井芹仁菜の兄になりました、助けてください   作:占地

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第八話 僕らの音(仁菜視点)

 重たくて温かい低音が、スタジオの床を伝って私のスニーカーの底から直接心臓を揺さぶってくる。それに呼応するように、きらきらと輝くような鍵盤の旋律が、桃香さんのギターとすばるちゃんのビートの間を縫うようにして、鮮やかに空間を彩っていく。

 

 ルパさんと智ちゃんという新たなピースを迎えて、私たち『新川崎(仮)』は、今までとは次元の違う、とてつもなく「すごいバンド」へと変貌を遂げていた。

 

 これまでの、どこか無機質だった打ち込みの同期音源とは全く違う。ルパさんの指先から弾き出される生のベースの音は、楽曲の土台をどっしりと支えて、まさに「バンドの骨格を作る音」という感じで、たまらなくかっこいい。

 

 そして、智ちゃんのキーボードが加わったことで、私たちの曲に、圧倒的な華やかさと広がりが生まれたのだ。

 これを知ってしまったら、三人のでやってた頃に戻れなくなっちゃいそうだ。今、完璧な形でパズルのピースがはまったような感じがする。

 

 バンドって、みんなで音楽を作るって、こういうことなんだ……!

 

 マイクスタンドを握りしめながら、私は全身の粟立つような感激に打ち震えていた。最後のコードがジャン! と鳴り響き、シンバルの余韻がスタジオの吸音材に吸い込まれて消えていく。

 

「すごい、すごい! ルパさんも智ちゃんも、とっても上手! 完璧だよ!」

 

 私は興奮のあまり、マイクをスタンドに戻すのも忘れてピョンピョンと跳ねながら二人を称賛した。

 

「ふふ、ありがとうございます。仁菜さんの歌声も、ベースラインに乗せがいがあってとても素敵でしたよ」

 

 ルパさんはベースのネックを軽く撫でながら、ふわりと余裕のある大人な微笑みを返してくれた。

 

「……ふん、まだまだよ。あと、あんたはもっと上手くなりなさいよ。私たちが入ったことで、ボーカルの粗が目立つようになったら本末転倒なんだから」

 

 一方の智ちゃんは、キーボードから手を離して腕を組み、ツンとそっぽを向きながら厳しい言葉を投げかけてくる。でも、その耳の先が少しだけ赤くなっているのを、私は見逃さなかった。

 

「わかってるよー。もっと練習するもん」

 

「智の言うとーり。ニーナは体力はまあまあついてきたんだから、次は技術。でも、ほんといい感じだね、桃香さん。音が分厚くなって、叩いててめちゃくちゃ気持ちいい」

 

 すばるちゃんがスティックをくるくると回しながら、満足げに桃香さんの方を振り返った。

 

「ああ。結成したばっかにしては上等だと思う。……まあ、こいつらがしっかり曲の意図を汲み取ってくれてるからだが」

 

 桃香さんはアンプのツマミを微調整しながら、素直な称賛を口にした。

 

「当然です。研究した甲斐がありましたね、智ちゃん?」

 

 ルパさんが、面白そうなものを見るような目を智ちゃんに向けた。その瞬間、智ちゃんの肩がビクッと跳ねる。

 

「る、ルパ! それは言わないでって言ったでしょ……!」

 

「へぇ? 研究?」

 

 私がニヤニヤしながら首を傾げると、智ちゃんは顔を真っ赤にして私の方をキッと睨みつけた。

 

「そ、そのニヤケ面やめなさい、仁菜! 変な勘違いしたら、あんたの鼻の穴にシールド刺すわよ!」

 

「ひっ!? 私に刺してもアンプから音は出ないよ!?」

 

「そういう問題じゃないわよ!」

 

「ふふ。あの熱狂的なファンの方のおかげで、このバンドの楽曲のどこをどう補強すれば良いか、手に取るように分かりましたからね。智ちゃん、夜中まであの人のコード解説動画を睨みつけて、『こんなネットのオタクに負けられない』って、キーボードのアレンジを練り直してたんですよ」

