あっという間に二週間は過ぎていき、体育祭当日。
『雄英体育祭!! ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!! どうせてめーらアレだろ!? こいつらだろ!!? 倍率300倍の難関を潜り抜け、狭き登竜門に並び立つ超新星!! 1年!! ヒーロー科だろぉぉ!?』
マイク先生を聴きながらスタジアムに入場した俺達に、観衆からの歓声と拍手が送られる。
うわぁ、熱気すごいな…
「わあああ…人がすんごい…」
「大人数に見られる中で最大のパフォーマンスを発揮できるか…! これもまたヒーローとしての素養を身につける一環なんだな」
「めっちゃ持ち上げられてんな…なんか緊張すんな爆豪…!」
「しねえよただただアガるわ」
緑谷くん、飯田くん、切島くんは観客の熱気に飲まれそうになっていたけど、爆豪くんは平常運転だった。
『まずはA組ィ!! 続いてB組!! 普通科C・D・E組…!! サポート科F・G・H組も来たぞー! そして経営科…』
マイク先生の紹介と共に、他のクラスも次々と入場してくる。
マイク先生も煽るなぁ……
私達が全員出場して一列に並んで、ミッドナイト先生が壇上に上がったのを合図に、開会式が始まった。
「選手宣誓!!」
ミッドナイト先生が、ピシャッ!と鞭を打ちながら宣言した。
するとクラスの皆が口を開く。
「18禁なのに高校に居てもいいものか」
「いい」
「静かにしなさい!!」
常闇くんが素朴な疑問を口にすると、峰田くんが即答する。
皆が喋っていると、ミッドナイト先生は、鞭を打って皆を黙らせた。
「選手代表!! 1ーA爆豪勝己!!」
ミッドナイト先生は、1年生代表の爆豪くんを呼ぶ。
すると呼ばれた爆豪くんが、ポケットに手を突っ込んだまま前に出た。
『せんせー。俺が一番になる』
そう言って爆豪くんは、首を切るようなジェスチャーをする。
『それが嫌なら、『引き立て役』だの『下剋上』だの、甘え考えは今すぐ捨てろ。全力でトップ狙いに来やがれ』
ああ、これはブーイングが来るぞ…
なんて思っていたら…
「「「「「オオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」」」
スタジアムに、歓声と拍手が響き渡った。
観客も、他科の生徒も、皆熱狂している。
あれっ……?
そこはブーイングが響き渡る流れじゃないの?
「くっ…!! 何だあいつ、漢らしいじゃねえか!!」
「ヒュ〜、言うねぇ〜♪」
「かっちゃん…!!」
切島くん、志村、緑谷くんは、爆豪くんの宣誓を聞いてやる気を出していた。
飯田くんや八百万さんは頭を抱えてはいたけど、特に注意はしなかった。
「いい度胸じゃねえか!!」
「俺達も負けねえからな!!」
爆豪くんの挑発に乗せられたのか、さっきまでやる気がなかった他のクラスにも火がつく。
原作と言ってる事ほとんど変わらないのに、この差は何…?
