競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話   作:雅媛

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2 モブ(?)ウマ娘、速くなるため頑張る

 さて、百合ハーレムを建設するために、モテるにはどれくらいの成績が必要か。ボクは短い腕を組んで真剣に考えた。

 

 どうせなら目標は大きく設定したい。モブウマ娘の身で高望みかもしれないが、前世のアプリゲームの知識を総動員して導き出した答え。すなわち、『クラシック三冠』『凱旋門賞』そして『ブリーダーズカップ・クラシック』の制覇だ。

 前世の記憶では、アプリの5周年記念あたりでブリーダーズカップ・クラシックに勝てるシナリオが実装された……くらいまでは覚えている。つまり絶対に実現不可能な目標ではないはずだ。

 日本の頂点を取り、ヨーロッパの頂点を取り、さらにアメリカの頂点までかっさらう。ここまで勝てば、さすがにトレセン学園の可愛いウマ娘たちからモテモテになれること間違いないだろう。想像するだけで鼻血が出そうだ。

 

 ということで、大いなる目標を決めたところでまずは現状把握だ。

 結論から言うと、ボクの今の環境は控えめに言って最高だった。

 

 まず、実家である両親の実家がクッソ太い。

 父は大きな会社の社長らしく、絵に描いたようなお金持ち。そして母は、イギリス出身のウマ娘だ。

 この母がなかなかにぶっ飛んでいて、「娘を妊娠中にGⅠレースに出走して勝利する」という、生命の神秘すら凌駕する破天荒な実績の持ち主らしい。前世の常識で考えれば「妊婦を走らせるな」と炎上必至だが、ウマ娘の身体構造はどうなっているのだろうか。とはいえ、ボクたち家族の前では、そんなバケモノじみたエピソードを感じさせない、明るくて優しい自慢の母様である。

 

 そしてボクには、姉が一人いる。『ブラックタイド』という名前で、黒鹿毛の髪がツヤツヤしていて非常にかわいい。

 将来有望なハーレム要員……には血縁だしさすがにならないだろうが、愛すべき家族だ。比較的活発で負けん気の強い性格をしているが、ボクの中身が精神的に大人なせいか、上手くヨイショしてあやしているため、姉妹喧嘩になることもほとんどない。姉は「私が守ってあげるからね!」と意気込んでいるが、ボクからすれば「将来可愛いウマ娘を紹介してね」という下心ありきの関係構築である。

 

 総じて、将来的には何か恩返しするにしても、今は全力で甘えても問題がない、むしろ甘え倒すべき恵まれた家族構成だ。

 ということで、ボクは早速行動に出た。

 

「母様、父様! ボク、クラシック三冠を取って、凱旋門賞とブリーダーズカップ・クラシックも勝ちたいんです!」

「あらあら、まあまあ! なんて大きな夢なの!」

「ハッハッハ! さすが我が娘だ! でっかい志でよろしい!」

「なので、ボクに一番速く走る方法を教えてくれる、すっごい人に習いたいんです!!」

 

 3歳にして初めてのおねだりが「おもちゃ」ではなく「専属トレーナーをつけてもらうこと」だった。

 普通なら困惑するところだろうが、超のつく親バカである両親は大喜びし、札束の力……もとい広い人脈を駆使して、あっという間に『元中央トレセン学園のベテラントレーナー』とかいう、いかにも凄そうな人を連れてきてしまった。

 

 最初のころは、そのトレーナーさんとの関係も良好だった。

 基礎的な走り方を教えてもらったり、家の広すぎる敷地内に作られた芝やダートのコースを走ったり。ボクはまだ3歳の幼女だが、ウマ娘の身体能力の高さには驚かされた。走れば走るほど、風を切る感覚が鋭くなり、実力が上がっていくのが自分でもわかった。

 

 ボクが一生懸命走るたび、トレーナーさんはなぜか顔を引きつらせて、ストップウォッチを持ったままブルブルと震えていた。

「な、なんだこの走りは……っ!? まるで、空を飛んでいるようだ……! これが3歳の、しかも本格化前の幼女の走りだと……!?」

 とか何とかブツブツ呟いていたが、ボクは不思議だった。

 

(いやいや、ただの芝やダートを真っ直ぐ走るなんて、アプリで言えば『スピードレベル1』のトレーニングでしょ。こんなので驚いてたら、この先どうすんのさ)

 

 そう、ボクの不満はそこにあった。

 芝やダートの単走、たまにやる坂路調教。そんな基礎中の基礎を繰り返す毎日に、前世のアプリ脳を持つボクは限界を感じていたのだ。

 

