「No.2ヒーロー“エンデヴァー”の息子と、No.7ヒーロー“マーリン”の娘…いいねぇ、オールマイトへの土産にちょうどいい」
そう言って死柄木が、不気味な笑みを浮かべる。
轟くんは、目の前の
するとその時、異変を察知してか、他の皆が駆け寄ってきた。
駆けつけてきたのは、尾白くん、口田くん、常闇くん、葉隠さんの4人。
「どうした!?」
「
尾白くんが尋ねると、轟くんが説明する。
「ここは俺が足止めしとくから、誰か先生を呼んできてくれ。神剱は何か役に立ちそうな剣を創れ」
「う、うん!」
「俺、呼んでくる!」
私は轟くんが氷の壁で死柄木の行く手を阻んでいる間に剣を創造し、尾白くんは先生を呼びに行った。
「作戦会議か? ムカつくなぁ。誰一人逃がさねえよ」
「させるか…!!」
轟くんは、無数の氷の柱を出して死柄木を足止めした。
だけど死柄木は、氷での攻撃をものともせず、『崩壊』を操って氷を塵に変えていく。
轟くんは、死柄木に氷での攻撃が効かないと分かると、左手で炎を放って攻撃した。
すると死柄木は、まだ残っている柱を足場にして、人間離れした身のこなしで炎を避けた。
「クソッ、バケモンが…!」
クラス最強格の轟くんの攻撃を汗ひとつかかずに躱す死柄木に、轟くんが歯噛みする。
その時、先生を呼びに行っていた尾白くんが戻ってきた。
「轟!! ダメだ、先生がやられた…!!」
「何だと…!?」
「二人とも他の
「そんな、私達どうしたらいいの!?」
「俺達だけで対処するしかないということか…」
尾白くんが状況を説明すると、口田くんや葉隠さんが軽くパニックを起こし、常闇くんは死柄木を見て険しい表情を浮かべる。
私も、ちょうど今創造した二本の剣を構えて警戒する。
私が創造したのは『
もう一本は『
私達が死柄木を囲む形で立つと、死柄木はバカにしたように笑う。
「おいおいおい、何の真似だ? 勝てねえってわかったろ、大人しく逃げたらどうだ?」
「俺達はヒーロー志望だ。敵を前にして逃げるという選択肢は無い」
死柄木が両手を広げて言うと、常闇くんが
「カッコいいなぁ」
死柄木は、ニィッと不気味に笑った。
その直後、死柄木が『崩壊』の“個性”で作った瓦礫を全方位に飛ばしてくる。
尾白くんは、尻尾を振り回して瓦礫を弾き飛ばして葉隠さんを守る。
「
「アイヨ!」
常闇くんは、
轟くんは、氷と炎を出しながら死柄木に突進し、懐に入り込んだ。
そのまま炎を纏った左手で死柄木の鳩尾目掛けて貫手を放ったけど、轟くんの渾身の攻撃は死柄木に躱され、逆にカウンターを喰らってしまう。
「がはっ…!!」
「轟!! 貴様ァ!!」
轟くんが吹っ飛ばされると、今度は常闇くんが死柄木に突進する。
だけど死柄木は、
「ぐふっ…!」
モロに腹パンを喰らった常闇くんは、吹っ飛ばされて地面に膝をつく。
その光景を見ていた尾白くんと口田くんは、すっかり青ざめていた。
「嘘だろ、轟と常闇がこんなあっさり…!」
「どうしよう…!」
尾白くんと口田くんは、クラスの中でも上位に入る実力者二人をあっさり倒した死柄木を前に、絶望の表情を浮かべている。
葉隠さんも、表情は見えないけど怖がっている。
轟くんと常闇くんは、幸い大きなダメージは無いようだけど…
「さぁて、残りはどう料理しようか」
死柄木は、ニヤリと不気味に笑いながら私に狙いを定める。
今度は私をボコボコにするつもりなのね。
こいつに倒せる相手だって思われてる事がムカつく。
第一、
「『
『
私は、『
死柄木は、私の出した土の柱を崩壊させて、距離を詰めてくる。
奴は、さっきの轟くんの時にやったのと同じように、私が生やした土の柱を足場にして、私の頭上を取った。
だけど、それこそが私の狙い。
今度は『
「『
「何ッ!?」
私は、『
地面に足をついていない死柄木は、そのまま竜巻に巻き込まれて体が浮き上がる。
「轟くん、今だよ!」
「ああ!」
私が轟くんに声をかけると、轟くんは私の作った竜巻に熱気と冷気を送り込む。
死柄木は、暴風の檻の中で急激な温度変化を喰らって大ダメージを負う。
私が竜巻を解除すると、ボロボロになった死柄木が真っ逆さまに自由落下する。
すると尾白くんと常闇くんが死柄木の落下地点に立ち、尻尾と
その間に、さらにもう一本の剣を創造する。
“個性”把握テストの時に作った『
「神剱!!」
「うん、『
私は、『
尾白くんと常闇くんがソレ目掛けて死柄木を投げつけると、死柄木が球体の上に仰向けに叩きつけられ、完全に身動きが取れなくなる。
よし、今ならトドメを刺せる…!!
