まあ“個性”の弱点というよりは、転生者の怠慢なんですけどね。
『2回戦第5試合! 本日二度目のキャットファイトだ!! 1回戦で凄まじい瞬殺劇を見せた、ヒーロー科屈指の実力者! ヒーロー科、志村離珠奈!
私と志村は、お互いにリングの上に立って静かに睨み合った。
この前の戦闘訓練で、こいつは私に手も足も出なかった。
それにさっきの吹出くんの試合で、こいつが最初に距離を詰めて蹴ってくるのはわかってる。
普通に考えれば、私が絶対に勝つ。
だけどそんな私の考えはすぐに裏切られた。
志村はいつも右眼につけている眼帯を外して、不敵な笑みを浮かべている。
「いやぁ〜、まさか神剱ちゃんとこんなに早く対決することになるとはね」
「わたしも、まさかこんなに早く志村さんと戦えるとは思ってなかったよ」
「ま、胸借りるつもりで頑張らせてもらいますわ」
そう言って志村は、スタート位置まで下がる。
こいつのこの余裕は一体何…?
私とは、戦闘訓練で一度格付けが終わってるのよ…?
「あ、そうそう。神剱ちゃんさぁ。この前、“個性”の弱点が無いって言ってたよね。でもアタシ、神剱ちゃんの“個性”のとんでもない弱点に気づいちゃったんだ。今からそれを証明してあげる」
スタート位置まで下がった志村は、クラウチングスタートの姿勢を取る。
私の“個性”の弱点……?
もしかして、眼帯を外して試合に挑んだ事と何か関係ある?
まさかこいつ、他にも“個性”を隠し持ってるって言うの…!?
……いや、そうだったとしても、こいつを行動不能にする剣さえ創造してしまえばこっちのもの。
スタートと同時に創造して、行動不能にすれば…!!
『START
――ボ
「………!? あ゛っ…がはっ……!? お゛えっ、がぁ゛っ……!!」
………えっ?
なに……?
いたい、いたい、いたいいたいいたいいたいいたい!!
きもちわるい、苦しい、息ができない…!!
え、今、何された…!?
◆◆◆
真メイカside
「………!? あ゛っ…がはっ……!? お゛えっ、がぁ゛っ……!!」
志村さんにお腹を蹴られた『わたし』が、その場に膝をついて嘔吐する。
肋にヒビが入った痛みで過呼吸を起こし、吐瀉物が鼻の奥にまで流れ、チョロチョロと小水を漏らしている。
トップヒーローの娘で雄英生にあるまじき無様な姿だ。
『なぁぁぁ!? なんだなんだ、何が起こった!? 志村、何をしたぁ!? 今『ボ』っつったぞ!?』
『瞬間的に脳のリミッターを外して、脚の筋力を100%引き出して間合いを詰めたんだろう。吹出の時みたいに『浮遊』で緩衝なんかしてなかったから、ありゃお互い相当痛いだろうな』
プレゼント・マイク先生と相澤先生が、そんな風に解説をする。
「あ〜痛い、足がガクガク。こりゃ腰が立たないわぁ」
志村さんは、“個性”を使って浮き上がると、『わたし』のところにやってきた。
ヘラヘラ笑いながらわざとらしく言う彼女の脚は、パンパンに腫れている。
多分今の攻撃で、足の腱が切れたか、骨が折れたんだと思う。
志村さんは、普通なら絶叫ものの激痛にも汗ひとつかかずに、『わたし』に話しかける。
「キミの“個性”の致命的な弱点を教えてあげようか? それは、
志村さんの指摘は、的を得ていた。
『わたし』は全然気づいていないようだけど、無敵とも呼べる強さと万能さこそが、この“個性”の最大かつ致命的な弱点。
万能故に取れる選択肢の数が多すぎて、最適な選択をするのに時間がかかる。
それに対して、志村さんみたいなシンプルな“個性”なら、攻撃、防御、移動の全てがONとOFFのスイッチひとつで完結する。
このバカは最適な選択をするまでの時間を「たかがコンマ数秒」と考えているかもしれないけど、裏を返せば攻撃に移るまでの時間がコンマ数秒“も”ある。
オールマイトのようなトップヒーローと肩を並べるなら、尚更この差は大きい。
私達の場合は、強くて万能な“個性”故に対人戦闘では真っ先に狙われるし、『“個性”を使わせない』という対策が容易に思いつく。
もし志村さんが悪意のある
