競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話   作:雅媛

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13 モブ(?)ウマ娘、進級する

 年度が替わり、ボクは学年が一つ上がって中等部の二年生になった。

 春。トレセン学園は、希望に胸を膨らませた新入生たちで活気に満ちている。

 

「プイちゃん、いえーい!」

「カネちゃん、いえーい!」

 

 学園の正門前で、一年遅れて無事に入学してきた幼馴染のカネヒキリとハイタッチを交わす。

 カネちゃんは相変わらずニコニコしていて可愛い。……可愛いのだが、一年見ない間に随分と身長が伸びて、やたらとデカくなっていた。

 ボクの周りにいる幼馴染グループといえば、ブラックタイド姉さん、キングカメハメハちゃん、そしてこのカネヒキリちゃんだ。ボクだって平均身長よりは少し大きいくらいの発育の良さを誇っているのだが、この三人と並ぶと完全に小柄に見えてしまう。それくらい、揃いも揃って圧倒的な質量を誇る『ムチムチ三連星』なのだ。

 

 さて、今年のボクの予定だが、姉さんとカメちゃんはついに今年の夏頃にメイクデビューを迎える予定だ。しかし、一年飛び級しているボク自身は、学年相応のペースに合わせるため、カネちゃんと同じ来年デビューの予定となっている。

 なので今年のボクは、奈瀬トレーナーの助手をしながら自身のトレーニングを重ねつつ、担当ウマ娘たちをサポートする一年になる。

 

 新年度最初の仕事は、有望な新入生のスカウトだ。

 カネちゃんを奈瀬さんのチームに紹介しつつ、ボクは他の新入生たちの名簿を確認した。

 

「知っている名前は……おっ」

 

 ボクは目を丸くした。

『ラインクラフト』『シーザリオ』『デアリングハート』『エアメサイア』。

 前世のアプリゲームのメインストーリー第2部で主役を張っていたヒロインたちがズラリと揃っているではないか。

 だが、少し待て。アプリのストーリーでは、彼女たちを導く先輩として『キングヘイロー』がいたはずだが、この世界ではキング先輩はとっくに学園を卒業してしまっている。どうやら、この辺りの時系列はゲームのシナリオとは違う世界線らしい。

 

 ともあれ、この世代の有力メンバーをチームに引き込めれば最高だ。

 そう思って意気込んでいたのだが、名簿をよく見ると『エアメサイア』の名前の横には、すでにチーム奈瀬と記載がされていた。

 

 ボクは思い出した。前世の競馬知識ではよく分からないが、この世界の奈瀬トレーナーは『エア』の名を冠する一族と非常にパイプが太いのだ。エアグルーヴ先輩しかり、エアシャカール先輩しかり。なので、基本的には自動的に奈瀬さんのチームに入ってくる流れになっているらしい。

 

 メサイアちゃんは、知的な眼鏡っ娘だ。ボクの個人的な好みからは少し外れるかな……と最初は思っていたのだが、いざ挨拶してみると、真面目で一生懸命で、どこか放っておけない可愛らしさがあり、ボクはすぐに彼女のことが気に入ってしまった。

 

「メサイアちゃん、フォーム綺麗だね! 今度ボクと一緒にご飯行こうよ!」

「えっ、あ、はいっ! プイ先輩にお誘いいただけるなんて、光栄です……!」

 

 ニコニコと会話していると、背後から凄まじい冷気が漂ってきた。

 振り返ると、スティルちゃんとアルヴさんが、般若のような顔でボクたちを睨みつけていた。

 

「ほら、二人とも新入生を睨まないの」

「……ふん。プイが新しいおもちゃを見つけて浮かれているだけよ」

「浮気性なトレーナーには、お仕置きが必要ね。プイちゃん、あとで覚えていなさい」

 

 結局、メサイアちゃんを含めた三人でなぜかバチバチ火花を散らしながら、仲良く(?)併走トレーニングへ行ってしまった。

 

 さて、残るスカウトの目標は『ラインクラフト』だ。

 ボクには、彼女をどうしてもチームに引き入れたい切実な理由があった。前世のアプリのシナリオで、彼女は原因不明の体調不良で意識不明になったりしている。

 この世界で彼女がどうなるかは分からない。モブであるボクの力でどこまで運命を変えられるかも未知数だが、同じチームで近くにいれば、何か異変があった時にすぐに対処できるような気がするのだ。