私が『
「はい、ドッキリ大成功〜」
死柄木が、ニヘラと笑いながら気の抜けた声で言った。
その声に不意を突かれて、思わず剣を振り下ろす手を止めてしまう。
「………は?」
死柄木の言葉に、その場にいた彼以外の全員が呆気に取られる。
普段はクールな轟くんでさえ驚いていた。
「ドッキリって、どういうことだ…!?」
「いや、だからさ。相澤先生に、今日補助講師が来るって言われてただろ? アレ、俺なの。お前らを訓練中に襲撃するよう、オールマイトに頼まれた」
「「「はぁ!!?」」」
死柄木が笑いながら言うと、尾白くんと葉隠さんが驚く。
私も思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
「じゃあ、相澤先生と13号先生は!? やられたんじゃなかったの!?」
「やだな、芝居に決まってるだろ。二人とも重傷どころか、傷ひとつ負っちゃいねえよ」
葉隠さんが驚きを露わにしながら尋ねると、死柄木があっさり白状する。
どうなってるの…?
この世界線での死柄木は、雄英の教師で、ヒーローだっていうの?
…いや、まだ油断しちゃダメ。
もしかしたら、ドッキリだったって事にして私達を油断させて殺すつもりかもしれない。
だってこいつは、原作では凶悪な
「信用できない。あなたが
「はぁ…ズボンのポケットにヒーロー免許が入ってる。確認してみろ」
死柄木がそう言うので、私は死柄木のズボンのポケットを確認した。
ポケットの中には、ちゃんと死柄木本人のヒーロー免許が入っていた。
本名は志村転弧、ヒーロー名は『トムラ』で登録されている。
「本当にヒーローだったのね…疑ってすみませんでした」
「俺を連携して倒したのは大したもんだが、お前ら鈍すぎんだろ。これだけヒント与えてりゃ、流石に気づくと思ったんだがなぁ」
「ヒント…?」
私がまだ状況を把握できずにいると、死柄木が呆れ顔を浮かべる。
「あのなぁ、強固なセキュリティで守られてる雄英に、ただのチンピラがそう簡単に侵入できるわけないだろ? それに俺が本物の
「あっ…」
死柄木が言うと、轟くんと常闇くんがハッとする。
そういえばこいつは、さっき二人に腹パンをした時、やろうと思えば簡単に殺せたはずなのに、二人に“個性”を使わなかった。
こいつには、初めから私達を殺す気なんてさらさら無かった。
それどころか、私達には全然本気じゃなかった。
死柄木…もといトムラ先生は、今回の襲撃のネタバラシをした。
今回は、訓練中の
なんでこいつが原作の死柄木と同じ見た目をしているの?
こいつは、原作では自分が
偶然の一致…? それとも…
「はいちゅーもく、今日の訓練はここまでー」
私が考え事をしていると、相澤先生のテンション低めの声が響く。
そこには、血糊まみれだけどピンピンしている相澤先生と13号先生がいた。
トムラ先生の言う通り、二人は無事だった。
◇◇◇
訓練の後、私達は一列に整列して先生の話を聞いた。
私達の前には、血糊まみれの相澤先生と13号先生、ボロボロのオールマイトとトムラ先生、そして貼り付けられた水色のフワフワの髪をしてゴーグルをかけた教師が立っていた。
「お前らやりすぎだ。生徒がトラウマになったらどうしてくれる」
「いやぁ悪いショータ! 皆予想以上に強かったから、つい張り切っちまった!」
「すみませんでした」
相澤先生が説教すると、水色髪の教師とトムラ先生が謝る。
あの人って、私の記憶が間違いじゃなければ…確か相澤先生の親友の白雲朧よね?
