競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話   作:雅媛

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9 モブ(?)ウマ娘、温泉を掘る

 さて、ボクが時折お邪魔している奈瀬さんのチームには、最近一人、前世の記憶にある公式ウマ娘が参加していた。

 アドマイヤグルーヴ、アルヴさんだ。

 

「私にかまわないで。……愛なんて要らないわ」

 

 それが、彼女と初めて会った時の第一声だった。

 どこぞの世紀末覇者、あるいは聖帝様のようなセリフを真顔で口にするアルヴさん。噂では施設出身の孤児らしく、神童ともてはやされているが周りとの交流を避けているらしい。

 

 しかし、ボクからすれば「愛がいらない? ならば致死量の愛を注いでやろう」となるのが自然の摂理である。

 ということで、ボクはチームに顔を出すたびに「アルヴさーん! 今日も可愛いですね! 一緒にストレッチしましょう!」と隙あらば彼女を構いまくっていた。最初は「気安く触らないで!」とツンツンしていた彼女も、次第に満更でもない顔でボクの頭を撫でてくれるようになっていたのだ。

 

 ……だが、ここにきて問題が発生した。

 ボクが同室のスティルちゃんの専属トレーナーに就任したため、彼女のメニュー作成やフォーム改善にかかりきりになり、アルヴさんを構う時間が激減してしまったのだ。

 

 その結果。

 

「……結局、愛なんて嘘なのね。どうせ気まぐれだったんでしょう。みんな、私から離れていくのよ……」

 

 チームに顔を出したボクが見たのは、部屋の隅で膝を抱え、周囲にどす黒いオーラを放ちながら見事に『闇落ち』しているアルヴさんの姿だった。

 

 いや、どういうことだよ!?

 ボクは内心で激しくツッコミを入れた。

 奈瀬さん、もっとアルヴさんを構ってあげてよ! ボクは別に彼女のメイン担当のサブトレーナーじゃないんだから! 承認欲求の不満はサブトレーナーの人か奈瀬さんに言ってくれ!

 あと構わなかったって精々1週間ぐらいじゃん!

 

「うふふ。見苦しいわね、負け犬の遠吠えかしら?」

 

 ボクが困惑していると、背後から甘く、そしてサディスティックな声が降ってきた。

 スティルちゃん、いや、瞳が赤く染まった内なる紅、紅ちゃんだ。

 彼女は闇落ちしているアルヴさんをクッソ煽りながら、ボクの背中から両腕を回し、これみよがしに抱きしめてきた。

 

「ふぁっ!?」

 

 ボクの後頭部に、信じられないほど柔らかくて暴力的なたわわな果実がむにゅっと押し付けられる。

 最近、紅ちゃんはボクの圧倒的な実力に屈して以来、ボクのことをかなり気に入っているのだ。それはもう、一緒にお風呂に入った時の目線が「獲物を値踏みする肉食獣」のそれで、性的な意味で食べられそうな危機感をちょくちょく感じるほどに。

 

「なっ……! 貴女っ!!」

「あら、今はプイちゃんは私の担当トレーナーよ? 悔しかったら、実力で奪い返してみなさいな」

「……いいわ。その安い挑発、乗ってあげる!」

 

 ボクの頭の上の柔らかい感触に気を取られている間に、なぜかバチバチの修羅場が形成され、二人はトレーニングコースでの模擬レースで決着をつけることになってしまった。

 将来のティアラ路線で死闘を演じる二人が、なぜボクのようなモブを巡って争っているんだろう……?

 

 結果から言えば、レースは紅ちゃんがアルヴさんを直線でぶち抜き、圧倒的な差をつけて無事に勝利した。

 

 当然の結果である。ボクがフォームをしっかり矯正したことで、紅ちゃんの走りは特有の荒々しさや闘争心を殺すことなく、無駄なスタミナ消費だけを削ぎ落とした完全版へと進化しつつあるのだ。

 さらに、紅ちゃんはボクが主導する『友情トレーニング』にも参加している。メンバーはボク、そしてブラックタイド姉さんとキングカメハメハちゃんだ。

 モブだらけとはいえ日々併走し、練習効率を上げている紅ちゃんに、いくら頑張っていてもソロでやっていただろうアルヴさんとはいえ、今の段階で勝てるはずがなかった。

 

「アハハハハッ! どう? 私の背中すら見えなかった気分は! 弱者は地を這いつくばって、そこで泣いていなさい!」

 

 ゴール後、紅ちゃんは勝ち誇ったように高笑いし、アルヴさんをさらに徹底的に煽り散らした。

 すると――

 

 

「うっ……うぅっ……! どうせ、どうせ私なんて……ひぐっ、わぁぁぁぁん!!」

 

 限界を迎えたアルヴさんが、ついに膝から崩れ落ちて号泣してしまったのだ。

 

