冥王 レイリー先生。シャーレに立つ!!   作:なにやってんだおまえぇ!

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お、おおおお気に入り80人突破!?赤評価!?!?ば、バカな!?こんなのぼくちんのデータにないぞ!?!?

本当にありがとうございます。

それと今回から少しずつレイリー以外の心情描写も挟まります。






第五話 一握りの強者

 

「私、様子を見てきます」

 

 セリアの後を追ってノノミは教室を出る。

 

(私も様子を見に行きたいが……今私が彼女と対面しても火に油か……)

 

 レイリーはセリカのことは一度ノノミに任せることにし、借金について聞くことにした。彼にとってはギャンブルを愉しんでいる故に慣れ親しんでいる、というより幾度も経験しているものだが、まだ学生、それもここまで真っ直ぐな子達からそんな単語が出ることは聞き捨てならなかったからだ。

 

「……えーっとね、簡単に説明すると、この学校借金があるんだー。まあ、ありふれた話だけどさ」

 

「なるほど……君たちというわけではなく学校か……無礼を承知で言うが、この人数にこの状況だ。おかしくはないな」

 

 対策委員会の教室に入る道中で、砂に埋もれた廊下や壊れた設備がところどころ散見された。そんな状態からして学校が借金を抱えているのはむしろ自然なことだった。

 

「そうだね。もう何年も前から抱えてるものだからねー。でも、問題はその金額で……9億ぐらいあるんだよねー」

 

「正確には9億6235万円ですね……」

 

 アヤネが沈んだ声で正確な金額を補足する。

 

(約10億…………私もここまで借金を背負った経験は稀だな……)

 

「アビドス……いえ、対策委員会が返済しなければならない金額です。これが返済できないと、学校は銀行の手に渡り、廃校手続きを取らざるを得なくなります」

 

 この学校には部活等の組織は小鳥遊ホシノ1人だけが所属するもはや肩書きだけの存在と化している生徒会とアビドス生徒5人全員が所属する対策委員会しか存在しない。それ故にアビドスの借金=対策委員会の借金となってしまっているのだ。

 

「……ですが、実際に完済できる可能性は0%に近く、ほとんどの生徒は諦めて、この学校と街を捨てて去ってしまいました」

 

「そして私たちだけが残った」

 

「学校が廃校の危機に追いやられたのも、生徒がいなくなったのも、街がゴーストタウンになりつつあるのも、全てはこの借金が原因です」

 

「なるほどな……可能性は0に近い、か……。でも君たちは諦めないのだろう?」

 

「「「当たり前(です)」」」

 

「フッ……そうか…………」

 

〝俺と一緒に世界をひっくり返さねェか!? 〟

 

〝つまらねェ冒険なら、おれはしねェ!! 〟

 

 全員、一切の迷いのない返答。そんな姿にロジャーとルフィの姿が重なる。アビドスの生徒たちとは目標こそ異なるものの、両者共に上手くいく可能性が0に等しい世界に飛び込んだ者である。しかし、レイリーは知っている。自身の船長であるロジャーがそんな不可能と言われた所業を成し遂げたことを。だからこそ、レイリーには今いるアビドスの生徒たちはとても輝いて見えた。

 

(皆声を一つにして、迷いなく言い放った……。全く、これだから若い子達というのは素晴らしい。そして、ここで摘まれてはならない存在だな)

 

「よく話してくれた。その借金の返済、私も力を貸させてもらおう」

 

「え……!? それって……! シャーレが味方についてくれるということですか!?」

 

「そう認識してくれて構わない」

 

「うへぇ、先生も物好きだねー? こんなめんどくさそうな問題に顔を突っ込むだなんて」

 

「君たちが全力で困難に立ち向かっているんだ。私が助けない理由がない」

 

「ありがとう。こうして話を聞いてくれて、協力するとまで言ってくれたのは、先生が初めて。……セリカがあそこまで誰もこの問題にまともに向き合わなかったから。だから、あまりセリカを責めないであげてほしい」

 

「なるほどな……随分と酷い目に遭わされていたのだな。だが安心して欲しいシロコ、女性の拒絶というのはフルスイングでビンタされてからが本番だ。あれくらい気にも留めないさ、フハハハハハ!」

 

「ん……なんか安心した」

 

「さて、こんなことを聞くのは野暮だが、借金をすることになった理由を聞かせてもらおう。なにせ、金額が金額だからな……」

 

