Greyscale   作:零音霖

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EP3 メルトダウン 後編

「馬鹿なんですか?」だとか「もっと気をつけてくださいよ」だとかチクチク小言を梛から言われている瞠を後ろの方で太一は見ていた。付き添いで病院に来ていたのだ。

「それで、怪我の具合はどうなんですか?」

「大丈夫ですよ……」

「刺身包丁でぐさり、ですからね。しかも太もも。避けてはいましたけど結構危険でしたよ」

 太一がすかさずフォローする。

「どこが大丈夫なんですか?」

 チクチク度合いが増したが、瞠は嬉しそうだった。梛が元気にしていることが、瞠の精神安定に繋がっているのだ。

「リハビリ、頑張ってくださいね」

「……はい」

 呆れながらも微笑む梛だった。

 

 EGO:Automataは殺人罪での逮捕者が出たことにより、結局一度解散し、名前と事務所を変え、再出発するという。

 福井純矢は計画の全てを吐いた。動機はやはり結局デビュー出来なかった恨みらしい。福井純矢はオムニポテントで10年近い候補生期間を過ごしている。最後の目標はプロデューサーだったらしい。唯一生き残った神庭慈雨しんていじうに関しては嫌いだったから、らしい。ついでで刺されたという事だ。

 

「ついでで刺されるってねぇ……」

 5係は事件終了後の報告書を作成していた。瞠が刺されたことにより書く書類が1枚増え、瞠含め修羅場だった。

 

「あー終わった。終わった」

 太一は椅子に身体を投げ出す。やっと書類仕事が終わって家に帰れるのだった。

 太一はスマホを開く。ニュースサイトに飛ぶと一面に「皇室典範改正か」の文字があった。

「うわっ」

「どうしました?」

 瞠がその声に驚いて尋ねる。

「これ」

「速報です。旧宮家の皇籍復帰に向け皇室典範の改正の協議が再開されました。この法案が可決されますと、長い間大きな問題となっていたお世継ぎ問題の解決に……」

 ニュース番組の速報の公式切り抜きを動画サイトで見ていた

「ああ……」

「って知ってたんですか?」

「聖園さん、閑院ですからね。漏れ聞きますよ」

「ああ……ね」

 

 翌日、早朝。瞠は着信音で目が覚めた。暫くぶりにしっかりと睡眠が取れたが、その相手を見て項垂れる。仕事が入った。

「はい、課長。どうされましたか」

「未遂事件だ。場所はサクラグラントーキョー。被害者は聖冬人」

「ちょっと待ってください。聖?あの聖ですか?それにサクラグラントーキョー?」

 寝起きに聞き覚えのあるビッグネームが飛び込んできて瞠の眠気は完全に吹っ飛んだ。

「ああ、その聖だ。結構な大ごとだからこっちに回ってきた。よろしく頼む」

「わかりました」

 瞠は電話を切る。

「はぁ……」

 顔を手で覆い、数刻現実逃避するが直ぐに立ち直り、準備を始めた。

 

「げろめんどいの確定してて……」

 現場までの道中、太一と榴輝るきを拾った車中で、太一がボソリと呟く。全員同じ気持ちだった。未遂事件な事が唯一の良かった事か。

 しかし、全員顔が死んでいた。

 

「デカいですねぇ」

「事件で来るのはこれが2回目ですよ……」

 窓の中から外を見上げる。高層高級ホテルのサクラグラントーキョーが今回の舞台だ。入り口近くは混雑しており、順番待ちの状態だった。3人は警察手帳を見せ、地下駐車場へと進んでいった。

 被害者は聖冬人。あの、聖家のご子息だ。京都の私立中高一貫校で数学教師をしており、今回はGWにもぎ取れた貴重な休暇で上京し、2泊3日の見合い兼観光の2泊目だったそうだ。

「GWか、そか……」

 関係者から話を一旦聞き終わり、事件の起こった隣の部屋を貸してもらい、話し合いをしている時太一がまたボソリと呟いた。

 この仕事をしていると世間の休日とか祝い事は全く持って関係ないために気付けばそのような時期ということは多々ある。瞠も自身の誕生日を危うく忘れかけたこともある。まぁ一定の年齢になれば誕生日などほぼ関係ないと考える人も多いのだが。

 

「それで、ご両親と相手方は……」

「聖夫婦には確認取れました。お見合い相手の女性も実家暮らしだそうで、アリバイがあります」

 

「ただいま戻りました。犯人の確認取れました」

 榴輝が防犯カメラの確認から戻ってくる。

「お帰りなさい」

「あの事件から客室内以外は防犯カメラを増やしたようで……バッチリ映ってました。感情的に行った犯行でしょうあまり隠そうともしてません。逃げられてしまいましたが」

 橋爪優。直ぐにヒットした。傷害事件の前科がある男だ。

「公開するでしょうね。検問も敷かれる筈です」

「被害者に話聞きに行きますか」

 

 被害者である聖冬人は話は出来る状態だと言うことで再び海聖病院へと瞠と未莉、そして太一は足を踏み入れた。

 VIP個室のあるフロアに冬人は入院していた。もちろん梛も。

 

「どうかしました?」

 梛が丁度車椅子で押されてやってくる。

「今日は話を聞きに来たんです。被害者に」

「被害者?」

「聖冬人さんです」

「えっ冬人が?」

 瞠は梛が冬人と知り合いである事は察しがついていた。

「ええ。これからリハビリですか?頑張って下さいね」

「ありがとうございます」

「では行きましょうか、聖園さん」

 看護師は梛に声を掛ける。

「はい」

 返事を聞くと、2人は去っていった。

 

「犯人の橋爪優とは面識はございますか?」

 冬人の病室でベッドサイドの椅子に座り、瞠は写真を見せながら冬人に質問する。

「い、いえ。初めてですよ。これが」

「災難でしたね。ところで……この病院、聖園梛さんも入院していまして、先ほどお知り合いと聞きましたから……」

「梛が?」

 冬人は怪訝な顔する。

「ええ、2年前の事件で……しかしやっと先日目覚められたのでこれを機に……」

「そうでしたか。ありがとうございます。梛とは毎年夏休みに会う関係だったんです」

 冬人は思い出に馳せる。

「本日はありがとうございました」

「いえいえこちらこそ」

 

「犯人は捕まりそうですけど……はぁ」

 太一はため息を吐く

「それはどうでしょうか」

「え?どういうことですか?」

 未莉が疑問に思う。

「橋爪はかなり悪知恵が働く男ですよ。現に、前科者ですしね」

 瞠は橋爪の資料を捲りながらそれに答える。

「逃走車両とナンバー、格好は掴んでますので時間の問題だと本当にいいんですが……」

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