神様に「リリカルなのは『みたいな』世界に転生したい」って要望したら「幼女戦記」の世界に入った話。   作:スレ主

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漫画版のキャラ出ます。



第14話:「ラインからの帰還、二人の悪魔(ログ)、そして三人の候補生』

帝都ベルンの公園。石造りの重厚な建造物が並ぶその一角は、最前線の硝煙が嘘のように、平穏な活気に満ちていた。

走り回る子供たちの笑い声と、談笑しながら通り過ぎる市民たち。だが、その光景の中に、灰色や紺色の軍服がごく自然に混じり込んでいるのが、この国の日常を象徴していた。

ベンチに深く腰を下ろした俺は、広げた新聞の片隅に躍る「ライン戦線、膠着状態続く」の見出しを、どこか他人事のような気分で見つめていた。

 

(……つい先日まで、俺もあの中にいたんだな)

 

銃声の代わりに聞こえるのは、石畳を叩く路面電車の音と、時折響く軍靴の足音だけだ。この「戦争の遠さ」こそが、かえって不気味なほどの非現実感を際立たせていた。

ふと、ライン戦線で、デグレチャフ少尉にかけられた言葉が脳裏をよぎる。

 

「オルカ伍長なら、さらに上を目指せる。……その方が、手の中に残る『選択肢』は、より広く、より自由なものになるだろう」

 

あの合理的すぎる提案は、元社畜の俺の心に深く突き刺さっていた。

 

『マスター。……改めて、将校課程進学に関する意思決定マトリクスを提示します』

 

脳内の自律型AI、レイジングハートが、思考の海に淡々とデータを羅列していく。

 

『メリット。第一に、指揮官クラスへの昇進による生存率の向上。第二に、魔導師としての戦略的価値の増大による裁量権の獲得。および、士官用配給による生活環境の改善。

デメリット。……学業および軍事学習に伴う演算リソースの恒常的な消費。および、高位官僚機構との接触による政治的リスクの増大。

……判定。生存を最優先とするならば、将校への昇進を強く推奨します』

 

(……わかってるよ。どうせ戦わされるなら、少しでもマシな場所を目指すのが正解だってことくらい)

 

俺は新聞を折りたたみ、重い溜息をついた。

魔導師という「戦略資源」として徴用された以上、どのみち戦いの渦中からは逃げられない。ならば、使い捨ての歩兵として泥を啜るよりは、盤面を俯瞰できる「将校」という椅子に座る方が、まだ生き残る目がある。

 

「……よし。やるか、将校課程」

 

独り言ちて、俺はある程度の準備を終えた参考書を脇に退け、ゆっくりと目を閉じた。

だが、そこには安らぎの闇ではなく、冷徹な「指導者」の声が待ち構えていた。

 

帝都の喧騒とは無縁の冷徹な仮想戦場。

網膜に投影される無数の戦術データが、仮想敵魔導部隊の接近を冷酷に告げていた。

 

(レイジングハート、迎撃シークエンスを開始)

 

『了解(セットアップ)。……マスター、敵前衛の防殻(シールド)強度を確認。推定、通常弾頭での貫通は困難です。近接戦闘を維持しつつ、主砲の収束準備へ移行してください』

 

脳内のAIは、休養中という概念を理解するつもりはないらしい。

俺は仮想空間で重層的な魔力障壁をすり抜け、回避機動を繰り返しながら意識を集中させる。だが、魔法を使い始めてからまだ一年も経っていない未熟な魔力回路は、練り上げる魔力にわずかな乱れを生じさせていた。

 

『進言します。……魔力回路のバイパスに滞りがあります。……マスター、これではライン戦線での最適解にすら届きません』

 

(おいRH! これでもラインじゃ死なないために必死に食らいついたんだぞ! 魔法を覚えて一年未満の新兵にしちゃ上出来だろ!)

 

『……否定します。比較対象を提示します。……高町なのは氏は、同年齢時、この1.5倍の出力で一点突破を完遂。……また、デグレチャフ少尉の演算効率は、現在のマスターを22%上回っています』

 

脳内に表示される、二人の「悪魔」の異常な戦闘ログ。

一方は規格外の出力、もう一方は神懸かり的な演算精度。その中間に立たされている凡人の身にもなってほしい。

 

(……あいつらは別格なんだよ! 白い悪魔にラインの悪魔……俺はただの、中身が30過ぎた一般人なんだ……!)

