500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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第11話 残り127日

 USJでの救助訓練から、二日が経った。

 その後も、特に変わり映えもない日を送っていたわけだけど…

 

「皆ーーー!! 朝のホームルームが始まる! 席につけーー!!」 

「ついてるよ。ついてねーのおめーだけだ」

 

 飯田くんが指示を出すと、瀬呂くんがツッコミを入れる。

 飯田くんは相変わらずフルスロットだけど空回りしてる。

 そんなやりとりをしていると、相澤先生が教室に入ってくる。

 

「お早う」

 

 予鈴と同時に相澤先生が教室に入った瞬間、さっきまで喋っていた皆がシンと静かになる。

 

「いいか、今日は君らに大事な知らせがある」

 

 相澤先生は出席簿を教卓に置くと、少し溜めてから言った。

 相澤先生の話を聞いて、皆は臨時テストかと身構える。

 

 

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

「「「「クソ学校っぽいの来たあああ!!」」」」

 

 教室に、歓声が響き渡る。

 よし、皆のテンションに乗っかれた!

 

「皆元気だなぁ。一昨日あんな心臓に悪いドッキリされたばっかりだってのによ」

 

 皆がはしゃぐ中、峰田くんだけは愚痴っぽく言った。

 

「おい、静かにしろ」

 

 皆が騒いでいると、相澤先生が“個性”を発動して皆を黙らせる。

 皆が静かになると、相澤先生が説明を始めた。

 

「ウチの体育祭は日本のビッグイベントの一つ!! かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。今は知っての通り規模も人口も縮小し形骸化した…そして日本に於いて今、かつてのオリンピックに代わるのが雄英体育祭だ!!」

「当然全国のトップヒーローも観ますのよ。スカウト目的でね!」

「知ってるよ…」

 

 相澤先生に続けて八百万さんも説明すると、峰田くんが若干呆れた様子で振り向く。

 

資格習得(そつぎょう)後はプロ事務所にサイドキック(相棒)入りがセオリーだもんな」

「そっから独立しそびれて万年サイドキックってのも多いんだよね。上鳴あんたそーなりそう。アホだし」

「くっ!!」

 

 耳郎さんが辛辣な返しをすると、上鳴くんが悔しそうに黙る。

 

「当然名のあるヒーロー事務所に入った方が経験値も話題性も高くなる。時間は有限。プロに見込まれればその場で将来が拓けるわけだ。年に一回…計三回だけのチャンス、ヒーロー志すなら絶対に外せないイベントだ!」

 

 相澤先生は、クラス皆の闘志に火をつけて、ホームルームを終えた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 そんなこんなで4限目の現代文終了後。

 

「なんだかんだテンション上がるなオイ!!」

「活躍して目立ちゃプロへのどでけぇ一歩を踏み出せる!」 

 

 切島くんと瀬呂くんは、早速やる気を出していた。

 我が推し轟くんと爆豪くんはいつも通りだったけど。

 皆のテンションについていけないのか、緑谷くんは戸惑っていた。

 

「皆すごいノリノリだ…」

「君は違うのか? ヒーローになる為在籍しているのだから、燃えるのは当然だろう!?」

「飯田ちゃん独特な燃え方ね。変」

 

 飯田くんが姿勢を低くして両手でぐっと握り拳を作ると、梅雨ちゃんがツッコミを入れた。

 

「緑谷くんも、そうじゃないのかい!?」

「僕もそりゃそうだよ!? でも何か…」

「デクくん、飯田くん、離珠奈ちゃん…」

 

 緑谷くんが不安そうに何かを言おうとすると、お茶子ちゃんが声をかける。

 

「頑張ろうね体育祭」

「顔がアレだよ麗日さん!!?」

 

 うわ、顔やばっ。

 

「どうした? 全然麗かじゃないよ麗日」

「生…ぐえっ!?」

 

 何だかすごい顔をしているお茶子ちゃんに、芦戸さんが話しかけている後ろでは、峰田くんが梅雨ちゃんにベロで引っ叩かれていた。

 

