神様に「リリカルなのは『みたいな』世界に転生したい」って要望したら「幼女戦記」の世界に入った話。 作:スレ主
列車を降りた先は、かつては優雅なティータイムでも提供していたであろう街角のカフェだった。
だが、今のそこにはコーヒーの香りの代わりに、使い古された軍靴の泥と、剥き出しの鉄、そして遠雷のように響く砲声の振動が充満している。
キョロキョロと周囲を窺うような真似はしない。目線だけで状況を確認する。
ヴィーシャは相変わらず、今にも砕けそうなほど表情を張り詰めさせていた。列車内で俺たちを笑ったC大の連中も、流石に今は静かだ。
無理もない。ここは「絶対」なんて言葉が、砲弾一発でミンチの肉に変わる戦場だ。
『……マスター。戦域魔力密度の急上昇を確認。前方より、極めて高密度かつ異質な個体反応が接近中。警戒を推奨します』
(……わかってるよ。おちゃらける勇気も人徳もないしな)
待機を命じられて一小時。誰一人として緊張を解く気配がない。俺もそれに乗っかって、手元の演算宝珠(鉄屑)の接触不良を直すフリをしながら、RHと術式の最終チェックを並列処理していた。
その時、重厚な扉が開かれ、一人の将校が姿を現した。
「諸君に第二〇五強襲魔導中隊、第三小隊長を紹介する。少尉、入りたまえ」
事前情報はすでにRHのデータベースに叩き込んである。
ウチの小隊長は「白銀」の二つ名を持ち、生きて拝領するのが困難な「銀翼突撃章」を持つスーパーエリート。……だが、問題はその中身だ。
「失礼します」
軍靴の硬い音が響き、現れたのは、軍服に身を包んだわずか九歳の金髪の少女だった。
もしこれが男だったら、「なろう系のよくある俺TUEEE系踏み台役ですか」と後ろ向きに笑うところだ。だが、彼女が放つオーラは別物だった。
転生者である俺が、感覚的に察知する「同族」の匂い。
それも、おそらくは徹底的な合理主義(リアリスト)で、この戦場という非効率の極致に立たされている、救いようのない「勘違い」系の匂いだ。
『……マスター。対象の魔力波形に、深刻な同期エラー……いえ、強烈な「意志」の干渉を検知。彼女もまた、この世界の理にハックを仕掛けている可能性があります』
(ああ。……どうやら、俺のポートフォリオに最大のリスク、あるいは最大のリターンが舞い込んできたらしい)
少女は冷徹な、しかしどこか虚無感を孕んだ瞳で俺たち新兵を一瞥した。
そして、その小さな身体からは想像もつかないほどに凛とした、しかしどこか絶望を飲み込んだ声で言い放った。
「白銀、ターニャ・デグレチャフ魔導少尉です。よろしく、戦友(リソース)諸君」
その瞬間、俺は確信した。
この幼女上官の下で生き残るには、俺の「趣味」を総動員して、全力でホワイトな未来を勝ち取るしかないと。
ブラック企業(帝国軍)でのサバイバル生活、本当の地獄はここからだ。