名探偵プリキュア! ~白銀の太陽は昇る~ 作:nest1965
また、今回も皆さんの暇つぶしになると幸いです。
それではどうぞ。
怪盗団ファントムとの激闘を辛くも制し、守り抜いた亀の置物を「カメリアインテリア」へと無事返却したあんなとみくる。二人は事件解決の達成感に包まれながら、これから始まる探偵生活に必要な雑貨を買い込み、キュアット探偵事務所へと戻った。
「「ーーー出来たぁ~!! わたし達の探偵事務所!!」」
「ポチ~!」
ふかふかのクッション、真新しい木製のテーブル、そして部屋の主役となる愛らしいピンクのソファー。あんな、みくる、そしてポチタンは自分達の手で色鮮やかに生まれ変わった事務所を眺め、喜びで瞳を輝かせていた。
「お、お金がぁ……」
それとは対照に全財産を使い果たしたジェットは肩を落とし、空っぽになった財布の底を悲しげに覗き込んでいた。
「……ジェット、金なら私も持ってきている。必要な時は私の金を使うと良い」
「うぅ、すまない……ソラリス」
そんなジェットを慰めるのは長身の黒髪黒目の青年、ソラリスである。
雑貨の購入後からジェット達に同行し、ソラリスはキュアット探偵事務所 まことみらい市支部へと案内された。
インテリアの搬入の際、彼が一人では到底動かせないはずの重厚なソファーやテーブルを事も無げに片手で持ち上げて配置した姿に、あんなとみくるは度肝を抜いた。
その超人的な光景にポチタンまでもが目を丸くして驚く中、ジェットだけは「相変わらず凄いな……」と呆れつつもその力に同じ男として何処か憧れの眼差しを向けていた。
「よぉし! それじゃ、早速!」
「自己紹介、しましょう!」
「ポチポチ!」
あんながポチタンを抱き抱え、みくると共にピンクのソファーへとはしゃぎながら腰を下ろす。それに応えるように、ジェットとソラリスも向かい側のソファーに落ち着いた。
道中で簡単な挨拶は済ませていたが、共に歩む仲間として改めて互いを知る機会が必要だと、誰からともなく言い出したのだ。
そしてトップバッターとして、あんなが元気よく口を開く。
「こほん、初めまして! わたしは明智あんな、14歳です! よろしくお願いします、ソラリス”先輩”! この子はわたしたちのおとも妖精のポチタン!」
「ポチポチ!」
「小林みくるです! あんなと同じ14歳です! よろしくお願いします、ソラリス”先輩”!」
元気よく挨拶をする2人と1匹。
真っ直ぐな敬意を向けられたソラリスは彼女達を見つめた後、隣に座るジェットへ視線を投げた。それに応えるように、視線だけで会話が成立する。
ーーー年齢も言わなきゃダメか?
ーーーボクは言ったぞ? 222歳ってな!
