競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話   作:雅媛

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閑話:モブウマ娘から見たモブ(?)ウマ娘

 吾輩はウマ娘である。名前は一応あるが、ここでは重要ではない。

 強いて言うなら、トレセン学園におけるごく一般的な、走ることが好きなだけの普通の生徒。いわゆる『モブ』というやつだろう。私自身、その自覚はあるし、その立ち位置に不満もない。

 

 しかし、学園には一人、自分をモブだと公言して憚らない、とんでもない化け物がいる。

 

 ディープインパクト。通称、プイちゃん。

 弱冠五歳にしてウマ娘でありながらトレーナー資格を取得した天才少女。そして、圧倒的な走力を持つ規格外の存在。

 その実力たるや、新入生の選抜レースにおいて、彼女の適性とは全く合わないはずの『ダート1200m』に出走したにもかかわらず、最後尾から全員をごぼう抜きして勝利をかっさらうほどである。

 走力に知力。どこをどう切り取っても、歴史に名を残すただの『化け物』だ。

 

(お前のようなモブがいるか)

 

 そう思ったのは、決して私だけではないはずだ。

 日頃から「ボクはモブウマ娘だから〜」とニコニコ笑っている彼女を見るたび、私たち真のモブウマ娘は言い知れぬ理不尽さを感じていた。

 

 だから、現に言いに行ったのだ。何人かの友人と連れ立って、「お前のようなモブがいてたまるか。モブを自称するなら、その証拠を見せろ」と。

 今思えば、それがすべての間違いの始まりだった。

 

 プイちゃんは私たちの抗議を聞くと、少し困ったように眉を下げた後、あの天使のように愛らしい笑顔でこう言い放ったのだ。

 

「そうですか? でもボク、モブなりに基礎を頑張ってるだけなんですけど……。じゃあ、ボクと同じぐらいの走りができる『トレーニング』がありますよ。明日から、一緒にやりましょうか?」

 

 私たちもウマ娘の端くれである。闘争本能というものがある。同世代の子にそんなことを言われたら、参加しないわけにはいかない。

 だが、あの日、彼女の提案に首を縦に振った己の愚かさを、私は一生呪うことになる。

 

 

 

 地獄の始まりは、朝4時だった。

 まだ空も白みきっていない真っ暗な練習場に集められた私たちは、まず『徹底的なストレッチ』をやることになった。

 

「いいですか、ウマ娘にとって関節の可動域と柔軟性は命です。柔軟性がないとすぐに怪我をしますから、ここが一番重要ですよ」

 

 プイちゃんの指導のもと、彼女の姉であるブラックタイドさん、幼馴染のキングカメハメハさん、カネヒキリさんという『いつもの四人組』が手本を見せる。

 だが、その手本がすでにおかしい。四人の身体は軟体動物のようにぐにゃぐにゃと曲がり、常人なら関節が外れるような角度まで平然と脚や腕を伸ばしているのだ。

 

「も、もうむ~り~!!!」

 

 開始三十分で、私の友人の一人が悲鳴を上げた。

 すると、プイちゃんは笑顔のままスッと友人の背後に立ち、その背中を容赦なく押し込んだ。

 

「無理というのはですね、嘘つきの言葉なんですよ」

「えっ……?」

「途中で止めてしまうから無理になるんです。関節が悲鳴を上げても、そこで止めずに伸ばし続ければ、それは『無理』ではなく『成長』に変わるんです。さあ、深呼吸して! まだ後一時間半ありますからね!」

 

 こいつ、頭がおかしい。

 なぜ中等部少女の口から、どこかのブラック企業の経営者のような狂った精神論が飛び出してくるのか。

 関節が曲がらない方向にまで曲げられそうになっても決して許してもらえず、私たちモブ一行は、ただのストレッチの段階ですでに満身創痍となっていた。

 

 しかしまだ、これは序の口だった。

 

「はい、お疲れ様です。次は食事までの間、フォームチェックを行います」

 

 寮の前の広場に移動し、執拗なまでのフォームチェックが始まった。

 

「姉さん。踏み込んだ時の左足、外に『3mm』ズレてます。それだとコーナーで遠心力に負けますよ」

「うーん、意識してるんだけど、なかなか治んないな」

「カメちゃんは、歩幅(ストライド)をもう少し広げましょうか」

「……これくらいか?」

「ちょっと広すぎるかも。あと『1cm』戻して」

 

 何だよ、ミリメートル単位の調整って。

 ウマ娘の身体を精密機械か何かと勘違いしているのだろうか。しかも、プイちゃんはフォームを確認するため、私たちに『太極拳のようなスローモーションで走る動作』を要求してきた。