「ルパ!!」

 

 智ちゃんの悲鳴に近い抗議をBGMに、私は「なるほど」と深く頷いた。

 あの、アイコンも設定していない謎のファン第一号さん。彼の異常なまでに的確で緻密な楽曲分析は、桃香さんの曲の魅力を言語化するだけでなく、新しく入った二人の闘争心とアレンジの方向性までも決定づけていたのだ。

 

「ああ、あいつね。相変わらず熱心なこった。あそこまで考えてないって」

 

 桃香さんがギターをスタンドに置きながら、少し呆れたように、けれどまんざらでもない様子で鼻を鳴らした。

 

「本当はいっぱい考えてるくせに。でも、いいことだよね。ああいう熱量のあるファンが初期からいてくれるって。ルパさんと智ちゃんの加入に対しても、『楽曲の完成度が飛躍的に高まる』って好意的に解説してくれてたし」

 

 すばるちゃんが言う通り、あのファン第一号さんは、新メンバーの加入を誰よりも論理的に、そして熱狂的に歓迎してくれていた。

 

「当たり前よ。もし生意気に『三人の方が良かった』なんて解釈違いの文句でもつけてきたら、こっちからアカウント特定してどうにかしてやってたところだわ……」

 

「まあまあ、智ちゃん。物騒なことはやめましょうね」

 

 そう息巻いている智ちゃんを、ルパさんがなだめる。

 

「でも実際、曲の滑り出しも上々だし、SNSのフォロワーも意外といい感じで伸びてるよね。あの長文のアドバイス、効いてるんじゃない?」

 

 すばるちゃんがスマホの画面を見せながら言った。

 

「うん! やっぱり、指示された通りにレコーディング風景とか、作詞して悩んでる風景とか、そういう裏側の泥臭い部分を出すのは伸びるみたいだね。コメントもいっぱい来てるもん」

 

 私は自分のスマホを開き、通知欄が次々と更新されていくのを誇らしい気持ちで見つめた。いいじゃん私、上手くやってる。

 

「アーティストのCDの初回限定盤に付いてくる特典映像みたいなものですね。そこら辺の生々しい人間模様は、やはりファンの方々が最も求めているところなのでしょう」

 

「映画の裏側とかもそうだよね。劇中でバチバチにやり合ってる悪役の人と主人公の人が、裏のオフショットだとめっちゃ仲良くお弁当食べてたりすると、ギャップがあって面白いし親近感湧くもん」

 

 ルパさんの分析に、すばるちゃんがうんうんと頷いて同調する。確かに、普通は見ることができない裏側が見られたら嬉しいかも。もし、ダイヤモンドダストのそういう映像が見れてたら、うん、絶対嬉しい!

 

「でもさぁ……桃香さん、歌詞に行き詰まるとすぐ機材に当たり散らすし、近寄るなオーラ出すんだもん。怖くて写真もろくに撮れないよ」

 私がジト目で桃香さんを睨むと、桃香さんはチッと舌打ちをした。

 

「うるさいな! 人が集中してるところを邪魔するお前が悪いんだろ!」

 

「だから、邪魔しないようにドアの隙間からこっそり撮ってるじゃないですか!」

 

「その盗撮みたいなアングルが気持ち悪いって言ってんだよ!」

 

 すばるちゃんがお腹を抱えて笑い出す。ルパさんも止める様子はなく、微笑ましそうに見ている。

 

「もう、いいからさっさと片付けて出るわよ。そろそろスタジオのレンタル時間終わるし」

 

 智ちゃんがパンパンと手を叩いて、私たちの他愛のない言い合いを強制終了させた。

 私たちはいつもそうやって、汗と熱気と、ほんの少しのオゾンが混ざったような匂いが立ち込めるスタジオで、充実感に包まれながら練習を終えている。

 

 機材の片付けをしながら、私の頭の中は次の一手でぐるぐると回転していた。

 あのファン第一号さんの助言に従い、SNSの運用は軌道に乗りつつある。知名度をさらに上げるため、ファンを定着させるために次にやるべきこと。それは……「古参としての意識」を持たせるためのグッズ展開だ。

