名探偵プリキュア! ~白銀の太陽は昇る~ 作:nest1965
今からワクワクが止まりませんね。
今回も皆さんの暇つぶしになると幸いです。
それではどうぞ。
(怪盗団ファントム……いつの間にこんなものを創っていたんだ……?)
ゆったりと、ごく自然な歩みで怪物へと歩み寄る。
キュアット探偵事務所に籍を置いて二年。数々の事件に立ち向かってきたソラリスにとっても、怪盗団ファントムが新たに生み出した力――ハンニンダーの存在は未知の領域だった。
(大きいが、それ以上に……これは何だ……?)
見上げる程の、己の五倍はあろう巨躯。その威圧感に内心で驚きつつも、それ以上にハンニンダーから放たれる力の気配に違和感を覚えた。
まるでナニカで覆われ、蝕んでいるような、酷く不自然で不快な気配。
思索に耽るソラリスが攻撃射程内に侵入した瞬間、亀のハンニンダーが猛然と右拳を振り上げた。
「っ!? 危ない! 逃げて!!」
「ダメぇ!」
切実な悲鳴が上がる。紫とピンクの髪を靡かせ、必死に駆け寄ろうとする少女達の姿。
その悲痛な表情を視界の端に捉え、ソラリスの眉がほんの僅かに下がった。あの二人がジェットの新たな協力者であることは一目見て理解出来た。
女神を彷彿とさせる気高くも美しい装い。そして何より、他者を思いやる、濁りのない純粋で優しい心。
自分よりも一回りは年若いであろう少女達からジェットと同じくらい、あるいはそれ以上に高潔な意志の輝きを感じる。
そんな、慈しむべき者達が自分のせいで哀しんでいる。そう思うとーーー。
(……悲しくなる)
だからその悲しみを少しでも払拭出来ればと。自分はこのやり方しか出来ないから。
ソラリスは己の深淵に眠る力をほんの僅か解き放ち、拳に纏わせる。調整を間違えば衝撃は彼女達にも及んでしまうが、長年この力と付き合って来たソラリスにとっては容易に制御出来た。
そして、亀のハンニンダーの剛腕が振るわれ、拳が激突する瞬間。
ほんの少し左に、己の体が
そして、最も効果的な攻撃を
真っすぐに放たれた衝撃は亀のハンニンダーの身体に直撃した瞬間爆ぜ、目の前に雷が落ちたのかと錯覚するほどの轟音が響く。
人間の領域を超えた至高の一撃に怪物が耐えられるはずもなかった。巨体はぐらりと傾き、地に落ちた。
△
「な……な、に……今の…!?」
ハンニンダーが地に伏せた。その光景にアゲセーヌはあからさまな恐怖に顔を歪めた。
おおよそ人間がーーー生物が撃ち出せる打撃の威力を明らかに超えている。どうやったらハンニンダーの巨重を拳一発で浮かせられるのか。
プリキュアですらないただの人間が成せるものではない。
理解を拒むような光景を前に、アゲセーヌは先程までの傲慢さを失い、ソラリスを得体の知れない化物を見るような目で凝視していた。
そんな中、ソラリスは動かなくなった亀のハンニンダーからもう一体の向日葵のハンニンダーへと視線を転じる。
「ハンニン!?」
視線が合った瞬間、向日葵のハンニンダーは同胞の惨状に本能的な恐怖を感じたのか、無意識に一歩後退した。
そして、ソラリスが標的を変え、静かに歩み出そうとしたーーーその時。
「はん……にん……だぁぁ!」
打ちのめされたはずの亀のハンニンダーが、苦悶の混じった怒声を上げ再び這い上がってきた。
ソラリスは脚を止め、表情を変えることなく亀のハンニンダーへ振り返る。
その不屈さを見たアゲセーヌは、怯えを振り払うように不敵な笑みを浮かべた。
「ふ、ふん! あんたの攻撃なんて、ハンニンダーには効かないのよ! ハンニンダー! アンタの底力、見せてやんなさい! チョベリバー!」
「はぁ……はぁ……ハンニンダアアアァァ!!!」
「うわっ!? み、耳が……!?」
「ポチ〜!」
両腕を上げ、雄叫びを上げる亀のハンニンダー。その声量に思わず避難していたジェットとポチタンは耳を手で塞ぐ。
「い、今ので倒せなかったのって……」
「やっぱり、浄化出来なかったから……?」
キュアアンサーとキュアミスティックは、何故ソラリスの攻撃でハンニンダーを倒せなかったのか理解していた。
