委員決めから6日後。
「今日のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイトともう2人、そして補助講師の5人体制で見ることになった」
「ハーイ! 何するんですかー!」
相澤先生が説明すると、瀬呂くんが手を挙げて質問する。
「災害水難なんでもござれ、レスキュー訓練だ!!」
そう言って相澤先生が見せたのは、『RESCUE』と書かれたカード。
戦闘訓練の後は救助訓練か…
「レスキュー…今回も大変そうだな」
「ねー!」
「バカおめー! これこそヒーローの本分だぜ!? 鳴るぜ!! 腕が!!」
「水難なら私の独壇場。ケロケロ」
上鳴くん、芦戸さん、切島くん、梅雨ちゃんが順番に発言する。
相澤先生の前で喋ったりなんかしたら…
「おい、まだ途中」
相澤先生が、“個性”を発動しながら睨んできた。
「今回、コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな。訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上、準備開始」
そう言って相澤先生は、相変わらず合理的に要点だけ伝えて行ってしまった。
てかこれどうなるんだろう。
マスコミパニックが起こらなかったって事は、死柄木達が侵入してこないって事だよね?
◇◇◇
その後、私達はコスチュームに着替えて移動した。
「バスの席順でスムーズに行くよう番号順に2列で並ぼう!!」
「飯田くんフルスロットル…………!」
飯田くんが私達に指示を出すと、緑谷くんがツッコミを入れる。
私達は飯田くんの指示通りに、出席番号順に並んでバスに乗った。
だけど…
「こういうタイプだった、クソウ!!!」
「イミなかったなー」
訓練場に向かうバスの中で飯田くんが頭を抱え、芦戸さんが辛辣な一言を浴びせる。
バスのシートは2人掛けのシートだけではなく、横向きのロングシートも混在した、市中バスとかで見るタイプの並びだった。
てか志村にベストポジション隣取られたんだけど。
爆豪くんの隣で轟くんの前とか、超おいしい位置じゃん。
まあいいわ、訓練で一緒になればいい話だもん。
特に禁止されなかった事もあって、私達は席が近い人同士で仲良く話し合った。
そんな中、梅雨ちゃんが口を開く。
「私、思った事を何でも言っちゃうの。緑谷ちゃん」
「あ!? はい!? 蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで。あなたの“個性”、オールマイトに似てる」
「!!!」
梅雨ちゃんが爆弾発言をすると、緑谷くんが目を見開く。
「そそそそそそうかな!? いや、でも、僕は、その、えー」
「待って梅雨ちゃん、出久の“個性”はオールマイトのとはちょっと違うよ? 強さもオールマイトとは比べ物にならないし」
「そうだぜ、梅雨ちゃん。似て非なるアレだぜ」
慌てて言い訳しようとする緑谷くんをフォローする形で志村が言うと、切島くんが志村の言い分に賛成する。
「しかし増強型のシンプルな“個性”はいいな! 派手で出来る事が多い! 俺の硬化は対人じゃ強えけど、いかんせん地味なんだよなぁー」
「僕は凄くカッコいいと思うよ! プロにも十分通用する“個性”だよ」
「プロなー! しかしやっぱヒーローも人気商売みてぇなとこあるぜ!?」
「派手で強えつったら、あとはやっぱ轟と爆豪、それと神剱だな」
そう言って上鳴くんが、私達を見る。
ふふふ、皆が私に注目してるわ。
「カッチャンはねー、もうちょっと口の悪さ直さないとな!」
「てめえも大概だろうが、デカ女!」
「ほら」
志村が爆豪くんを指差しながら言うと、爆豪くんがキレた。
あいつの距離の近さなんなの?
ホント目障りなんだけど。
なんて考えていると…
「もう着くぞ、いい加減にしとけよ…」
「「「ハイ!!」」」
相澤先生の地を這うような声が響き、皆が一斉に返事をする。
◇◇◇
「「「すっげーーー!! USJかよ!!?」」」
訓練場に着くなり、皆が興奮して声を上げる。
建物の中には、いくつかのエリアに分かれた広大な敷地が広がっていた。
ビルが倒壊した市街地、土砂崩れにより民家やビルが埋もれているエリア、岩肌が剥き出しになった山岳、轟々と燃えている市街地、巨大なウォータースライダーが設置されたプール、ドーム上の建物。
考えうる事故や災害を詰め込んだテーマパークのような施設だ。
こうして見てみると、この施設すごい広いな…
「水難事故、土砂災害、火事etc.あらゆる事故や災害を想定し僕が作った演習場です。その名も……
「スペースヒーロー『13号』だ! 災害救助で目覚しい活躍をしている紳士的なヒーロー!」
「わー! 私好きなの、13号!」
13号先生が説明すると、緑谷くんとお茶子ちゃんが興奮気味に声を上げる。
…あれ?