 

 うーん、でもグッズを作るにしても、まずはこの『新川崎(仮)』なんていう適当なバンド名から卒業して、ちゃんとした名前を決めなきゃなんだけど……

 

 次のライブハウスでのライブはもう目前に迫っている。

 悩んでいる時間はない。

 

 よし、バンド名が決まる前でも、とりあえずライブに向けてグッズ作っちゃお! 私はワクワクとした気持ちを胸に、みんなの背中を追ってスタジオの重い防音扉を開けた。

 

 *

 

 ライブハウス特有のむせ返るような空気。終演後のざわめきが響く中、私たちは入り口付近にあるにあるドリンクカウンターに手作りのポップを掲げ、簡易的な物販コーナーを作っていた。

 

「新川崎(仮)のグッズありまーす! バンドロゴ入りのTシャツにタオル、ラバーバンドもありまーす!」

 

 私は枯れかけた喉から声を張り上げる。手持ち無沙汰に前を通り過ぎようとしたお客さんが一人、足を止めてくれた。

 

「え、あ、ラバーバンドですか? はい、一つ五百円になります。ありがとうございまーす!」

 

 手渡されたワンコインと引き換えに、黒いラバーバンドを渡す。お客さんが去っていくのを見送りながら、隣で小銭の入った手提げ金庫を管理している智ちゃんが、小さく息を吐いた。

 

「……意外とラバーバンドは売れてるわね」

 

「そうみたい。物好きだよねー、私たちのバンド名すらまだ(仮)なのに」

 

「いいことじゃん。でも、やっぱTシャツとかは全然売れないなー」

 

 私は開かれることのないままに積まれているダンボールをつついた。まだ一箱しか開けていなくて、買った人はゼロ。

 

「ま、インディーズバンドの二千五百円もするTシャツにポンとお金を出すって、なかなかハードル高いよね。よほど好きじゃない限りは」

 

「でも、せめて千五百円のタオルくらいは記念に買ってくれてもいいと思うんだけどなー」

 

 私が少し口をとがらせて愚痴をこぼすと、すばるちゃんがフロアの反対側を顎でしゃくった。

 

「ルパさんがいるから平気でしょ。今日のノルマ分くらい、一人で稼ぎ出しちゃいそうだし」

 

「うわぁ……」

 

 すばるちゃんの視線の先を見て、私は思わず声を漏らした。

 すごい。ルパさんの前には、一緒にチェキの写真を撮るために階段に長蛇の列ができているのだ。彼女は持ち前の優雅な笑みを浮かべ、一人ひとりに丁寧にお礼を言いながらツーショットに収まっている。

 

「みんな、ルパの見た目しか見てないのよ。音楽じゃなくて顔で寄ってくる、ただのミーハーな顔ファンよ」

 

 反対隣で腕を組んでいた智ちゃんが、その光景をジロリと睨みつけながら不機嫌そうに吐き捨てた。

 

「そんな顔ファンも大事でしょ? 私らみたいな底辺から這い上がらなきゃいけないバンドにはさ。……もしかして嫉妬? 智ちゃん」

 

「そんなわけないでしょ……! 馬鹿なこと言ってないで接客しなさい!」

 

 図星を突かれたのか、智ちゃんが顔を真っ赤にしてすばるちゃんに噛み付く。そのわちゃわちゃとしたやり取りに私が苦笑していると、ふいに正面から影が落ちた。

 

「すみません、Tシャツとタオルをください」

 

 ひどく落ち着き払った声。

 顔を上げると、そこには見覚えのある量産型の大学生ファッションに身を包んだ、長身の男の人が立っていた。無表情の中にいくつも表情が浮かんでいるように見えるけど、何にも読み取れない不思議な人。

 

「あ、はーい……って、あなたは!」

「どうも」

 

 少しだけ首を傾げて会釈するその姿に、すばるちゃんがビシッと指をさす。

 

「ファン一号!」

 

「……それは、僕を指している呼称ですか?」

 