マコトジュエルを媒体に生み出されるハンニンダーを倒す方法は1つ。それはウソで蝕まれたマコトジュエルを浄化すること。それが可能なのは浄化の力を持つキュアアンサーとキュアミスティックの2人だけ。
即ち、ソラリスがどれ程強かろうとハンニンダーを倒すことは不可能なのだ。
「浄化……」
至近距離で怪物の咆哮を浴びながらも、ソラリスは二人の言葉を冷静に聞き届けていた。
そしてーーー
「ーーー君達」
「「っ!!」」
ソラリスは怪物を見据えたまま、振り返ることなく二人に語りかけた。
「私はこの怪物を相手にするから、君達はそっちの怪物を倒してくれ」
「えっ!? で、でも……!」
「ダ、ダメですよ! 私達も一緒に闘います!」
ハンニンダーを倒すにはマコトジュエルを浄化出来る自分達しかいない。
もうソラリスの実力を疑っていない2人だが、だからと言って1人で闘っても勝ち目なんてない。
共闘すれば、勝機は確実なものになるはずだ。必死に訴える少女達に対し、ソラリスはふと、問いを投げた。
「ーーー君達は、何故闘っている?」
「「……えっ?」」
「君達はまだ子供だ。こんな危険なことは、私のような者に任せれば良い。なのに、何故?」
淡々と、抑揚を排した声。
だがその響きには、自分を顧みず戦場に立つ少女達の身を案じている優しさと心配が見え隠れしていた。
何のために闘うのか。
その問いに、2人は明確な理由を、そして答えを持っていた。
「……あの亀は、元々ちほさんが大切にしていた置物なんです。それが……怪盗団ファントムのせいで、ハンニンダーになったんです!」
「物に込められた想いが……何も見えてない! そんな怪盗団ファントムを私達は絶対に許せない!」
「「私達はーーー私達の歩みを止めない!! それが私達が闘う理由です!!!」」
迸るような揺るぎない意志。それを受け止めたソラリスは溜息のような吐息と共に「そうか」と答えた。
そして、ゆっくりと二人へ顔を向ける。
「ーーー君達はとても優しい」
その漆黒の瞳が、真っ直ぐに彼女達を射抜いた。
「他者を想いやれる心を持っている。とても強い意志を持っている。……本当にすごいと思う」
声音も表情も、凍りついたように変わらない。
だが、その言葉に込められた熱量だけは、確かな真実として彼女達に伝わった。
「私は君達をーーー心から尊敬する」
「「ーーーっ!」」
遥か年上の男性から告げられた、混じりけのない敬意。二人はその純粋な想いに圧倒され、言葉を失った。
「ハンニンダー!!」
その沈黙を切り裂くように、亀のハンニンダーが死角から拳を振り下ろす。
「「あぁっ!?」」
ソラリスは亀のハンニンダーに背中を向けている。
完全な死角からの攻撃。
直撃は免れない。
思わず手を伸ばすキュアアンサーとキュアミスティック。
しかし、ソラリスはまるで見えていないはずの背後の動きを予知していたかのように、左手を掲げ、掌で受け止めて見せた。
「「っ!?」」
大地が揺れる衝撃。しかし、一歩も退かず微動だにせずソラリスは二人を見つめ続ける。
「……多分私は、この怪物を浄化出来ると思う」
「えぇっ!?」
「そ、そうなんですか!?」
プリキュアの力を宿していない彼にそんな奇跡が可能なのか。
疑問に思うキュアアンサーとキュアミスティックだったが……。
「ハンニンダァァァァ!!!」
先程の亀のハンニンダーをダウンさせた強烈な一撃。そして今尚、一度も目視することなく片手で往なし続けるその異様な光景を見て、彼の言葉にどこか真実味が帯び始めていた。
どんなやり方は不明だか、この人なら出来るかもしれない……と。
「だから君達は、君達のやるべき事をやってくれ。ーーー幸い、ジェットから
「き、許可……ですか?」
「い、いったい、何の……?」
「許可」という不穏な響きに困惑する二人だったが、思考を巡らせる暇は与えられなかった。
向日葵のハンニンダーが、鋭い蔦を鞭のようにしならせて襲いかかってきたからだ。
キュアアンサーとキュアミスティックは咄嗟に左右に避け、向日葵のハンニンダーに向き合う。こちらも闘いが始まる。そうなれば、ソラリスの援護が出来なくなる。