「ご説明します。数十年前、この学区の郊外にある砂漠で、砂嵐が起きたのです。この地域では以前から頻繁に砂嵐が起きていたのですが、その時の砂嵐は想像を絶する規模のものでした。学区のいたる所が砂に埋もれ、砂嵐が去ってからも砂が溜まり続けてしまい、その自然災害を克服するために、我が校は多額の資金を投入せざるを得ませんでした……。しかし、このような片田舎の学校に、巨額の融資をしてくれる銀行はなかなか見つからず……」

 

「それで、結局悪徳な金融業者にしか頼れなかった」

 

「はい、シロコさんの言う通りです。……きっと、最初はすぐに返済できる算段だったと思いますしかし砂嵐はその後も、毎年さらに巨大な規模で発生し……学校側の努力も虚しく、学区の状況は手が付けられないほど悪化の一途をたどりました……。そしてついに、アビドスの半分以上が砂に呑まれて砂漠と化し、借金はみるみる膨れ上がっていったのです……」

 

「まあ、そういうつまらない話だよ」

 

「ふむ……一つ質問してもいいかね?」

 

 レイリーは顎を手でさすりながらしばらく考えた後アヤネに質問の許可を取る。

 

「え? どうかしましたか?」

 

「アヤネくんは()()()()()()と言っていたが、どうもそれが引っかかる。というのも私はこの学校に辿り着くまでにアビドスの街で3日近く遭難してたんだ。そしてそこをシロコに助けられた。だが、人が遭難するほどの規模の街を持っていたのに、片田舎と表現されるのは違和感があってな」

 

「……今さらっと3日遭難したっていいましたかあの人」

 

「私が初めて会った時、先生は元気ピンピンだった。ん、先生はバケモノ」

 

 さらっと明かされた人外っぷりに思わずアヤネとシロコは小声で話し合う。

 

「そうだね。確かにアビドスは昔はすごく大きくて力のある自治区だったらしいよー。大規模な街はその名残。というのも、昔は大きなオアシスがあったらしくてね、そこが観光資源としても水資源としても機能してたみたい。でも、アヤネちゃんの言ってた大きな砂嵐が原因で枯れちゃったんだろうね。それで力の源をオアシスに大きく頼ってたアビドスは砂嵐への資金投入も相まって大都市から一気に片田舎に格落ちしたって感じかな。うへぇ〜ごめんね先生。なにせ数十年前の話だからおじさんも推測系でしか話せないんだよねー」

 

「いや、十分だホシノ。ありがとう。とりあえず、今日のところは皆でノノミと一緒にセリカの様子を見に行ってあげてくれ。今の私が行っても逆効果であろうからな」

 

(見聞色でセリカだとはっきり分かるような気配が拾えん……既にかなり遠くへ行ってしまったようだな……)

 

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「ん、セリカ見つけた」

 

「あ……シロコ先輩」

 

 ノノミに加わって他3人もセリカの捜索に出ていた。そして、セリカを一番最初に発見したのはシロコだった。やはりロードバイクという文明の力は偉大なようだ。

 

「借金の件、レイリー先生には説明した。そもそもあそこまできたら言い逃れなんてできないだろうし」

 

「そっか……」

 

「……ねえセリカ、私はレイリー先生は信用していい大人だと思う。あの人は借金についても、迷う様子もなく協力するって言ってくれた」

 

 シロコ先輩……やっぱり、私以外みんなそうなんだ……でも……! 

 

「そんなの……口先ならなんとでも言えるでしょ! 実際、今までの大人たちはそうやって騙してきた! それにあの人昼間からお酒飲むような人なのよ!?」

 

 信頼するという行為を、今まで騙されてきたセリカ自身の経験が妨げてくる。

 

「確かにそうだね。実際、ギャンブル好きも女好きも事実なんだと思う。本当に好きそうな顔で話してたから。でもセリカ、私たちを騙そうとする大人が、本当にそこまで包み隠さずにいうと思う? わざわざ信頼を損ねるようなことまで公言すると思う? ……それに、先生はヘルメット団のアジトを叩く時に私たちにアドバイスをくれた。先生は私たちと同じで銃弾くらいなら平気って言ってたけど、それでもわざわざ私たちのために危険な場所に立ってくれたことは変わりない」

 

「うっ…………」

 

