神様に「リリカルなのは『みたいな』世界に転生したい」って要望したら「幼女戦記」の世界に入った話。 作:スレ主
「再編成ですか?」
帰投後のデブリーフィング。少尉の口から出た言葉に、俺は思わず聞き返した。
「あぁ。東方からの英雄達がようやく到着したようだ」
少尉が指し示した地図には、鉄道網に沿って移動する膨大な兵力のマーカーがあった。
帝国の防衛ドクトリンの根幹──『内線戦略』。
四方を敵に囲まれた帝国が、鉄道網を駆使して予備兵力を一気に集中運用する戦略だ。理論上は最小の兵力で効率よく回るはずの防衛線。
『……マスター。補足します。……内線戦略は「時間」と「距離」の完全な制御を前提としています。……ですが、現状の兵站維持率は予測値を15%下振れ。……システムはすでに飽和状態にあります』
脳内のRHが冷徹に指摘する。
そう、北方の協商連合軍への対処までは「回って」いた。だが、そこで欲をかいて予備戦力を投入しすぎた結果、西方の防衛線が薄くなり、フランソワ軍の介入を招いた。
急造の編成で穴を埋めるための時間稼ぎ──その「穴」を塞ぐ捨て石として、俺たち教導隊や、少尉のような「技術試験部隊」が前線に放り込まれたというわけだ。
(……ったく、理屈は分かるが、教導隊を前線に出すのは末期的だぞ)
教導隊の仕事は、新兵を育てることだ。誰かに教えるというのは膨大な時間と経験が必要で、それを正しく使える人材こそが帝国の宝のはずだ。そんなリソースを、試験段階の「九五式」と一緒に最前線で使い潰すのは、帝国の未来を前借りして燃やしているようなものだ。……閑話休題。
「つまり、俺たち教導隊組は?」
「一応、任務完了ということで中央に戻ることになったな」
その言葉を聞いた瞬間、俺の脳内で歓喜のファンファーレが鳴り響いた。
「………ここで喜んだら怒られます?」
「まぁ、私は何も言わないが、周りに人がいる時は気をつけろ」
少尉の呆れたような声に、俺はヴィーシャの方を向く。
「聞いたかヴィーシャ! 帰れるぞ、帝都に!」
「デュオ、顔が満面の笑みになってるよ……」
「おっと、表情筋を抑えなきゃ。……少尉は、また実験部隊の任務に戻るんですか?」
「予定ではな。だがおそらく、直ぐに軍大学に行くことになるだろう」
「おー、エリートコースですね。もっと上に行くってことだ」
「軍大学?」
ヴィーシャが不思議そうに首を傾げる。俺は「解説役」として肩をすくめた。
「要するに、少尉がそこでお勉強して、もっと上の階級に上がるってこと。幹部の昇進は大変なんだ。推薦やら勲章やら……。つまり今回は、中隊長の推薦ですか?」
「……まぁ、そうだ」
少尉は少し言葉を濁したが、その瞳には冷徹な計算が宿っている。だが、彼女はそこで話を止めず、俺たち二人をじっと見据えた。
「それと……二人も、私の権限で推薦していることがある」
「「えっ?」」
「──将校課程を、受けてみないか?」
「…………は?」
俺の口から、間の抜けた声が漏れた。
帝都に戻って、楽なデスクワークや後方勤務に戻れると信じていた俺の「ホワイトな計画」の雲行きが、一気に怪しくなる。
(将校課程……。それを受ければ、平民の俺でも士官の仲間入りだ。……だが、それは同時に、より深く、より逃れられない戦場への片道切符になるんじゃないのか?)
少尉の視線が、値踏みするように俺を射抜く。
これから俺たちの軍人生活がどう転がっていくのか。……嫌な汗が背中を伝った。
書き溜めは終わりました。
とりあえず感想とか評価みて続き書きます。