冥王 レイリー先生。シャーレに立つ!!   作:なにやってんだおまえぇ!

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本編前
第一話 プロローグ


 

(ここは一体……私はいつも通りシャッキーのバーで飲んでいた筈なのだが……)

 

 今彼のいる場所はバーなどではなく、列車内の様な場所であった。さらに目を開けた彼の目の前には、空色の髪をした美少女が血を流した状態で座っていた。

 

「君は……いや、そんな事は今はいいな、酷い怪我だ。すぐに治療を──」

 

(動けんッ! 能力か!? 私の覇気で破れんとは一体どれほどの力の……)

 

 空色の髪の少女は彼の様子、そして自身の状態に構わずに口を開き始める。

 

 

「──私のミスでした。

 私の選択、そしてそれによって招かれたこの全ての状況。

 結局、この結果にたどり着いて初めて、あなたの方が正しかったことを悟るだなんて……。

 ……今更図々しいですが、お願いします。

 きっと私の話は忘れてしまうでしょうが、それでも構いません。

 何も思い出せなくても、おそらくあなたは同じ状況で、同じ選択をされるでしょうから……。

 ですから……大事なのは経験ではなく、選択。

 あなたにしかできない選択の数々。

 

 責任を負う者について、話したことがありましたね。

 あの時の私には分かりませんでしたが……。今なら理解できます。

 大人としての、責任と義務。そして、その延長線上にあった、あなたの選択。

 それが意味する心延えも。ですから、先生。

 私が信じられる大人である、あなたになら、

 この捻じれて歪んだ先の終着点とは、また別の結果を……。

 そこへ繋がる選択肢は……きっと見つかるはずです。

 だから先生、どうか……。

 

 あなたの夢の果てを──」

 

 

 

 

 

 

 

「先生!」

 

 

「先生、起きてください」

 

「レイリー先生!」

 

「ん? うゔん……」

 

 鋭い声が耳を貫いたことでレイリーは目を覚ます。今一つ分かったことは、現在いる場所はぼんやりとだけ覚えている列車内とは違うということ。しかしいつものバーでもない。何かの建物の中だった。

 

(夢……だったのか? 随分と妙な夢だったな)

 

「少々待ってくださいと言いましたのに、お疲れだったみたいですね。なかなか起きないほど熟睡されるとは……夢でも見られていた様ですね。目を覚まして、集中してください」

 

「む? それは失礼した。娘さん、名前は?」

 

「私は七神リン。学園都市キヴォトスの、連邦生徒会の幹部です」

 

「キヴォトス? 連邦生徒会?」

 

(飲み過ぎて変な夢でも見ているのだろうか……)

 

「ご存じないのですか? あなたは私達がここに呼び出した先生のはずなんですが……」

 

(先生……? ルフィに修行をつけた時以外で自らそう名乗ったことはないのだが)

 

「ああ、推測形で話したのは、私たちもあなたがここにきた経緯を詳しく知らないからです」

 

「ふ、ふむ」

 

「混乱されていますよね。分かります」

 

「こんな状況になってしまった事を、遺憾に思います。でもとりあえず今は、私についてきて下さい」

 

「ああ、分かった。この場所や状況については後でゆっくりと聞かせて貰おう」

 

「ありがとうございます。今はどうしても、先生にやっていただかなくてはいけない事があります」

 

 2人は建物を降りる。そこでレイリーがリンという少女から聞いた情報は、キヴォトスという場所は数千もの学園が集まってできている巨大な学園都市であるということ。そして自身はその場所の先生として任命され、働くことになっているということ。さらにこのキヴォトスでは銃の所持が当たり前であり、ここにいる生徒たちは銃弾を喰らっても大したダメージにはならないということだった。

 

「きっと先生が居たところとは常識が異なる部分が多く、困惑されるでしょう。でも先生なら心配しなくても大丈夫でしょう。あの連邦生徒会長がお選びになった方ですからね」

 

