競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話   作:雅媛

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3 モブ(?)ウマ娘、友達を作る

 さて、百合ハーレムという壮大な夢を叶えるために、今のボクに絶対的に必要なものがある。

 それは『友達づくり』である。

 

 将来的に恋人候補になるかもしれないという不純な動機はもちろんだが、現実的な効率を考えても友達は必須だ。

 前世のアプリゲームにおいて、ステータスを爆発的に伸ばすためのカギは『友情トレーニング』である。サポートカードの絆ゲージをオレンジ色まで上げなければ、虹色のキラキラした友情トレーニングは発生しない。

 ボクが自作する最強のトレーニングメニューをこなすには、一緒に汗を流し、絆を高め合える同世代の仲間が不可欠なのだ。

 

 ということで、ボクは指導教官となってくれた元中央トレーナーさんのコネをフル活用し、彼が所属している地元スポーツクラブの『ウマ娘幼少クラス』に体験入門という形でお邪魔することになった。

 同世代の可愛いウマ娘たちが集まるキラキラした空間。まさにハーレム候補生の宝庫である。鼻息を荒くして練習場に足を踏み入れたボクだったが――開始五分で、部屋の隅のパイプ椅子にポツンと座り込むことになった。

 

 実を言うと、ボクは極度のコミュ障である。

「あ、あのっ……」「えと、その……」

 前世で成人男性だった頃からその気はあったが、いざ自分も『幼女ウマ娘』というファンシーな存在になってみると、同年代の女の子の輪にどうやって入っていけばいいのかまるで分からなかった。

「ねえねえ、昨日あのアニメ見たー?」「鬼ごっこしよー!」とキャッキャウフフ騒ぐ元気なちびっ子ウマ娘たちを前に、前世のオタクの魂が完全に萎縮してしまったのだ。

 

(だ、ダメだ……ハードルが高すぎる。正直、大人の男性であるトレーナーさんと専門的な育成論を語り合ってる方が精神的に100倍楽だ……)

 

 百合ハーレムを作りたいのに、女の子と話せない。そんな致命的なバグを抱え、壁の花と化して絶望していたボクの前に、一筋の光が差し込んだ。

 我らが頼れる姉、ブラックタイドである。

 

「おーい、プイ! なーに壁際で縮こまってんだよ!」

「あ、姉さん……」

 

 ボクの愛称である『プイ』を呼びながら、快活な笑顔で近づいてくる姉さん。ボクを気遣って同じクラスに混ざってくれていた彼女の背後には、見慣れない二人のウマ娘の姿があった。

 

「プイ、こいつらのトレーニングに付き合え。さっきかけっこでアタシと良い勝負したから、見どころがあるぞ。紹介する、カメとカネだ」

「……紹介が雑すぎない?」

 

 思わずツッコミを入れたボクの前に、二人のウマ娘が一歩前に出た。

 

「カメじゃない、キングカメハメハだ。よろしく」

「私はカネヒキリだよ。よろしくね、プイちゃん!」

 

 おお……! ほほう、なかなかに良い感じに可愛い子たちじゃないか。

 キングカメハメハと名乗った子は、褐色肌鹿毛の幼いながらもどこか風格があり、凛とした王者のようなオーラを纏っている。

 一方のカネヒキリと名乗った子は、明るい栗毛で人懐っこい笑顔が眩しく、なんだかボクと妙に波長が合いそうな気がする不思議な親近感があった。

 

 二人とも、ボクの脳内にある前世のウマ娘知識データベースには存在しない名前だ。つまり、ボクと同じ『モブウマ娘』なのだろう。

 だが、そんなことは些末な問題だ。モブだろうがなんだろうが、可愛くて性格が合えばそれでいい。むしろ、変に原作のイメージに縛られない分、自由に仲良くなれるというメリットすらある。

 

「ディープインパクトです。見習いトレーナーをやっています。よろしくお願いします」

 

 ボクが大人びた挨拶をすると、キングカメハメハとカネヒキリは目を丸くした。

 

「み、見習いトレーナー? プイちゃん、私たちと同い年だよね?」

「カネ、驚くのはそこじゃない。プイ、お前、見習いとはいえトレーナーなら、私たちに『速くなる方法』を教えてくれるのか?」

 