ジェットはふんすッ! と鼻を鳴らして胸を張り、頬張ったポップキャンディを転がしながらドヤ顔を見せる。
わずか二年の付き合いとはいえ、言葉を介さずとも意志を疎通させる二人の間には、積み重ねてきた確かな時間が流れていた。ソラリスは短く息を吐くと、あんな達に視線を戻し、落ち着いたトーンで口を開いた。
「……私はソラリス。歳は23歳。ロンドンではジェットと働いていた。これからは君達と一緒に働くことになる。……よろしく」
言葉と共に、流れるような自然な所作で軽く会釈する。その洗練された大人の作法を目の当たりにしたあんなとみくるは思わず感激した。
「は、はなまる大人だ……」
「9歳年上の……大先輩……!」
「ポチぃ……」
「……ちょっと待て、ボクはソラリスより199歳年上だぞ?」
あんな達の反応が、初めて自分と会った時とはまるで違う。
不服だと言わんばかりにジェットは年上マウントを取り始めた。自分こそが最年長であり、大人であるはずだと。
あんなとみくる、ポチタンはソラリスとジェットを交互に見る。
体格も立ち振る舞いも大人なソラリスと自分達より小柄でポップキャンディを口に咥えているジェット。
「……ジェット先輩も大人だよ!」
「うんうん! 尊敬しちゃうな~」
「ポチ〜!」
「お前達今どこ見て言った?」
嘘は言っていない。ただ比較はされた。
「ボクの方が年上なのにっ!」と憤慨するジェット。そんな彼にソラリスは表情を変えず、しかしどこまでも真摯に言葉を紡ぐ。
「ジェットは私よりずっと大人だ。私の知らないことを多く知っているし、私達のために寝る間も惜しんで役立つ道具をいつも発明してくれている。……本当に凄いと思う」
「……ふん、そんな事知ってる! でも流石はソラリス、分かってるじゃあないか」
ソラリスにべた褒めされたことで、ジェットはたちまち機嫌を良くし、誇らしげに腕を組んで鼻を鳴らした。その後もソラリスが淡々と、かつ淀みなくジェットの功績を挙げ続けるたび、ジェットの表情は明るくなっていく。
((お、お父さんだ……))
(ポチ……)
どちらが年上でどちらが年下なのか。そんな疑問をあんなとみくる、そしてポチタンは静かに心の中で完結させた。
△
「ーーー名探偵プリキュア。話には聞いていたが……実在したのか……」
それからジェットから詳しく聞かされたのは、あんなとみくるが名探偵プリキュアであるという驚愕の事実だった。
自分の心の中にあるマコトジュエルでプリキュアになるという、歴史上数人しか存在しない伝説の存在。
それが今、自分の目の前に二人も揃っている。
そして理解した。本来畳む筈だったキュアット探偵事務所 まことみらい市支部にジェット以外の外部関係者が存在し、綺麗に掃除され、新たに備品を購入していた理由。
彼女達が名探偵プリキュアとして、怪盗団ファントムからマコトジュエルを護るために闘ってくれるのだと。
「あの……信じてくれるんですか?」
「……あぁ、信じよう。実際にこの目で見た。それにジェットも証言している」
不安な顔をしていたあんなに対し、ソラリスは迷いなく答えた。
彼はジェットが自分の目で見たものしか信じない性分だと知っている。そのジェットが二人を名探偵プリキュアだと言っているのだ。信じない理由がなかった。
「ジェット先輩のこと、本当に信頼してるんですね……何だかソラリス”先輩”とジェット先輩って、わたし達とポチタンみたい!」
「あっ! それ分かるかも! ジェット先輩がソラリス”先輩”のおとも妖精みたいな!」
「ポチポチ!」
「ボクがソラリスのおとも妖精ぃ?」
ジェットは眉間を寄せる。
ジェットもソラリスも、互いに信頼し合っていることが会話や態度から見て取れる。
みくるの発言は、そんな2人の関係性を示す最適な表現だった。
「……おとも妖精じゃないけど、まぁ信頼はしてるな」
「……ありがとう」
「ふんっ」
自分を信頼してくれていることに感謝を述べる無表情のソラリスに対し、照れているのか顔を背けるジェット。
