500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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第17話 残り107日

 2日間の休日が終わって、登校日。

 私は、実田さんの運転する車に乗って登校した。

 いつも通りにA組の教室に入ると、皆がワイワイと話していた。

 

「超声かけられたよ、来る途中!!」

「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」

「俺も!」

 

 芦戸さん、葉隠さん、切島くんがそんな話をしている。

 

「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ」

「ドンマイ」

 

 瀬呂くんが肩を落としながら言うと、梅雨ちゃんが机に突っ伏しながら追い討ちをかける。

 私が席についた、その時だった。

 

「おはよう」

「おはよう、しむ…画風が違う!!?」

 

 オールマイトみたいな顔をした志村が、教室に入ってくる。

 志村は、そんな顔になった訳を皆に話した。

 

「いやぁ、今日めっちゃ話しかけられてさぁ。営業スマイルのしすぎで表情筋攣っちゃって、戻んなくなっちゃった」

「「「そんなことある!!?」」」

 

 今日ものすごく話しかけられたという志村に、皆が話しかける。

 本当なら、私がそこにいたはずなのに…

 こいつのせいで、全部が狂った。

 絶対許さない…!!

 

「たった一日で一気に注目の的になっちまったよ」

「やっぱ雄英すげえな…」

「ね〜」

 

 上鳴くんと峰田くんが顔を見合わせて言うと、志村が二人の会話に加わる。

 その直後、予鈴が鳴る。

 

「おはよう」

 

 予鈴と同時に相澤先生が入ってくると、皆が静かになって席に着く。

 

「今日のヒーロー情報学…少し特別だぞ」

 

 『ちょっと特別』、その言葉に何人かが身構える。

 

「『コードネーム』ヒーロー名の考案だ」

「「「「「胸膨らむやつきたああああ!!」」」」」

 

 相澤先生の言葉に、皆のボルテージが一気に高まる。

 でも相澤先生が睨むと、皆はまたすぐ静かになった。

 

「というのも先日話した『プロからのドラフト指名』に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み即戦力として判断される2、3年から…つまり今回来た『指名』は将来性に対する『興味』に近い。卒業までにその興味が削がれたら、一方的にキャンセルなんてことはよくある」

「大人は勝手だ!」

 

 相澤先生が言うと、プロの世界の厳しさを知った峰田くんは机をガンっと叩く。

 そして今度は葉隠さんが口を開く。

 

「頂いた指名が、そのまま自身へのハードルになるんですね!」

「そ。で、その指名の集計結果がこうだ」

 

 

  A組指名件数

 

  爆豪:8,556

  緑谷:8,501

  志村:897

  常闇:360

  飯田:301

  上鳴:272

  切島:168

  麗日:120

 八百万:108

  瀬呂:24

  芦戸:17

  尾白:15

   轟:9

  神剱:1

 

 

「例年はもっとバラけるんだが、今年は爆豪と緑谷の二人に注目が偏った」

「だーーー白黒ついた!」

「優勝者だけで9割強かよ、えぐっ」

「これがオールマイト効果か…」

 

 相澤先生が言うと、上鳴くんと志村、そして峰田くんが口を開く。

 上位二人に至っては、票数が3位の志村の10倍ぐらいある。

 

 っていうか、私の指名が1件だけ…!?

 ベスト24の上鳴くんと尾白くんですら二桁以上の指名を貰ってるのに…!

 最終種目では志村に一撃K.O.されたけど、それ以外の種目では順当に活躍してたのに…!!

 

「あら…? 轟さんの指名が少ないのはどうしてですの? 準優勝だったのに…」

「まぁ轟くんの場合は、確実にエンデヴァーかトーヤのところに行くだろうし、指名しても無駄になっちゃうからね。その分、優勝者の出久とカッチャンに票が流れたんでしょ」

「志村…お前はオールマイトの弟子なのに、他の二人とこんなに差があるのはおかしくないか?」

「いやいや、逆にありがたや〜だよ。あんな詐欺紛いの試合で1000人弱も興味持ってくれたんだもの」

 

 百ちゃん、轟くん、志村がそんな話をする。

 私を一撃K.O.しておいて、何が詐欺よ。

 

「わあああ」

「うむ」

 

 お茶子ちゃんは、嬉しそうに飯田くんの肩を掴んで揺すっていた。

 

「これを踏まえ…指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」

「それでヒーロー名か!」

「俄然楽しみになってきたァ!」

 

