競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話 作:雅媛
私はずっと、自分のことを『はしたない化け物』なのだと思っていた。
いざ走り出せば、多重人格のように表出する『内なる紅』の衝動。
他者を蹂躙し、絶望させ、その全てを喰らいたいと願う猟奇的なまでの渇望。
同室になったウマ娘たちは皆、私のその本性を見て怯え、震え上がり、すぐに別の部屋へと逃げていった。だから私は、誰にも理解されない孤独な怪物なのだと、そう諦めていたのだ。
けれど、それは完全な勘違いだった。
あの子、プイちゃんに出会って、私は思い知らされたのだ。
私など、ただの少し気性が荒いだけのちっぽけな存在に過ぎない。彼女こそが、常識という枠を軽々と飛び越える『本物の化け物』なのだと。
プイちゃんは、私の『紅』を見て「綺麗だ」と笑った。あまつさえ「食べられたいなんて、えっちで最高ですね」と、微塵も動じることなく私の隣を並走してみせた。
最初は、ただの強がりか、鈍感なだけだと思っていた。けれど、今ならはっきりと分かる。私の中に潜む狂気や衝動『程度』、底知れぬ力を持つ彼女にとっては、そよ風のように些末なものでしかなかったのだ。
地に足をつけて走るのではなく、まるで重力を無視して空でも飛んでいるかのような、次元の違う圧倒的な走り。
十を超えたばかりの幼さでありながら、飛び級で学園に入学し、第一線で活躍する一流のトレーナーたちと対等以上に渡り合う明晰な頭脳。
そして、派手さはないものの、すべてのパーツが完璧な黄金比で構成された、奇跡のように美しくて愛らしい外見。
天は二物を与えずと言うが、彼女には全てが与えられている。
きっと、彼女こそが『究極のウマ娘』なのだろう。彼女の走りを一度でも目の当たりにした者、彼女の言葉に触れた者は、多かれ少なかれその事実に気づき、理解している。
唯一分かっていないのは、あんなにも常外れの才能を見せつけておきながら、「ボクは名前もないモブだから」と本気でのたまう、彼女本人だけなのだ。
私の内面深くの狂気すらも「美しい」と全肯定し、その圧倒的な実力で私をねじ伏せた彼女。
そんな美しくて恐ろしい化け物に魅入られてしまった私が、この甘い泥沼から抜け出せるわけがなかった。
幸いなことに、彼女は「可愛いウマ娘をたくさん侍らせて、百合ハーレムを作るのが夢だ」と、いつも公言している。
だが、私から見ればそれも可愛らしい強がりでしかない。
だって、いざ私たちが少しでも距離を詰めて迫ろうとすると、彼女はすぐに頬をリンゴのように真っ赤にして狼狽えるのだ。言葉ではあんなに不純なことを言っているくせに、本質的には極度の人見知りで、シャイで、おまけに案外潔癖なところがある。
あの子に、複数のウマ娘を手玉に取るような器用な真似ができるはずがない。
でも、その『百合ハーレムを作りたい』という口実こそが、今の私には最高に都合が良かった。
(――……っ、思い出すだけで、身体が熱くなるわ……)
先日、併走で勝った『ご褒美』と称して、初めて彼女と口づけを交わした時のこと。
私は余裕ぶって彼女の唇を奪い、妖艶に微笑んでみせた。けれど、本当に腰が抜けて、膝が震えて立っていられなくなりそうだったのは、私の方だったのだ。
触れた唇の柔らかさ。彼女から香る、遺伝子レベルで私の本能を狂わせる甘い匂い。どんな高級な甘味よりも甘いその味に、私の脳は完全に焼き切れそうになっていた。
あんな劇薬のような甘さを知ってしまった以上、もう絶対に抜け出せない。
プイちゃんを私だけのものにしたい。誰の目にも触れさせず、部屋に閉じ込めて独占したい。
そう願うドロドロとした独占欲が、私の中にないと言えば嘘になる。
けれど、冷静に考えれば分かることだ。
こんな規格外の化け物を、私という小さな檻で永遠に捕らえておくことなど、できるはずがない。彼女の才能は、いずれ世界中を熱狂の渦に巻き込む。
だからこそ、だ。
彼女が口では望み、けれど本心ではその重さに耐えきれずに逃げ出そうとする『ハーレム』。
それを利用して、彼女の周りを私たちで完全に包囲し、外堀を埋めてしまえばいい。
決して外には逃がさない、極上の愛情で編み上げた『鳥籠』を作るのだ。
「……ねえ、プイちゃん。今日も一緒に寝ましょう?」
「えっ、い、いや、ボク今日は一人で寝相を研究したくて……」
「ダメよ。プイちゃんが隣にいないと、私、寂しくて『紅』がでちゃうかもしれないわ」
「ひぇっ……わ、わかりましたよぅ……」
私の腕の中で、諦めたように小さく丸まる愛しいぬくもり。
この最高の空間を維持するためならばあの、いけ好かないアドマイヤグルーヴさんと歩調を合わせることだって、やぶさかではない。
アルヴさんは気に食わないし、すぐに泣くし、正直言って相性は最悪だ。
けれど、彼女がプイちゃんを想うあの重苦しいほどの愛情だけは、本物だと認めざるを得ない。
同じ化け物に魅入られ、狂わされた者同士。彼女とならば、この鳥籠の『共犯者』になれるはずだ。
愛などいらないと宣っていたアルヴさんと、はしたない怪物だと怯えられていた私。
そんな面倒くさい私たちを拾い上げ、愛で満たしてしまったのだ。その責任は、一生かけて、文字通り骨の髄まで愛されることで取ってもらわなければならない。
「ふふっ……逃がさないわよ、私たちの可愛いモブ(怪物)さん」
寝息を立て始めた彼女の黒髪を撫でながら、私はそっと、誰にも聞こえない声で甘い呪いを呟いた。
百合ハーレムどうする
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積極的に増やす
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なんとなく少しずつ増える
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現状維持で増やさないようにする