「今はまだ意地を張っててもいい、レイリー先生は待ってくれるから。……フルスイングでビンタでもされない限りね。じゃ、話はそれだけ。無事なのを確認できてよかった。じゃあねセリカ。また明日」

 

 シロコはロードバイクのペダルを踏み、そのままペダルを漕いで去っていく。

 

「意地って……私はまだ認めないんだから……!」

 

 

 

 

 


 

 

 

────────翌日────────

 

 

 

 

「はあ……」

 

 〝私はレイリー先生は信用していい大人だと思う〟

 

「ああっもう!」

 

 セリカは昨日言われたシロコの言葉がずっと頭から離れずにいた。現状レイリーの存在を認めていない者が自分1人という孤独感がかえって彼女の意地を固めてしまっていたのだ。

 

 あの人、これからも来るのよね……どうやって対応すればいいのよ……ってダメダメ! 今は切り替えてバイトに行かないと! 

 

 重くなっていた足取りを取り戻すかのように歩行速度を早める。今日は自由登校日。よってレイリーと会うことはないとセリカは考えていた。……先程までは。

 

「やあ、おはようセリカ君」

 

「げっ……な、なんであんたが……」

 

 彼女は現在おもっくそレイリーと鉢合わせていた。まだ朝だというのにその片手には酒瓶がある。

 

「学校へ向かう途中でね、まさか私も君とここで会うとは思わなかったよ。どうかね? せっかく会えたのだから少し話でも……」

 

「いらない! てか今日自由登校日だから! 私学校行かないし、そもそも朝っぱらから飲んだくれてる人と話したくない!」

 

「む? そうか。参ったな、これでは今日一日暇になってしまう。というわけで今日はセリカについていこうと思う」

 

「何がというわけでよ! やってること普通にストーカーじゃない! そんなの絶対嫌だから!」

 

 セリカは砂埃を立ててその場を走り去る。しかし……

 

「中々いいスピードだな。うん、フォームもしっかりしている。……っと酒が空になってしまった。またシャーレから持ってかないとな」

 

「酒飲みながらついてくるなああああ!!!」

 

 全速力で走るセリカ出会ったが、それに追いつくなどレイリーにとっては造作もない。酒瓶を片手に持った彼に1秒も経たずに追いつかれている始末であった。

 

(なんなの!? 私が全力で走ってるのにちっとも苦しそうな顔してない。しかも普通に走りながら話しかけてくるし!)

 

「さて、果たしてセリカ君はどこへいくのかね?」

 

「こんちくしょー!!!」

 

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「ハァ、ハァ……ゼェ、ゼェ……」

 

「お疲れのようだな」

 

「だ、誰の……せいだと……ハァ、ハァ……思ってるのよ…………!」

 

「わははははは! 私としては楽しかったぞ! さて、ここは……ラーメン屋?」

 

 目の前には柴関ラーメンという文字と共に柴犬の顔が写っている看板がデカデカと貼られているラーメン屋さんがあった。

 

「セリカはここで何を?」

 

「バイトよバイト! ここで働かせてもらってるの!」

 

「おぉ! それは立派なことだ」

 

「うっさい! はぁ、もう目的もわかったでしょ? ほら帰って帰って」

 

 しっしっと手を振って拒絶するセリカ。流石のレイリーもこれには一度退散を選ぶのだった。

 

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「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンです! 何名様ですか? 空いてるお席にご案内いたしますね」

 

 セリカは少し駆け足気味で、しかしそれでいて丁寧に注文をとったり席への案内を行っている。お昼時という時間もあるのだろうが、柴関ラーメンには多くの客が来ていた。店の繁盛具合は住民の数が減少の一途を辿るアビドスとは思えないくらいだ。それもそのはず、この柴関ラーメンというラーメン屋さんはその味を求めてわざわざ他学園の方から来る人もいるくらいの人気ぶりで、現在のアビドスの実質的な名物的存在なのだ。

 

 そしてそこに5名の来客がやって来る。

 

「いらっしゃいませ! 柴関ラーメンて……ってえぇ!?」

 

「あの〜⭐︎5名なんですけど〜!」

 

「あはは……セリカちゃん、お疲れ」

 

「お疲れ」

 

「頑張っているようだな」

 

「おぉ〜エプロン姿のセリカちゃんもかわいいねぇ〜来てよかったよー」

 

