500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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みなさんお待たせしました。
予告していた天誅タイムです。


第19話 残り98日

 職場体験3日目。

 

「『鳳翼剣(フェニックスウィングソード)』!!」

「『深淵闇躯(ブラックアンク)』…『夜宴(サバト)』!」

 

 私は今、常闇くんと一緒にホークスのところで職場体験をしている。

 私と常闇くんは、昨日と同じようにパトロールをしつつ(ヴィラン)退治をしていた。

 私は初日と同じように、『翼剣(ウィングソード)』で白い羽根を飛ばして(ヴィラン)を捕捉した。

 

「おお〜、やるねぇ」

 

 相変わらずホークスは、イケメンスマイルを浮かべながら私達を褒めてくれた。

 常闇くんも、私のスピードには到底及ばないけど、初日よりは速くなっている。

 

 しかし『翼剣(ウィングソード)』、便利だな。

 このままだと『翔剣(フライソード)』がいらない子になっちゃうかも。

 なんて考えていると、ホークスが話しかけてくる。

 

「悪いけど、二人とも今からお客さん来るから準備して〜」

「客……? ヒーロー関係ですか?」

「そ。今、ちょーっと大きい事件を調査してて、他のヒーローとチームを組むことになったんだ。今日はその作戦会議ってわけ。せっかく職場体験に来てくれたんだし、そういう経験もしてもらおうと思ってね。ああでも、別に君達に何か意見を言ってもらおうってわけじゃないから、肩の力抜いて大丈夫大丈夫」

 

 なるほどね、チームアップミッションってわけか。

 それにしても、誰とチームを組むんだろ。

 ソワソワしながら待っていると、ホークスが5分足らずで事務所に戻ってきた。

 

「二人とも〜、お客さん来たよ」

「相変わらず仕事が速いな、ホークス」

 

 事務所に戻ってきたホークスの隣には、黒いローブと金色のアーマーを身につけた、魔導ヒーロー“マーリン”こと私の父さんがいた。

 父さんは、私と目が合うなり険しい表情を浮かべる。

 

「芽華、お前……!!」

「と、父さん…!?」

 

 嘘でしょ……!?

 何で父さんがここにいるのよ!?

 やばいやばいやばい、このままじゃ指名を誤魔化してここに来たのがバレちゃう…!!

 

 

 それから私と常闇くんは、ホークスと一緒に父さんと会議室で作戦を煮詰めたわけだけど、会議の内容が全然頭に入ってこなかった。

 なんかデトネラットがどうとか言ってたけど、そんな事より今は、父さんからの地獄のような圧をどう切り抜けるかしか頭になかった。

 会議が煮詰まってお開きになる頃にはすっかり日が暮れていて、空は赤く染まっていた。

 サイドキック達が先に会議室を出て行った後、父さんはホークスに話しかける。

 

「ホークス。今から娘と()()()()()大事な話をしたいんだが、構わんか?」

「ええ、全然構いませんよ! それじゃ、俺は席外してますんで。どうぞごゆっくり。それじゃ行こっかツクヨミくん」

「はい」

 

 ホークスは、常闇くんを連れて先に会議室から退室した。

 会議室には、父さんと私だけが残された。

 

「座りなさい、芽華」

 

 父さんが、いつにも増して穏やかな口調で言った。

 私は、その言葉に逆らえずに黙って椅子に座った。

 すると父さんは、“個性”でドリンクバーを操作し、私の分のドリンクを机に移動させて差し出した。

 

「芽華、お前は賢い子だ。父さんがこれから何の話をするのかわかるね?」

 

 父さんが、笑顔で圧をかけてくる。

 父さんは、本気で怒った時に限って気味が悪いくらいに穏やかになる。

 

「お前が私のところに来るって連絡が来ないからね、相澤先生に確認したんだ。そうしたら、ホークスから指名が来てたからお前がそこを選んだって言うんだよ。でもね、ホークスに聞いたら指名した覚えがないって言うんだよ。そもそも私に指名しないよう言われてたから、指名するわけがないって」

「……そ、そうですか」

「ははは、おかしいね。身に覚えのない指名がお前のところに来る、どうしてそんな矛盾が起こり得るのかな?」

 

 父さんは、笑いながら私を問い詰めてくる。

 表情は笑っているけど、目が全然笑っていない。

 私は、父さんから目を逸らしてそれっぽい言い訳をする事しかできなかった。

 

「て、手違いですよ、多分…職員室のパソコンにバグか何かがあったんじゃないでしょうかね…」

「へぇ、指名は職員室のパソコンで管理しているのか。いいことを知った。後で相澤先生に確認しておこう」

 

 っ…しまった、余計な事言った…!!