 相澤先生が言うと、砂藤くんとお茶子ちゃんが興奮気味に反応する。

 

「まぁ仮ではあるが適当なもんは…」

「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」

 

 突然、相澤先生の言葉を遮る形で、教室の入り口の方から声が響く。

 

「この時の名が! 世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!!」

「「「「ミッドナイト!!」」」」

 

 ミッドナイト先生が、セクシーポーズをしながら教室に入ってきて、相澤先生からバトンタッチするように教壇に立った。

 

「まぁそういう事だ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうの出来ん。将来自分がどうなるか名を付ける事で、イメージが固まりそこに近付いていく。それが『名は体を表す』って事だ…“オールマイト”とかな」

 

 そう言って相澤先生は、全員にペンとフリップを配ると、寝袋に入って寝始めた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 15分後。

 

「じゃ、そろそろできた人から発表してね!」

「じゃあはい!あたしやる!」

 

 トップバッターは芦戸さんだ。

 芦戸さんは、フリップを見せてドヤ顔しながら発表する。

 

「リドリーヒーロー“エイリアンクイーン”!!」

「2!! 血が強酸性のアレを目指してるの!? 止めときな!!」

「ちぇ〜」

 

 ミッドナイト先生に止められた芦戸さんは、肩を落として席に戻る。

 最初に変なの来たせいで、大喜利みたいなノリになっちゃったじゃん…

 すると今度は、志村が手を挙げる。

 

「次はアタシいいすか?」

 

 よく見ると志村は、フリップを何枚か持っている。

 芦戸さんと志村は、お互いにサムズアップをして頷き合う。

 「頼んだよ、志村」「任せて芦戸ちゃん」と目で語り合っている。

 

「ルナティックヒーロー“ムーン・チャンピオン”!!」

「1233!! 時速40500kmで飛ぶアレを目指してるの!?」

 

 志村が発表した名前は、ミッドナイト先生に止められた。

 バカ志村、あんた何大喜利のノリに乗ってんのよ!?

 

「じゃあ次は〜…」

 

 志村が別のヒーローネームを発表しようとしたその時、相澤先生の捕縛武器が飛んできて、志村を縛り上げた。

 志村の手から落ちたフリップには、ネタに全振りしたヒーローネームの案がいくつも書かれていた。

 

「ふざけるのもいい加減にしろ」

「……スンマセン」

 

 相澤先生の地を這うような声で注意すると、志村が急にしおらしくなって謝る。

 どうすんのよ、バカ二人のせいで出しづらい雰囲気になっちゃったじゃん!

 

「じゃあ次、私良いかしら」

「梅雨ちゃん!!」

「小学生の時から決めてたの、フロッピー」

 

 そう言って梅雨ちゃんは、『梅雨入りヒーロー FROPPY』と書かれたフリップを見せた。

 

「カワイイ!! 親しみやすくて良いわ!! 皆から愛されるお手本のようなネーミングね!!」

 

 ありがとう梅雨ちゃん(フロッピー)、空気が変わった。

 そこから、皆どんどんヒーローネームを発表していった。

 

 切島くんは、剛健ヒーロー“烈怒頼雄斗(レッドライオット)”。

 耳郎さんは、ヒアヒーロー“イヤホン=ジャック”。

 障子くんは、触手ヒーロー“テンタコル”。

 瀬呂くんは、テーピンヒーロー“セロファン”。

 尾白くんは、武闘ヒーロー“テイルマン”。

 砂藤くんは、甘味ヒーロー“シュガーマン”。

 芦戸さんは、リドリーヒーロー“エイリアンクイーン”改めPinky。

 上鳴くんは、スタンガンヒーロー“チャージズマ”。

 葉隠さんは、ステルスヒーロー“インビジブルガール”。

 

「良いじゃん良いよ! さぁ、どんどん行きましょー!!」

 

 百ちゃんは、万物ヒーロー“クリエティ”。

 轟くんは、エアコンヒーロー“ショート”。

 常闇くんは、漆黒ヒーロー“ツクヨミ”。

 峰田くんは、モギタテヒーロー“GRAPE JUICE”。

 口田くんは、ふれあいヒーロー“アニマ”。

 そして、志村はというと…

 

「アタシはこれ。“ブラックムーン”」

 

 志村は、さっきとは違って真顔でヒーローネームを発表した。

 やっぱり志村は、月にちなんだヒーローネームを出してきた。

 さっきの大喜利のノリで出したヒーローネームも、全部月にまつわるものだった。

 そして爆豪くんは…

 