『……生存を望むならば、個人の主観は排除すべきです。……最終シークエンス、ディバインバスターを起動します』

 

腕を突き出し、全魔力を一点に収束させる。

だが、放たれた光の奔流は、敵の展開した防護膜を削るに留まり、無情にも弾き飛ばされた。

 

(……破れない。……この程度じゃ、安全な後方の席に座る前にラインの土に還っちまうぞ……)

「なのはだって、あんなに頑張ってたんだから……。俺も、やんなきゃ、ダメだよな……」

 

現実の俺は、公園のベンチで魂が抜けたように空を見上げていた。

主役になりたいわけじゃない。ただ、安全な職種に手が届くその日まで、意地でも生き残るための足掻き。だが、その努力はまだ、絶対的な安全圏には届いていない。

脳内での過酷な戦闘訓練により、俺の精神リソースは既にボロ雑巾と化していた。

 

「……デュオ? こんなところで何してるの?」

 

不意に投げかけられた親しげな声に、俺は弾かれたように目を開けた。

そこには、少しだけ心配そうな顔をしたヴィーシャが立っていた。

 

「……ヴィーシャか。驚かせないでくれ」

 

焦点の合わない目を向けると、そこには心配そうにこちらを覗き込んでいるヴィーシャがいた。ベンチの横に立つ彼女の背後では、帝都の穏やかな陽光が石造りの街並みを照らしている。

 

「驚いたのはこっちよ。空を見上げたまま固まってるんだもの。ラインから戻ってから、なんだか無理してない?」

 

幼馴染の彼女にだけは、この脳内ブートキャンプの凄絶さは伝えたくない。魔法を使い始めて一年、生き残るために必死に食らいついている不格好な姿を見せるのは、どこか気恥ずかしかった。

 

「いや、少し考え事をしていただけだ。……将校課程に行くためのな」

 

「そう……。デュオもやっぱり受けるのね。……ねえ、ちょうど今、エーリャと近況報告をしてたところなの。もしよかったら、三人で近くのカフェに行かない?」

 

ヴィーシャの提案は、RHにボコボコにされた俺の心に、最高級の回復魔法のように染み渡った。だが、その隣にいる少女の、快活で隙のない気配が気にかかる。

 

「あ、紹介するわね。幼年学校時代からの同部屋同期のエレナ・ミュラーよ。……エーリャ、こっちが幼馴染のデュオ」

 

「よろしくね、デュオ君。ヴィーシャからいつも名前は聞いてたわよ。幼馴染に、とっても努力家でちょっと変わった人がいるんです、ってね」

 

エレナ・ミュラー。……エーリャか。ヴィーシャから話には聞いていた。帝国軍主力の砲兵支援隊で観測員を務めている、幼年学校時代からの親友だと。彼女はラインのような最前線の歩兵魔導師とは違い、後方から長距離砲兵を導く精密演算のエキスパートだ。その立ち居振る舞いには、前線の兵士とはまた違う、洗練された「油断のならなさ」が漂っている。

 

そして、口には出さないが、ヴィーシャより全然スタイルがいい。

俺は無意識に、相手に不快感を与えない程度の自然な予備動作で、上から下までそのシルエットを視線でなぞった。相手の肩越しに遠くを見るふりをして、焦点だけを素早く移動させる。元30代の処世術が、無意識に洗練された「視線のテクニック」として発動していた。

 

『……マスター。視覚情報の処理に著しい偏りが見られます。心拍数の微増を確認。……現在、相手の身体的特徴のデータ収集を優先していますか?』

 

脳内のAIが、余計な指摘を飛ばしてくる。

 

(うるさいRH。これは状況確認だ。将校課程を共にする同期のポテンシャルを計っているだけだ。……というか、不快感を与えない視線の運びなんだから、黙ってろ)

 

『……了解。ですがマスター。その「非言語的アプローチ」が成功している確率は、演算上32%に留まっています。……相手の口角の微動から、既に意図を察知されている可能性を警告します』

 

余計なお世話だ。

 

「……余計なこと言わなくていいんだぞ、ヴィーシャ。……ミュラーさんも将校課程を受けるのか?」

 

「ミュラーさん? ふふ、私のことはエーリャって呼んでいいわよ、ヴィーシャの幼馴染だしね。私もデュオって呼ぶから、これでお互い様でしょ?」

 

エーリャは不敵に笑い、初対面とは思えない距離感で俺の顔を覗き込んできた。

 

「だから、私たち三人、これからは同期になるわね。そんなに警戒しないでよ。……さて、未来の将校様たち。……ティータイムにしましょうか?」

 

エーリャが先頭を切って歩き出し、ヴィーシャが困ったように笑いながらそれに続く。

安全な椅子を手に入れるための、地獄の勉強期間。

癒やしの幼馴染と、一筋縄ではいかなそうな新メンバー。この三人で、これからの将校課程を戦い抜いていくことになる。

 




なんかランキング乗ってましたね。
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