競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話   作:雅媛

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ちょっと更新ペース落とします


16 モブ(?)ウマ娘、備える

 秋。トレセン学園が最も熱く燃え上がる季節がやってきた。

 ティアラ路線の最終戦、『秋華賞』。

 このレースにおいて、スティルちゃんはアルヴさんの猛追を再びハナ差でしのぎ切り、見事に一着でゴール板を駆け抜けた。

 桜花賞、オークス、そして秋華賞。この歴史的な勝利によって、スティルちゃんは誰もが憧れる『ティアラ三冠ウマ娘』という偉業を成し遂げたのである。担当トレーナーとしては鼻高々だ。モブのボクが育てたウマ娘が歴史に名を刻むとは、人生何が起こるか分からない。

 

 だが、ライバルであるアルヴさんもただでは終わらなかった。

 秋華賞の次走、シニア級の強力なウマ娘たちも参戦する女王決定戦、『エリザベス女王杯』。

 ここでアルヴさんは、見事に内から抜け出したスティルちゃんを外から異次元の末脚で強襲し、ついに一着をもぎ取ってみせたのだ。

 

「見たか、 私の愛の勝利よ!」

「くっ……! 今回は花を持たせてあげただけよ!!」

 

 レース後、お互いにバチバチと火花を散らしながらも、どこか晴れやかな顔で笑い合う二人。

 ボクの担当ウマ娘二人は、こうして最高の結果を残してクラシック級の一年を締めくくったのだった。

 

 

 

 さて、大きなレースも一段落した。

 来年はいよいよ、ボク自身の『メイクデビュー』が控えている年だ。

 

 モブウマ娘のデビュー戦など大して注目されないだろうが、それでもトレセン学園の生徒である以上、自分のレースに向けて本格的なトレーニングと調整が必要になってくる。

 そうなると、どうしても今まで通りにスティルちゃんとアルヴさんのフォローをこなすことは難しくなる。

 来年シニア級になる二人は、すでに走りも肉体も完成の域に達しているため、メニュー作成などの手間は今までほどはかからない。だが、問題はレース関係だ。

 トゥインクル・シリーズはとにかく書類仕事が非常に多い。さらに、地方や海外への遠征時に付き添ったり、メディア対応をしたりといった業務まで、自分のレースの合間にこなすのは物理的に不可能に近いのだ。

 

「……というわけで、来年はボクのサポートが手薄になっちゃうかもしれないんです」

 

 奈瀬さんの執務室で、ボクは正直に悩みを打ち明けた。

 後ろのソファには、スティルちゃんとアルヴさんも座って話を聞いている。

 

「そのあたりは、うちの専属スタッフで十分回せるだろう」

 

 コーヒーカップを置きながら、奈瀬さんはあっけなく言った。

 

「お前は来年、自分の走りの方を最重視しなさい。お前が手塩にかけて育てたあの二人が、ちょっと目を離したくらいで崩れるようなヤワなウマ娘だと思うか?」

「いや、でも……ボクの担当ですし、責任が……」

 

 ボクが口ごもっていると、ソファから二人が立ち上がり、ボクの両隣に寄り添ってきた。

 

「プイちゃん。私たちならもう大丈夫よ。だから、来年はプイちゃん自身のために頑張ってほしいです」

 

 スティルちゃんが、ボクの手をきゅっと握る。

 

「そうね。プイには随分と面倒をかけちゃったし、私たちの身の回りのことくらい、自分たちでどうにかするわ。だから、貴女は前だけを見て走りなさい」

 

 アルヴさんも、優しく微笑んでボクの頭を撫でてくれた。

 

「むう……」

 

 二人の成長が嬉しい反面、少しだけ寂しさも感じる。

 

「それに、私の腕も少しは信じてほしいな。書類仕事も遠征の手配も、お前よりは確実に上手くやれる自信があるぞ」

 

 奈瀬さんが、薄く笑みを浮かべて立ち上がった。

 

「奈瀬さんの腕は、最初から一ミリも疑ってないですよ」

 

 ボクはため息をつきつつ、頷いた。

 実質的なチームのトップである奈瀬さんが全面的にバックアップしてくれるというのだ。これ以上意地を張る理由もない。ボクは来年、一人のウマ娘として自分のレースに集中することにした。

 

 

 

 そうと決まれば善は急げとばかりに、翌日から奈瀬さんがボクたちのトレーニングメニューを直接組んでくれることになった。

 

 しかし、それは地獄の始まりだった。

 

「奈瀬さん、いくらなんでも重すぎませんか……?」

 