 自身が先生に任命された事については全く身に覚えのないことだったし、そもそも自身が元いた場所ではない、彼は全く知らない所に訳もわからず飛ばされたのだ。だがしかし老い先短い老体である自身によって輝かしい若人達の未来を支えれるのなら彼が断る理由などなかった。その即断即決はシャクヤクはたとえ自分が姿をくらませても、信じて待っていてくれるという大きな信頼からくるものだった。

 

「情報提供感謝する。期待に応えられるよう、最善を尽くそう」

 

「ありがとうございます。とても頼もしいです」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「代行! 見つけたわよ!! 連邦生徒会長を呼んできて! ……うん? 隣の大人の方は?」

 

「首席行政官、お待ちしておりました」

 

「連邦生徒会長に会いにきました。風紀委員長が現状についての納得のいく説明を要求されています」

 

 レイリーとリンが降りた先で待ち構えていたのはユウカ、ハスミ、チナツ、そしてスズミ4人だった。ミレニアム、トリニティ、ゲヘナという三大校が問い詰めにくる状況は、事態の緊急性を物語っている。

 

「あぁ……面倒な人達に捕まってしまいましたね」

 

「いきなり毒を吐いたな……」

 

 レイリーが見たリンの顔は表情から面倒臭いというのが滲み出ている状態だった。見聞色の覇気を使うまでもなかった。

 

「こんにちは、各学園からわざわざここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、そしてその他時間を持て余している皆さん」

 

「止まらないな君!!」

 

 自身と話していた時の丁寧な様子とは打って変わって連続で毒を吐くリンに対してレイリーは驚愕する。

 

「こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由はよくわかっています。今学園都市に起きている混乱の責任を問うため。でしょう?」

 

「うむ……随分ストレス溜めこんでいたのだな……」

 

 これで3発目の毒吐きである。よっぽど鬱憤が溜まっていないとこうはならない。

 

「そこまで分かっているならなんとかしなさいよ! 連邦生徒会なんでしょ! 数千もの学園が混乱に陥ってるのよ!? この前なんか、私達の学校の風力発電機がシャットダウンしちゃったんだから!」

 

「連邦矯正局で停学中の生徒について、一部脱走したという情報もありました」

 

「スケバンのような生徒達が登校中の生徒を襲う頻度も、最近急激に高くなりました。治安の維持が難しくなっています」

 

「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しています。これでは正常な学園生活に支障が生じてしまいます」

 

「こんな状況で連邦生徒会長は何をしているの? 今すぐ会わせて!」

 

 ストレスを溜め込んでいるのは何も七神リンだけではない。今ここにいる生徒全員が現在進行形で発生している混乱に頭を悩ませていた。

 

「……連邦生徒会長は今、先におりません。正直に言いますと、行方不明になりました」

 

「えっ……!!」

 

「なっ……!」

 

「やはりあの噂は……」

 

「連邦生徒会長……確かこの建物を降りる途中で君が言っていた人物のことだね。失踪したのかね?」

 

「はい、そしてそれによりサンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です。認証を迂回できる方法を探しましたが、方法は見つかりませんでした。……先程のまでは」

 

「その言い方、今は方法があるということですか? 首席行政官?」

 

「はい。このレイリー先生こそが、フィクサーになってくれるはずです」

 

「私かね? ハッキリ言ってここについても、君のいうサンクトゥムタワーというのも知らないのだが……」

 

「本当に大丈夫なの? 全く自覚がなさそうなのだけど。というか待って、この人はいったいどなた? どうしてここにいるの?」

 

「キヴォトスではないとこから方のようですが……先生だったのですね」

 

「はい。こちらのレイリー先生は、これからキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

 

「そうなのか?」

 

「少し黙っていて下さい」

 

「う、うむ……」

 

 リンの気迫にレイリーは圧倒される。その威圧感はまるで覇王色の覇気のようであった。

 

「やっぱり当の本人に全然自覚がないじゃない……ますますこんがらがってきたわ……」

 

「混乱させてしまったみたいだね。すまなかった。私はシルバーズ・レイリー。レイリー先生と呼んでくれ」

 

「こ、こんにちは先生! 私はミレニアムサイエンスの早瀬ユウカです。……って! 今は挨拶なんてどうでもよくて!」

 