そんな2人の態度に思わず笑みが零れるあんな達。
「ーーーところでソラリス”先輩”! わたし、ソラリス”先輩”に質問があります!」
「わたしも! 質問、あります!」
唐突にみくるがビシッと手を挙げ、続くようにあんなも手を挙げる。
二人共、ジェットから話を聞いた時からずっとソラリスのことが気になっていた。
性格や人柄は怪盗団ファントムとの闘いと今までの会話で知ることが出来た。2人が知りたいのはそれ以外のこと。
「私も聞きたいことがある。君達の後で聞いて良いか?」
「「もちろんです!」」
揃って答えた後、2人は質問を開始した。
『探偵を始めたきっかけは!?』
『ジェットにスカウトされたんだ』
『背が高いです……何cmあるんですか?』
『確か……185cmはあったと思う』
『日本語上手ですね!』
『ロンドンで沢山勉強したんだ。……日本語は想像以上に難しい』
『『好きな人とかいますかっ!?』』
『……いや、いないな』
探偵に関することから個人に関するものまで様々な質問に、ソラリスは一つ一つ丁寧に答えていった。
「ーーー最後の質問、良いですか?」
十数分に及ぶ質疑応答の末、最後にあんながずっと心に抱いていた疑問をぶつけた。
「どうして……あんなに強いんですか?」
それはあんなとみくるがここに来るまでの間、ずっと思っていたことだった。脳裏に浮かぶのは先の戦闘。
全身を貫くほどの衝撃を放った打撃。あらゆる攻撃を回避して見せた動き。そしてハンニンダーを浄化して見せたあの力。
2人の常識から大きくかけ離れたあの光景は、彼女達の好奇心を大いに刺激した。
名探偵プリキュアとして怪盗団ファントムと戦う以上、一定の強さは必要だが、ソラリスのそれはまさに規格外。
何をし、どのようにしてあれだけの力を身に付けたのか。あんなとみくるは憧憬と少しばかりの畏怖が混じった眼差しを向ける。
「……君達も私をそんな目で見るのか」
「「えっ?」」
「いや、何でもない」
ソラリスは一呼吸置いた後、あんなの質問に答えた。
「私の強さは特別でも何でもない。ただひたすらにトレーニングをしてきただけだ。君達もトレーニングをしていけば、あれくらい簡単に出来るようになる」
「そ、そうなんですか……?」
「で、出来るかなぁ?」
トレーニングの内容は知らないが、それくらいであの力を身に付けられるだろうか。首を傾げる2人だが、ソラリスが嘘をついてると思えないので、彼女達は取り敢えず受け入れた。
「……次は、私から質問して良いだろうか?」
「「はい! ソラリス"先輩"!!」」
「……その前に聞きたいことがあるのだが……その、"先輩"と言うのは一体……? いや、意味は知っているのだが……」
二人の質問が終わり、今度はこちらの番だと思っていたソラリスであるが、先程からあんなとみくるが幾度となく言っている"先輩"と言う単語に困惑する。
「「それはもう、名探偵としてわたし達の"先輩"ですから!」」
「……私はそう言われるほど慕われる存在ではないのだが……」
口を揃え、尊敬の眼差しを向けるあんなとみくる。ソラリス自身、探偵としてまだ二年しか活動していないので"先輩"と言われる筋合いはないと思っている。そもそも探偵であって"名"探偵ではない。
ただ、だからと言って2人の意志を無碍にすることも出来なかった。
「……分かった。私のことは好きに呼びなさい」
「「はい! ソラリス"先輩"!」」
(慣れない……)
少々歯痒い気もするが、これはもう慣れていくしかない。気を取り直して、今度はソラリスが質問を始めた。
「それでは君……明智あんなさん」
「あっ、わたしのことはあんなで良いですよ!」
「わたしもみくるって呼んでください! ソラリス先輩は大先輩ですから!」
「……君達がそれで良いなら」
距離の縮め方が速い。しかし子供らしい2人の姿はとても微笑ましく、悪くない気がしていた。
「では……あんな、君に聞きたいことがある」
「はい、何ですか!」
元気に返事をするあんな。しかし、ソラリスはあんなの顔を見つめた後、その視線を抱き抱えられているポチタンに移す。
