勇学園との合同訓練から数日後。
この日は、相澤先生からの有難いお言葉があった。
「えー… そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らが30日間一ヶ月休める道理はない」
「まさか…」
皆が身構えていると、相澤先生が発表する。
「夏休み林間合宿やるぞ」
「「「「知ってたよーーやったーー!!!」」」」
相澤先生が発表すると、皆が一斉にはしゃぐ。
「肝試そーーー!!」
「風呂!!」
「花火」
「風呂!!」
「カレーだな…!」
「恋バナ……ぐへへ」
「行水!!」
「自然環境ですと…また活動内容が変わってきますね」
「いかなる環境でも正しい選択を…か。面白い」
「寝食皆と!! ワクワクしてきたぁあ!!」
「湯浴み!!」
合宿かぁ、楽しみだなぁ。
あ、でも“個性”伸ばしがあるんだっけ。
そう考えていると、相澤先生が“個性”を使って私達を睨みつけ、全員を黙らせる。
「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は…学校で補習地獄だ」
「みんな頑張ろーぜ!!」
「女子ー!! 頑張れよー!!」
「オマエモナー( ´∀`)」
切島くんと峰田くんが発破をかけると、志村が峰田くんにツッコミを入れる。
そして時は流れ、期末試験1週間前…
「全く勉強してねーー!!」*1
「あっはっはっは」*2
上鳴くんの必死そうな叫び声が、教室に響く。
その後ろでは、三奈ちゃんが呑気そうに笑っていた。
「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねぇーー!!」
「あっはっはっは」
「確かに」*3
「お前らは行事が無くても同じことを言っていたんじゃないか……?」*4
決して高いとは言えない順位の常闇くんも、焦りの表情を見せている。
障子くんは、行事を言い訳にしている上鳴くんと三奈ちゃんに冷静なツッコミを入れていた。
「中間はまーー入学したてで範囲狭いし、特に苦労無かったんだけどなーー…」*5
「うん……」*6
「行事が重なったのもあるけどやっぱ、期末は中間と違って……」
「演習試験もあるのが辛え所だよなぁ」*7
「「中間11位!?」」
砂藤くんと口田くんの会話に割り込む形で、峰田くんがドヤ顔する。
「あんたは同族だと思ってた!」
「お前みたいな奴は馬鹿で初めて愛嬌出るんだろが…! どこに需要あんだよ…!!」
「世界かな」
峰田くんは、完全に調子に乗っていた。
峰田くん、地味に頭が良いんだよね。
「芦戸さん、上鳴くん! が…頑張ろうよ! やっぱ全員で林間合宿行きたいもんね!」*8
「うむ!」*9
「普通に授業受けてれば赤点は出ねえだろ」*10
「言葉には気をつけろ!!」
緑谷くん、飯田くん、轟くんが声をかけると、上鳴くんが胸のあたりを押さえて苦しむ。
「お二人共、座学なら私お力添え出来るかもしれません」*11
百ちゃんが、上鳴くんと三奈ちゃんに声をかける。
「「ヤオモモーーー!!!」」
百ちゃんが言うと、二人が狂喜した。
すると、響香ちゃん、瀬呂くん、尾白くんの三人が八百万さんに声をかける。
「お二人じゃないけど… ウチも良いかな? 二次関数応用ちょっと躓いちゃってて………」*12
「わりぃ俺も! 八百万古文わかる?」*13
「俺も」*14
「良いデストモ!!」
クラスメイトに頼られて、百ちゃんはとても嬉しそうにしていた。
「では週末にでも私の家でお勉強催しましょう!」
「まじで!? うんヤオモモん家楽しみー!」
「ああ! そうなるとまず、お母様に報告して講堂を開けていただかないと…! 皆さんお紅茶はどこかご贔屓ありまして!? 我が家はいつもハロッズかウェッジウッドなのでご希望がありましたら用意しますわ!」
なんか百ちゃん、すごい気張ってんなぁ……
「必ずお力になってみせますわ…」
張り切っている百ちゃんを見て、上鳴くんと響香ちゃんはほっこりしていた。
「なんだっけ? いろはす? でいいよ」
「ハロッズですね!!」
勉強会かぁ……
私は、転生チートのおかげで勉強はメチャクチャ出来るからね。
ここで教える側に回れば、株を上げるチャンス!