「爆神ヒーロー“ダイナマイト”」

「…うん、まあいいんじゃない?」

 

 あ、爆殺王じゃないんだ。

 ミッドナイト先生からも一発OK貰ってるし。

 なんかこの世界線の爆豪くん、原作より粗暴さが薄れて冷静になってるよね。

 

「じゃ、私も…考えてありました」

「シャレてる!」

 

 麗日さんは、少し恥ずかしそうに『ウラビティ』と書かれたフリップを見せた。

 

「思ってたよりずっとスムーズ!残ってるのは、飯田くんと緑谷くん、それから神剱さんね」

 

 ミッドナイトが言うと、まずは飯田くんが発表する。

 

「ターボヒーロー“イダテン”」

 

 飯田くんのヒーローネームは、“インゲニウム”でも“天哉”でもなかった。

 飯田くんがヒーローネームを発表すると、志村が口を開く。

 

「ん、飯田くん、お兄さん(インゲニウム)を真似なかったんだ」

「それも考えた。だが体育祭の後、兄さんと話をしてな…いつまでも兄の背中を追っているわけにはいかないと気付いたんだ。俺は俺の道を行く」

「青くっさ、いいわ!」

 

 飯田くんのヒーローネームは、ミッドナイト先生に即合格を貰った。

 残るは、緑谷くんと私だけ。

 緑谷くんは、前に出て自分のヒーローネームを発表した。

 

「!?」

「えぇ緑谷、それでいいのか!?」

 

 緑谷くんのフリップには、自信なさげな字で『デク』と書かれていた。

 

「うん。今まで好きじゃなかった。けど、ある人に意味を変えられて…僕には結構な衝撃で嬉しかったんだ…これが僕のヒーロー名です」

 

 緑谷くんのヒーローネームは、原作通り“デク”だった。

 トリは私か……

 どうしよっかな、色々候補はあるんだけど迷うなぁ…

 せっかくだからかっこいい名前にしたいわ。

 二つ名は『魔剣士ヒーロー』にするとして、後ろの部分はどうしようかしら?

 

 “アルトリア”

 “ペンドラゴン”

 “カリバーン”

 “アスカロン”

 “ヴァルキリー”

 “ブリュンヒルデ”

 

 どれがいいかなぁ〜…

 

 ――ダメね、どれも相応しくない。とてもじゃないけど体育祭で無様を晒した女が名乗っていい名前じゃないわ。

 

 はぁ!!?

 何よあんた、なんでそうやっていっつも私の決める事にダメ出しするの!?

 相応しくないって何よ!!

 何なら相応しいのよ!?

 

 ――あなたに相応しいヒーローネームなんか無いわよ。もういっそのこと本名で活動したら?

 

 そんなの嫌よ!!

 せっかくのヒーローネームなんだから、こんなダサい名前じゃなくて、かっこいい名前じゃなきゃ嫌!!

 

 ――はぁ……お父様とお母様が聞いたら悲しむわね。まあ、(笑)付きで呼ばれてもいいなら、好きにすればいいんじゃない?

 

 ムカつく……!!

 そうやっていつも私の事を馬鹿にして…!!

 この体はもう私のものなんだから、第二人格のあんたがしゃしゃり出てこないでよ!!

 ああもう、あんたのせいで考える時間なくなっちゃったじゃない!!

 もうこれでいくわ!

 

「それじゃ、最後は神剱さんね。いける?」

「はい」

 

 ミッドナイト先生に声をかけられた私は、前に出てヒーローネームを発表した。

 

「わたしのヒーロー名はこれです。魔剣士ヒーロー“スペルソード”」

「ゲームっぽい名前ね」

「はい、わたしはRPGが好きなので、それっぽい名前にしてみました」

「サインオシャレ、いいじゃない!」

 

 私の発表したヒーローネームは、ミッドナイト先生には好評だった。

 こうして、全員のヒーローネームが無事決まった。

 

 

 

 ☆破滅まで、残り107日───

 

 

 

 

 




飯田くんのヒーロー名はオリジナルです。
本作ではインゲニウムが襲撃されておらず、飯田くんがインゲニウムの名前を継ぐ理由がないので。

この転生者の事ですから、身の程知らずにも伝説上の英雄や神様の名前からヒーローネームを決めそうなものですが、二次創作とは言え名誉ある伝説上の英雄や神様の名前をこんな奴のヒーローネームにしたくなかったので、無難なヒーローネームにしました。
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