競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話   作:雅媛

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11 モブ(?)ウマ娘、囲まれる

 スティルちゃんとアルヴさんの間で突如として制定された『併走で勝った方が、ボクにキスできる』という謎のルール。

 このふざけた取り決めは、あろうことかボクのあずかり知らぬところで急速に広まり、いつしか『プイちゃん杯』という非公式かつ極秘の裏レースへと発展してしまっていた。

 

 最初は担当の二人だけだったはずなのに、事態は予想外の方向へ転がり始めた。

 

「大学受験の息抜きにちょうどいいわね。プイちゃんの幸運のキス、お姉さんがもーらおっと♡」

 

 なんと、トゥインクルシリーズを引退し、大学受験を控えてたはずのクロフネさんが参戦してきたのだ。

 さらに、それを聞きつけたうちの姉さんまでもが、

 

「私の可愛い妹の唇を、どこの馬の骨とも知らん奴らに奪われてたまるかーっ!!」

 

 と激怒しながら乱入してくる始末。お前ら、ボクのことなんだと思っているんだ。

 

 かくして休日のトレーニングコースで開催された、ボクの唇を懸けた仁義なき戦い。

 結果はどうなったかというと――ギリギリのハナ差で、クロフネさんが勝利をもぎ取った。

 

「んっ……ふふっ、ごちそうさま。プイちゃん、すっごく柔らかくて甘いね」

「ふぇぇ……クロフネさぁん……」

 

 息も絶え絶えになりながらも、大人の余裕たっぷりにボクの唇を奪っていったクロフネさんは、とてもホクホクした顔で帰っていった。芦毛のムチムチお姉さんからの情熱的なキス。正直、めっちゃくちゃ良い匂いがしたし、すごくドキドキした。役得である。

 

 一方で、結局勝てなかった姉さんは「うわぁぁぁん! プイの初めてがぁぁ!!」と地面を叩いて盛大にブー垂れていた。

 いや、仮に姉さんが勝ったとしても、いくらシスコン気味とはいえ実の姉とキスするのはさすがに嫌だよボクは……後初めてじゃないよもう5回目ぐらいだよ。

 

 それに、ボクからすれば当然の結果だった。いくらうちの姉さんが強いと言っても、相手は芝とダートのG1を極めたあのクロフネさんなのだ。さらに、同世代トップクラスの才能を持つスティルちゃんやアルヴちゃんといった名有りの公式ウマ娘たちが本気で殺気立っているレースに、未実装モブの姉さんが勝てるはずがないのである。

 

 しかし、そんな風紀の乱れきった『プイちゃん杯』が、いつまでも野放しにされるわけがなかった。

 

「お前ら……神聖なトレーニングコースで、発情期のような真似をするな」

 

 コースの脇でストップウォッチを握り潰さんばかりの力で握りしめていた奈瀬トレーナーから、雷が落ちたのだ。

 当然である。風紀に悪いなんてものではない。ただでさえ目立つG1級のウマ娘たちが、ボクの唇を巡って血走った目でデッドヒートを繰り広げているのだ。学園の風紀委員に見つかったら、ボクがセクハラ被害者として保護されてしまう。

 

 その後、ボクは一人だけ奈瀬さんの執務室に呼び出され、コンコンとお説教を受けることになった。

 

「いいか、プイ。お前は免許を与えられたプロのトレーナーだ。担当ウマ娘たちに妙な発情をさせるような隙を見せるな。管理責任が問われるぞ」

「はい……すいません、奈瀬さん……」

 

 ボクがシュンと肩を落として反省していると、ふと、奈瀬さんのため息が聞こえた。

 次の瞬間。ボクの顎がクイッと持ち上げられ――。

 

「えっ」

 

 チュッ、と。

 ほんの一瞬。触れるだけのリップ音が、静かな執務室に響いた。

 

「…………へ?」

 

 至近距離にある、奈瀬さんの美しい切れ長の瞳。ボクの唇には、確かな大人の女性の柔らかい感触と、わずかなコーヒーの香りが残っていた。

 

「な、奈瀬、さん……?」

「……なんだ。ただの『管理責任の指導』だ。これでお前も、少しは気を引き締めるだろう」

 

 奈瀬さんは何事もなかったかのようにそっぽを向き、手元の資料に目を落とした。だが、その耳の先がほんのりと赤く染まっているのを、ボクは見逃さなかった。

 

(いや、意味が分からない!! 奈瀬さんまで何やってるの!?)