「…………おぉ」

 

 ルフィに2年の修行をつけることになった際、彼はルフィに自身のことを先生、もしくは師匠と呼ぶように言った。しかし、呼ばれたのは3回もあればいい方だったので、なかなかいい響きに聞こえたのだ。

 

「どうされたのですか? レイリー先生?」

 

「あぁ、失礼。こっちの都合だ。気にしないでくれたまえ」

 

「そ、そうですか。とりあえず、そちらのうるさい方については置いておいて、話を続けますと……」

 

「ちょっと! 誰がうるさいって!?」

 

「先生は元々、連邦生徒会長が立ち上げた、ある部活の顧問としてこちらに来ることになりました。『連邦捜査部 シャーレ』単なる部活ではなく、一種の超法規的機関。連邦組織のため、キヴォトスに存在する全ての学園の生徒たちを、制限なく加入させることすらも可能で、各学園の自治区で、制約なしに戦闘活動を行うことも可能です。何故このような機関を連邦生徒会長が作ったのかは分かりませんが……」

 

(よく分からないが、困った時になにも心配することなく暴れられるのはありがたいな)

 

「シャーレの部室はここから約30km離れた建物にあります。今はほとんどなにもない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』ものを運んでいます。ですから、先生をそこにお連れしなければなりません」

 

 リンはそう伝えたあと、スマホで連絡を取る。しかしスマホという小さな箱型の機械はレイリーにとって初めて見る物であった。

 

(あれは何だ? 見たところ誰かと連絡を取っている様子だな。なら電伝虫と同じような物だと思っておけばそれでいいか)

 

「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど……」

 

(ヘリというのも初めて聞くな……話を聞く限り乗り物の類だろう)

 

『シャーレの部室? ああ、外郭地区の? そこ、今大騒ぎだけど?』

 

「大騒ぎ?」

 

『矯正局を脱出した停学中の生徒達が騒ぎを起こしたの。そこは今戦場になってるよ。連邦生徒会に恨みを抱いて、地域の不良たちを先頭に、周りを焼け野原にしてるみたいなの。巡航戦車までどっかから手に入れたみたいだよ?』

 

『それで、どうやら連邦生徒会所有のシャーレの建物を占拠しようとしてるらしいの。まるでそこに何か大事なものでもあるみたいな動きだけど? まあでも、もうとっくにめちゃくちゃな場所なんだから別に大したことな…………あっ、先輩、お昼ご飯のデリバリー来たから、また連絡するね!』

 

「…………」

 

 リンは黙ったまま拳を握り締める。どこからどう見てもキレている。

 

「……どうした?」

 

「だ、大丈夫です。……少々問題が発生しましたが、大したことではありません」

 

 そう言いながらリンはユウカ、ハスミ、チナツ、スズミの4人をじっと見つめる。

 

「な、何? どうして私たちを見つめてるの?」

 

「ちょうどここに各学園を代表する、立派で暇そうな方々がいるので、私は心強いです」

 

「「「「…………え?」」」」

 

「キヴォトスの正常化のために、暇を持て余した皆さんの力が今、切実に必要です。行きましょう」

 

「いや、わざわざ歩かせるのも申し訳ない、私1人で行こう」

 

「私たちが向かうとこは現在、大変危険な場所となっています。レイリー先生1人に行かせるわけにはいきません」

 

「危険だというのなら尚更この子達をついて来させるわけにはいかないさ」

 

「いえ、彼女たちはとても強い味方ですから。それに何度もしつこく問い合わせてくるほどに暇を持て余した方々ですから大丈夫ですよ。さあ、行きましょう」

 

(……さてはこれまでの仕返しをしたいだけなのではないか?)

 

「暇暇うるっさいわね! ってちょっと! どこに行くのよ!?」──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

ドガァァン! ズドドドド!! 