「皆!! 私!! 頑張る!!」

「おおーーーーけどどうした、キャラがフワフワしてんぞ!!」

 

 やる気に満ちたお茶子ちゃんが拳を突き上げると、切島くんはそれに応える形で腕を挙げつつも、お茶子ちゃんを心配していた。

 その後、私はいつメンで一緒にご飯を食べに行ったわけだけど…

 

 

「お金…!?」

「お金欲しいからヒーローに!?」

「究極的に言えば」

 

 お茶子ちゃんの発言に、緑谷くんと飯田くんが驚く。

 

「何かごめんね、不純で…!! 飯田くんとか、立派な動機なのに私恥ずかしい」

 

 お茶子ちゃんが恥ずかしさで顔を赤くして手で覆っていると、飯田くんが疑問を投げかける。

 

「何故!? 生活の為に目標を掲げる事の何が立派じゃないんだ?」

「飯田くん手の動きすごいねウケる」

 

 飯田が明らかにおかしい手の動きをしていると、志村がどストレートにツッコミを入れる。

 

「うん…でも意外だね…」

「ウチ建設会社やってるんだけど…全っ然仕事なくってスカンピンなの。こういうのあんま人に言わん方が良いんだけど…」

「麗日さんの“個性”なら、許可取ればコストかかんないね」

 

 お茶子ちゃんが家庭の事情を話すと、飯田くんが考え込み緑谷くんが言った。

 するとお茶子ちゃんが振り向いて二人を指差す。

 

「でしょ!? それ昔父に言ったんだよ! でも…」

 

 お茶子ちゃんは昔、お父さんに将来は自分の“個性”でお手伝いをしたいと言った事があったらしい。

 でもお父さんは、お茶子ちゃんの気持ちを汲んで「お茶子が夢を叶えてくれる方が何倍も嬉しい」と言ってくれたそうだ。

 

「私は絶対ヒーローになってお金稼いで父ちゃん母ちゃんに楽させたげるんだ」

 

 お茶子ちゃんは、決意を固めてそう言った。

 

「……おぉ」

「麗日くん…! ブラーボー!!」

 

 お茶子ちゃんが決意を語ると、轟くんがわずかに目を見開き、飯田くんが盛大な拍手を送った。

 するとそこへ、明らかに画風の違うオールマイトが現れる。

 

「おお!! 緑谷少年と志村少女が、いた!!」

 

 緑谷くんと志村に何か用事かな?

 まあ、十中八九『ワン・フォー・オール』関係だろうけど。

 

「ご飯…一緒に食べよ?」

「「乙女や!!!」」

 

 オールマイトが体に似合わない可愛いウサギ柄の風呂敷に包まれた、体に似合わないサイズの小さな弁当箱を見せながら言うと、お茶子ちゃんと志村が同時に吹き出す。

 

「ぜひ…」

「わかりました」

 

 緑谷くんがキョトンとしつつもオールマイトについていき、志村も二人についていったので、残った4人で昼食を食べる事になった。

 私達は、食堂で列に並びながら話す。

 

「デクくんと離珠奈ちゃん何だろうね」

「あの二人、何かとオールマイトに目ぇかけられてるよな」

「んー、そういえばそうかも」

「蛙吹くんが言ってたように超絶パワーも似ているし、オールマイトに気に入られてるのかもな」

 

 お茶子ちゃん、轟くん、私、飯田くんの順にそんな話をする。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「うおおお……何事だあ!!?」

「出れねーじゃん! 何しに来たんだよ」

 

 放課後、私達が帰ろうとすると、教室の前に他科の生徒が集まっていた。

 ああ、そういえばこんなシーンあったな。

 USJ事件が茶番だったから原作ほどじゃないけど、邪魔だと感じるくらいには人数がいる。

 

「敵情視察だろ。体育祭じゃ、毎年ヒーロー科が注目を浴びるからな。体育祭(たたかい)の前に見ときてぇんだろ。どけ」

 

 そう言って爆豪くんが、野次馬を押し退けて帰ろうとする。

 すると野次馬どもが、私達に不服そうな目を向けながら口を開く。

 