なんて考えていると、オールマイトが相澤先生を宥める。
「まあまあ相澤くん、誰も大きな怪我はしなかったわけだし…」
「あんたもですよ、オールマイト」
「すいません…」
相澤先生がオールマイトを睨むと、オールマイトが萎縮する。
「んじゃ改めまして、俺が『ラウドクラウド』こと白雲朧! よろしくな!」
「俺は『トムラ』こと志村転弧です。教育実習生として、今年一年皆さんと学ばせていただくことになりました。そういうわけでよろしく〜」
白雲朧ことクラウド先生とトムラ先生が、親しげに私達に自己紹介をする。
さっきまでの
そんな中、飯田くんと八百万さんが手を挙げて抗議をする。
「先生!! 今回の訓練は、やりすぎなのではないでしょうか!!」
「そうですわ! 一歩間違えれば、怪我どころでは済みません!」
「怖かったか?」
二人が抗議すると、相澤先生が尋ねる。
「殺されるかもしれないと思ったか? 世の中は、こんなもんじゃない理不尽でまみれてる。お前らが当たり前だと思ってる日常が崩れ去るのは、いつだって突然だ。そしてヒーローってのは、そういう時にこそ試される。今回は、それを学ぶ為の訓練だったわけだ。ヒーローになるんなら、今日学んだことを忘れるな」
私達は、相澤先生の言葉を重く受け止めた。
「ああそれと、来週ここでB組が同じ訓練をする。くれぐれも今日の授業内容は口外しないように。じゃ、解散」
そう言って相澤先生はひと足先に訓練場を出て行き、オールマイトも活動限界が近いのか急ぎ足で出て行った。
残された私達は、帰りのバスの中で、トムラ先生やクラウド先生と話した。
「兄様も来てたのね」
「おい、学校でその呼び方するな」
「はーい」
志村がトムラ先生に馴れ馴れしく話しかけると、トムラ先生が志村に注意する。
するとお茶子ちゃんと梅雨ちゃんが、トムラ先生に話しかける。
「えっと…トムラ先生。離珠奈ちゃんとどういう関係なんですか?」
「そういえば、苗字が同じだけど…」
「ああ、こいつ、俺の従妹」
二人が質問すると、トムラ先生はあっさりカミングアウトした。
「ええっ、いとこ!?」
「そ、アタシのママの弟の息子さん」
「全然似てないけど…」
「いやいや、そんなことないから! 目元ととか口元とかよく見てみ!? 似てるでしょ!?」
皆が驚いていると、志村が必死に主張してくる。
ああそっか、忘れてた。
この世界線では、志村は死柄木の従妹にあたるんだった。
私が脳内で情報を整理する中、クラウド先生は13号先生と話していた。
「亜南、今日の俺の演技どうだった?」
「ちょっとやり過ぎだったのでは…?」
クラウド先生と13号先生は、やけに親しげに話していた。
「あの〜、先生達って、もしかして…」
やけに距離が近い二人を見て、芦戸さんがニヤニヤしながら二人に話しかける。
「夫です」
「妻です」
二人が、お互いを指しながらカミングアウトをする。
するとだ。
「「「「「ええええええええええ!!!??」」」」」
バスの中に、皆の叫び声が響き渡る。
この世界線では、死柄木は
情報量が多すぎて、頭がパンク寸前なんだけど。
オール・フォー・ワンがいないってだけで、こんなにも違う展開になるのね…
☆破滅まで、残り129日───
今回出てきた剣の解説
◆『風剣』
能力:風や空気を操る事ができる
イメージカラー:白緑色
剣の形状:刃の部分に風のような渦巻き模様が刻まれたバスタードソード
◆『地剣』
能力:土や大地を操る事ができる
イメージカラー:黄土色
剣の形状:刃の部分に岩石のような模様が刻まれたバスタードソード