「み、みんなどうしてここにっ!?」

 

「いやぁー、もうそろそろお昼ご飯にしようかなって時に先生が『セリカ君が近くのラーメン屋で働いているみたいだ。さて、これを知って君らどうするね?』なんて言うからさー。そんなこと言われちゃったらもう行くしかないよねー」

 

「あんた……! まさか全員引き連れてストーカーするなんて……」

 

「ストーカーだなんて……今の私たちは客だぞセリカ君」

 

「アビドスの生徒さん達か、セリカちゃん、おしゃべりはそのくらいにして、注文を受けてくれな」

 

「ううっ……そ、それでは広い席に案内します……こちらはどうぞ」

 

 レイリーの口撃と柴大将の声に肩を落としながら席へと案内していく。

 

「先生! 私の隣空いてます!」

 

「ん、私の隣も空いてる」

 

「ふむ……悩ましい……いや、ここは両方といこうか」

 

 レイリーは椅子を移動させてノノミとシロコの間になるようにして座る。

 

「引き分けでしたかー残念ですー」

 

「ん、無念」

 

「引き分けではない、両方とも勝ったのだよ」

 

 レイリーの言葉にシロコとノノミは上機嫌になる。

 

 

「いやぁーそれにしてもセリカちゃんそっち系かー、ユニフォームでバイト決めちゃうタイプ?」

 

「ち、違う関係ない! ここが行きつけのお店だっただけ!」

 

「ユニフォーム姿のセリカちゃん、写真撮っとけば一儲けできそうだねー。どう? 一枚買わない、先生?」

 

「ふむ、何万出せばいい?」

 

「変な副業はやめてください、先輩……そしてレイリー先生も買おうとしないでください……」

 

「バイトはいつから始めたの?」

 

「い、1週間くらい前から……」

 

「なるほど⭐︎! 時折姿を消していたのはバイトだったんですね!」

 

「も、もういいでしょ! ご注文は!?」

 

「ご注文はお決まりですか? でしょセリカちゃーん、お客様には笑顔で親切に対応しなきゃー」

 

「あうう……ご注文はお決まりですか……」

 

 弱々しい声で注文をとるセリカ。それぞれノノミはチャーシュー麺、シロコは塩ラーメン、アヤネは味噌ラーメン、ホシノは特製味噌ラーメンに炙りチャーシューのトッピング。そしてレイリーは店の看板メニューの柴関ラーメンを注文した。

 

「……ところでさ、みんなお金は大丈夫なの? またノノミ先輩のに奢ってもらうつもり?」

 

「はい、私はそれでも大丈夫ですよ⭐︎限度額までまだかなり余裕がありますし」

 

「いやいやーまたご馳走になるわけにはいかないよー。きっと先生が奢ってくれるはず。だよね? 先生」

 

「なにっ!?」

 

「カワイイ生徒たちの空腹を満たしてあげれる最高のチャンスだよー?」

 

「むぅ……仕方がない、しばらくギャンブルはお預けとするか」

 

「先生、もしよかったらこっそり使って下さい」

 

 ノノミはゴールドカードを手渡してこっそりと渡そうとする。

 

「いや、いい。ホシノ君が一枚上手だったのだよ」

 

 そんなやりとりをしてから十数分後、それぞれが注文したラーメンが席へと運ばれた。

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

「おぉ……これは、美味いな……!」

 

(しっかりとコクがあるのにもかかわらず余計な味は口に残らない、これならジジイの胃でも最後まで美味しく頂けるぞ)

 

「どうだい兄ちゃん、ウチのラーメンは」

 

「君は……ここの大将か、フフッ、よしてくれ兄ちゃんなどと、そんな歳ではないさ」

 

「ん? そうかい? ハハハ! いやぁすまねぇな、アビドスの子たちが見ない顔の大人と一緒にいたもんで、つい声を掛けちまった」

 

「この子達の先生をやらせてもらっている、シルバーズ・レイリーだ。まだアビドスに来てから日が浅くてな、たが、ここには何度も来ることになるだろう。こんないい店があるのだからな!本当に美味い」

 

「ハハハ! あんた口が上手いじゃねぇか! たんと食うといいさ!」

 

 その後、レイリーたちは柴大将とセリカを巻き込みつつ雑談を繰り広げ、全員ラーメンを完食したのだった。

 

「いやぁーゴチでしたー、先生!」

 