「そうそう! 今の私たちのファンの中で、あなた以外にそんな熱心な人、誰がいるの!」

 

 すばるちゃんが前のめりになって言うと、彼は表情を全く変えないまま、少しだけ困ったように伏し目がちになった。

 

「まあ、皆さんの呼びやすいようにしてくださって構いませんが。……今日も、非常に良い演奏でした」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 ズバリと感想を真っ直ぐに向けられ、私は少し照れくさくなって頭を下げる。すると、横から智ちゃんがスッと身を乗り出してきた。鋭い目で彼を頭の先からつま先まで値踏みしている。

 

「……やはり、生の音はいいですね。海老塚さん」

 

「……なんですか? 」

 

「いえ、キーボードの旋律が加わったことで、楽曲の解像度が飛躍的に上がった。素晴らしい演奏だなと。それと、僕に敬語はいりません」

 

「どうも。……あんたも暇ね。こんな無名のインディーズバンドにそこまで熱を上げるなんて。女目当てで狙ってるんじゃないの?」

 

 智ちゃんの容赦ない毒舌に、私はヒヤリとして「ちょっと智ちゃん!」と袖を引いた。「ええ!?」とすばるちゃんが驚く横で、彼は淡々と首を横に振る。ファン一号さんは微塵も動揺する様子を見せない。

 

「まさか。……いい音楽に気づけるかどうかは、人生における時の運です。僕はただ、偶然あなたたちの音楽に出会うという幸運に恵まれただけです。そしてそれをお裾分けしているだけです」

 

「…………あなた、本当に素人?」

 

「ええ。ただの音楽好きの学生ですよ」

 

「……まあ、いいわ」

 

 智ちゃんは胡散臭いものを見る目を向けながらも、彼の理路整然とした、しかし確かな熱を持つ言葉に毒気を抜かれたのか、一歩引き下がった。

 

「これ、Tシャツとタオルです! サイズはLで大丈夫ですか?」

 

「はい。ありがとうございます。代金ちょうどです」

 

 お釣りのないようにきっちり四千円をトレーに置き、彼がグッズの入った袋を受け取った時だった。チェキの列が途切れたのか、ルパさんがこちらへ歩み寄ってきた。

 

「おや、グッズの売り上げに収穫あり、ですか?」

 

「ルパさん! はい、あ、この人が……」

 

「噂のファン一号さんでーす」

 

 すばるちゃんがひらひらと手を振って紹介する。そんな大袈裟な紹介を受けても彼はいつも通り立っている。そんな彼にルパさんは目を細め、優雅にお辞儀をした。

 

「……どうも、お初にお目にかかります」

 

「ああ、あなたが。私たちもよく見させてもらっていますよ、あなたの投稿。智ちゃんも穴が開くほど読んでいました」

 

「……そうですか」

 

「ええ。私たちだけでなく、さまざまなバンドの的確な解説をされていますよね? いつも拝見して勉強させていただいています」

 

「はい、時間がある時に少しだけ」

 

 ルパさんの柔らかな微笑みにも、彼は鉄壁のポーカーフェイスを崩さない。

 

「どうですか? せっかくですから、私たちのバンドの売り上げに貢献するために、私とチェキでも一枚。記念になりますよ?」

 

 ルパさんが小首を傾げて甘く誘う。フロアにいる男性客なら百発百中で落ちるその笑顔に、しかしファン一号さんは静かに、きっぱりと首を横に振った。

 

「……すみません、今持ち合わせがなく。また次の機会に」

 

「あら、残念。では、また次の機会に」

 

 ルパさんが名残惜しそうに下がる。

 

 私は彼の手元を盗み見た。さっき四千円を出した財布の中には、まだお札が見えていた気がする。チェキ代の千円が払えないわけがない。

 

 ……もしかして、この人はあんまりチェキとか、そういうアイドル的な接触が好きじゃないのかも。

 

 ふと、彼から送られてきたあの長文のDMを思い出す。『媚びすぎないように』『音楽の世界観を保つこと』。ただ音楽だけを純粋に評価する、ストイックなファンなんだろう。そのこと自体はとっても嬉しい。

