競馬ミリしらウマ娘ファンがウマ娘化されていないモブ(?)ウマ娘に転生したので、頑張って百合ハーレムを作ろうとする話   作:雅媛

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5 モブ(?)ウマ娘、友達が増える

 奈瀬文乃トレーナーのチームで土日の助手を続ける中で、ボクには特に仲良くなった一人のウマ娘がいた。

 

『クロフネ』さんだ。

 背が高く、非常に発育のよろしいムチムチとしたスタイル。そして何より、雪のように美しい芦毛の髪を持ったお姉さんである。

 前世のアプリ知識で知る「カレンチャン」という公式ウマ娘に雰囲気がよく似ていて、クッソ可愛い。親戚か何かなのだろうか。ボクの知る限り『クロフネ』なんて名前のウマ娘は未実装なので、彼女もまたボクと同じ名もなきモブなのだろうが、百合ハーレムの構成員としては即戦力もいいところだ。

 

 しかも彼女の経歴を聞いてみると、なんと幼い頃はボクの師匠の元で基礎を学び、そこから奈瀬さんのチームへ移籍してきたのだという。

 まさにボクが将来予定している『エリートモブの成り上がり人生プラン』と全く同じルートを辿っている先輩なのだ。親近感が湧かないわけがない。

 

 クロフネさんは、幼女が生意気にストップウォッチを持ってウロチョロしているのが面白いらしく、なんだかんだですごくボクを可愛がってくれた。

 ボクもボクで、合法的なスキンシップと将来への投資を兼ねて、彼女の練習の半分サポートトレーナーのようなことを勝手に引き受けていた。時には併走メニューに付き合ってあげることもあった。

 

「……プイちゃん、小学生なのに私に付いてこれるって、ちょっとおかしくない?」

「クロフネさんのフォームに見惚れてたら、いつの間にか追いついちゃったんです〜」

「もう、変なこと言ってないで息整えなよ。ほら、お水」

 

 ムチムチの芦毛お姉さんから手渡されるスポーツドリンク。うむ、最高である。

 

 そんな風に、クロフネさんのサポートを通じてトレセン学園の空気に触れていると、ボクは自然と『前世の知識で知っているウマ娘』の姿を生で目撃するようになった。

 

 まずは、クロフネさんの同期にあたる『アグネスタキオン』や『ジャングルポケット』といった面々だ。

 彼女たちのレースを見た時、ボクは思わず「おおっ」と声を出してしまった。前世で見た映画『新時代の扉』の世代じゃないか! と、オタク特有の感動で胸が熱くなった。

 

 特に、アグネスタキオンの走りは狂っていた。

 ヤバい。尋常じゃなく速い。ボクの推しであるクロフネさんですら、ホープフルステークスでは完全に千切られてしまい、全く勝負になっていなかった。あんな化け物じみた脚力、アプリのステータスで言えばスピードUGはあるんじゃないか。

 しかし、歴史の通りというか、タキオンさんはたった4戦で脚の限界を迎え、無敗のままターフを去ってしまった。もしあの走りがずっと続けられていたら、一体どんな記録を打ち立てていたのだろう。そう思わせるだけの圧倒的な底知れなさがあった。

 

 そして『アグネス』といえば、もう一人。クロフネさんを語る上で外せない人物がいる。

『アグネスデジタル』さんだ。

 

 実を言うと、クロフネさんとデジタルさんの関係は、この時期、世間的に見て非常にピリピリしていた。

 事の発端は『天皇賞(秋)』という大きなレースへの出走枠争いだ。

 賞金順で出走がほぼ確定し、万全の準備を整えていたクロフネさん。しかしそこに、別のレースに出ると思われていたアグネスデジタルさんが「やっぱり私、秋天に出ます!」と急遽参戦を表明したのだ。

 結果として、獲得賞金の差でクロフネさんは除外となってしまった。

 

 この一件はニュースでも大きく取り上げられ、「クロフネの出走権を奪った」とデジタルさんを批判する声すら上がっていた。

 だが、ボクが衝撃を受けたのは、その逆風の中でのデジタルさんの態度だった。

 記者会見の席で、マイクを向けられたデジタルさんは、毅然とした態度でこう言い放ったのだ。

 

「――なぜ急に出走を決めたかって? 決まっています。出れば、私が勝ちますから」

 

 背筋がゾクッとした。

 ボクの知る『デジたん』といえば、「ウマ娘ちゃん尊い〜!」と鼻血を出して倒れている、限界オタクのイメージしかなかった。あんな、覇王のような強気の発言をするキャラクターだとは微塵も思っていなかったのだ。