 一見楽そうに見えるが、これが一番キツい。重力に逆らいながらゆっくりと筋肉を動かし続けることで、全身の筋繊維が悲鳴を上げる。いくら「足がプルプルして無理!」と訴えても許されず、じっくりとフォームをミリ単位で修正させられる。

 

「はい、朝練終了です! 食堂に行きましょう! もちろん、食事もトレーニングですからね!」

 

 そして始まったのは、大量の『食事トレーニング』だった。

 プイちゃんたち四人は、信じられない量の白米と肉、魚、山盛りの野菜を胃袋に詰め込んでいく。

 

「食べられません」と泣き言を言っても、許されることはない。

 

「筋肉を破壊したんですから、超回復のための栄養を入れないと死にますよ? ほら、咀嚼して」

 

 と、笑顔で丼を差し出される。私はこの時、フォアグラを作るために無理やりエサを詰め込まれるガチョウの気持ちを、身をもって理解した。

 友人の一人は、本当にこれ以上は噛めないと泣きを入れたせいで、プイちゃん特製の『高カロリー全部乗せミキサー食』を漏斗で流し込まれていた。完全にディストピアの光景である。

 

 だが、絶望は続く。

 午後のトレーニングは、シンプルに『走りまくること』だった。

 坂路、芝コース、ダートコース。場所を変え、ひたすらに走りまくる。とにかく走りまくる。肺が焼け焦げ、脚が鉛のように重くなり、倒れて動けなくなるまで走らされる。

 私を含めた友人たちは、合計1万mを全力に近いペースで走らされたところで、完全にくたばり、芝生の上に大の字になって動けなくなった。

 

 しかし、プイちゃんたち四人は、少し息を弾ませてはいるものの、まだ飄々としていた。

 

「皆さん、お疲れ様です。今日は『初日』ですから、軽めにしておきますね」

 

 そう言って、四人は私たちが倒れている横をすり抜け、さらに私たちの倍の距離を平然と走り抜いていったのだ。

 

(これで……終わりだよね……?)

 

 地面を這いつくばりながら、私たちが安堵のため息をついたのも束の間。

 

「はい、お疲れ様です! このまま水着に着替えてください! 脚部への負担を考えて、クールダウンも兼ねてプールをやりますからね。ウマ娘にとって、心肺機能と肺活量は一番大事です!」

「…………」

 

 走ったのと同じくらいの距離、1万m以上を、今度は水中で泳ぎまくる四人。

 この『プールトレーニング』だけでも、ごく一般的なトレセン学園のチームにおける『1日の総トレーニング量』に匹敵するはずだ。それを、1万m以上走った後にこなすというのか。

 

 私たちはもう、指一本動かすこともできず、ただプールサイドで白目を剥いて横たわることしかできなかった。

 さらに、その日の夜には、朝と同じ地獄の『食事トレーニング』が待っていた。

 

 

 

 なるほど、確かに。

 この軍隊の特殊部隊も真っ青の地獄のトレーニングを、幼少期から毎日、息をするようにこなしてきたのだとしたら。あの、空を飛ぶような化け物じみた走りができるようになるのも、納得できる。

 

 でも、無理だ。私には絶対に無理だ。

 私はモブでいい。栄光も、名誉もいらない。ただ、平穏な睡眠と、美味しい食事が欲しい。

 私たちの心は、たった一日の体験入部によって、完璧にへし折られてしまったのだった。

 

 その後、私達のほかにも巻き込まれたウマ娘は何人も出た。

 最終的にプイちゃんが自らを「モブ」と名乗ることに対して、文句を言う生徒は学園から一人もいなくなった。

 迂闊に文句を言えば、「じゃあ、ボクのトレーニングに付き合いますか?」と、あの天使の笑顔で『地獄への招待状』を渡されるからだ。触らぬ神に祟りなしである。

 

 しかし、だからといって私たちがプイちゃんを嫌っているかと言えば、そういうわけでもなかった。

 

「プイちゃん、第3コーナーでの息の入れ方がよく分からなくて……」

「ああ、それなら……」

 

 アドバイスを求めれば、彼女はあの笑顔のまま、自分が実践している理論を出し惜しみすることなく、とても楽しそうに、かつ的確に教えてくれるのだ。そのアドバイスは、トレセン学園のどの教官の授業よりも有用だったりする。

 

 あの狂った練習量さえ強要されなければ、彼女はただの『教え上手で、無駄に顔が良い、少し変わったウマ娘』なのだ。

 

 『プイちゃんがモブという自己認識に突っ込んではいけない』、『彼女の練習に混ざってはいけない』という暗黙のルールがトレセン学園全体に広まるのに、そう時間はかからなかった。




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追加ヒロイン

  • ラインクラフト
  • シーザリオ
  • デアリングハート
  • エアメサイア
  • クロフネ
  • 奈瀬トレーナー
  • キングカメハメハ
  • カネヒキリ
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