普通は、ヒーローを目指すなら“個性”に振り回されないように鍛錬をするものだけど、このバカの場合は、なまじ“個性”が強すぎるせいで、その鍛錬の必要性に自分で気付くことができなかった。
怪我をするような場面なんか生まれてから一度も無かったから、痛みに対する耐性も人一倍低く、たった一発殴られただけで動けなくなる始末。
このバカは、他のクラスの人に対して努力が足りないと罵っていたけど、こいつには彼等をバカにする資格なんかない。
こいつは努力したと思ってるかもしれないけど、こいつが今まで積み重ねてきたのは、結局は“
便利すぎる“個性”に対して、本人のスペックが全然追いついてない。
それがこのバカの致命的な弱点。
「確かに神剱ちゃんの“個性”は強いけど、使わせなければ何のことはない。
志村さんのその言葉を聞いて、バカ女は意識を手放した。
その間にも、ミッドナイト先生が10カウントをする。
「神剱さん、行動不能!! 3回戦進出、志村さん!!」
ミッドナイト先生が勝敗を言い渡すと、志村さんは私の体を引っ掴んで、救護ロボに乗せる。
『決まったァーーーー!! 志村、優勝候補の神剱を一発K.O.!! 見事な速技で完全勝利を収めたのは、志村離珠奈だァアアア!!』
勝敗が決すると、観客席が熱気に包まれる。
特に志村さんのファンの人達は、彼女に声援を送っていた。
「チユ〜〜〜!!」
保健室に運ばれた後、リカバリーガール先生が私の頬にキスをした。
すると肋の痛みが引いていく。
私が完治した後、リカバリーガール先生は、一緒に保健室に来た志村さんに治癒を施した。
「芽華ちゃん!」
クラスの女子の皆が、保健室にお見舞いに来た。
次に試合を控えている八百万さんと、控え室にいる麗日さん以外は全員揃っている。
「あ…離珠奈ちゃん、芽華ちゃんは?」
「今ちょうど治療してもらって寝てるとこ」
「てか、あんたも怪我してたの?」
「うん。足折れちゃった。でも見てのとーり、全快っすわ」
「そんな『ちょっと転んじゃった』みたいなノリで言う怪我じゃないでしょ…」
勝利と引き換えに大怪我をしたというのに、志村さんがケロッとして笑っていると、耳郎さんが顔を引き攣らせる。
そんな中、蛙吹さんが志村さんに話しかける。
「そういえば離珠奈ちゃん、試合中に眼帯を外していたのは何だったの?」
「急に速くなったように見えたけど…」
「もしかして、その右眼……」
皆は、志村さんが眼帯をつけずに試合に臨んだ理由を尋ねた。
私は、寝たふりをして聞き耳を立て、皆の話を聞いた。
実は私も、志村さんの右眼の事、ちょっと気になってた。
右眼に何か特別な力でも持ってたりするのかな…?
見たところ、増強系の力っぽかったけど…
「ああ、アレね。ただのブラフ」
………へ?
「え? ブラフ?」
「うん。別に何か特別な力とか使ったわけでもなく、ただ思いっきり足に力込めて走っただけ。眼帯してるのは、普通に生まれつき右眼が見えないからだよ。眼帯外したのはアレだよ、普段しないことしたら、神剱ちゃんも勝手に深読みして隙を作ってくれると思って」
志村さんの右眼の眼窩には、眼球と呼べるのかも疑わしい黒い球体が埋まっていた。
アレ、ブラフだったんだ…私、すっかり騙された。
志村さん、面白い子じゃない。
出来る事なら、前世を思い出す前にお友達になりたかったわ。
◆◆◆
偽メイカside
私は、知らない天井で目を覚ました。
ここ、どこ……?
「おや、目が覚めたかい」
目を開けると、リカバリーガール先生が私の顔を覗き込んでいた。
「ペッツだよ、お食べ」
そう言ってリカバリーガール先生は、私の掌にペッツを落とす。
…そうだ、思い出した。
私、あの女に思いっきり蹴られたんだ…!!
ふざけんな、ふざけんなふざけんな!!
剣さえ出せていれば、あんな女瞬殺だったのに!!
私が『浮遊』しか能がない女に負けるなんて…そんなの、絶対認めない…何かの間違いに決まってる!!
そうよ、あの女がフライングしたのがいけないのよ!!