「えっ……あ、あれ?」

 

 さっきまでノリノリで悪役ムーブをかましていた紅ちゃんが、ピタッと固まった。

 

「うわぁぁん! 誰も愛してくれない! 勝てない! わぁぁん!」

「ちょ、ちょっと待って!? な、泣くなんて聞いてないわよ! あ、あの……ご、ごめんなさい! 言い過ぎたわ!」

 

 焦ってオロオロと両手を振り回し、挙動不審になる紅ちゃん。

 いかに猟奇的な人格っぽいふるまいをしていても、ベースとなっているスティルちゃんは極めて育ちの良いお嬢様である。根っからの悪人ではないため、「本気で傷ついて泣きじゃくる女の子」を前にどう対応していいか分からず完全にテンパってしまったようだ。

 

「アルヴさん、よしよし、泣かないで」

 

 仕方がないので、ボクが間に入ってアルヴさんの頭を撫でて慰める。

 

「うぅ……プイぃ……」

「ごめんなさいアルヴさん。ボク、アルヴさんのことも大好きですから。ね? 仲直りしましょう」

「……ほんとに?」

「はい。ここは一つ、絆を深めるためにパーッと行きましょうか!」

 

 ボクはポンと手を打った。

 ウマ娘同士の絆を深めるイベント。前世のアプリ知識によれば、こういう時は『温泉旅行』と相場が決まっている。

 

 脳内データベースを検索する。

 ボクの記憶では、アプリのシナリオには様々なギミックがあった。最新の育成シナリオ「Beyond Dreams 共に前へ、共に光を」は、担当だったカジノドライブさんとかいうウマ娘が見当たらないので、この世界で再現するのは現状難しそうだが、「ごくらく♪ゆこま温泉郷」の方ならどうにかなると思う。

 温泉はどうするか?自力で掘ればいいだけの話である。ここは日本、どこを掘っても温泉は出てくるはずなのだ。

 

「よし、温泉を掘りましょう!」

「……は?」

 

 泣き止んだアルヴさんと、気まずそうにしていた紅ちゃんが同時に素っ頓狂な声を上げたが、ボクは無視してスマホを取り出した。

 

「もしもし姉さん? カメちゃん? 今から温泉掘るから、スコップ持って裏山に集合ね。トレーニングの一環だよ」

 

 数十分後。

 トレセン学園の裏山には、ジャージ姿にシャベルを持った5人のウマ娘が集結していた。

 ボク、スティルちゃん、アルヴさん、姉さん、カメちゃんの5人だ。

 

「おいプイ、温泉を掘るって本気かよ……?」

「姉さん、細かいことは気にしちゃダメです。カメちゃんも、大胸筋と広背筋のトレーニングだと思って掘ってください」

「ふむ。確かに、土を掘る動作は全身の連動性を高めるな。悪くない」

 

 真面目なカメちゃんは、己のダービー制覇のためだと納得し、凄まじい勢いでスコップを地面に突き刺し始めた。

 

「さぁ、皆さんも掘りますよ! スティルちゃん、アルヴさん! 共同作業は仲直りの基本です!」

「えぇ……泥で汚れちゃうわ……」

「……でも、プイが言うなら……」

 

 文句を言いながらも、二人は隣同士でスコップを握り、おっかなびっくり土を掘り始めた。ボクはその様子を見守りながら、全力で地面を掘り始める。

 

「そぉい!!」

 

 ボクの振るうスコップが、工事現場の重機のような速度で裏山の土を抉り取っていく。

 掘って、掘って、掘りまくる。

 調子に乗って片っ端から地面を掘り返していくと、数時間後、ボクたちの足元から「ゴボァッ!」という音と共に、熱いお湯が勢いよく噴き出した。

 

「で、出たぁぁぁ! 本当に源泉だぁぁぁ!」

「嘘でしょ……!?」

 

 かくして、ボクたち五人は泥だらけになりながら即席で作り上げた『ゆこま温泉(仮)』の露天風呂に浸かっていた。

 

「はぁ〜、極楽極楽……」

「プイちゃん、これ本当に効能あるの……? でも、温かいわね……」

 

 お湯の中で、アルヴさんが気持ちよさそうに目を細める。その隣では、スティルちゃんがアルヴさんの背中にそっとお湯をかけていた。

 

「……さっきは、ごめんなさい。言い過ぎたわ」

「……別に。私こそ、ムキになってごめんなさい」

 

 湯気越しに、頬を染めながら視線を逸らす二人。

 おお……美しい。これぞ百合の醍醐味、雨降って地固まる、だ

 ボクはお湯に浸かりながら、目の前に広がる最高に眼福な光景に、鼻血が出そうになるのを必死で堪えていた。

 お肌もツルツルになり、交友関係もホカホカに温まった、最高の一日であった。




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百合ハーレムどうする

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