 

 そして極めつけに、彼女はその言葉通り、天皇賞(秋)を勝ってしまった。

 当時絶対的な強さを誇っていた『テイエムオペラオー』や『メイショウドトウ』といった超一流のレジェンドたちを薙ぎ倒しての、完全勝利。有言実行の極みである。

 

(……公式のウマ娘って、設定の枠に収まらない、生きてる『人間』なんだなぁ)

 

 オタクのイメージと、実際の勝負師としての顔。そのギャップを目の当たりにして、ボクは深い感慨に耽っていた。そして同時に、あのデジたんがそこまで本気で生きているなら、ボクももっと彼女たちと直接絡んでみたい、という好奇心が湧き上がってきた。

 

 そうして実感した以上、すぐに行動に移すのがボクの長所だ。

 数ヶ月後、ボクはなぜか、大量の人波が押し寄せる『有明の戦場(東京ビッグサイト)』に立っていた。

 夏の一大イベント、コミックマーケットである。

 

「はい、新刊最後尾こちらでーす! 並んで並んでー! お釣りは出ないように準備してくださいねー!」

 

 パイプ椅子の上に立ち、拡声器で叫ぶ幼女。

 その後ろのサークルスペースで、猛烈な勢いで同人誌を頒布しているのは、頭にハチマキを巻いたアグネスデジタルさん。

 そして、隣のスペースで「ウマ娘の筋繊維における超回復の効率化について」という激ヤバ専門書(新刊)を売りつけようとしている白衣のアグネスタキオンさん。

 さらに、デジたんのサークルの前で、何故か魔法少女のコスプレを着せられ、顔を真っ赤にしながら「最後尾の札」を持っているクロフネさん。

 

 ……なんでだよ。

 なんで、天皇賞(秋)でバチバチだったはずのクロフネさんとデジたんが、一緒にコミケで売り子やってるんだよ。しかも、そこにタキオンさんとボクが混ざって、どういう組み合わせなんだよ本当に。

 

 事の顛末はこうだ。

 レース後、ボクが「デジタルさんとお話してみたい」と奈瀬トレーナーに駄々をこねたところ、心配したクロフネさんが保護者代わりについてきてくれたのだ。

 そこで「天皇賞の時はごめんなさい! お詫びに、尊いクロフネちゃんにこの衣装を着てほしくて!」とデジたんが土下座&コスプレ衣装を献上。ウマ娘の情熱と圧に押し切られたクロフネさんが着替えた結果、その圧倒的なムチムチボディに釣られたオタクたちが長蛇の列を形成。

 さらに、面白がってタキオン(デジたんのルームメイトらしい)さんが「やあやあ、モルモット君も手伝ってくれたまえ」と乱入してきて、今に至るというわけだ。

 

「プ、プイちゃん……これ、お尻の布地が足りてないんだけど……っ」

「大丈夫ですクロフネさん! 超似合ってます! ハーレムの筆頭に相応しいエロスです!」(パシャパシャ)

「ちょっとデジたん、この札どこに持っていけばいいの!?」

「ああっ、タキオンさん、その怪しく光る液体を栄養ドリンクって言ってオタクに配らないでください!」

 

 カオス。圧倒的カオスである。

 

 だが、怒涛の「なんだかんだ」を乗り越え、結果的にこのコミケ出陣は大盛況のうちに終わった。

 共に修羅場(サークル入場から完売までの怒涛の三時間)を潜り抜けたことで、クロフネさんとデジたんの間の謎のわだかまりも消え失せ、すっかり戦友のような顔つきになっていた。

 

 さらには、打ち上げのファミレスでタキオンさんの脚の具合をボクが前世の知識とトレーナーの視点で指摘したことで、「ほう、君はなかなか面白い目を持っているね。私の復帰に向けた実験……いや、リハビリを手伝ってくれないか?」と頼まれたり。

 天皇賞に出られなかったクロフネさんに、「芝がダメなら、ダートを走ってみませんか? 奈瀬さんにも私から進言しますから!」といったアドバイスをしたり。

 

 怒涛の勢いで色々なことが巻き起こったが。

 結果的に、新時代の扉世代のレジェンドたちと「なんだかんだ」で仲良くなれたのだから、ボクの百合ハーレム計画としては大前進と言っていいだろう。

 

 まだまだモブ幼女のボクだが、運命の歯車は確実に回り始めていた。




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