「ポチ?」
視線を向けられたポチタンはコテンと首を傾げた。
そして再びあんなに視線を戻すと、ソラリスは明智あんなと言う少女の核心を突く一言を発した。
「君ーーー
「‥‥…ぇっ?」
「ーーーっ!?」
「ソラリスお前……分かるのか……!?」
ソラリスの一言で場が騒然した。
あんなとみくるは目を大きく見開き、ジェットは思わずソラリスへと身を乗り出す。実はジェットは名探偵プリキュアの話をした時、あんなが未来から来た人間だということを教えていない。
理由は単純で、いくらジェットの証言とはいえあんなが未来から来ました、なんて話を信じることが出来ないと思い、ソラリスと2人っきりになった時に詳しく話すつもりだった。
だというのにソラリスは誰に何かを言われていないにも関わらず、あんなが未来の人間だと言い当てた。
「な、なんで……分かったんですか……!?」
「ポチタン……時空を越えると言われている「時空の妖精」。 初めて見た時は君達2人、もしくはどちらかが別の時代からやって来たのだと思った」
けど、とソラリスは続け。
「私は日本のファッション事情には詳しくないが、少なくてもあんな、君の服装はこの時代の人達と比べてかなり最先端なものだと思う。素材もかなり良いものが使われている。これらとポチタンのことも併せて、君が未来から来たのではないかと思った」
一通り自身の推理を展開したソラリスは小さく息を吐き、あんなの顔を見てみる。
するとあんなとみくるはその推理の切れ味にわなわなと肩を震わせ、尊敬の眼差しを向けていた。
「す……すごい……はなまるすごい! ポチタンとわたしの服で分かっちゃうなんてっ!?」
「で、伝説の……
「いや、伝説でもなければ名探偵でもない」
冷静に無表情でツッコミを入れるソラリス。というか伝説の
推理して犯人を見つけたら血祭りに上げるのだろうか? これとも岩盤に叩きつけるのだろうか?
ソラリスは困惑した。
「ソラリス先輩の言う通り、わたしはポチタンと一緒に未来から来たんです」
「ポチ!」
それからあんなを中心に事情を話した。
2027年から時空を超えてやってきたこと、名探偵プリキュアに成れた経緯、みくるやジェットと出会い、元の時代に戻るためにはマコトジュエルが必要なことなど、その全てを。
そんなあんなの話をソラリスは口を挟むことなく、静かに聞き入れていた。
「……あんな」
そして、全てを話し終えると真剣な眼差しをあんなに向ける。
「……寂しくはないか?」
「えっ? 寂しい、ですか?」
キョトンとした顔をするあんなに対して、話を聞いたソラリスは1つの懸念が心を襲っていた。
それはあんなにとって過去であるこの時代では、両親や知り合いは存在しない。即ち、本当の意味で独りであると言うこと。14歳の少女にとって、それはあまりにも残酷で、耐え難い孤独なはず。
そんなあんなを思うと、ソラリスは悲しい気持ちになった。
彼もまた、独りの寂しさを十分理解しているから。
「ーーー大丈夫です!」
しかし、あんなはそんなこと気にしていないと言わんばかりに笑って見せた。
「確かにお母さんと離れ離れになっちゃったのはちょっと寂しいけど、今はみくるにポチタン、ジェット先輩がいます。それに、今日からはソラリス先輩も! だから寂しくないです!」
「あんな……」
無邪気に笑って見せるあんなに、思わずみくるも笑みを溢す。
しかし、ソラリスはその笑みの奥底に寂しさが見え隠れしているように思えた。
「……力になれるか分からないが、何かあったら私かジェットにすぐ相談しなさい」
「はい! ありがとうございます、ソラリス先輩!」
不安は拭えないものの、もしもの時は自分やジェットが支えよう。そう思いひとまずこの話はここまでとした。
「……それじゃ、次の質問を君達二人にする」
気を取り直して次の……ソラリスがする最後の質問を二人に投げかける。
「君達が探偵として活動していく中で、二人の意見や推理が異なる時が必ずある。その時、君達はどうする?」