あんな勝負無効よ!!
「っ、試合は!? 志村……っ、さんはどこに…!?」
「ああ、今ちょうど準決勝第2試合が終わったところだから、もうすぐここに来るだろうよ」
準決勝第2試合…!?
何それ、もう志村の不正を訴えるどころの話じゃないじゃん!!
「次は、誰と誰が戦うんですか…?」
「確か緑谷って子と、爆豪って子だね」
緑谷くんと、爆豪くん……
じゃあ轟くんは負けたのか…
っていうか、私を蹴っ飛ばした志村が爆豪くんに負けるなんて…
じゃあ最初から私に勝ち目なんか無かったんじゃん!!
どいつもこいつも、何で私の知らないところでバケモノみたいに強くなってんのよ…!?
せっかくヒロアカ世界に来て無双できると思ってたのに、これじゃあ全然私の立場が無いじゃん!!
それもこれも全部、志村瑠奈のせいよ!!
あいつさえいなければ、原作から大きくずれる事もなかったし、志村だってこの世界にいなかったのに!!
母親のやらかしは、娘の志村に責任取ってもらわなきゃ気が済まない…!!
あの女を殺してやる、そう決めた、その時だった。
「痛てーよハゲ」
「殺すぞブス」
全身ズタボロになった爆豪くんと志村が、肩を貸し合って保健室に来た。
二人は、互いに睨み合って罵り合っていた。
「普通か弱い女子にあんな容赦ない爆破するか? 禿げろ」
「どこがか弱えんだよ、メスゴリラ」
「あぁ? 毟るぞお前」
「上等だコラ、やれるもんならやってみろや」
「うるさいよあんた達、まだ寝てる子もいるんだから静かにしな」
「「サーセン」」
二人が罵り合っていると、リカバリーガール先生が怒ったので、二人はしおらしくなって謝る。
私がそのやりとりを見ていると、志村が私に気づく。
「あ、神剱ちゃんごめん起こしちゃった?」
うわ、最悪…
このタイミングで居合わせるなんて…
…いや、逆にこれはチャンスかもしれない。
ここで泣きでもすれば、志村はクラスメイトを泣かせた最低な女って事になる。
「志村さん、いくら勝ちたいからって、“個性”を使わせてくれないなんてひどいよ…あんなに本気で蹴ることないじゃん…わたし、肋骨にヒビが入ってたんだよ?」
私は、自分でもビックリするくらいの演技力で、その場で泣いてみせた。
泣きながら、爆豪くんをチラッと見てみる。
すると爆豪くんは、私を見下ろしながら言った。
「は? 真剣勝負なんだから、そんくらい普通だろ。半端な覚悟でリングに立ったてめえが悪い」
………は?
何それ。
なんで志村の味方をするの?
私、こいつに怪我させられたんだよ!?
ちょっとは私を心配してくれたっていいじゃん!
「ちょっとカッチャン、言い方気をつけなよ。相手は
「てめえが言うなや」
志村が爆豪くんを窘めると、逆に爆豪くんが志村の発言を指摘した。
私、もしかしてこの二人に下に見られてる…?
なんでよ、授業の成績は私の方が良いはずなのに…!
「っ………!!」
「あ、神剱ちゃん!」
私は、その場にいる事が耐えられなくなって、保健室から逃げ出した。
観客席に向かう途中で、他科の生徒が自販機で飲み物を買いながら話しているのを見つけた。
「準決勝どっちも凄かったよね」
「うん、凄まじかった」
「俺、ヒーロー科の編入考えてたけど、アレ見て諦めがついたわ。あの4人に並ぶ勇気ないよ」
「俺志村さんのファンクラブ入ろっかな」
「やっぱりA組四天王は轟くん爆豪くん緑谷くん、あと志村さんだよね! 4人まとめて推すわ私!」
「あっ、おい!」
準決勝の感想を言い合って盛り上がっていた他科の生徒達だったけど、そのうちの一人が私に気づいて、クラスメイトの腕を掴む。
モブどもが、腫れ物を扱うような目を私に向けてくる。
そいつらと目が合った瞬間、そいつらの頭の中で声が鳴り響く。
「うっわ、ゲロション女じゃん。大口叩いた挙句、一撃でゲロ失禁して無様に負けた女」
「『ボ』っつってたよなw」
「てか思い出したわ。あいつ、2週間前うちらのことモブとか低次元とか見下してた奴じゃん」
「うっわぁ、ヒーロー科なのに性格悪いとか終わってるわ。あんなのでもヒーロー科に入れちゃうんだね」
「結局あいつの長所、家柄と“個性”だけじゃん。ああ、あとは顔と乳かw」
「おいおい、あんまり言ってやるなよ。大衆の面前で一発K.O.されてゲロ小便垂れ流した神剱芽華ちゃんの人生なんか、引きこもり一択しかないんだからさ(笑)」
モブどもが歪な笑顔を浮かべて、クスクスと笑う声が聴こえる。
何よ、私が悪いって言うの…!?