今日は5人で授業をするって聞いてたけど、まだ2人しかいないな…
「先生! 講師の方々がまだ揃っていらっしゃらないようですが!?」
飯田くんが、手を挙げながら相澤先生に質問する。
すると相澤先生は、一拍置いてから答えた。
「……知らん。遅刻した奴等なんか放っとけ。13号、始めるぞ」
「えー、始める前にお小言を一つ二つ…三つ…四つ…」
増える……
なんて思っていると、13号先生が私達の顔を見ながら話し始める。
「皆さんご存知だとは思いますが、僕の“個性”は『ブラックホール』。どんな物でも吸い込んでチリにしてしまいます」
「その“個性”でどんな災害からも人を救い上げるんですよね」
緑谷くんが言うと、お茶子ちゃんが鞭打ちになりそうな勢いで首を縦に振る。
「えぇ…しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそう言う“個性”が居るでしょう」
簡単に人を殺せる力……か。
轟くんや爆豪くん、私あたりがそうなのかな。
「超人社会は“個性”の使用を資格制にし、厳しく規制する事で一見成り立っているようには見えます。しかし、一歩間違えれば容易に人を殺せる“いきすぎた個性”を個々が持っている事を忘れないで下さい。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めてる可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います。この授業では…心機一転! 人命の為に“個性”をどう活用するかを学んで行きましょう! 君達の力は傷付ける為にあるのではない。救ける為にあるのだと心得て帰って下さいな。以上! ご清聴ありがとうございました」
「ステキ—!」
「ブラボー!! ブラーボー!!」
13号先生が話し終えてお辞儀をすると、お茶子ちゃんと飯田くんが拍手と歓声を送る。
先生の説明が終わって、私達は山岳エリアに移動した。
結局、いつまで経っても
◇◇◇
「ではまずは山岳救助の訓練です!訓練想定としまして、登山客3名が誤ってこの谷底へ滑落。1名は頭を激しく打ち付け意識不明。もう二名は脚を骨折し動けず救助要請。という形です」
13号先生が説明すると、切島くんと上鳴くんが前に出て谷を覗き込む。
二人は、底が全く見えない谷底に驚いて声を上げる。
「「うわぁああ!?」」
「深っけぇえええ!!」
「二名はよく骨折で済んだなオイ!」
うわ、本当だ。
結構深い。
なんて思っていると、飯田くんが、駆け出して二人を叱った。
「切島くん上鳴くん、何を悠長な事を!! 一刻を争う事態なんだぞ!! 大丈夫ですかぁ!! 安心して下さい!! 必ず助け出しまぁす!!」
飯田くんは、谷底に向かって叫び、救助者の声を聴き取る仕草をした。
そんな飯田くんを見て、切島くんと上鳴くんが呆れる。
「おめーは早すぎんだろ」
「まだ人いねーよ」
まだ始まってもいないのに一人で勝手に救助訓練をしている飯田くんに対し、二人は冷静にツッコミを入れた。
「うおおお!! 本格的だぜ!! 頑張ろうねデクくん!!」
「う、うん!」
お茶子ちゃんが言うと、緑谷くんが顔を赤くして頷く。
だけど最初の救助者は、一番やる気だった飯田くん、お茶子ちゃん、緑谷くんの三人だった。
そして救助者は、常闇くん、轟くん、爆豪くん、八百万さん、それから私の5人。
やった、轟くんと爆豪くんと一緒だ!
「まず神剱が崖の上から要救助者の安全確認。八百万が道具を出して、俺と爆豪で引き上げる。介添は常闇を降ろす。これがベストだと思うが……おい神剱、話聞いてるか?」
「えっ!? うん!」
やばっ、浮かれすぎて轟くんの話聞いてなかった。
えっと、確かまず私が探知するんだっけ?