 

 ボクの脳内はパニック状態だ。

 そして何より混乱したのは、ただの人間であるはずの奈瀬さんからも、ウマ娘たちと同じような『頭がクラクラするほど甘くて良い匂い』がしたことだった。

 遺伝子怖いよ。ボクの遺伝子は女性だったらなんでもいいのだろうか。

 

 

 

 そんな波乱の日常の裏で、ボクの本来の仕事であるトレーナー業務は極めて順調だった。

 ボクの担当となったスティルちゃんとアルヴさんは、夏の『メイクデビュー』をそれぞれ圧倒的な大差で勝利。その後も無敗のまま順調に勝ち上がり、ついに年末ジュニア級の女王を決めるG1レース、『阪神ジュベナイルフィリーズ』へと駒を進めた。

 

 そしてこの大舞台で、ついにボクの二人の担当が激突することになったのだ。

 

「さあ、一番人気はアドマイヤグルーヴ! 続く二番人気にスティルインラブ! 最年少の天才トレーナーが手掛ける二人が、G1の舞台で雌雄を決します!」

 

 パドックからゲートへ向かう二人の雰囲気は、まさに『鬼気迫る』としか言いようがなかった。

 

「プイちゃん。見ていてね。私があの負け犬を叩き潰して、アナタの一番になるわ」

「ふふっ、吠えるわね泥棒猫。私が勝って、今日の夜はプイちゃんを寝かせないようにしてあげるわ」

 

 観客や実況は「二人の凄まじい闘争心だ!」と盛り上がっていたが、ボクだけは胃を痛めていた。違うんです、あの二人、G1のタイトル以上に『ボクの唇の権利』を懸けてやり合おうとしてるんです。

 

 レースは、史実に残るような壮絶な死闘となった。

 最終直線、内から抜け出すスティルちゃんに対し、外から異次元の末脚で襲いかかるアルヴさん。

 二人のマッチレースは、スタンドの五万人の大歓声を切り裂き――最後はハナ差で、アルヴさんが差し切って勝利を収めた。

 

「やった……っ! アルヴさん、おめでとう!!」

 

 大歓声に包まれるウイニングサークル。

 初めてのG1勝利という快挙に、ボクは思わず感極まって、ターフから戻ってきたアルヴさんに駆け寄り、思い切り抱きついた。

 

「プイちゃん……っ! 私、勝ったわ! やったわ!」

「はい! すごい末脚でした! やっぱりアルヴさんは最高――」

 

 ボクが褒めちぎろうとした、その瞬間だった。

 

「これで……私の方が、強いって証明したわよね?」

「えっ?」

 

 アルヴさんはボクの腕を強く引き寄せると、そのままボクの腰に腕を回し、身体を密着させてきた。

 そして、五万人の観客と、無数のスポーツカメラマンのフラッシュが瞬く中。

 

「……んっ、ちゅぅぅぅっ……♡」

 

 ボクの唇を、情熱的に、そしてひどく甘く塞いだのだ。

 

(えっ!? ちょっ、まっ、ここウイニングサークルぅぅぅ!?)

 

 衆人環視。しかも全国ネットのテレビ中継もされている大舞台。

 そんな中で、G1を制したばかりの美少女ウマ娘が、最年少トレーナー(幼女)に、舌まで絡めるような濃厚なディープキスをしているのである。

 

『おぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!?』

 

 スタンドから、レースの時よりもさらに大きなどよめきと悲鳴が上がった。

 シャッター音が嵐のように鳴り響く。フラッシュの光で目が眩む。

 

「ぷはっ……ふふ、約束通りよ、プイちゃん。G1で勝ったら、何度だってキスしていいルールだものね♡」

「る、ルールって……そんなの約束してないんですけど!!」

 

 顔から火が出るほど真っ赤になったボクをよそに、アルヴさんは満面の笑みでカメラに向かってピースサインまで決めていた。その後ろで、負けたスティルちゃんが、般若のような顔でボクたちを睨みつけていたのは言うまでもない。

 

 翌日。

 スポーツ新聞の第一面は、レースの着順ではなく、見出しの特大文字で埋め尽くされていた。

 

『特大スクープ! G1女王アドマイヤグルーヴ、天才幼女トレーナーと歓喜の熱愛ディープキス!!』

 

 カラー写真つきで、ボクの人生最大の恥態が日本全国にばら撒かれてしまったのである。

 両親は「ウチの娘がヒロインになった!」と謎の喜び方をして祝いの電話をかけてきたし、奈瀬さんからは「お前という奴は……」と頭痛薬を飲みながら呆れられた。

 

 純粋な百合ハーレムを夢見ていたはずのボクのトレーナー一年目は。

 華々しいG1勝利という最強の実績と、それ以上に特大すぎるスキャンダルによって、嵐のように幕を閉じたのであった。




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追加ヒロイン

  • ラインクラフト
  • シーザリオ
  • デアリングハート
  • エアメサイア
  • クロフネ
  • 奈瀬トレーナー
  • キングカメハメハ
  • カネヒキリ
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