最早迷っている時間はない。
「ソラリス”先輩"! 絶対に負けないでください!」
「終わったら、すぐ行きますから!」
そう言って、キュアアンサーとキュアミスティックは向日葵のハンニンダーへ突撃していく。
「……あぁ、その時は頼む」
小さく呟きなが2人の後ろ姿を見届け、ソラリスは亀のハンニンダーが打ち出した拳を掌で受け止めると、少し押し返すように力を込める。
「ハンニンダー!?」
たったそれだけで後方によろめいた亀のハンニンダー。
ソラリスは改めて身体を正し、自然体でその場に佇んだ。
「ーーーハンニンダー!!」
執念を燃やす亀のハンニンダーは両脚に力を込めるとアスファルトを砕き、目の前に存在する小さな怪物に突撃した。
△
ーーー闘いは一方的に進められていた。
亀のハンニンダーは、底知れぬ体力を絞り出すように休むことなく打撃の雨を降らせる。
丸太のような腕、大槌のような脚、そして巨体そのものを使った押し潰し。
しかし、ソラリスはその全てを最小限の動きで躱し続けていた。
その場からほぼ動くことなく僅かに身体を逸らし、衝撃を逃がし、攻撃の点をずらして。
何も考えず、ただ
ーーー闘いは、攻撃している亀のハンニンダーではなく、その全てを往なすソラリスが一方的に進めていた。
ただ、あれからソラリスは一度も攻撃をしていない。
彼はずっと考えていた。目の前の亀のハンニンダーのことを。
ーーー元々ちほさんが大切にしていた置物なんです。
キュアアンサーの言葉が何度も頭の中で反響する。
誰かに慈しまれ、想いが込めらていたはずの置物。それを怪盗団ファントムによって暴力の道具へと作り変えられ、その意志に反して暴れさせられている。
ソラリスはとても悲しかった。
人が大切にしている物が盗まれ、更にはそこに込められた想いが踏み躙られたことに。
そして理解した。
この怪物もまた、被害者なのだと。
ソラリスの漆黒の瞳が亀のハンニンダーを捉える。
相変わらず攻撃を繰り出しているが、その瞳の奥底にいる亀の置物が泣いているように思えた。助けを求めているように感じた。
「……すまない」
何も理解してあげられず、ただ「敵」として殴ってしまって。
ソラリスは呟くように謝罪した。
攻撃を躱し続ける中、チラリと視線をキュアアンサーとキュアミスティックに向ける。
闘いは優勢に進められているようで、キュアアンサーの回し蹴りが向日葵のハンニンダーの顔面を蹴り飛ばし、よろけた所を跳躍していたキュアミスティックが両脚で踏み付るように蹴り、体勢を崩した。
流れるようなコンビネーションに感心するソラリス。
そしてキュアアンサーとキュアミスティックは手に煌びやかな七色の懐中時計ーーージュエルキュアウォッチを持ち、長針を11時に合わせ。
「「これが私達の!! アンサーだアァァァッ!!」」
足並みを揃えて、アスファルトに足が食い込む程踏み込んだ後、突撃。桃色の閃光となって向日葵のハンニンダーの巨体を貫いた。
「「キュアっと解決!」」
直後、向日葵のハンニンダーは光の粒子となって消滅。その跡に、濁りの消えたマコトジュエルが浮かび上がり、キュアアンサーが手に取った。
(……成程、あれが彼女達の浄化か)
向日葵のハンニンダーの胴体を貫いたにも関わらず、その体に風穴は開いていなかった。
そして桃色の閃光と化したキュアアンサーとキュアミスティックの力の気配はより透き通ったものに変化していた。
恐らく向日葵のハンニンダーの体を貫いた時、2人の透き通った力を直接流し込んだことで浄化したのだろうとソラリスは推測する。
(やはり、浄化するには
やり方は今見た。
ジェットから許可は貰っている。
なら、後は実践するだけ。
ソラリスは再び亀のハンニンダーを見据えた。
△
向日葵のハンニンダーを浄化したキュアアンサーとキュアミスティックはソラリスの元へ駆け出している。
これで3体1。数的有利は取った。
しかし、彼女達の心は戦況への安堵よりも、ソラリスへの畏怖に支配されていた。
(ジェット先輩の言った通りだった……!)