「それじゃ、行くよ。『
私は、その場で『
刃の部分に波紋が刻まれたグラディウスで、エネルギーを込めると刃の部分が黄緑色に輝き、髪の色も黄緑に変わる。
この剣を握っている間は、音を操ったり、細かい音を拾ったりできる。
私は、超音波を使った探知で谷の深さや要救助者三人の居場所と容態を確かめ、自分の声を谷底に送って三人とコンタクトを取った。
要救助者の安全確認とコンタクトを終えた後、轟くんと八百万さんが倍力システムを作り、常闇くんが谷底に降りた。
常闇くんと要救助者を、轟くん、爆豪くん、そして私の三人で協力して引き上げる。
初めての救助訓練は、自分でもビックリするくらいスムーズに終わった。
最後先生に褒められたし、轟くんや爆豪くんと同じチームだし、何よ今日、いい事ばっかじゃん。
その後も救助訓練は進み、5組全ての訓練が終わった。
最後のチームのお茶子ちゃん、尾白くん、葉隠さん、緑谷くんが要救助者を全員救出し終えると、13号先生が救助の講評をする。
「皆さん大変素晴らしい成果でした! 1回目にしては! 救助とは時間との戦いでもあります。まだまだ改善の余地が皆さんにはありました。即ち! まだまだ伸び代があるということ!」
「何か呆気ねーや」
「気を抜くな」
13号先生の発言に対し上鳴くんがポロッと言うと、相澤先生が上鳴くんを睨みつける。
「まだ授業は続くぞ」
そう言って相澤先生は、先に次の訓練場へと足を運んだ。
それに続けて、私達も次の訓練場へと向かう。
◇◇◇
次に向かったのは、倒壊ゾーン。
倒壊したビルが無秩序に散らばっている市街地を模した訓練場だ。
「で、次はこちら。倒壊ゾーンです! 救助訓練の1回目という事で、今回は色んな状況を経験してもらいます。この倒壊ゾーンでの訓練想定は、震災直後の都市部。被災者の数・位置は何もわからない状態で、なるべく多くを助ける訓練です。8分の制限時間を設定し、これまた4人組での救助活動を行います。残りの17名は各々好きな場所に隠れて救助を待つ事。ただしそのうち8名は“個性”を出せない状態と仮定します。その8名は私が指定します」
「それってかくれんぼ! かくれんぼじゃん!」
13号先生が言うと、芦戸さんがキャッキャとはしゃぐ。
「簡潔に言うと近いですね。では、1回目の4人組はこちら!」
そう言って13号先生が指名したのは、お茶子ちゃん、爆豪くん、緑谷くん、峰田くんの4人だった。
「被害者を運ぶにあたって胸及び臀部にやむを得ず触れてしまった場合、それは何か罪に当たるのか否か…」
峰田くんがまた何か言っていた。
君に関しては有罪よ、峰田くん。
「要救助者側が隠れて2分。それでは捜索訓練を始めます! 震災直後、
指示が出てすぐ、私はビルの陰に隠れようとしている轟くんについていった。
すると轟くんは、足を止めて私に話しかけてくる。
「……なんで俺に着いてくるんだ?」
「だって、こういうのって協力した方がいいんじゃない? ほら、効率とか考えて」
「そういうもんか…」
私と轟くんがビルの影に隠れた、その時だった。
「っ!? 伏せろ!!」
轟くんが、血相を変えて私に叫んだ。
ゾワっと寒気が走ったかと思うと、私の後ろに氷の壁が出現する。
私が驚いて咄嗟に飛び退くと、氷の壁が塵になって消えた。
「大丈夫か!?」
「う、うん…」
轟くんが、私に駆け寄る。
私がさっきまで立っていた場所に、誰かがいた。
さっきのは、轟くんが咄嗟に私を守ってくれたのか…
「ったく、どこだよオールマイトは…せっかくここまで出張ってきたってのによぉ…子供を殺せば来るのかな?」
そこには、ボリボリと頬を掻きながら私達を睨みつける死柄木がいた。
死柄木は、身を屈めて床に触れる。
すると床にビキッとヒビが入り、ヒビが壁にも広がっていく。
一瞬のうちに、ビルが音を立てて崩壊する。
無数の瓦礫が、私達の頭上に降ってくる。
私が剣を出して瓦礫を吹き飛ばそうとする前に、轟くんが分厚い氷の屋根を作って瓦礫を防いでくれた。
そうしている間にも、ビルはどんどん崩壊していき、土煙で視界が悪くなる。
「何だよ、これ……」
轟音が止んで、外の様子を見てみると、私達の周りには巨大なクレーターができていて、周囲のビルが全部消し飛んでいた。
クレーターの中心には、不気味に笑う死柄木がいた。
嘘でしょ、こいつ、強さが原作の比じゃない…!!
もうこの時点で、『崩壊』を操れるの…!?
「No.2ヒーロー“エンデヴァー”の息子と、No.7ヒーロー“マーリン”の娘…いいねぇ、オールマイトへの土産にちょうどいい」
そう言ってニタァ、と不気味に笑う死柄木を見て、思わず背筋がゾクっと震える。
予定は少しズレたけど、原作通り
毎度お馴染みおまけコーナー
今回出てきた剣
『音剣』
能力:音を操れる
イメージカラー:黄緑
剣の形状:波紋が刻まれたグラディウス
◆バスの並び順
障子 瀬呂 尾白 常闇 口田
峰田 轟 耳郎 葉隠
爆豪 志村 神剱 八百万
切島 上鳴
蛙吹 芦戸
緑谷 飯田
砂藤 麗日
相澤
↓進行方向
◆救助訓練の組み合わせ
救助者側 要救助者側
1組目 常闇、轟、爆豪、神剱、八百万 & 飯田、麗日、緑谷
2組目 上鳴、切島、耳郎、瀬呂 & 青山、芦戸、葉隠
3組目 口田、砂藤、志村、障子 & 轟、爆豪、八百万
4組目 芦戸、蛙吹、飯田、峰田 & 上鳴、耳郎、神剱
5組目 麗日、尾白、葉隠、緑谷 & 蛙吹、志村、峰田