「さーて、それじゃあ早速第一種目行きましょう!」
「雄英って何でも早速だね」
ミッドナイト先生が言うと、お茶子ちゃんがツッコミを入れる。
ミッドナイト先生の声と共に、空中にプロジェクターで画面が表示される。
「いわゆる予選よ! 毎年ここで多くの者が
ミッドナイト先生が指し示すプロジェクターの画面には、『障害物競走』と書かれていた。
「障害物競走…!」
「計11クラスでの総当たりレースよ! コースはこのスタジアムの外周、約4km! 我が校は自由さが売り文句! ウフフフ…コースさえ守れば何をしたって構わないわ! さぁさぁ、位置に着きまくりなさい…」
ミッドナイト先生の説明が終わると、意図的に設計されたゲートが開き、ランプが点滅を始める。
普通科とサポート科の生徒が、ゲートに殺到した。
まぁ私は関係ないけどね。
「スターーーーーーート!!」
私はスタートの合図と同時に『
最初の篩。
悪いけど、下で団子になってるモブ連中には脱落してもらおう。
私は、『実剣』を創造して、粘着質の球体を下のモブ連中に向かって飛ばした。
「な、何よコレ!?」
「動けない…!!」
私は、動けないモブを尻目に、『
『さーて実況してくぜ! 解説アーユーレディ!? イレイザー!!』
『無理矢理呼んだんだろうが』
『第一種目、障害物競走!! ヒーロー科以外は未だスタジアムから出ていねえ!! このままヒーロー科の独走かァ!?』
マイク先生と相澤先生の実況と解説を聞きつつ、さらにスピードを上げて飛ぶ。
だけどその先に、私達の突進を阻もうと、最初の障害が現れる。
『さあいきなり障害物だ!! まずは手始め…第一関門ロボ・インフェルノ!!』
ロボか、だったらアレね。
「『
私は、『
「な、ロボが浮いた!?」
「今だ、通れるぞ!!」
モブ達は、私がロボを浮かせている間に前へ進もうとする。
バカね、あんた達をタダで通すわけないじゃない。
「解除」
私は、ロボがちょうどモブ達の頭上に来たところで『
すると…
「「「「「うわあああああああああ!!!」」」」」
うまい具合に、ロボがモブ達の上に降り注いだ。
お先に失礼〜♪
『1ーA!! 神剱!! 攻略と妨害を一度に!!こいつぁシヴィーーーーーーーー………おぉん!!?』
「大丈夫〜?」
「た、助かった…!」
「ありがとう…!」
「うおお、志村ァ!?」
「どーなってんだコレ!?」
後ろを振り向くと、志村が、降り注いだロボの残骸にしがみついて浮かせ、モブ達を助けていた。
志村が浮かせたロボを振り回すと、モブ達の真上に落ちるはずだったロボ同士が反発して軌道が逸れ、何もないところに落ちた。
『って、オイオイマジかぁ!? 1ーA志村、神剱の妨害を妨害!! 後続は全員ノーダメージ!!』
はぁ!?
ちょっと、意味わかんないんだけど!!
なんでこいつ、後続を助けてんのよ!?
せっかく引き離すチャンスだったのに!!
「ちょっと、邪魔しないでよ!」
「いやいや。今の、アタシが浮かせてなかったら死人出てたよ? もうちょい周り見ようぜ」
何それ…私と違って周りを見る余裕があるって言いたいわけ!?
こいつどんだけ私の事をバカにする気なのよ!!
『どういうことだァ!? 志村が他の奴等を助けてんぞ!!』
『そういうことか…』
『Huh!?』
『これはあくまでプロに向けた興行だ。志村は“個性”の派手さや強さでトップ層に一歩劣る分、救助活動でアピールして一人でも多くのプロを引き込むつもりなんだよ』
『なるほどな! けど、他の奴を助けて順位落としてちゃ意味ねえんじゃねえのか?』
『いいや、ちゃんとトップを獲るための戦略だ。見ろ』
「A組てめーーーー!!」
「よくもやりやがったな!!」
「死ねーーーー!!」
さっき志村に助けられたモブどもが、私に罵声を浴びせながら鬼の形相で追いかけてきた。
「皆、ここは一旦協力して道を切り拓くぞ!!」
「おう!!」
さっきまで足の引っ張り合いをしていたA組の皆も、協力して第一関門を攻略し始めた。
何よこれ、どうなってるの!?
