神様に「リリカルなのは『みたいな』世界に転生したい」って要望したら「幼女戦記」の世界に入った話。   作:スレ主

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主人公は男っす。
百合展開希望してた人ごめんなさい。


第4話:『鉄の規律、あるいは反省の回避術』

 

整列した新兵たちの間に、剃刀のような鋭い緊張が走る。

一人ずつ、喉を潰さんばかりの勢いで所属と姓名を叩きつけていく。

 

「ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ伍長! イーダル=シュタイン幼年D大隊第三中隊から参りました!」

 

隣のヴィーシャが、震えを殺した精一杯の声で吠える。次は俺の番だ。

ここで「適当に流す」なんて選択肢は、俺の演算ロジックには存在しない。

軍隊という場所では、時間は絶対、装備の不備は罪、そして上官への応答が微弱なのは「規律違反」だ。

 

そうした細かなミスを犯せば、かつての野蛮なビンタの代わりに、この世界でも「反省」としての腕立て伏せが待っている。

一回、二回と号令に合わせて身体を沈め、終わりの見えない回数を強要される肉体的苦痛。それは軍事的なリソースの無駄遣い以外の何物でもない。

俺は真っ直ぐ前を見据え、腹の底から声を絞り出した。

 

「オルカ・デュオ伍長! 同中隊より参りました!」

 

声量、姿勢、視線の角度。すべてを「模範的な兵士」として最適化して出力する。

不必要な「反省」で体力を削られるのは御免だ。目の前にいるのは、愛でる対象としての幼女ではない。俺たちの生殺与奪の権を握り、なおかつ「効率」のみを愛する化け物だ。

 

『……マスター。対象、デグレチャフ少尉がこちらを凝視。微細な表情筋の動きから、貴方の「応答の質」を査定していると推測されます。……合格圏内です。不必要な筋力トレーニングを回避しました』

 

(……ふん、当然だ。ここで無駄な乳酸を溜めるのは、生存戦略に反するからな)

 

少尉はツカツカと軍靴を鳴らし、ヴィーシャと俺の間に立った。

徴募組(D大)出身の俺たちに対し、何か見せしめでも始まるのかと周囲の空気が強張る。だが、彼女はトントンと、俺たちの肩を軽く叩いた。

 

「貴官らの、義務に対する誠意に敬意を示そう。セレブリャコーフ伍長、オルカ伍長」

 

意外にも、そこにあったのは労いの言葉だった。

一瞬、彼女の中に「人間味」を見出しかけたが、続く言葉でその幻想は粉々に粉砕される。少尉はそのまま、俺たちを嘲笑っていた志願組(C大)の二人組の前に移動した。

 

「そして、好き好んで志願した両名。……志願したのだ。間違っても、この徴募組の二人より後に死ぬなよ」

 

少尉の声が、一気に氷点下まで下がる。

 

「一言言っておく。帝国には無能な士官候補生を養う余裕などない。それは害悪ですらある。祖国に詰め寄り軍衣を纏った以上は、相応の貢献を成せ。成せぬのならば……死ね」

 

(……出た。徹底した契約社会の住人だな)

 

『……マスター。彼女の言動は、軍事組織における「人的資源の最適化」を極端に突き詰めた結果です。志願した権利の代償として、過酷な義務を求めています』

 

「以上です」

「よろしい少尉。陣地待機中は任せる」

 

上官の許可を得た少尉は、くるりとこちらを振り返った。その瞳には、すでに次の「業務」への段取りが浮かんでいる。

 

「はっ。……さて、諸君。速やかな装具点検の後、野戦装備にて集合。そこらを『散歩』して、親睦を深めようではないか」

 

散歩。その言葉の響きとは裏腹に、俺の脳内ではRHが即座に戦域マップを展開していた。

行き先は明白だ。ライン戦線の象徴、あるいは「巨大なドブ」とも形容される、泥濘の塹壕(トレンチ)だ。

銃火器の進化により、剥き出しの突撃が「自殺」と同義になったこの時代。兵士たちは土を掘り、ネズミのように潜むことでしか生き長らえない。

 

だが、そこは安全地帯ではない。

 

上からは大砲が降り注ぎ、狭い穴の中では至近距離での刺し合いが日常だ。そして何より、絶望的な衛生環境が牙を剥く。

 

『……補足。塹壕内の湿度は飽和状態。防腐処置なしでは、末端組織の壊死、いわゆる「塹壕足」の発症確率は極めて高値です。マスター、足元の防水・抗菌術式の強化を推奨します』

 

(わかってるよ。……軍の補給も届かないような場所で、水虫から指を失うなんて、俺の人生設計にはないからな)

 

「……行くぞ、ヴィーシャ。泥遊びの時間だ」

 

俺は、青ざめるヴィーシャを促し、鉄と泥の臭いが充満する戦線の深部へと足を踏み出した。

 

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