 カメちゃんが、興味津々といった様子で身を乗り出してくる。どうやら彼女たちは、純粋に走るのが好きで、もっと速くなりたいという向上心の塊らしい。素晴らしい、友情トレーニングの素質は十分だ。

 

「ええ、もちろん。教えますよ」

「本当か!? で、何をすればいい? タイヤでも引くか? それとも千本ダッシュか?」

「いえ。まずは、ボクと姉さんを交えて、じっくりたっぷりと『柔軟体操』をします」

 

 ボクの言葉に、キングカメハメハはズコッと分かりやすくずっこけた。

 

「おいおい、なんだよそれ。そんな地味なことで速くなれるのかよ?」

「なりますよ。というより、速くなるための大前提です」

 

 ボクはキリッとした表情を作ると、指導教官のトレーナーさんから借りた専門書から得た知識を披露し始めた。

 

「いいですか、ウマ娘にとって最大の敵は『怪我』です。特に多いのが、屈腱炎(くっけんえん)や繋靭帯炎(けいじんたいえん)といった、脚の筋肉や腱への致命的なダメージです。これらは一度発症すると、最悪の場合、選手生命を絶たれます」

「せ、せんしゅせいめい……」

「そう。ですが、これらの怪我は、運動前後の念入りな柔軟体操と、運動後の丁寧なアイシングなどによって、発生率を劇的に下げることができるんです」

 

 さらにボクは言葉を続ける。

 

「もう一つの重大な怪我である『骨折』に関しても、適切な食事と、段階を踏んだトレーニングによって骨密度を高めることで予防ができます。つまり、怪我をしにくい頑丈な体を作ることこそが、最強への第一歩。怪我をしなければ、その分たくさんトレーニングができて、結果的に一番速くなれるんです!」

 

 どうだ、とドヤ顔を決めるボク。前世の知識と専門書を融合させた、隙のないロジックである。

 熱弁を振るった後、三人の顔を見回すと――姉さんも、カメちゃんも、カネちゃんも、口をぽかんと開けてボクを見つめていた。

 

「……えっと、わかった?」

「うーん……よく分かんないけど、プイちゃんがすごいこと言ってるのは分かった!」

「カネの言う通りだ。よく分からないが、お前がそこまで言うなら信じてみよう。よろしく頼む、プイ先生」

「あはは、アタシの自慢の妹、頭いいだろ?」

 

 どうやら三歳児には少し説明が難しすぎたようだが、ボクの謎の説得力と見習いトレーナーという肩書きのハッタリには屈してくれたらしい。

 

「よし、じゃあ早速始めましょう。まずは股関節のストレッチから」

「おおっ、なんか本格的だな!」

 

 ボクは指導という名目のもと、三人に向かい合って柔軟体操のお手本を見せる。

 そして、「もう少しここを伸ばして」「そうそう、上手ですよ」と声をかけながら、可愛い女の子たちの身体に触れてフォームを直していく。

 

(うひょー! これだよこれ! トレーナー特権の合法スキンシップ! 柔らかい! 可愛い! 最高!!)

 

 表面上は真面目な見習いトレーナーを装いつつ、内心では前世のオッサン人格が小躍りして歓喜の雄叫びを上げていた。不純な動機100%である。

 

「プ、プイ……これ、結構痛いぞ……」

「カメちゃん、息を止めないで。ふーって吐きながら伸ばすんですよ」

「プイちゃん、私、身体硬いかも……えいっ!」

「ああっ、カネちゃん無理しないで! 筋を痛めたら本末転倒ですから!」

 

 和気あいあいとした、キャッキャウフフなストレッチタイム。

 コミュ障で壁際で震えていたボクが、気づけば同世代の有望なウマ娘たちと輪を作って笑い合っている。

 

 こうしてボクは、最強の姉に加えて、モブだけど将来有望で最高に可愛い友人たちを2人も手に入れることに成功したのだった。

 脳内で『サポートカード:キングカメハメハ』『サポートカード:カネヒキリ』を獲得したファンファーレが鳴り響く。

 

 百合ハーレムへの道は、そして三冠制覇へは順調に近づいていた。




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