 練習場に集まったボクたち三人の足首には、見慣れない分厚い『アンクルウェイト』がしっかりと装着されていた。

 どこから持ってきたのか分からないが、鉛でも詰まっているのかというほどにズッシリと重い。

 

「文句を言わない。シニア級に向けてのさらなる筋力強化と、プイのデビューに向けた基礎体力の底上げだ。これを着けたまま、いつものお前たちのメニューをこなせ」

「「「えええええっ!?」」」

 

 ボクが考案した高負荷の基礎トレーニング。それを、アンクルウェイトを着けた状態でやれというのだ。いくらなんでも鬼畜の所業である。

 

「無理というのは嘘つきの言葉だと、お前自身が言っていたはずだが?」

 

 奈瀬さんは、悪魔のように美しい笑顔でボクの言葉をそっくりそのまま返してきた。

 過去の自分のスパルタ発言が、ここに来て巨大なブーメランとなって後頭部に突き刺さるとは。

 その日から、三人でひーひー言いながら、鉛のように重い脚を引きずって練習を積み重ねる日々が始まった。

 しかも、このアンクルウェイト、なぜか日を追うごとに中の重りがこっそりと追加されていき、日々重さが増していくのだ。奈瀬さんは笑顔で「気のせいだろう」と言うが、絶対に気のせいではない。

 

 だが、奈瀬さんの指導の本当の恐ろしさは、トレーニングそのものだけではなかった。

 

「はぁ、はぁ……死ぬ、もう無理……」

「プイちゃん、しっかり……! あとでお風呂に入りましょうね……」

 

 その日の夜。ボクたちは泥のように疲れた身体を引きずり、裏山に自力で掘り当てた温泉の露天風呂に浸かっていた。

 熱いお湯が、限界を迎えた筋繊維にジンジンと染み渡る。

 

「やあ、お疲れ様。いい湯だな」

「「「ひゃっ!?」」」

 

 突然、湯煙の向こうから全裸の奈瀬さんが現れ温泉に入ってきたのだ。

 奈瀬さん、美人だとは思っていたがやっぱり脱いでも美人である。

 ウマ娘の天然でもある程度どうにかなってしまう外見と違い、調整された人工的な大人の美。その素晴らしさにボクは生唾を飲んだ。横の二人も奈瀬さんの美しさに圧倒されている。

 そして、ボクの隣にスッと腰を下ろすと、長い指先でボクの太ももに触れてきた。

 

「なっ、奈瀬さん!? は、恥ずかしいんですけど!」

「何を言う。指導教官による、重要な『コンディション確認』だ。筋肉の張りや疲労の蓄積具合は、直接手で触れて確かめるのが一番だからな」

 

 有無を言わさぬ口調で、奈瀬さんの手がボクの太ももからふくらはぎ、そして腰回りへと滑っていく。

 ひんやりとした大人の女性の指先が、火照った身体をなぞる感覚。それはもう、完全に『うまだっち』で『うまぴょい』なセクハラ事案であった。

 

「ひゃんっ……そこ、くすぐったい、です……」

「ふむ。大腿四頭筋の張りが少し強いな。明日はクールダウンを多めにしよう。次はアルヴ、こっちへ来い」

「えっ、わ、私もですか!?」

 

 奈瀬さんの標的は、ボクからアルヴさんへと移る。

 

「ヒッ……な、奈瀬トレーナー、そんなところまで……あぁっ……」

「恥ずかしがるな。綺麗な筋肉がついているじゃないか」

 

 普段、ボクに対しては隙あらばベタベタと触ってきてディープキスまでかましてくるスティルちゃんとアルヴさんだが、年上の大人の女性から触られることには全く慣れていなかったらしい。

 奈瀬さんの手練れの指先によって隅から隅までコンディション、という名のお触りで確認された二人は、耳の先まで茹でダコのように真っ赤になり、「うぅぅ……」と涙目で温泉の中にブクブクと沈んでいった。

 

「……トレーナーに、ウマ娘は勝てないんだよ」

 

 湯煙の中で、奈瀬さんは妖艶に微笑みながらボクたちを見下ろしていた。

 

 走力や筋力では、人間はウマ娘に絶対に敵わない。

 しかし、精神的な余裕と、大人の色気という暴力においては、ボクたちヒヨッコのウマ娘が束になっても奈瀬文乃という女には勝てないのだと、骨の髄まで思い知らされた夜だった。

 

 来年のメイクデビューに向けて。

 ボクたちの過酷で、そして少しだけえっちな冬の夜は、更けていくのであった。




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次のヒロイン

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