「それでは……DVさえやっていない、と?叫び声を聞いた人は何人もいる、と聞き込みの結果わかっていますよ?」
瞠は署の会議室で鵜野政也から話を聞いていた。
「そんなの、どうとでも言えるだろ?」
「では、息子さんである鵜野光さんがなぜ、貴方に100万円をせびられた後、関わりのない犯罪グループから急に100万稼げるから協力しろと言われたのでしょうか?貴方に前科がある事はちゃんと記録していますから分かっていますよ。それに、急にあの家に転がり込み、事件数日前に出ていった事もね」
「……あーあーあー!そうだよ!俺がやった。あんまりにもアイツがウルセェから!」
鵜野政也はあまりにもあっさりと自供した。犯罪グループと関わり、金を要求されたが払えないから家を売り、息子の名前を出し、息子の元に駆け込んだ。そして、息子のことで反抗してくる孫を殺した。それが鵜野政也の言い分だった。
「はぁ……それで、奴らとヴァルキリーに関連性はあったんですか?」
2時間の仮眠から戻ってきた榴輝はダルそうに自分のデスクへと座った。
「もちろん。主な目的は聖園さんへの復讐、そして今までに流してしまっていた制式銃を使用していましたし。とはいえ未だ数十丁が流れたままだとされています」
瞠はパソコンから目を離さずに答える。
「ふぅ……これで一旦は終わりですかね。何かありましたら叩き起こしてください」
そう言って瞠は仮眠室へと去っていった。
2時間後、無事に何も無く目覚めた瞠は家へと帰っていった。
「ただいま」
朝、7時。瞠の弟である芺雅は丁度朝食を始めた時だった。
「おかえり。お疲れ様、連絡くれたから、朝ごはんあるよ。食べるでしょ?」
「ああ。洗濯だけ回してくるよ」
そう言って瞠は脱衣所に向かった。元々服は洗濯ネットに入れてあったのでそのまま洗濯機に放り込み、ボタンを操作する。
「そうだ、芺雅。俺、今日含めて3日間休みもぎ取れたから。真威にも言ってはあるけど……」
「最近事件続きだったもんね」
「まぁ……。でも久しぶりに3人で食べないか?」
「……うん。何が良いかな?」
そういったちょっとした兄弟の会話を楽しむ。例え血が繋がって無かろうと、実際は兄などでは無く叔父さんにあたる存在であろうと。
「梛……わかってるとは思うけど……」
梛は自宅に戻ってきた。定期的に掃除されていたために、部屋はどこも綺麗だった。
類は荷物を片付けるのを手伝っていた。
「直接スカウトもらった」
しかし梛は遮って鞄から国家一般職中途採用、警察庁中途採用の書類を見せる。
「もちろん、管区警察学校に規定期間の入校は必要だけど、元の階級で復職させてくれるらしい。死なせてくれないなら何度だって死地に踏み込む必要がある。僕はそういう人間だって理解……」
「俺だって……俺だって梛に、梛くんに死んでほしくない。世間の大多数の人間にとって君は英雄だ。だから……別に皇籍に……」
「人をこの手で殺した人間がトップに立てない。僕はそう思う。それに僕はさっさと死にたいんだよ。でも、自分で死ぬほど勇気はないゴミだから。殺してくれないなら死んでもおかしくない場所に何度でも戻って殺さずに成果を上げるしかない」
そう梛が言い終わると、類は無言で梛を抱きしめた。
「ごめん。ごめんね」
そう言って類は梛の頭を撫でる。梛の目からは涙が溢れていた。
5月も終盤に差し掛かり、日差しも強く、かなり暑くなってきた。梛は、体力作りのために近くの公園で歩いていた。
とは言え梛は一色覚。色がわからないのも脚が動きづらいのも2年前とあまり変わらない。
杖と、色がわからない分光に弱いために遮光メガネが必要だった。運がいいのはそこまで視力は下がっていない事だった。
ゆっくりゆっくり確実に歩いていく。
「は、はぁ……」
梛は近くのベンチで休憩を始めた。水分補給をし、しばらく呼吸を整えていた。
次の瞬間、後方でバン!という発砲音が響く。
「拳銃?」
振り返るが、植物が多くあまり視界良好でない為によくわからなかったが、梛は衝動的に立ち上がり、出せる全速力で引き返し始めた。
カーブを曲がり切ったところで、男が倒れていた。
「大丈夫ですか!?」
梛は駆け寄って、持っていたタオルで患部の肩を圧迫し始めた。
「う、生きて、ます」
男はそう答える。
「今救急車呼びますから」
それからスマホを取り出す。
「はい。119番通信司令室です。火事ですか?救急ですか?」
「救急車お願いします。場所は神谷町公園2号ブロック中間地点です。男性。30代から40代……」
「35だ」
苦しみながら男が情報を追加した。
「35歳だそうです。肩を銃で撃たれています。会話できる状態です。現在圧迫止血を行っていますがかなり出血はしています。事件性ありの可能性が高いので警察への連絡もお願いします」
梛は淡々と説明した。
「ありがとうございます。ではそちらにすぐ向かいますのでそのままお待ちください」
「はい」
その通りすぐに救急隊員がやってきて、男は救急車に乗せられて行った。
そのすぐ後に警察もやってきたのだが……
「聖園さん……?なぜここに」
やって来たのは瞠率いる5係だった。
「体力づくりのために歩いてたんですけど、発砲音を聞いて駆け付けたら被害者が倒れていまして。それで対応していました」
「なるほど」
梛の証言はすぐに証明された。防犯カメラが至る所にかなりの数設置されていたからだった。
被害者の男ともう1人の男が何やら揉めていたが、死角から発砲、被害者が倒れるともう1人の男は全速力で逃げて行ったところが写っていた時間、梛はベンチで休んでいたところがバッチリと写っていたのだ。
「もう1人の男に話を聞くほかありませんね」