神様に「リリカルなのは『みたいな』世界に転生したい」って要望したら「幼女戦記」の世界に入った話。   作:スレ主

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久しぶりに小説書きます。
だいぶ前のプロットがあって、時間があったので書き足しながら頑張っていきます。


第0話:『願ったのはリリカル、届いたのはライン』

 

空は鉛色、地は鉄錆色。

ライン戦線。

地図の上ではただの「防衛線」だが、実際には人間を効率よく挽肉に変えるために設置された、巨大な回転臼だ。

 

「……なぁ、ヴィーシャ。一つ聞いていいか?」

「な、なに? デュオ。今、すごく集中してるんだけど……」

 

俺の隣で、借りてきた猫のように固まっているセレブリャコーフ伍長──ヴィーシャは、震える手で無骨な演算宝珠を握りしめていた。

彼女の魔力波形は、先ほどからノイズだらけだ。脳内に響く相棒の冷静な声が、彼女の限界値を数値で突きつけてくる。

 

『……マスター。隣接個体、セレブリャコーフ伍長の恐怖指数が閾値を突破。魔力制御の不全により、防殻(シールド)の強度が20%低下しています。このままでは最初の接触で損壊、ロストします』

 

(分かってるよ。……お喋りは脳の酸素消費を助けるっていうしな。少しはマシになるだろ)

 

「あのアホみたいな砲撃の音さ、お祭りにしては派手すぎて耳が死にそうじゃないか?」

 

「……そんな冗談、今言えるのデュオだけだよっ!」

 

ヴィーシャが半泣きでツッコミを入れてくる。いい反応だ。少しは脳に酸素が回っただろう。

俺たちは今、高度六〇〇、敵国フランソワ領の真っ只中に放り出されている。

任務は単純。「威力偵察および観測任務」。だが、実態は「弾除けの囮」だ。

 

『……警告。敵防空魔導師の熱源反応、多数。相対速度、マッハ〇.五。……マスター、回避ロジックの展開を推奨。帝国標準の術式では、直撃を免れません』

 

(了解。レイジングハート、演算リソースを回避に全振りしろ。当たらなければ、どうということはない)

 

「来るぞ、ヴィーシャ! 歯を食いしばれ、舌を噛むなよ!」

 

直後、空を切り裂く高出力の熱線が、俺たちのすぐ横を通り過ぎた。

遅れてやってくる衝撃波。ヴィーシャの防殻が悲鳴を上げ、彼女の身体が木の葉のように舞う。

 

「ひ、ひぃぃっ! 当たった!? 今、当たったよね!?」

 

「カスっただけだ! 泣いてる暇があったら、宝珠に魔力を回せ! 落ちたら下は泥と死体の海だぞ!」

 

俺は彼女の腕を掴み、強引に姿勢を制御する。

視界の端では、僚機が次々と撃墜され、煙を引いて「臼」の中へと消えていく。

新兵にできることなんて、せいぜい空中で無様に足掻くことくらいだ。

だが、その絶望的な空気を一瞬で凍りつかせる「異物」が、上空から降臨した。

 

「全機、遅い。貴様たちは空を飛ぶ鳥ではなく、ただの不法投棄物か?」

 

鈴の音のように透き通った、しかし心臓を直接掴まれるような冷徹な声。

見上げれば、そこには幼い少女の影。金髪をなびかせ、その瞳にはおよそ子供には似つかわしくない「狂気と合理」が宿っている。

デグレチャフ少尉。

後に「ラインの悪魔」と恐れられる、俺たちの新しい上官。そして、俺の平穏な「生存戦略」を根底から揺さぶる張本人だ。

 

「……少尉、到着が三秒遅いですよ。おかげで俺のバイタルは『残業拒否』のサインを出してます」

 

俺が肺に溜まった硝煙を吐き出すように軽口を叩くと、少尉は氷のような視線をこちらに向けた。その瞳にあるのは、新兵を労るような甘さではなく、極めて冷徹な「管理者の目」だ。

 

「……口が動くなら、引き金も動くだろうな、オルカ伍長。死にたくなければ、私の加速に付いてこい。遅れる者は、私が直接引導を渡してやる」

 

直後、少尉の演算宝珠が、帝国軍の教範に忠実な──しかし極限まで洗練された魔力光を放ち、一気に加速した。

 

『……警告。デグレチャフ少尉、教範通りの最大戦速に移行。追従は可能ですが、セレブリャコーフ伍長の魔力残量が危険域です。彼女の術式制御は「恐怖による過剰出力」に陥っています』

 

(……チッ、だよな。あのクソ真面目な性格が災いして、教本通りに防殻(シールド)を張りすぎてんだ)

 

脳内でレイジングハートと状況を共有しつつ、俺は隣で顔面を蒼白にしているヴィーシャに向かって、通信機越しに怒鳴りつけた。

 

「ヴィーシャ! 形式通りの演算は捨てろ! 出力を3割絞って俺の真後ろに入れ! 航跡(トレース)から外れるなよ!」

 

「は、はいっ! ……でも、もう、魔力が……っ! 追いつけないよ、デュオ……!」

 

彼女は教本に忠実であろうとするあまり、無駄な防殻維持に魔力を食われ、少尉の背中からじわじわと引き離されていく。高速飛行において最大の敵となる「空気の壁」を、真正面から受け止めてしまっているのだ。

 

(レイジングハート、ヴィーシャの機体識別信号を同期。俺の前面に楔形の偏向防殻を展開しろ。流体抵抗を俺が肩代わりして、彼女をスリップストリームに引き込むぞ!)

 

『……了解。ハック完了。加速ロジックを独自定数に置換。……ドライブ、起動(システム・スタート)

 

俺はヴィーシャの襟首を強引に掴み上げると、自分の真後ろ──俺が切り裂いた直後の、空気が最も薄く、抵抗が最小限になる領域へと彼女を滑り込ませた。

 

「ひ、ひぃぃぃっ! デュオ、急に体が軽くなった!? 吸い込まれるみたい……!」

 

「そのまま宝珠を固定してろ! 離されるなよ、このポケットから出たら一瞬で置いていかれるぞ!」

 

よし、まずは一人分。だが、これだけじゃまだ足りない。

俺はさらに加速し、先行する少尉の真後ろ──彼女が超高精度な魔力循環で切り裂いた直後の「空白地帯」へと突っ込んだ。

少尉が作る巨大なスリップストリームに俺が入り込み、さらに俺が作ったポケットにヴィーシャを収める。三機が直列に繋がる、即席の高速機動フォーメーションだ。

少尉は時折、肩越しにこちらを視認しているようだった。

ヴィーシャを『介護』しながら、自分を「風除け」にして合理的に食らいついてくる俺を、彼女はどう評価しているのか。

通信越しに、低く、透き通った声が響く。

 

「……ほう。伍長、貴官は意外と『リソースの管理』に長けているようだな。面白い」

 

その言葉が、純粋な賞賛なのか、それとも「こいつはもっと使い潰せる」という査定なのか。

判断する暇もなく、少尉はさらなる会敵空域へと、俺たちを引き連れて突っ込んでいった。

 

「……聞いたか、ヴィーシャ。どうやら、死ぬよりきつい『散歩』が始まるらしいぜ」

 

俺は苦笑し、手元の演算宝珠から漏れ出る、帝国軍には存在しないはずのピンク色の火花を隠すように、さらに加速を強めた。

 

 





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