(ソラリス"先輩"……私達よりずっと強いっ!)
亀のハンニンダーに放った強烈な一撃。目視せずあらゆる攻撃を捌いて見せたあの光景が目に浮かぶ。
闘いをあまり経験していない素人?
弱く見た?
とんでもない。彼は強者。それも自分達よりずっと格上の。
プリキュアに変身出来るようになり、強力な力を得たからこそ浮かれていた。侮っていた。
ソラリス"先輩"は強い人
それが今の2人の共通認識となっていた。
2人は猛省しつつ、ソラリスの援護に向かう。
そんな中、先程から攻撃を躱すだけだったソラリスの動きに変化があった。
亀のハンニンダーが放った渾身の右拳。それを掌で受け止めたソラリスはそのまま自身へと引き寄せた。
体格差から必然的に地面へと引き寄せられた亀のハンニンダーは咄嗟に左手と両膝を付く。その巨体を腕一つで崩す膂力に思わず目を見開くキュアアンサーとキュアミスティック。
そして、体勢を崩された亀のハンニンダーにソラリスは近付くと腹部に右の掌を添えた。
先程の破壊的な一撃とは対照的な、まるで割れ物にでも触れるような優しい接触。
一体何をするつもりか。誰もがソラリスの行動に注目した。
瞬間
亀のハンニンダーの身体が白く光り輝き出した。
それは先程の向日葵のハンニンダーを浄化した時と全く同じ、聖なる輝き
ハンニンダーが浄化されている。その奇跡にその場にいる者達は息を飲むことしか出来なかった。
「ハン……ニン……だぁ……」
身体が消滅していく。
本当に浄化して見せた。自分達とは全く異なるやり方で、あんなにも簡単に。
キュアアンサーとキュアミスティックは目の前の現象に、ソラリスに釘付けになる。
そして身体が消滅していく中、亀のハンニンダーの目がソラリスに向けられーーーそっと微笑ん だ。
(……えっ?)
(い、今のって……?)
戦いの終わりの虚しさではない。愛された「物」として、元の姿に戻れることを喜ぶような、温かな笑み。
ほどなくして亀のハンニンダーが完全に消滅すると、そこには元通りの亀の置物と、清らかな輝きを放つマコトジュエルが残されていた。
ソラリスはそれを壊れ物を扱うように両手で優しく掬い上げた。
「は、はぁぁっ!? 何それっ!? アンタ何したし!?」
先の打撃と言い、マコトジュエルの浄化と言い、何もかもが未知で理解出来ない。本当に人間なのか怪しく見えてきた。
ハンニンダーを倒され、マコトジュエルも取り返され、憤慨するアゲセーヌは怒号を上げる。
しかし、ソラリスは亀の置物とマコトジュエルを見つめたまま一言も発しない。
「〜〜〜っ! チョームカつく!!」
無反応に憤るが、ハンニンダーと言う戦力が無くなり完全に分が悪くなったアゲセーヌは撤退を選択。
ハイビスカスの花を召喚すると体を包み込み姿を消す。
同時にドーム状に生成された密室空間が解かれ、世界は元の色を取り戻す。
「「………」」
怪盗団ファントムを退け、マコトジュエルも護れた。何もかも解決した。
しかし、キュアアンサーとキュアミスティックは呆然とソラリスを見つめたまま立ち尽くしていた。
強かった。
打撃も凄かったし、ハンニンダーの攻撃を全て捌いて見せたのも凄かった。
しかし、何より2人が着目したのはハンニンダーを浄化する時の彼の行動。
自分達とは違って手を静かに添えてーーー優しく浄化して見せた。
敵であるはずのハンニンダーに対して出来るだけ傷付けないよう慈悲を持って振舞っていた。
ソラリス"先輩"はただ強いだけで無く、とてつもない優しさも兼ね備えた人だった。
そんなソラリスの優しさと慈悲深さに一種の憧憬を抱いたキュアアンサーとキュアミスティック。
ふと、まことみらい市を覆っていた雲の隙間から太陽光が差し込み、ソラリスの姿を白く照らし出した。