『おいおいどうなってんだこりゃあ!? さっきまで競い合ってた奴等が協力してんぞ!?』
『志村に助けられた奴等が、神剱の足を引っ張るために結託してるんだよ。トップを狙うなら、皆でよってたかって一番強い奴を序盤で潰すのが一番合理的だからな。あえて後続を助けて、現状トップの神剱の足を引っ張ることが、志村の本当の狙いだったんだ』
私が状況を理解できないでいると、相澤先生が今の状況を解説した。
志村は、解説を聞きながらニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「さぁて、こっからは1対100のスクラムだ。逃げ切れるもんなら逃げ切ってみな」
そう言って志村が、私目掛けてロボの残骸を投げつけてきた。
私は咄嗟に軌道を変えて、飛んでくるロボを避けた。
だけどその直後、間髪入れずに二の矢、三の矢が飛んでくる。
「神剱さん、さっきはよくもやってくださいましたね!?」
「先には行かせねえよ、剣女ァ!!」
「1位は渡さねえ…!!」
後続の皆が、足の引っ張り合いをやめて、私に殺意のこもった攻撃を向けてきた。
そうしている間にも、私は次の第二関門に辿り着く。
『第二関門!! 落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!! ザ・フォーーール!!!』
第一関門を突破した先にあったのは、深さ50mはある谷から伸びた石柱にロープが張り巡らされた、大掛かりなアスレチックだった。
下にネットやクッションくらいはあるだろうけど、落ちたら復帰は無理そうだ。
だけどこれ、私の前では意味ないんだよね。
「お先〜」
私は、『
後ろからの妨害を避けながら、難なく第二関門を突破する。
私の後ろにいるのは…轟くん、爆豪くん、緑谷くん、そして志村か…
『先頭5人が抜けて下は団子状態!! 上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずに突き進め!! そして早くも最終関門!! かくしてその実態は────…一面地雷源!!! 怒りのアフガンだ!! 地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!! 目と脚酷使しろ!! ちなみに地雷の威力は大した事ねぇが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!!』
『人によるだろ』
地雷原か…
ここも飛んでいけば問題ないね。
私が『
「えっ?」
地雷原の外の草むらに埋まっていた機関砲やらランチャーやらが銃口を露わにし、私目掛けて火を噴いた。
「うわあっ!!?」
私目掛けて、無数のBB弾やミサイルが飛んでくる。
私は間一髪エネルギーでバリアを張って防いだけど、おかげで後続にだいぶ距離を詰められてしまった。
「な、何なのよこれ!?」
どうなってんのよこれ、今完全に私を撃墜しようとしたよね!?
『おっと言い忘れてたなリスナー諸君! 地雷原には、飛行系の“個性”持ち対策として対空機関砲と捕縛ネット、あとは全自動追尾式ミサイルなんかが搭載してあるぜ!! ちなみに機関砲はエアガンだし、ミサイルの中身はただのトリモチだから安心しな!!』
『殺意高すぎだろ』
は!?
何それ、そんなの聞いてない!!
原作にはそんな仕掛け無かったじゃん!!
『あとついでに言っておくが、トラップには加速度センサーが付いてっからスピード出し過ぎるとトラップの餌食になるぜ!! YEAH!』
『おい』
仕方ない、バリアで体を守りつつ攻略するしか…
そう考えて少しスピードを落とした、その瞬間だった。
「はっはァーーーーー!! 追い抜いたァ!!」
後ろから、志村が猛スピードで追いかけ、そして私を追い越した。
『ここで先頭が変わったー!!! 喜べマスメディア!! お前ら好みの展開だぁぁ!!』
志村が、調子に乗って私より前に出た。
バカね、そんなにスピード出したら撃墜されるに決まって…
「ほい、ほい、あほいほいほい」
「な!?」
志村は、私ですら反応が遅れたミサイルやBB弾を、難なく避け続ける。
『すげえぞ志村!! 臆せず空中を突き進んでいく!!』
『どんなに滞空持ち対策してようが、当たらなきゃ意味ねえってことだ』
『そいつぁシヴィー!! 発案者が泣くぞ!!』