「チッ、ヒーロー科だからって調子に乗りやがって…」

「あたしらのことなんか眼中にないんだよ」

「ムカつくな、本番でゴッソリ足元掬ってやろうぜ」

 

 野次馬は、爆豪くんを睨みながら陰口を叩いた。

 こいつら、どうやら自分の立場がわかってないみたいね。

 ちょっとガツンと言ってやらないと、わからないかしら。

 

「聴こえてるわよ。言いたいことがあるなら、コソコソ陰口叩いてないでハッキリ言えよ、卑怯者」

「「「っ……!!」」」

「あのさ、あんた達、わたし達のどこが調子に乗ってるように見えるの? そう見えるなら、眼科か脳外科にでも行ったら? それと、敵情視察? あんた達、随分と暇なのね。あんた達、自分の置かれてる立場がわかってるの? こんなところで迷惑行為してる暇があったら、自主練か体育祭の作戦会議でもしたらどうかしら? その方がよっぽど合理的よ。あんた達は、ヒーロー科の入試に落ちた時点でわたし達より何十歩も遅れてんのよ。眼中にない? 当たり前でしょ? こんなくだらないことに時間を使ってるモブになんか、構っていられるわけないじゃない。わたし達は、あんた達が部活やったり放課後マックに行ったりしてる間も、ヒーローになるための訓練に時間を使ってるの。(ヴィラン)に殺されるかもしれないっていう恐怖だって、この前の授業で学んだわ。怪我した子だっていたし、何もできなくて悔しかった子だっていた。それに対してあんた達は、何を経験したの? 何を学んだの? 理不尽に立ち向かう恐怖を経験せずにのうのうと学校生活送ってるあんた達とじゃ、レベルが違うのよ」

「「「………」」」

「あのぉ〜…神剱ちゃん…? その辺にしといたら?」

「大体、入試にすら合格できずに、こうやって人の邪魔をすることしか能がないあんた達がヒーローになったところで、何ができるっていうの? わたし達ヒーロー科は、あんたたちの何十倍も努力してるの。だったらただでさえスタートラインで出遅れたあんたらは、何百倍何千倍も努力しなきゃダメでしょ? なのに自主練もせずにこんな意味ないことしてたら、永遠に追いつけるわけないじゃない。あんた達がヒーローになったところで、どうせそうやってボサっと突っ立って他のヒーローの足を引っ張るのが関の山よ。言っておくけど、常にトップヒーローを見据えてるわたし達と、ヒーロー科を追いかけることで精一杯なあんた達とじゃ、目指してるゴールが違うの。そこの認識改めないと、あんたら一生低次元のままよ。わかったら、そこどいてくれるかな?」

 

 私が言うと、入り口の前に立っていた野次馬どもが顔を青くして後退りする。

 あースッキリした!

 言いたい事全部言い切った!

 皆「よく言った!」って目で見てるわね、よしよし。

 さーて、道譲ってくれた事だし帰ろっと。

 

「おい」

 

 私が帰ろうとすると、爆豪くんが口を開く。

 

「てめえさっきからゴチャゴチャうるせえんだよ。いい加減黙れ」

 

 ……え?

 今の、私に言ったの?

 えっ、何で?

 

「クラスメイトが不快な思いをさせてしまい、申し訳なかった!」

「皆さん、本当に申し訳ございませんでした!」

「「ごめんなさい!!」」

「皆すまねえ、この通りだ!」

 

 飯田くんに続けて、副委員長の八百万さん、そして近くにいた緑谷くん、お茶子ちゃん、切島くんも頭を下げる。

 えっ、何で?

 何で皆が、野次馬に頭を下げてるの?

 

「さぁ、君も早く謝るんだ神剱くん!」

 

 飯田くんは、私に対しても謝るように言ってきた。

 え、意味わかんない。

 悪いのは、道を塞いで陰口を叩いたこいつらじゃん。

 私、何も間違った事言ってないのに、何で謝らなきゃいけないの?

 

「ほんっとうにごめんなさい!!」

 

 志村が、いきなり後ろから私の頭を掴んで、無理矢理土下座させてきた。

 ちょっと、何すんのよ!?