まるで姉妹のように二人の仲は良い。しかし、個性やものの考え方が違う以上、必ず何処かで食い違いが起こる。
その時二人はどうするのか。それは探偵として活動してきたソラリスの問い掛けだった。
「えっと〜……」
「う〜ん……」
その問いにあんなとみくるはしばし考える。そして、先に口を開いたのはみくるだった。
「その時は、あんなの直感に任せるかも!」
「えっ? わたしの!?」
「うん! だって、あんなのお陰で事件が解決出来たことあるし!」
「それを言うならみくるだって、わたしより色んなこと知ってるし、みくるのおかげで解決出来た事件もあるよ! わたしだったらみくるに任せる!」
「ポチポチ! キュアキュア〜!」
ワーワーキャーキャーと騒ぎ立つ二人と1匹。良い意味でどんどんヒートアップしていく二人にジェットが顔をしかめ、喧しいと注意しようとした時。
「ーーーそれで良い」
平坦だが響き渡るソラリスの声が彼女達の鼓膜を震わせる。しかし、その声色はどこか温かみを含んでいた。
「意見や推理が異なったのなら、今の君達のように互いを尊重し、意見を出し合えば良い。そうすれば、見えてこなかった答えが見えてくる」
それはやろうと思えば誰にでも簡単に出来ること。だけど意外と難しいことでもある。しかし、あんなとみくるにはそれが出来ていた。
「大切なのは相手の意志を尊重しつつ、自分の意志を信じること」
「相手の意志を尊重して……」
「自分の意志を信じる……」
「そうだ。それさえ出来れば、良い探偵になれると思う。そういう意味では、君達は本当に"名"探偵になれる」
探偵としてのソラリスが大切にしている心構え。彼の言葉はあんなとみくるの心に深く響いた。
「……やっぱりソラリス先輩は、伝説の
「いや、違う」
だから何だよ伝説の
推理する意志を見せなければ、この星を破壊し尽くすのだろうか?
「私から聞きたい事は以上だ。皆、改めて、これからよろしく」
「「はい! よろしくおねがいします!!」」
「ポチポチ〜!」
「あぁ、またよろしくな、ソラリス」
挨拶を済ませたソラリスは彼女達を、そして新たな職場となるキュアット探偵事務所を見渡す。
これから始まる新たな探偵生活、そして怪盗団ファントムとの戦い。
人の想いを踏み躙らせはしないと、心の中で強く誓うのであった。
「それじゃあ、ソラリス先輩の歓迎パーティーやろうよ!」
「わぁ、はなまる素敵! お菓子とか飲み物用意しないと!」
「ポチ〜!」
「そのお金は何処から出るんだ?」
「「……あっ」」
「……私が出そうか?」
「歓迎される側がお金出してどうする」
何とも締まらない一日となった。
△
怪盗団ファントム 本拠地
劇場の全てを見渡せるVIP席にて、ウソノワールが
重い空気が静寂を支配し、べージを捲る音が舞台に響き渡る。
「ーーー新たなマコトジュエルの在処が分かった」
「僕が華麗に
真っ先に名乗り上げたのは薄い緑色の長髪。赤い瞳を持ち、シルクハットとタキシードを纏い左の顔にマスクを付けた青年。
怪盗団ファントム幹部 ニジー。
彼は自信に満ちた笑みを浮かべている。
「いいや、アゲが行くっしょ! アンタは引っ込めって感じ!」
そんなニジーに対抗心を燃やすかの如く、アゲセーヌが横からしゃしゃり出る。
「フンッ、それはこっちの台詞だよ! 大体数日前まで泣き喚いていたくせに、随分と強気になったじゃないか、ベイビー?」
「ななな、泣いてねーし! 適当なこと言うなし!!?」
顔を真っ赤にして否定するアゲセーヌ。しかし声は震えていた。
実はアゲセーヌはハンニンダーが倒され撤退した後、ソラリスのあまりの強さを幾度と思い出し、恐怖で一人泣いていた。そしてその場面をニジーに見られ嘲笑われていた。
「あーあ、また始まった」
あーだこーだと口喧嘩を始めるニジーとアゲセーヌに対し、呆れたように肩を竦めるマシュタン。
そんな彼等を表情を変えることなく興味なさげに見つめ、ただ黙々とソフトクリームを頬張るるるか。