マイク先生と相澤先生がそんな会話をしていた、その時だった。
「待てやデカ女ァ!!」
爆豪くんが、両手から爆破を放ちながら志村を追いかけてきた。
その後ろには、緑谷くんと轟くんもいる。
「痛いわァ!! 何すんじゃあ、この爆発さん太郎が!!」
「うっせえ、俺の前を行くんじゃねえ!!」
「喰らえ、『お邪魔
「先には行かせねえ!」
「ごめん皆!!」
先頭に並び立った4人は、足の引っ張り合いをした。
機関砲やミサイルが志村と爆豪くんを撃墜しようとするけど、志村の体術や爆豪くんの爆破、轟くんの氷や緑谷くんの放つ衝撃波で軌道を逸らされ、あらぬ方向へ飛んでいく。
「「「「勝つのは…俺「僕」「アタシ」だ!!」」」」
4人が吹き飛ばしたミサイルの破片が地雷原に墜落し、あちこちで地雷が爆発する。
うっわぁ、皆殺意高いな…
でもおかげで、私が共通の敵じゃなくなった。
今のうちに……
私が4人の眼中にないのをいい事に、4人の横を通り過ぎようとした、その時だった。
志村が逸らしたミサイルが、こっちに飛んでくる。
「キャアアアアアアアアアッ!!!」
志村が飛ばしたミサイルのせいで、私の足元で地雷が起爆し、たまたま地雷が密集したところに落ちたせいで大爆発が起こる。
私は、その時の風圧で吹き飛ばされ、4人から距離を離されてしまった。
さらに、さっき私が妨害した奴等が憂さ晴らしと言わんばかりに間髪入れずに邪魔してきたせいで、私は大きく遅れを取ってしまった。
さっきの総勢100人あまりのスクラムのせいで体力を使っていたのが、地味に効いてしまった。
「くっ…!」
私は、すぐに体勢を立て直して4人を追いかけた。
だけど、既に遅かった。
『うおおおおっ!! 4人同時にゴールに飛び込んだ!! 果たして1位は緑谷か、爆豪か、轟か、志村かァ!?』
私がゴールに駆け込んだのは、4人がゴールした僅かに後だった。
トップの4人に関しては、順位を確定させる為のビデオ判定が行われる。
「判定の結果、1位緑谷くん!! 2位爆豪くん!! 3位轟くん!! 4位志村さん!!」
ビデオ判定が行われた後も、続々と皆がゴールしていく。
「ようやく終了ね。それじゃあ結果をご覧なさい!」
競技が終わると、ミッドナイト先生がプロジェクターで順位を表示する。
私の順位は5位だった。
A組とB組の人数が一人ずつ増えたからか、上位44人が第二種目に進出する事になった。
原作では、次の競技は騎馬戦だったよね。
私をコケにした挙句出し抜いてきた志村は、絶対に許さない。
次の騎馬戦で、絶対脱落させてやるわ!!
本作ではUSJ襲撃事件が無いので、マイク先生のA組ageやB組の長期スパン作戦もありません。
一応物間君は長期スパン作戦を考えていましたが、この時点ではB組はA組に対して不満を持っていなくて思ったより賛同者が得られなかったので、作戦を没にしています。
B組が本気を出した結果、A組の中位〜下位層が下に追いやられる結果となりました。
以下、結果です。
1位 緑谷出久(A組)
2位 爆豪勝己(A組)
3位 轟焦凍(A組)
4位 志村離珠奈(A組)
5位 神剱芽華(A組)
6位 塩崎茨(B組)
7位 骨抜柔造(B組)
8位 飯田天哉(A組)
9位 常闇踏陰(A組)
10位 拳藤一佳(B組)
11位 瀬呂範太(A組)
12位 取蔭切奈(B組)
13位 切島鋭児郎(A組)
14位 鉄哲徹鐵(B組)
15位 尾白猿夫(A組)
16位 泡瀬洋雪(B組)
17位 宍田獣郎太(B組)
18位 蛙吹梅雨(A組)
19位 障子目蔵(A組)
20位 回原旋(B組)
21位 円場硬成(B組)
22位 鎌切尖(B組)
23位 砂藤力道(A組)
24位 柳レイ子(B組)
25位 角取ポニー(B組)
26位 鱗飛竜(B組)
27位 麗日お茶子(A組)
28位 庄田二連撃(B組)
29位 八百万百(A組)
30位 峰田実(A組)
31位 芦戸三奈(A組)
32位 口田甲司(A組)
33位 凡戸固次郎(B組)
34位 耳郎響香(A組)
35位 上鳴電気(A組)
36位 心操人使(B組)
37位 小大唯(B組)
38位 物間寧人(B組)
39位 黒色支配(B組)
40位 小森希乃子(B組)
41位 吹出漫我(B組)
42位 葉隠透(A組)
43位 発目明(サポート科)
44位 青山優雅(普通科)