 最悪の場合、第四の壁すら突破できる説がある宇宙的ウマ娘ネオユニヴァースを捕獲してぶん回し、解決策を強引に絞り出すことだって考えるべきだろう。

 

 それに、そもそもラインクラフトとシーザリオという、同じティアラ路線を歩むかもしれない超有力ウマ娘が、同じチームに所属するというのは、マネジメントの観点から見てかなり苦しいはずだ。

 目標とするレースが被れば、チーム内で潰し合いになる。ええ、よく知っていますとも。スティルちゃんとアルヴさんというバチバチのライバルを同時に管理するの、胃に穴が開きそうなくらい非常にキツいですからね!!

 

 まあ、うちのチームもメサイアちゃんが入ってきちゃったから、同年代のティアラ路線が二人になっちゃうから、クラフトちゃんをさらに引き取るのはキャパオーバー気味なんだけどね……

 

 そんな葛藤を抱えつつ、ボクはクラフトちゃんと直接話す機会を設けた。

 

「……プイ先輩。お誘い、すっごく嬉しいです。でも……」

 

 クラフトちゃんは、申し訳なさそうに、けれど真っ直ぐな瞳でボクを見た。

 

「私、シーザリオと同じチームに行きたいんです。福長トレーナーのところで、一緒に走りたいって……運命みたいなものを感じちゃって」

 

 ……そう言われてしまえば、引き下がるしかなかった。

 福長トレーナーは、優しくて生徒想いのとてもいい人だから、安心して任せられるのは分かっている。それに、クラフトちゃんのあの春風のようなふわふわした雰囲気が、効率とデータ主義の奈瀬さんのチームカラーと致命的に合わないのも、十二分に理解できた。

 残念だが、彼女の運命は外から見守り、いざという時に助け舟を出せるように準備しておくしかないだろう。

 

 少し肩を落としてチームの練習コースに戻ってくると、なぜかメサイアちゃんと、スティルちゃん、アルヴさんの三人が、汗を拭いながらすごく良い雰囲気で談笑していた。

 

「……どういうこと? さっきまでバチバチだったのに」

「あらプイ。メサイアはなかなか見どころがあるわ。私の後輩として可愛がってあげることにしたの」

「ええ。アルヴさんがそういうなら、私も異論はないわ」

 

 女の友情は謎である。ボクも今は女だが。

 

「プイ先輩! 私たち、三人で併走して、すっごく良い練習ができました! 先輩も一緒にどうですか?」

 

 メサイアちゃんに目を輝かせて誘われたので、ボクは「じゃあ軽くね」と混ざることにした。

 

 そして数分後。

 

 ボクは三人を完膚なきまでにぶっちぎり、ゴール板を駆け抜けていた。

 

「はぁっ……はぁっ……! 嘘でしょ……!?」

「プイちゃん、また速くなった……!?」

 

 膝に手をついて驚愕するスティルちゃんとアルヴさん。

 メサイアちゃんはオーバーペースで倒れている。

 

 ボクは呆れてため息をついた。

 

「メサイアちゃんはまだ新入生だから分かるけどさ。スティルちゃんとアルヴさん、もうすぐ一生に一度の『桜花賞』なんだから、もうちょっと頑張ってよ」

「ち、違うわよ! 今のは軽く流しただけで、本気を出せば――!」

「ボク、いまだにデビューすらしてないモブウマ娘だよ? 手を抜いて走ってたんだろうけど、ボクに負けてるようじゃ、本番が心配だなぁ」

「も、モブ……? この化け物が……!」

 

 倒れているメサイアちゃんが驚愕しているのを見て、ボクは「可愛いな」と能天気に笑っていた。

 春のクラシック戦線は、もうすぐそこまで迫っている。




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追加ヒロイン

  • ラインクラフト
  • シーザリオ
  • デアリングハート
  • エアメサイア
  • クロフネ
  • 奈瀬トレーナー
  • キングカメハメハ
  • カネヒキリ
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