依然として亀の置物とマコトジュエルを見つめている。
表情に変化はなく、ただただ無表情。
しかし、その漆黒の瞳はーーー太陽のようにキラキラと輝いていた。
愛おしそうに、手にした「宝物」を映し出し、太陽よりもずっとキラキラと、温かく輝いていた。
「「ーーー」」
その姿があまりにも眩しくて。
亀の置物とマコトジュエルを見るその瞳が尊くて。
二人はしばらく、ソラリスを静観していた。
△
「ーーー何だ、あの男は?」
怪盗団ファントム、本拠地。
劇場の如き巨大な空間。無人の客席を見下ろすVIP席で、戦いの一部始終を観察していた者がいた。
貴族のような装いと騎士のような鎧を纏い、仮面で素顔を隠す男。
怪盗団ファントム首領、ウソノワール。
この男こそが世界を「ウソで覆われた世界」にする為に、マコトジュエルが封じられた品を奪取する命令を下し、マコトジュエルを集めようと暗躍している元凶。
そのウソノワールが、モニター越しに映し出されるソラリスの姿を前に、憤怒で身体を震わせていた。
「何だ、あの強さは……!? 何故ハンニンダーを浄化出来た……っ!?」
握り締めた肘掛けが、悲鳴を上げて砕け散る。
ウソノワールが新たに開発したハンニンダー。名探偵プリキュアが2人かがりでもある程度渡り合える戦力のはずだった。
だが、モニターに映るソラリスはたった一撃でダウンさせた。挙句ハンニンダーでさえ触れただけで浄化して見せた。
ただの人間がだ。あり得ない。だが現実としてやってのけた。
ウソノワールは焦燥を隠せず、マコトジュエルが込められた物品のありかとあらゆる未来が記された
そこにソラリスの名が、その秘密が記されているはずだと信じて。
「書いてない、だと? 馬鹿なっ!?」
しかし、全ページを読み終えてもそこにはソラリスに関する記述は一文字もなかった。
これもまたあり得ないことだった。
あらゆる未来が記されているはずの
明らかな動揺を見せるウソノワール。
「クッ……あの男、何者だ……!」
ハンニンダーを浄化出来る人間。完全なイレギュラー。約束の時が近いと言うのに、名探偵プリキュア以上の厄介な存在の出現に苛立つ。
「……奴を調べる必要があるな」
情報がない以上、あらゆる手を使って調べ上げる必要がある。
ウソノワールはソラリスと言う人間の情報を収集する為動き出した。
△
同時刻、人気の無い街の裏路地を歩く一人の少女と抱き抱えられている妖精がいた。
亜麻色のセミロングヘアとペンダントを首に下げ、黒いケープを羽織り、同色のスカートを身に纏っている。
怪盗団ファントムの幹部、キュアアルカナ・シャドウ。
そして紫色の体毛と緑色の瞳、ややツリ目となっている。
怪盗団ファントムのマスコットにして、キュアアルカナ・シャドウのおとも妖精、マシュタン。
「あの子達、面白かったわね」
「……うん」
マシュタンの言葉にキュアアルカナ・シャドウは小さく頷く。
名探偵プリキュア
幹部報告会に上がった存在。
キュアアルカナ・シャドウとマシュタンは同じプリキュアの力を宿す彼女達に少し興味があった。
その為アゲセーヌへウソノワールからの伝言を伝えた後、キュアアンサーとキュアミスティックの闘いを建物の屋上で観戦していた。
まだ闘い慣れていないせいか、技や駆け引きは無く、プリキュアの力を強引に押し通すだけの力技。だけど息のあったコンビネーション。
中々面白い子達だった。見て損はなかったと、少し思える存在だった。
「……あの人間は何なんでしょうね?」
先ほどの楽しそうな態度から一変、マシュタンの声色は困惑と怪訝に変わる。あの人間と言うのが誰なのかキュアアルカナ・シャドウは理解していた。