全部あの女が悪いのよ、私は悪くない!!
大体、なんなのよあんたら!?
予選で落ちた雑魚のくせに、私をそんな目で見るな!!
「うるさい、うるさいうるさいうるさい!!」
私が叫ぶと、モブの声は聴こえなくなった。
ふと顔を上げると、モブ共が困惑した顔で私を見ていた。
「うわっ、え、びっくりした…なに急に?」
「あの、大丈夫すか…?」
モブの男子生徒が、私に手を差し伸べてくる。
私は、その手を振り払って、逃げるように観客席に戻った。
◇◇◇
「それではこれより!! 表彰式に移ります!」
体育祭の全部の種目が終わって、閉会式が開かれた。
表彰台には、3位の台に立つ轟くんと志村、そして1位の台に並んで立つ爆豪くんと緑谷くんがいた。
「納得いかねえ…同着なんざ認められるか…!」
「かっちゃん…」
見るからに苛立っている爆豪くんの横で、緑谷くんはハラハラした表情を浮かべていた。
決勝戦は、緑谷くんと爆豪くんが二人ともダウンして、別の勝負で決着をつけようにも二人ともボロボロで、リカバリーガール先生からもドクターストップがかかったので、異例の同着1位という結果になった。
「カッチャン元気だねぇ〜」
「……おう」
3位の表彰台に立つ志村は他人事のように笑い、轟くんが無表情で頷く。
ふざけんな、本当なら私がそこに立つはずだったのに…!!
「メダル授与よ!! 今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」
「私が、メダルを持って来t「我らがヒーロー、オールマイトォ!!」
オールマイトが上空から飛んできてカッコよく登場したけど、せっかくの登場シーンでの台詞がミッドナイト先生の声にかき消されたためオールマイトが少ししょげて震えていると、ミッドナイト先生が手を合わせて苦笑いを浮かべながら謝罪する。
オールマイトは、3位の轟くんの首に銅メダルをかける。
「轟少年おめでとう! 強いな君は!」
「ありがとうございます」
「今回の優勝は緑谷少年だったが、どちらが勝ってもおかしくなかった! 来年は金メダル目指して頑張ろうな!」
「……はい」
オールマイトが轟くんにハグをすると、轟くんはオールマイトに貰った銅メダルを握りしめて頷いた。
オールマイトは、次に志村の首に銅メダルをかけた。
「志村少女、おめでとう! 惜しかったな!」
「ありがとうございます」
「本当に強くなったな。きっと
「…はい!」
オールマイトがハグの代わりに志村に握手をすると、志村は笑顔を浮かべて頷く。
オールマイトは、次に緑谷くんの首に金メダルをかけた。
「緑谷少年、優勝おめでとう!」
「オールマイト…」
「最後の爆豪少年との戦いは素晴らしかった! これからの活躍も期待しているよ」
オールマイトがそう言ってハグをして、さらに緑谷くんの耳元で何かを囁く。
すると緑谷くんは、歓喜に打ち震えて大泣きした。
「ありがとうございます、オールマ゛イ゛ト゛ぉ…!!」
「お〜、良かったな〜出久」
緑谷くんは、オールマイトに金メダルを貰ったのが嬉しすぎたのか、間欠泉みたいに涙を噴き流していた。
その様子を見て、隣にいた志村が拍手を送る。
「さて爆豪少年!! 見事な伏線回収だな!」
「…………」
「すげぇ顔…」
そう言ってオールマイトは、爆豪くんの首に金メダルをかけようとする。
見るからに納得いってなさそうな爆豪くんの顔を見て、オールマイトはタジタジしていた。
「爆豪少年、今回の結果は君にとっては不本意なものだろう。だが、この結果に悔しさを覚えた君なら、もっと強くなれる。受け取っとけよ! 決して忘れぬよう!」
「……うっす」
オールマイトが金メダルを渡すと、爆豪くんはメチャクチャ嫌そうな顔をしつつも、金メダルを受け取った。
4人にメダルを渡し終えたオールマイトは、振り向いて観客席に向かって告げた。
「さァ!! 今回は彼らだった!! しかし皆さん! この場の誰にもここに立つ可能性はあった!! ご覧頂いた通りだ! 競い! 高め合い! さらに先へと登っていくその姿!! 次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」
オールマイトの言葉に、その場にいる全員が耳を傾け頷く。
だけどオールマイトは、ここでさらに特大爆弾発言をした。
「そしてここからは私の個人的な話になりますが、ここにいる緑谷少年、爆豪少年、志村少女の三人は私の弟子です!!」
……は!?
