物を纏め始める。

「何かあったんですか?」

 榴輝が軽いストレッチをしながら聞く。

「聖園さんが目覚めた様で……すみません。抜けさせてください」

「はい。わかりました」

「では、三河さん後は頼みましたよ」

「わかってますよ。いってらっしゃい」

 瞠は5係の皆に見送られて警視庁を後にした。

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