はじめまして。
この手紙を読んでいるあなたに、伝えておかなければならないことがあります。
まずはじめに、とある少女の話をしましょう。
あるところに、神剱芽華という少女がいました。
心優しい両親に愛され、彼女はすくすくと育っていました。
芽華は、目の前のささやかな幸せを大切にする女の子でした。
しかし彼女は、ある日を境に変わってしまいました。
3歳の誕生日を迎えてすぐに高熱を出した彼女は、三日三晩生死の境を彷徨いました。
次に目を覚ました時には、彼女は別人になっていました。
今まで出来ていた礼儀作法が出来なくなり、目の前のささやかな幸せを大切にすることを忘れてしまいました。
持って生まれた力を過信し、謙虚に努力することを忘れ、“個性”頼りの努力の真似事しかしなくなりました。
産んでくれたことを感謝していたはずの両親には、恩をすっかり忘れ、わがままを言うようになりました。
祖母のように大切に想い尊敬していたはずの家政婦さんの実田さんのことは、奴隷のように扱うようになりました。
今ここにはいない男にうつつを抜かし、現実を生きることを忘れてしまいました。
彼女は、強欲で身勝手で低俗な女へと変わってしまいました。
今ここにある幸せを大切にし、慎ましく生きていた芽華は、どこへ行ってしまったのでしょう。
別人へと変わってしまった彼女の前世は、超常黎明期よりずっと昔の時代にそっくりな異世界に生きる大学生で、オタサーに所属していた夢女子でした。
彼女は、No.2ヒーロー“エンデヴァー”のご子息の焦凍さんに気があります。
何でも彼女は、前世の頃からマンガで私達の世界を見ていて、その時に彼の容姿や強さに惚れ込んだそうです。
彼女は焦凍さんだけに飽き足らず、爆豪さんという方や、イレイザーヘッドやNo.3ヒーローのホークスにまで気があるようです。
私は、ヒーローの世界で生きる殿方よりも、身近にいる幼馴染みの方が大切でした。
お母様も私の為を思って、私が彼とうまくいくように計らってくださいました。
なのにあろうことか彼女は、『愛のない結婚なんて嫌』などとふざけたことを口にしたばかりか、私のことを大切に想っていてくれていた彼を切り捨ててしまいました。
どこまで厚顔無恥な女なのでしょう。
彼女は雄英に入学した後も、私の忠告も聞き入れずに、身勝手に振る舞いました。
自分のお気に入りの人物以外には興味すら持たず、A組の実力者以外の生徒をモブだと見下しています。
クラスメイトの志村さんのことは、焦凍さんや爆豪さんと仲が良いというだけの理由で目の敵にしています。
失敗しても反省せず、自分は悪くないと言わんばかりに自分の行いを正当化する始末。
そして彼女は、雄英に入学するもっと前に、世界を敵に回す大罪を犯しました。
彼女はヒーローとは最も程遠いところにいる、邪悪な存在です。
これを悪魔と言わず、何と呼べばよいのでしょう。
この手紙を読んでいるあなたに、お願いがあります。
どうか、この度し難い悪魔に囚われた私をお救いください。
この女が私を貶めること、そして私の大切な人達を傷つけることが許せないのです。
それが出来ないなら、どうかこの身にいる悪魔ごと、私を殺してください。