 痛い、離してよ!!

 

「この子、用事があるから早く退いてほしかっただけなの! 今はと〜っても反省してると思うから、許してもらえないかな?」

 

 頭を上げようとする私を、志村が無理矢理上から押さえつけた。

 志村の力が強すぎて、振り解こうにも振り解けない。

 何こいつ、握力ゴリラ!?

 

「ま、まあそこまで言うなら…」

「俺の方こそ、さっきは失礼なこと言って悪かったよ…」

「この子の言ってることも、間違ってはなかったし…」

「あんたらも苦労してるのね…」

 

 志村が謝ると、野次馬達がA組の皆に同情の目を向ける。

 何でよ、悪いのは出入り口を塞いで陰口を叩いたあいつらじゃん!

 何で悪くない私達が悪者にされなきゃいけないのよ!?

 

 ――バカは要約できないから話が長いわね。

 

 っ…!?

 

 ――おまけに、自分の立場も理解できないのね。呆れたわ。ただでさえ戦闘訓練の借金があるあんたが、人を不快にさせるような長台詞を吐いたところで、誰も納得するわけないじゃない。

 

 うるさい、あんたは黙っててよ!

 私は何も間違った事はしてない!

 

「あっ、待ってよ神剱さん!!」

「神剱くん! まだ話は終わっていないぞ!!」

 

 私は、モヤモヤを抱えたまま教室を出て、そのまま下駄箱に向かった。

 下駄箱で靴を履き替えていると、ちょうど近くを通りかかった相澤先生が声をかけてくる。

 

「神剱、話がある。今すぐ職員室に来い」

 

 相澤先生が、心なしか不機嫌そうに言った。

 私は、先生の指示通りに職員室に行って、用件を尋ねた。

 

「あの、相澤先生。お話って何ですか?」

「お前、何やってんだ?」

 

 相澤先生が、私を睨みながら地を這うような声で言った。

 

「複数の生徒から証言が取れてる。お前、他科の生徒達に暴言を吐いたそうじゃないか。そんな奴は、ヒーロー科には不要だ。今日限りをもって除籍処分とする……と言いたいところだが、一応お前の言い分も聞いておいてやる。何故そんなことをした?」

「あの人達が教室の出入り口を塞いだ上に、爆豪くんの悪口を言ったからです。それにわたしは別に、間違ったことは何も言ってません」

 

 私は相澤先生の言及に対して、理路整然と答えた。

 元はと言えば、悪いのはあいつらの方よ。

 その事をちゃんと説明すれば、先生もわかってくれる…

 

「間違ったことを言ってないから許されるとでも?」

「っ!?」

 

 相澤先生は、私の証言に納得するどころか、さらに眉間に皺を寄せて睨んできた。

 思わず、背筋にゾワっと寒気が走った。

 

「いいか、正論なんかバカでも言える。TPOを弁えない正論は、ただの暴言だ。お前は、事件や災害で心身に傷を負った被災者にも、同じように暴言を吐くのか?」

「いや、違……」

「違わない。お前がやったのはそういうことだ。そもそも悪口や迷惑行為を目撃したんなら、暴言を吐く前に、そのことを俺達教師に報告するべきだったんだ。お前の失言の正当性なんか、どこにも無いんだよ」

「っ……」

 

 相澤先生は、ため息をついて言葉を続けた。

 

「今回は厳重注意に留めておく。だが俺は同じことを二回言うのが嫌いだ。次は無いと思え」

「は、はい……」

「わかったら、もう帰っていい」

 

 そう言って相澤先生は、私に『出て行け』のジェスチャーをした。

 何でよ、私は悪くないのに…!!

 何で私ばっかり怒られなきゃいけないのよ!!

 ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな!!

 

 

 

 ☆破滅まで、残り127日───

 

 

 

 

 




転生者「皆『よく言った』って目で見てる!」

A組(((何言ってんだこいつ…)))

心操・鉄哲「なんか俺らがディスられてる気がするんだけど…」

非合理長文SEKKYOUに、相澤先生もブチギレ。
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