 

 

 

 

「な、なにこれ!?」

 

「これは……想像以上だな」

 

 レイリーは繰り広げられている銃撃の規模に驚かされていた。その光景は彼が居着いているシャボンディ諸島の様子と同レベル、いや下手したらそれ以上のものだったからだ。

 

「何で私たちが不良共と戦わないといけないの!!」

 

「サンクトゥムタワーの制御権を取り戻すためには、あの部室の奪還が必要ですから……」

 

「それはそうなんだけど……! 私これでもうちの学校では生徒会に所属してて、それなりの扱いなんだけど! なんで私が……!」

 

 理不尽な目に遭い、嘆くように声を上げるユウカに、数発の凶弾が向かう。

 

「おっと危ない。可愛い顔に傷が付いたら大変だ。大丈夫かい?」

 

 しかし銃弾は全てレイリーによってキャッチされる。

 

「え? え? あ! ありがとうございます」

 

「い、今素手で弾丸を……?」

 

「わ、私たちですら傷跡が残るJHP弾なのにですか?」 

 

「そ、そもそも銃弾を見切れるものなのでしょうか……」

 

 4人は信じられない光景に唖然とする。ヘイローもない、ましてや老体であろう身体で弾丸をキャッチするという離れ技をやってのけたのだ。

 

「さて、君たちのような可愛い子たちにこのような荒れた場所は似合わないな。引き連れてしまって申し訳ない。ここから先は私に任せてもらおう」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい! あなたはキヴォトスの外から来た人間です! 銃弾1発が致命傷になるんですよ。私たちの後ろにいて下さい!」

 

「ハスミさんのいう通りです。銃弾を手で掴んだのには驚かされましたが、それでも私たちの第一優先は先生をお守りすることです。失礼を承知で言いますが、ご老体のレイリー先生をここまで歩かせていること事態がおかしいことなんです」

 

 純粋な善意でか弱いお爺ちゃん扱いされ内心少しだけショックを受けるレイリーであったが、構わず前に出る。

 

「君達はとても優しい心を持っているようだ。だが、ここは私にやらせてくれ、なあに、ちょっとしたかっこつけのようなものだ。少し見ていなさい」

 

「せ、先生! 本当に大丈夫なんですよね!?」

 

「ユウカと言ったかな? ああ、私を信じて見てくれていたまえ」

 

 レイリーは一歩一歩、不良達に近づいていく。

 

 

 

「あん? なんだあのジジイ? おい! ジジイ! ここはお前みたいな老いぼれが来ていい場所じゃねぇんだよ! とっととどっかいけ!」

 

「まあまあ、落ち着いてくれ。私は今君達がいる場所の奥の方に用があってね。通してくれないか?」

 

「だめだこのジジイボケてるぞ……。私たちが銃持ってることを分かってない。もう撃っちまおう」

 

 不良達はレイリーに銃を向ける。

 

「君は私の胸に5発、君は足に7発、そして君は部位は適当に10発くらい撃つつもりだね?」

 

「なっ……!?」

 

 レイリーの宣言通りに弾が放たれる。彼はそれを最小限の動きで躱してしまう。

 

「あの至近距離の銃弾を避けた!?」

 

「それだけではありません……まるで不良共が撃つタイミングや位置を分かっているかのように事前に回避していました」

 

「彼は一体……」

 

 レイリーと銃の距離は目と鼻の先だった。そこから放たれる弾丸を避けるのは先読みでもしていないと不可能な芸当だろう。しかしレイリーの見聞色の覇気はギア4のルフィを軽くあしらうことができるほどの強さを持つ。*1この程度造作もないことだった。

 

「そ、そんなバカな! くそっ! 撃て! 撃ちまくれぇ!」

 

 次々と銃を乱射する不良達、しかしその銃弾は1発もレイリーに掠ることすらない。

 

「君達全員1人ずつ鉄拳制裁というのもいいが、少し数が多いな。手早く終わらせてしまおう」

 

 

ギンッ! 