ソラリスと呼ばれていた男。
ハンニンダーを一撃で捻じ伏せ、名探偵プリキュアとは異なる方法で浄化技を使って見せた存在。特にマシュタンが懸念したのはハンニンダーへの一撃。
あの打撃が打ち込まれた時の衝撃は、建物の屋上に居た自分達の胸や腹にまで伝わり、キュアアルカナ・シャドウの髪すら揺らす程だった。
もし、キュアアルカナ・シャドウにあの力が向けられたらと思うとゾッとする。
今後、あの男と対峙するだろう。キュアアルカナ・シャドウが負けるとは微塵も思っていないが、それでも心配だった。
「………」
マシュタンの不安を余所に、キュアアルカナ・シャドウは心ここにあらずといった様子で歩みを進めている。
「……さっきから何か考えてるようだけど、どうしたの?ーーーるるか」
マシュタンは先程から上の空になっているキュアアルカナ・シャドウーーー森亜るるかを心配そうに声をかける。
「……ううん、何でもない」
るるかは心配かけまいと返事をするが、やはりどこか上の空だった。
彼女は先程の光景を何度も思い出していた。
ハンニンダーが浄化されるあの時。
瞬きすら遅いと感じるほどの、僅かな瞬間。
ーーーソラリスの髪が
「………」
るるかは否定するように小さく頭を横に振る。
プリキュアであれば変身時、髪色が大きく変化することはあるが、ソラリスはどう見てもプリキュアでは無い。故に髪色が急に変化するなんてあり得ない。それに一瞬の出来事だったので、見間違いであったと結論付けた。
ふと、雲の隙間から太陽の光が降り注ぎ、るるかとマシュタンを照らした。脚を止め、二人は目を細めるがるるかはその太陽の光を一瞬見た後、静かに瞼を閉じた。
ーーー森亜るるかは嘗て、本物の太陽を見たことがある。
瞼を閉じれば、いつだってあの時の光景を思い出すことが出来た。
白銀に輝き、熱を放ち、人ならざる者の威を持っていた、あの後ろ姿。
忘れたくても決して忘れることが出来なかった。
あの白銀の輝きに目を奪われたから。
あの太陽の如き熱に心を焦がされたから。
あの全てを平伏す威に魂が震えたから。
瞼を開ける。
太陽の光は再び雲に隠れ、街は灰色に戻っていた。るるかは光を追い求めるように薄暗い裏路地を再び歩み出す。
そして雲に隠れてしまった、自分を照らしてくれた嘗ての太陽に呟いた。
(……何処に、行ってしまったの……?)
ーーー私の太陽
Q.ジェット先輩の許可って何ですか?(byあんな)
A.ソラリスがある力を使うにはジェットの許可が必要。
これは2人で決めた約束であり、ソラリスにとってこれは絶対に守らなければいけないものだと思っている。
また、それとは別に「その場に自分以外の人間がいない」という条件に限り、
ただこの設定活かせる時来るのかなぁ。
Q.力の気配って何なんですか?(byみくる)
A.気のこと。ただし、主要キャラがまだ気の概念を知らないのでこう言う表現にしている。
Q.どうやってハンニンダー浄化したし! チェベリバー!(byアゲセーヌ)
A.「質の高いクリアな気」を流し込んでウソを浄化した。
この気が何を意味するかはみなさんご存知の通り。
また、この気を使うには上記のジェットの許可が必要なので、それがないとソラリスはハンニンダーを倒すことが出来ない。
Q.亀のハンニンダーはどこから出てきた? 死ぬところだったぞ(byジェット)
A.アニメと同じ亀の置物から。
ただ、ソラリスの活躍を作るために作者の都合で生み出された可哀想なハンニンダー。ちゃんと浄化したから許して。
Q.
A.んなわけねーだろ。ただソラリスの出生が少々特殊なせいで書かれていない。
Q.あの人の髪、銀色になった?(byるるか)
A.オラにも分かんねぇ(すっとぼけ)