 私が思わず顔を引き攣らせて冷や汗を流すと、父さんが笑顔で話しかけてくる。

 

「どうしたのかな、芽華? 顔色が悪いぞ」

 

 父さんは、私の肩に手を置いて、私の顔を覗き込みながら問い詰める。

 私が何も言えずに黙り込んでいると、父さんは私の肩から手を離す。

 

「…まぁ、今日のところはこの辺にしておこう。お前が()()()()()という証拠はどこにも無いからね。手違いで事務所と雄英の間で食い違いがあった、そういうことにしておくよ」

 

 父さんの言葉を聞いて、私は心の中で胸を撫で下ろした。

 だけど父さんの話は、それで終わりじゃなかった。

 

「かといって、正直ね、お前がホークス事務所の皆に迷惑をかけないか心配で仕方ないんだよ。No.3ヒーローの事務所で粗相をしたとあっては、お前のこれからのヒーロー人生に重大な影響を及ぼしかねない。どうしたものか……あ」

 

 父さんは、何かを思いついたように目を見開くと、不気味なくらい爽やかな笑みを浮かべながら席から立ち上がる。

 

「よし、じゃあこうしよう! 職場体験の間、父さんもホークスと一緒にお前とツクヨミくんを指導するというのはどうだろう?」

「は…!?」

「ホークスも、若手なのに二人も面倒を見るのは大変だろうからね。二人で面倒を見た方が効率が良いと思うんだ。もちろん、その間の食費やら水道光熱費やらは私が負担する。結構いい案だと思うんだよなぁ。お前もそう思うだろ?」

 

 笑顔で提案してくる父さんの顔を見て、冷や汗が滝のように流れる。

 最悪……!!

 まさかあと4日間も父さんが付き纏ってくるなんて……!!

 ホークスのチームアップの相手が父さんだなんて、聞いてないよ…!!

 そうだって知ってたら、パソコンのハッキングなんかしてなかったのに…!!

 それとも、まさか、私がホークスのところに行ったのを分かった上で、チームアップの話を取りつけたの…!?

 

 

「それじゃ、ホークス&マーリンのチーム結成に…乾杯!」

 

 その後、私と常闇くんは父さんとホークスにもつ鍋と一口餃子をご馳走になったけど、全然味がしなかった。

 ホークスの隣には、冷酒を飲みながら楽しそうに話している父さんがいるからだ。

 ホークスと一緒にご飯が食べられるなんて、願ってもないシチュエーションだったはずなのに、実の父親という邪魔者がいるだけで、箸が全然進まない。

 私がもつ鍋を全然食べられずにいると、ホークスが話しかけてくる。

 

「どうしたの? スペルソードちゃん、もつ鍋嫌い?」

「いえ…そうじゃないんですけど…」

「じゃあ体調悪い?」

 

 私を心配してくるホークスに対して、私は返答に困っていた。

 お父さんと仲良く呑んでいるホークスの前で、『お父さんに見られていて気分が悪いので食欲がありません』なんて口が裂けても言えない。

 …いや、ここはいっその事、体調不良って事にして抜け出しちゃうのもアリだったりする?

 ホークスは私を心配してくれてるみたいだし、このままホテルまで送ってもらえたりして。

 なんて考えていた頃が、私にもありました。

 

「芽華、体調悪かったら無理して付き合わなくてもいいんだぞ。父さんがホテルに送ってやるからな」

 

 私の考えを見透かしてか、父さんが先手を打ってきた。

 さっきから強いお酒ばっかり飲んでるのに、父さんは酔い潰れるどころか、顔にすら出ていない。

 私とした事が、父さんのザルっぷりをすっかり忘れてた。

 こんなに実の父親を邪魔だって思ったのは、今世で初めてよ…!!

 

 その日の夜、私は父さんが隣の部屋にいるせいで全然眠れなかった。

 明日から4日間ずっと父さんに監視されると思うと、頭が痛くなってくる。

 せっかく推しと一緒に一週間過ごせるチャンスだったのに…

 なんでこんな事になるのよぉ…!?

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 翌日、職場体験4日目。

 

「えー、訳あって職場体験終了までの4日間、僕とホークスの二人体制でツクヨミくんとスペルソードの面倒を見ることになりました。魔導ヒーロー“マーリン”です。そういうわけでよろしくね」

 

 そう言って父さんは、ホークス事務所のサイドキック達と私達の前で改めて自己紹介をした。

 ほんっとマジで最悪……

 何とかして父さんをここから追い出さないと…

 

「と、父さ…ああいや、マーリン…? 急にそんなこと決めて、ホークス事務所の皆さんに迷惑かけちゃわないですか? そんな予定、職場体験の前は無かったでしょ?」

 