 

 彼は覇王色の覇気を放つ。

 

「カハッ……」 「ウッ……」 「クッ……」

 

 周囲にいた不良たちは気絶し、ドサドサと音を立てながら倒れていく。

 

「い、一瞬で?」

 

「先生、一体何をしたんですか?」

 

「ん? ああ、これは私の特技みたいなものでね、また時間がある時にゆっくり説明するとしよう」

 

「と、特技って……」

 

「とにかく今は先へ急ごうじゃないか、着いてきなさい」

 

「ううっ……やっぱり前に居られると心配でムズムズする……」

 

 

『皆さん、今この騒ぎを巻き起こした生徒の正体が判明しました』

 

「その声、リンか。して、その正体は?」

 

『彼女の名前はワカモ。百鬼夜行連合学院で停学になった後、矯正局を脱獄した生徒です。似たような前科がいくつもある危険な人物なので、気をつけて下さい』

 

「そうか、教えてくれてありがとう」

 

 レイリーたちはシャーレの部室を目指して足を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらら。連邦生徒会は来ていないみたいですね。フフッ、まあ構いません。あの建物に何があるかは存じ上げませんが、連邦生徒会が大事にしている物と聞いてしまうと……壊さないと気が済みませんね」

 

「ああ、久しぶりのお楽しみになりそうです、ウフフフフ♡。さて、後は皆さんに任せます。私は早くあの建物に行きたいので」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

ギンッ! 

 

ドサドサドサ……

 

 

「そ、そんな……一瞬で半分近くやられた……」

 

 

動揺する不良たちを尻目に、レイリーが手刀で空を裂く。すると地面に横一直線の亀裂が入る。

 

「私とやりたいのなら、この線を踏み越えるといい。──だが、私は越えないことを勧める」

 

「ひ、ひいいいい逃げろおお!」

 

「あんなやつ勝てる訳ねえ!」

 

「化け物だあああ!」

 

 不良達はぞろぞろと撤退していく。

 

「私たち、何もしていませんね……」

 

「これじゃまるで私たちが守られてるみたいじゃない……本来は逆なのに」

 

「なあに、私が勝手やったことだ。君たちのような可愛い娘さんたちを見ているとつい守りたくなってしまうのが私のさがというものなのだよ!」

 

「またそんなことを……でも、ありがとうございます」

 

 ユウカは呆れたような口調をしつつ、お礼を言う。

 

「それに、年老いた私はこれくらいの運動をしないと腰が悪くなってしまうのでな」

 

「あの……もしかして私が老人扱いしたこと、根に持っていますか?」

 

「さあ? どうかな? ハッハッハッハッハッハ!」

 

 

 レイリーたちはさらに足を進め、ついにシャーレの入り口までやってきた。しかし、そこで待ち構えていたのは巡航戦車であった。

 

「あれは……気をつけて下さい、巡航戦車です!」

 

「クルセイダー1型……! 私の学園の正式戦車と同じ型です」

 

(戦車? …………ふむ、様相を見るにパシフィスタと同じようなものか)

 

「不法に流通されたものに違いないわ! PMCに流れたのを不良たちが買い入れたのかも! つまりはガラクタ! 壊しても構わないってことだから行くわよ!」

 

「なるほど、破壊してしまって構わないのだな」

 

「れ、レイリー先生? ま、まさか素手で戦車を素手で壊すつもりですか!?」

 

「そんなっ……! いくらなんでも!」

 

「安心してくれユウカ、チナツ。造作もないことだ」

 

 レイリーは目にも止まらぬ速度で戦車に接近する。そして片手を戦車の装甲にかざす。

 

 

 

 

バンッ!! 

 

 

 

 レイリーの武装色の覇気によって手のひらから放たれる衝撃波により、戦車はまるで()()()()()()()()様に破壊され、そして蹴られた小石の様に転がりながら吹っ飛んでいってしまった。

 

「なんだ、思ったより脆いのだな。わははははは!!」

 

「うそ……戦車も……」

 

「私たちだったら、もっと手こずっていたでしょう。それをこんな一瞬で……」

 

「戦車に大穴が空いています。あの衝撃波、一体どれほど威力をしていたのでしょうか……」

 

「私たちも喰らったら気絶だけでは済まないかもしれません」

 

 目の前の男が作り上げた光景に、4人は只々驚かされていた。

 

『シャーレの部室の奪還完了を確認。私も、もうすぐ到着します。建物の地下で会いましょう』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「うーん……これが何なのか、全く分かりませんねぇ、これでは壊そうにも……」

 

 ワカモはシャーレの地下室で1人頭を悩ませていた。しかし、そこに1人の人影が現れる

 

「……あら?」

 

「む? こんにちは、君の名前は?」

 

(見聞色で察するに、敵意はないみたいだな)

 

「あら、あららら……。あ、あぁ///」

 

「ん? どうした?」

 

「し、し、失礼いたしましたー!! 