ちょっと、何言ってんのオールマイト!?
「この三人は、いずれ次世代の平和の象徴として、私を超えるヒーローになるでしょう! そして彼等だけではなく、ここにいる全員が、次世代のヒーローとしての素質を持っている! 皆さん、彼等のこれからの活躍にご期待ください!! 以上、ご清聴ありがとうございました!!」
オールマイトが言いたい事を言い終えて、やりきった、みたいな顔をしていると…
「「何しとんじゃオールマイトォ!!!!」」
爆豪くんと志村が、怒鳴りながらオールマイトに掴みかかった。
「んなこと言ったらどうなるか想像つかねえのか!! ちったぁ考えて物言えや!!」
「何やらかしてくれちゃってんすかこのオバカマイト!! バカなの!? 死ぬの!?」
「い、いや…どうせいつか言うことだし、ちょうどいいかなって…」
「「いい訳あるかァ!!!」」
「スミマセン…」
「あわわわわ…」
爆豪くんと志村がオールマイトに向かって怒鳴ると、オールマイトは萎縮し、その様子を緑谷くんが困惑した様子で見ていた。
そして3位の表彰台にいた轟くんは、愕然とした表情で三人とオールマイトを交互に見ていた。
爆豪くんと志村にボコボコにされたオールマイトが、マイクを握って締めの挨拶をする。
「えー……てな感じで最後に一言!! 皆さんご唱和ください!! せーの…」
「「「プルス…「お疲れ様でした!!!」」」」
オールマイトが空気を読まず叫ぶと、ブーイングが巻き起こった。
「そこはプルスウルトラでしょ、オールマイト!!」
「ああいや…疲れたろうなと思って……」
私は、オールマイトのカミングアウトを聞いて、点と点が繋がった。
志村瑠奈って、オールマイトのサイドキックじゃん。
まさかオールマイト、志村瑠奈から原作の展開を聞いてたんじゃないの…!?
だから原作のストーリーが始まるタイミングよりずっと前に、『ワン・フォー・オール』を受け継ぐ緑谷くんと、その幼馴染みの爆豪くん、そして志村瑠奈の娘に近づいて弟子にしたんじゃ…
それで皆、娘のあいつに忖度して、私との試合でフライングして反則勝ちした志村を準優勝させたんだ…!!
オールマイトの弟子の三人がトップ3を独占するなんて、そんなのただの出来レースじゃん!!
オールマイトもオールマイトよ!
サイドキックの娘で弟子の志村に忖度して反則を黙認するなんて、それでもNo.1ヒーローなの!?
認めない…こんなの、絶対認めない…!!
私を嵌めた志村の事は、絶対破滅させてやる…!!
☆破滅まで、残り111日───
はい、転生者は表彰台にすら上がれずに敗退です。
「私は心配ないけど轟くんが負けちゃうのが心配〜」とかイキっておいて、まさか初戦でボられてゲロ失禁退場するとは露ほどにも思ってなかったでしょうね。
ちなみに、この世界線の爆豪くんは、リズナ並みに反射神経とスピードがえげつないので、仮に転生者が準決勝まで勝ち上がれたとしても、彼女が決勝に進める確率は限りなく低いです。
そしてその轟くんも準決勝でデクに下されてるので、どのみち轟くんとガチンコ勝負するのは不可能だったという。
というかこのバカ転生者は、この世界線のA組四天王の誰と戦っても“個性”を使わせてもらえずにワンパンKOしてました。
戦闘訓練で轟くんやリズナに勝ったのも、不意打ち的な要素が大きかったですし。