 でも現実問題、ルパさんのチェキはうちの最大の稼ぎ頭だしなぁ、悩ましい。

 

 そんなふうに私が一人で頭を悩ませていると、ホールの奥から機材の片付けを終えた桃香さんが歩いてきた。

 

「なあ、ちょっとお前らに話が……って、お前もいんのか」

 

「どうも。今日のライブの感想は必要ですか?」

 

「いや、いいよ。どうせ後でSNSにあげるんだろ、長々とな」

 

 桃香さんが鼻で笑うと、ファン一号さんは小さく肩をすくめた。その仕草すら、どこか計算されているように無駄がない。

 

 

「では、僕はこれで失礼します」そう言ってファン1号さんは立ち去ろうとした。そんな彼を桃香さんが呼び止める。

 

「あ、おい。一応お前にも教えとくか。今度、長野の諏訪でライブがあるんだが、来るか? 私が昔世話になった人と一緒にやるイベントなんだ。行くのは私一人だけになるかもしれないけどな」

 

「……ふむ、なるほど」

 

 桃香さんの突然の提案に、私たちは顔を見合わせた。

 

「え、ライブ?  長野で!?」

「ああ。どうだ? お前らは。忙しかったり金がなかったら、私一人で行くが。仁菜は予備校の勉強しなきゃいけないんだろ?」

 

 痛いところを突かれ、私は一瞬息を詰まらせた。予備校の成績、お父さんとの約束。頭の片隅に重くのしかかる現実。でも……。

 

「……行きますよ! 行きます! いいよね、すばるちゃん、ね!」

 

「ちょっと、私らの五人での演奏、まだ固まりきってなくてガタガタなんだけど。そんな遠くまで行って…」

 

「いいじゃないですか智ちゃん。未熟さは場数が解決してくれますよ。せっかくの機会です、全員で行きましょう」

 

「……ルパが言うなら、仕方ないわね」

 

 私たちがわいわいと参加を決めている横で、桃香さんがニヤリと笑って彼を振り返った。

 

「じゃ、メンバーは決まりー! で、ファン一号さんはどうすんの?」

 

「ええ、行きますよ。長野ですね」

 

 一切の迷いなく、まるで明日の昼ごはんのメニューを決めるようなトーンで即答した彼に、その場にいた全員の動きがピタリと止まった。

 

「……ほんと、ファンの鑑だな。お前」

 桃香さんが半ば呆れたように感心する。私たちみんなも多分おんなじ気持ちだ。

 

「ちょっとは迷ったりしないの? 交通費、結構かかるよ?」

 すばるちゃんも目を丸くして尋ねる。

 

「……やっぱ何か別の目的があるんじゃないの? 追っかけにしては行動力がおかしすぎるわ」

 智ちゃんは再びジト目を向けた。

 

 そんな私たちの反応など意に介する様子もなく、彼は買いたてのグッズが入った袋を丁寧に持ち直した。

 

「もともと長野に行く予定があったんです。それでは、僕はこれで失礼します。長野で」

 

「ああ、じゃあな」

 

 背筋をピンと伸ばし、足早にライブハウスの出口へと向かうその後ろ姿を見送りながら、私は胸の奥が熱くなるのを感じていた。

 あんな風に、迷いなく私たちの音楽を追いかけてくれる人がいる。その事実が、予備校のプレッシャーや将来の不安を、ほんの少しだけ忘れさせてくれたのだ。




宗一郎「ファン1号。いい響きだ。でもチェキ撮りたかったー!いやしかし、あの距離感で写真かぁ、絶対無理だ。色々と。いやでもやっぱ次は撮ろうかな」
ルパ「出会いは一期一会ですからね。写真は大切です」
智「あいつやっぱりちょっと怪しい。ルパとの接触は避けさせた方がいいわね」

 智の視点が一番鋭い。次回は涼音さん再登場で、原作七話にあたります。この作品も折り返しです。
 評価、感想、閲覧、ありがとうございます。
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