 

「お、おい君!? い、いってしまった……まあいいか」

 

 少しの間待っていると、リンが地下室へやってきた。

 

「お待たせしました」

 

「いや、ご苦労様。私も今着いたところだ」

 

「そうですか、ありがとうございます。ここに、連邦生徒会長の残したものが保管されています。……良かった、幸い傷一つなく無事ですね」

 

 そう言いながらリンはタブレット型の機械をレイリーに差し出す。もっとも、レイリーはタブレットという物は知らないが、何かの機械であるということは理解していた。

 

「受け取って下さい」

 

「これは?」

 

「これは連邦生徒会長が先生に残した物。『シッテムの箱』です。普通のタブレットに見えますが、実は正体の分からないものです。製造会社も、OSも、システム構造も、動く仕組みが全て不明。連邦生徒会長はこのシッテムの箱は先生の物で、先生がこれでタワーの制御権を回復させられるはずだと言っていました。私たちでは、これを起動させることすら出来ませんでした。先生なら、起動させられるのでしょうか……」

 

(まずタブレットという物自体、私は初耳だが……まあ、話が面倒くさくなるから今は聞かないでおこう。この機械についても、ベガパンクのような奴が発明した物だと思えばいいはずだ)

 

「では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかっています」

 

「よく頑張ってくれたね。あとは任せてくれ」

 

「はい、ありがとうございます。私は邪魔にならないよう、離れていますので」

 

 

 

 

 

 

 

「さて……このボタンを押せばいいのだろうか?」

 

 レイリーはボタンを押す。そうすると電源が次画面が映し出される。

 

「なるほど、映像電伝虫のようなものなのかな? ……む? パスワード?」

 

 そう疑問に思った瞬間レイリーの脳内に突如言葉が思い浮かび、そしてそれを無意識のうちにパスワードの入力欄に入れる。

 

《──我々は望む、7つの嘆きを。

 ──我々は覚えている、ジェリコの古測を。》

 

接続パスワード承認。現在の接続者情報はレイリー、確認できました

 

シッテムの箱へようこそレイリー先生。生体認証及び認証書生成のため、メインオペーレートシステムA.R.O.N.Aに変換します。

 

 その文字と共にシッテムの箱は眩い光でレイリーを飲み込む。

 

「むっ?」

 

 レイリーが目を開けると、そこには机に突っ伏して寝ている少女がいた。

 

(シッテムの箱という名の機械に吸い込まれた? ……もう何がきても驚かんな……)

 

『むにゃ、カステラにはぁ〜いちごミルクよりぃ〜バナナミルクのほうが……』

 

(この子は……見たところ寝ているようだ。起こすのも忍びない。しばらく待つとするか)

 

 ・

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 ・

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 ・

 

『……うぅん、むにゃ、うぅ……ありゃ? ありゃ? ありゃりゃ!?』

 

「おお、おはよう、目は覚めたかい?」

 

『あ、あれ? あれれ!? 先生!?』

 

『この空間に入ってきたということはまさか、レイリー先生!?』

 

「ああ、私はシルバーズ・レイリーだ。よろしく頼むよ」

 

『そ、そうですよね! ってもうこんな時間!? え、えぇっと、そうだ! まずは自己紹介から! 私はアロナ! このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから先生をアシストする秘書です!』

 

『やっと会うことができました! 私はここでずーっと先生を待っていたんです!』

 

「ほお、夢でも待っていてくれたのかね?」

 

『あ、あうう……それはすみません……』

 