「容赦無く替え玉をしたからね……君は将来デカくなるよ」

 

 若干の呆れ口調が混ざっている。

 

「ご馳走様です、先生!」

 

「うん、お陰様でお腹いっぱい」

 

「それじゃセリカちゃん、また明日!」

 

 な、長かった……やっとみんな帰った……

 

「はぁ〜ほんとなんだったのよ……」

 

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 ・

 

 店の営業時間が終わり、柴大将とセリカは店内の掃除に勤しんでいた。

 

「セリカちゃん、今日はもうあがっていいよ」

 

「え? いいんですか? ありがとうございます」

 

「……なぁセリカちゃん。あの先生、いい人そうじゃねぇか。頼れる人だと思うぜ」

 

「……お先に失礼します」

 

 駆け出すように店を出る。アビドスのみんなだけじゃない、柴大将もそうなんだ。……レイリー先生か、……少しくらいは信用してもいいのかな……ってダメダメ! だって、今まで大人に騙され続けてきたから今のアビドスは……! 

 

 雑念を払うかのように首をブンブンと振りながら帰路に着くセリカ、しかしそんな彼女の元に突如スモークグレネードが投げ込まれる。

 

「ッゲホッゲホッ!」

 

 煙幕!? まさか……ヘルメット団? ここまで後をつけてたの!? 

 

 煙幕の中から何人かの人影が映り始める、頭の形からしてヘルメットを被っている。予想通りヘルメット団の様だ。

 

「ずいぶんと舐めたマネしてくれるじゃない。ちょうどいいわ、憂さ晴らしついでに二度とアビドスの土地に入らない様にしてあげる!」

 

 セリカは戦闘体勢に入る、数で優位を取られていると言っても相手はヘルメット団、彼女にも勝機は十分あった。しかし、一つの爆発音がその勝機をチリへと変えた。

 

 

ドドドドォォォーン!!! 

 

 

 ッッ! これって戦車砲!? うそでしょ……!? アイツらこんなものまで持ってるの!? 

 

 やばい……もう意識が…………

 

 

 

 


 

 

 

「セリカの行方がわからないだと?」

 

「はい……何度も電話しましたし、スペアキーで家にもはいったのですが、どこにも姿がなくて……」

 

「大将さんによると、もう既に店は出たみたいです!」

 

「ここまで音沙汰ないとなるとまさか……ヘルメット団……!?」

 

「へぇー、舐めた真似してくれるじゃん。アイツら」

 

 ホシノは自身の愛銃 Eye of Horus を握りしめる。その握り方には怒りが十分なほどに伝わってくる。

 

「なるほど、君たちはこのアビドス周囲の散策にあたってくれ! 私は遠くへ出る」

 

「レイリー先生、1人でですか? もう1人くらい同行した方がいいんじゃ……」

 

「大丈夫だアヤネ。だからここら一帯付近を君たちは任せたい。セリカを発見した場合すぐに連絡する」

 

 レイリーは足を踏み込んで地面を蹴る。そしてその力は周囲に衝撃波を発生させるほどであり、その勢いで彼はミサイルのような速度で遠くへ飛び去っていった。

 

「あ、あの人……いったいどれほど強いんでしょう……」

 

「ん、いつか絶対勝負する……!」

 

「シロコちゃん今はお預けだよー? とりあえず、私たちはレイリー先生の言う通りセリカちゃんを探そう」

 

 

 

 


 

 

 

 

 あ、あれ……ここは……。

 

 固い床の感触を感じながら目を覚ます。……暗い。微かに感じる振動、もしかしてここ、トラック荷台の中!? ていうことは私、誘拐されて……

 

「うっ……頭が……」

 

 戦車砲の爆風に巻き込まれたのかな……

 

 このトラックどこへ向かってるんだろう。そう思い、トラックの荷台の僅かな隙間から景色を見る。そこから見えたのは寂れた線路だった。

 

「うそ……ここって、アビドス郊外の砂漠!?」

 

 そんな……これじゃ誰にも連絡取れない! 仮に脱出できても、みんなに知らせることもできない……! 

 

 どうしよう……みんな心配してるだろうな……。このまま誰にも気づかれないままどこかに埋められちゃうのかな……。みんなに、他の子達みたいに裏切ってこの街を捨てたって思われちゃうのかな……。

 

 誤解されたまま……みんなに会えないまま終わるなんて……そんなの、そんなの嫌だよっ…………! 