 私は、父さんが職場体験中ホークス事務所に居座る事に苦言を呈した。

 『ホークス事務所の皆に迷惑がかかる』、そういう流れに持っていけば父さんがここに居座るのを回避できるかもしれない。

 私が反対すると、父さんは顎に手を当てて考え込む。

 

「確かに、それも一理あるな。ホークス、どう思う? 私がいては迷惑か?」

「いやいや、俺なんか全然未熟者ですんで! ご迷惑じゃなければ、むしろマーリンさんに後進の育て方を教えてほしいくらいです」

 

 父さんが尋ねると、ホークスは爽やかな笑顔を浮かべながら言った。

 うわ…これ、空気を読んでるとかじゃなくて、本当にこれっぽっちも迷惑だと思ってない顔だ…

 ホークス事務所のサイドキックの皆も、反対するどころかむしろ皆チームアップにノリノリだし…

 あとは常闇くん、私の最後の味方は君だけよ!

 

「で、でも…! わたし達、そんなの聞いてないし…常闇くんだって、急にそんなこと言われても困るよね?」

「俺は大歓迎です。マーリンにご師事を戴けるのでしたら、是非」

 

 こんの裏切り者ぉぉぉっ!!!

 普段一匹狼みたいなキャラなのに、何でこんな時に限って皆と同じ意見なのよ!?

 てか父さんのコスチューム見て『ソワッ』とすなよ!!

 常闇くん、まさか個人的に父さんのファンなわけ!?

 

「そういうわけだ芽華、誰も迷惑だとは思っていないみたいだが?」

「…………」

「父さん怒らないから、本当のことを言ってみなさい。父さんはここにいちゃ迷惑か?」

 

 父さんは、爽やかな笑顔を浮かべながら私に尋ねる。

 本音を言えば、すっっっごい迷惑。

 だけどそんなの、皆の前で言えるわけない。

 そんな事言ったら、ホークスからの印象が悪くなるじゃない…!!

 

「……いえ、迷惑じゃないです」

 

 私は、拳を握りしめて搾り出すようにそう言うしかなかった。

 私が言うと、父さんはニッコリと笑う。

 ああもう最悪!!

 『迷惑じゃない』って言っちゃったから、これでもう父さんを事務所から追い払えなくなっちゃったじゃん!!

 父さんの事だから、私が無理矢理父さんを追い払おうとしたら、絶対相澤先生にチクるだろうし…

 

「とりあえず、午前中は今まで通り俺が二人をパトロールに連れて行くんで。マーリンさんとは別行動になりますけど、いいですか?」

「ああ。それじゃあ、午後からは僕が二人を指導しようか。ホークスはそれでいいか?」

「ええ、構いませんよ」

 

 え、待って。

 ちょっと待ってよ、なんか勝手に予定決められてんだけど!?

 私はホークスのところに職場体験に来たのに、何で父さんから指導を受けなきゃいけないのよ!?

 常闇くんも、『思ってたのと違う』とか何とか言えよ!!

 職場体験にクラスメイトの父親が予告なく乱入してるこの状況に納得するな!!

 

「それじゃ、行くよ二人とも」

 

 そう言ってホークスは、私達を連れてパトロールに向かった。

 父さんとホークスが話し合って決めたスケジュールは、午前中はホークスと一緒にパトロール、午後は父さんと一緒にスパーリング。

 しかも午前のパトロール中も父さんが常に監視できる範囲内にいるから、私が父さんに監視されずにホークスといられる時間は実質1秒もなかった。

 おかげで、せっかくホークス事務所に来たのに、4日目は全然楽しめなかった。

 

 ああもう、くそくそくそ!!

 こんなはずじゃなかったのに!!

 父さんが余計な事をしなきゃ、こんな事にならなかったのに!!

 そもそも志村が体育祭でズルをしなかったら……志村さえいなければ、私が優勝して、私が指名を貰ってたはずなのに!!

 

 私は、休憩時間中、志村がお茶子ちゃんや梅雨ちゃんと楽しそうに話しているLINEの画面を睨みつけた。

 私が貰えなかったホークスやエンデヴァーからの指名を蹴っておいて、何リアルに充実した職場体験してんのよ!!

 こんな事になったのも、全部志村のせいよ!!

 

 

 

 ☆破滅まで、残り98日───

 

 

 

 

 




ホークスのチームアップの相手はマーリンでした。
チームアップの話は、転生者に好き勝手させない為に急に取り付けたとかではなく、職場体験の前からホークスとマーリンの間で決めてた事です。
ちなみにマーリンは娘がホークスのファンだって事を知ってたので、自分のところに職場体験に来てちゃんと心を入れ替えたら、ご褒美としてチームアップの会議に娘を連れて行くつもりでいました。
素直にパパの所に行って反省してれば、汚い手を使わなくても普通にホークスに会えてたんですよね。
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