「ハッハッハッ! いや失礼! ついからかってしまったよ、気にしないでくれ」

 

『とにかく! よろしくお願いします! レイリー先生!』

 

(ふむ、やはり先生というのはいい響きだな……)

 

「こちらこそだよ、アロナ」

 

『あっ、そうだ! まずは形式的ではありますが、生体認証を行います! ……少し恥ずかしいですが、手続きだから仕方ないんです。こちらの方に来て下さい! さあ、この私の指に先生の指を当てて下さい』

 

「それで出来るのか、凄いな」

 

 レイリーは感嘆の声を漏らしながらアロナの指に自分の指を当てる。

 

『フフフッ、まるで指切りして約束してるみたいでしょう?』

 

「そうだな、これほど綺麗な指で約束されたら、誰も破れないだろうな」

 

『へ、変なこと言わないで下さい! ///』

 

「ハッハッハ! 失敬失敬」

 

『か、確認終わりました!』

 

「む? 名残惜しいな……」

 

『ま、またそんなことを!』

 

 アロナがレイリーをポカポカと殴る。

 

『と、とにかく! レイリー先生の事情は既に把握しています。連邦生徒会長が行方不明になったせいでキヴォトスのタワーを制御する手段がなくなった……ですね?』

 

「その通りだ、君は連邦生徒会長という子について何かしっているかね?」

 

『私はキヴォトスの情報を多く知っていますが……連邦生徒会長についてはほとんど知りません。彼女が何者なのか、どうしていなくなったのかも…………お役に立てずすみません』

 

「大丈夫だ、そう肩を落とさなくていい」

 

『ありがとうございます。連邦生徒会長のことに関してはお役に立てませんが、サンクトゥムタワーの問題は私が何とかできそうです!』

 

「おおそうか! ではよろしく頼む」

 

『はい! お任せ下さい!』

 

 アロナの言葉から数秒後にサンクトゥムタワーの電気が次々と付いていく。

 

『先生! サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました! 今サンクトゥムタワーは私アロナの統制下にあります。今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!』

 

(支配……か。そういえば、ロジャーもルフィも、支配には興味が無かったな)

 

 2人の存在を思い出し、自然とレイリーの口角があがる。1人は自身のキャプテンにして海賊王、もう1人は自身の自慢の弟子にして期待の超新星である。

 

『もし先生が承認してくだされば、サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管できます。……大丈夫ですか? 連邦生徒会に制御権を渡しても……』

 

「ああ、是非そうしてくれ、()()支配には興味がない」

 

『分かりました、これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!』

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「先生、サンクトゥムタワーの制御権の回復ら確認できました。連邦生徒会を代表して深く感謝申し上げます」

 

「お礼などいらないさ、後は君に委ねるよ」

 

「お任せ下さい。……っとそうでした。まだ先生には紹介するものがあります。連邦捜査部シャーレについてです。ついてきてください」

 

 そうしてレイリーはリンにシャーレの部室を案内される。中は広々としており、休憩室、さらにはシャワー室まで完備されていた。

 

「シャーレは権限はありますが、目標などは特にない組織です。ですので、特に何かやらなきゃいけないという強制力は存在しません。誰をここに加入させて、何をするかも全て、レイリー先生次第です。それでは、私はこれにて失礼します。必要な時には、またご連絡いたします」

 

「ご苦労様。ここまでありがとう。助かったよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、私は何から始めるべきだろうか……」

 

 レイリーは軽く背伸びをしながら街を見下ろして考える。彼の教師としての人生はまだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
漫画にはない、アニメのカタクリ戦でのアニオリ描写なのですが、かっこいいので使っちゃいます





流石にワンピ世界って学校とかあったはず……だよね?あると信じます。

ちなみに私のレイリーの解釈としては女好きではあるが先生である以上決して手は出さない。だがそれはそれとしてめちゃくちゃ口説き文句は言うというのが私の解釈です。………あれ?これめちゃくちゃタチ悪い野郎では?

次の話は1週間以内にはあげたいです。よろしくお願いします。
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