 

「うぅっうっ…………」

 

 どんどん涙が出てくる。もう一度、みんなに会いたい…………! 。誰か……誰か助けて……。

 

 

 

ジャキンッ!!! 

 

 

 突如として斬撃がトラックの荷台を真っ二つに両断する。

 

「えっ!? な、なになに!?」

 

 セリカは驚いて顔を上げる。その先に映っていたのは、見慣れた白髪をした老人だった。

 

「すまない、手荒な助け方になってしまった。だが、無事で良かった……!」

 

「レイリー先生……!?」

 

「アヤネ、聞こえているか? セリカ君を発見した。場所は私の端末を追ってきてくれ」

 

『了解です! 場所は……アビドス郊外の砂漠!? こんなところまで……ありがとうございます。すぐにみんなで向かいます!』

 

「さて連中もやる気のようだな」

 

「気をつけて先生、アイツら戦車を持ってるから! ……それと、助けてくれて、ありがとう……」

 

 セリカは目を逸らし、顔を赤くしながら小声でお礼を言う。

 

「礼はここを切り抜けてからだ。見たところ所々怪我をしているな……酷い目に遭ったな。だが、もう大丈夫だ」

 

 レイリーはセリカをお姫様抱っこの要領で抱き抱える。

 

「えっ! ちょっ……わわっ!」

 

「君に動いてもらう訳にはいかんのでね、このまま終わらす」

 

 

 放たれた覇王色の覇気が彼を中心に広がり、周囲のヘルメット団は気絶して地面に倒れ伏す。

 

「…………すごい」

 

 そしてその勢いのまま戦車に近づき武装色の覇気を纏った足を振り上げる。

 

「君たちは少々、若気の至りが過ぎたなっ……!」

 

 そのまま放たれた蹴りは戦車の正面の装甲に直撃し、戦車は紙屑のようにぐしゃぐしゃになって数十メートルほど転がった後に大爆発を起こして完全に沈黙した。

 

 まさに、一瞬の出来事であった。

 

「ひ、1人で全部終わらせちゃった……」

 

「もうすぐみんなが来てくれる。それまで待とう」

 

「そっか……みんな来てくれるんだ……よかっ……た」

 

「セリカ? ……寝てるな。ダメージと疲労だな、無理もない」

 

 セリカはレイリーの腕の中で気絶するように眠った。そんな彼女の頭をレイリーはそっと撫でる。

 

 

 

「ん、抱き抱えられてるセリカ発見」

 

「おぉ、来てくれたか」

 

「なにぃー!? セリカちゃんを抱き抱えるとはなんと贅沢ものなんだー!」

 

「セリカちゃん……! 先生、ありがとうございます!」

 

『セリカちゃん、本当に、本当によかった……!』

 

「さて、来てもらっておきながら悪いが、先に戻っていてくれ。私はセリカを起こさないように、ゆっくりと戻るからな」

 

「それなら私たちもゆっくり戻る」

 

「む? しかし……」

 

「シロコちゃんたちは先に戻ってて。ほら、もう夜遅いんだから、明日は自由登校じゃないんだよー?」

 

「ん……ホシノ先輩は?」

 

「おじさんはセリカちゃんの容態見てから戻るよーそれに、先生と話したいことがあるんだよねー」

 

「分かりました。ホシノ先輩も夜更かしは禁物ですよ⭐︎?」

 

「もちろんさーおじさんはもう歳だから遅くまで起きれないしね」

 

 アビドス区域へ戻るシロコとノノミをレイリーとホシノが2人で見送る。

 

 ホシノが近づいて、覗き込むようにセリカの顔を確認する。

 

「うん、怪我はしてるけど、大丈夫そうだね。ぐっすり寝てる。いやぁーそれにしてもセリカちゃんをお姫様抱っこしちゃうだなんて! 先生は罪深いねぇ〜?」

 

「ハハハ、あァ、全くだ」

 

「……ねぇ先生」

 

「ん? ああそうだったな。話があると言っていたね」

 

「うん、聞きたいんだけどさ…………」

 

「────レイリー先生って何者なの?」

 

 

 

 

 

 





次回は土曜日に更新するつもりです。

ここまで閲覧していただきありがとうございます。もしよろしければ感想下さると嬉しいです。

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