 どうせなら、もっと効率のいいトレーニングがしたい。

 具体的に言えば、「友情トレーニング」でパラメータを爆盛りしたいし、なんなら「シナリオ補正」があるような特殊なトレーニングを取り入れたい。

 前世のゲームでは、シナリオによって様々なボーナスギミックがあった。『URAファイナルズ』や『アオハル杯』のようなトレセン学園に入学しないと発生しなさそうなものは無理だとしても、もっと他にやりようがあるはずだ。

 メガホンとか、アンクルウェイトとか、三女神の叡智を借りるとか、温泉とか。

 そもそもそういう「システム的なバフ」がないと、名もなきモブウマ娘であるボクが三冠なんて取れるわけがないと思う。

 

 それらを実現するために必要なもの。それは『理解あるトレーナーさん』である。

 今のトレーナーさんが無能なわけではない。むしろウマ娘界の常識に照らし合わせれば、極めて優秀なのだろう。

 だが、「とりあえず夏合宿に向けて体力温存しつつ、友人との絆ゲージを上げにいきましょう」なんていうボクの突拍子もない発想に、彼は絶対についてきてくれない。おそらく頭の病院に連れて行かれるのがオチだ。

 

 きっと彼は、ボクの運命の人(ビジネスパートナー的な意味で)ではなかったのだろう。

 しかし、ボクのこの「アプリ基準の育成理論」を完全に理解し、話が合う凄腕トレーナーを外から見つけてくるなんて不可能に近い。

 

 どうすればいい? 悩んだ末に、ボクはある画期的な解決策を閃いた。

 そうだ。ボク自身が、ボクのトレーナーになればいいんだ!

 

 このひらめきは、ボクの最終目標である『百合ハーレム』の建設にも絶大なメリットをもたらす。

 なんせ、自分がトレーナーの資格を持っていれば、将来トレセン学園に入ったとき、自分を育成するついでに「他の可愛いウマ娘」をスカウトして自分の担当にできるのだ。

 トレーナーと担当ウマ娘。それは絶対的な信頼で結ばれた、いわば運命の共同体。二人三脚で困難を乗り越えるうちに、芽生えるのは熱い友情……そして、その先にある甘やかな愛情! 合宿中の夜の海、クリスマスのお出かけ、バレンタインのチョコの手渡し……!

 トレーナーという「指導者」のポジションから可愛い女の子たちを導き、イチャイチャする。控えめに言って最高すぎる。

 

 善は急げとばかりに、ボクはすぐにトレーナーの資格について調べた。

 驚くべきことに、この世界のトレーナー試験には『性別要件』も『種族要件』も、なんと『年齢要件』すらなかった。ウマ娘がトレーナーになるケースは過去なかったらしいが禁止はされていないと。

 ただ、一つだけネックがあった。

 前世でプレイした、確かビリーヴのシナリオで言及されていたのと同じで、こちらの世界でも本格的なトレーナーになるには「約2年間の修業期間」が必須らしいのだ。

 

 2年。本格化を迎えてトレセン学園に入学するまでの時間を考えれば、今から仕込んでおいて損はない。

 

「というわけで、ボク、今日からトレーナーの見習いになります!」

 

 ボクは今の元中央トレーナーさんに向かって、高らかにそう宣言した。

 

「……は? プイちゃん? 何を言って……?」

「ボクが自分でトレーニングメニューを組みます。アナタはボクの『指導教官』という名目で、ハンコを押す係になってください」

「な、何を馬鹿な! 3歳の子供にそんな――」

 

 トレーナーさんが常識的な反論をしかけたその時、背後からスッと黒い影が差した。父様と母様である。

 

「先生。ウチの娘が『見習いになりたい』と言っているんですがね」

「もちろん、先生の指導教官としての手当は、今の『3倍』お支払いしますわ。ね?」

「サ、サンバイ……!? い、いやしかし年齢的に……」

「ウチの会社がスポンサーになっているレース、ありますよねぇ?」

「……喜んで、見習いトレーナーとしてお迎えいたします!!」

 

 かくして、ボクは3歳にして『見習いトレーナー』の肩書を手に入れた。

 無茶苦茶な展開だが、やはりお金と権力は偉大である。資本主義万歳。

 

 こうして、前代未聞の「見習いトレーナー兼モブウマ娘の幼女」が爆誕した。

 すべては輝かしいクラシック三冠と、あまたの可愛いウマ娘たちをはべらせる百合ハーレムのために。

 ボクの本当の戦いは、ここから始まるのであった。




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