ふと、突然彼等を照らしていた頭上のスポットライトが消える。何事かと思われた時、ウソノワールが座る席の向かい側のステージに三つのスポットライトが灯る。
「待て待て待てぇ~い! 熱くなるのは結構だがなぁ! 受ける相手が違いやしねぇか!?」
桜吹雪が舞う中現れた、銀髪で歌舞伎風のメイクを施し、黒のタンクトップと短パン、下駄を履いた他の幹部より遥かに体格が良い男。
「その喧嘩、このゴウエモンが預かった!」
怪盗団ファントム幹部 ゴウエモン
「出た……面倒なのが……」
「うん……」
怪盗団ファントムには珍しい熱血漢。それ故に彼の派手な登場にマシュタンは顔をしかめ、るるかが同意するように首を静かに縦に振る。
「ウソノワール様、お任せください」
「結局、君が行きたいだけだろ?」
「マジチョベリバ~!」」
「違う! 新人のためだ! 連れて行って、怪盗のいろはを教えてぇんだよ!」
ビシッとゴウエモンが持つ扇子をるるかに向ける。
「余計なお世話なんだけど!」
「……うん」
誰にも聞こえないようにるるかの耳元に近付き、静かに告げるマシュタン。るるかはソフトクリームを口から離し、またしても同意するように首を静かに縦に振る。
「ーーー行け、ゴウエモン、キュアアルカナ・シャドウ!」
ウソノワールにより、今回
「ライライサー」
「「「ライライサー!」」」
唱和が劇場に響き渡る。
るるかはソフトクリームをアイスクリーム・コーンごと食べきり、マシュタンを両手で抱えその場を後にしようとした。
「ーーー待て、キュアアルカナ・シャドウ」
その時、ウソノワールが呼び止める。るるかはいったい何用だのだろうかと思いつつ、ゆっくりとウソノワールに身体を向き直す。
次に発する言葉を待つるるかとマシュタン。他の幹部もウソノワールとるるかの様子を探るように見つめる中、ウソノワールが重い口を開いた。
「お前はマコトジュエルの奪取と並行して例のーーーソラリスと言う男を調査しろ」
「「……っ」」
るるかとマシュタンは静かに息を呑む。
ソラリス。常人離れの膂力とハンニンダーを浄化して見せた、怪盗団ファントムにとって名探偵プリキュアより厄介な存在。
あれだけの力を持ちながら、無名なのはあり得ない。だが、実際問題として素性が全く分かっていない。
そんな彼の調査をるるかに命令した。怪盗団ファントムに入って日が浅い新人であること、人間のるるかなら他の幹部よりごく自然にソラリスに近付けるだろうと白羽の矢が立ったのだ。
「……ライライサー!」
「……」
命令である以上、従うしかない。
マシュタンが復唱し、るるかは静かに頭を下げる。
そしてウソノワールに背を向け、ゴウエモンのマコトジュエル奪取の同行と共にソラリスの調査へと赴くのであった。
Q.服装で未来から来たって分かっちゃうんですか!?(byあんな)
A.ここは完全に作者の独自解釈。1999年と2027年では流行とか素材とか違うんじゃね? と思った。
その辺りのファッション関係はよく知らないし、変だと思ってもツッコまないでいただけると幸いです。
Q.歓迎パーティーはどうなりましたか……?(byみくる)
A.結局やった。お金はソラリスが全部出した。
Q.いくらお金持って来たんだ?(byジェット)
A.53万$です(当時のレートで大体6,100万円)。勿論、全額持ってきてないのでご安心ください。
また、以下はソラリスに対する怪盗団ファントムの反応
ウソノワール
「ただいま一生懸命身元を調査させております、もうしばらくお時間を……!」
ニジー
「強い……けど、闘ったとしても勝つね。こっちには作戦があるんだ!」
アゲセーヌ
「殺される……アゲ、殺される……! 奴は……伝説の
ゴウエモン
「見た目は地味だか闘い方は気に入った。会う機会があったらたらちょっかいかけてやる」
るるか
「調査対象。何とかバレないように動かないと」
マシュタン
「お前るるかに暴力振るったら絶対に許さんぞ虫けら……! もしやったらじわじわと嬲り殺しにしてやる!」
マシュタン怖いよぉ~