「百ちゃん、一人だけじゃ負担大きくない? わたしも協力するよ」*15
「まあ、ありがとうございます神剱さん!」
私が言うと、百ちゃんが大喜びする。
「そっか、耳郎ちゃんと芦戸ちゃんはヤオモモちゃんと神剱ちゃんが教えるんだね。じゃあお茶子ちゃん、梅雨ちゃん、葉隠ちゃんはアタシん家で勉強会する?」*16
「え、いいの? やった!」*17
「ありがたや……」*18
「ケロケロ。名案ね、離珠奈ちゃん」*19
透ちゃん、お茶子ちゃん、梅雨ちゃんの三人は、志村の家で勉強会をする事にしたらしい。
「ワリィ爆豪、数学わかるか!?」*20
「わかるわてめぇ教え殺したろか」*21
「おお! 頼む!」
そして切島くんは、原作通り爆豪くんに勉強を教わる事にしたようだ。
◇◇◇
そして昼休み。
私は、いつものように食堂でお昼ご飯を食べた。
今日はいつメンに加えて、梅雨ちゃんと透ちゃんも一緒だ。
4:4の席しか取れなかった関係で、私は轟くんの隣の席だ。やったね。
「普通科目は授業範囲内からでまだなんとかなるけど…演習試験が内容不透明で怖いね…」
「突飛な事はしないと思うがなぁ」
「普通科目はまだ何とかなるんやな…………」
緑谷くんが言うと、飯田くんも心配そうに言った。
緑谷くんがサラッと『普通科目は何とかなる』と言ったので、お茶子ちゃんはかなりショックを受けていた。
「一学期でやった事の総合的内容」
「とだけしか教えてくれないんだもの、相澤先生」
「戦闘訓練と救助訓練、後はほぼ基礎トレだよね」
「できることやっとけば大丈夫じゃない? ウチ庭あるから、トレーニングに使いなよ」
「庭……!?」
「うん。放ったらかしにしてるからボーボーだけど」
「離珠奈ちゃん家て、実はお金持ち…?」
しれっと出た志村の家情報に、女子の皆が驚いている。
そんな中、後ろからB組の声が聴こえてくる。
「おやおや? あれはA組じゃないか」
「ちょっと物間、何しに行くつもり?」
「いやぁ、A組といえば体育祭といい職場体験といい大活躍じゃないか。でも最近ちょっと調子に乗りすぎてるから、身の振り方ってものを教えてあげようと思って──」
「やめろ!」
「ウッ」
私達にちょっかいをかけようとしていた物間くんに対して、一佳ちゃんが手刀を喰らわせて気絶させる。
ちょうどその時、私達の近くの席が空いたので、一佳ちゃんがそこに物間くんの分のプレートを置いた。
「ここ、座っていい?」
「B組の…! 拳藤さん!」
「ええと…後ろにいるのは、物間くん? どしたの?」
「ああ…こいつ、あんたらにちょっかいかけようとしてたからさ、シバいた」
「「「シバいた!!?」」」
一佳ちゃんがサラッと言うと、皆がギョッとする。
「あんたらさ、さっき期末試験が不透明とかって言ってたよね。実技は対ロボットの実戦演習らしいよ」
「え!? 本当!? なんで知ってるの!!?」
「私知り合いに先輩がいるからさ、聞いた。ちょっとズルだけど」
「ズルじゃないよ! そうだ、きっと前情報の収集も試験の一環に織り込まれてたんだ。そっか、先輩に聞けば良かったんだ。何で気付かなかったんだ…」
「………!?」
「出久、声出てんぞ」
「あっ……ごめんなさい」
緑谷くんがブツブツ言うと、一佳ちゃんがドン引きした。
志村が緑谷くんに言うと、緑谷くんはハッとして口で手を押さえた。
「馬鹿なのかい、拳藤? 折角の情報アドバンテージを!! こここそ憎きA組を出し抜くチャンスだったんだ…」
「憎くはないっつーの」
目を覚ました物間くんが文句を言うと、一佳ちゃんが再び首に手刀を叩き込んで黙らせた。
◇◇◇
その後、A組の教室では。
「んだよロボならラクチンだぜ!!」
「やったあ!」
緑谷くんから試験内容を聞かされた上鳴くんと三奈ちゃんは、呑気に喜んでいた。
その様子を、障子くんが呆れながら見ていた。
「お前らは対人だと“個性”の調整大変そうだからな……」
「ああ! ロボならブッパで楽勝だ!!」
「あとは勉強教えてもらって」
「これで林間合宿バッチリだ!!」
三奈ちゃん、上鳴くん、瀬呂くんの三人が盛り上がっていると、志村が苦笑いを浮かべながら口を開く。
「……ごめん、あのさ。今まで黙ってたんだけど、実はアタシも先輩から、実技がロボ演習だって聞いてたんだ」
「「えーっ!?」」
志村が重要な情報をカミングアウトすると、お茶子ちゃんと透ちゃんが驚く。
「離珠奈ちゃん、何でそんな大事なこと教えてくれなかったの!?」
「だって、余計なこと言って皆を混乱させたくなかったから」
「余計なこと?」
透ちゃんが尋ねると、志村はどこか歯切れが悪そうに言った。
「その……言いにくいんだけど、この学校のことだから、先輩も巻き込んでアタシらにデマ流したりとか…なくはないと思うんだよね」
「確かに…なくはないかもね」
「そうだとすると、考えうる試験形式は、入試の時みたいな、先生を
「ちょっと待て、それって難易度高すぎねえか!?」
「どうすればいいの!?」
志村が予想を語ると、瀬呂くんと三奈ちゃんが狼狽える。
まあ志村の予想は、8割方合ってるんだよね。
下手に原作を壊したくないから、私からは何も言わないけど。
なんて考えていると、志村がニヤリと笑って口を開く。
「ひとつだけあるよ、確実に赤点回避できる方法」
「えっ、本当!?」
「うん。ただ、この方法だとコピー代嵩むけど大丈夫?」
「「大丈夫大丈夫!!」」
志村が言うと、上鳴くんと三奈ちゃんがすごい勢いで首を縦に振る。
赤点を回避できるなら、コピー代なんて安いものだという事だろう。
二人の返事を聞いて志村は、サムズアップをすると、緑谷くんに声をかける。
「あのさ出久、ヒーローノートあったよね? クラス皆の分」
「えっ? う、うん」
「悪いんだけど、ちょっと貸してくんない? 皆を助けるためだと思って、お願い」
「え、いいけど…」
「ありがと」
緑谷くんから先生達の分析ノートを借りた志村は、その場でノートをパラパラと速読し、ノート一冊一冊に付箋を貼りつける。
付箋を貼り終えた志村は、上鳴くんと三奈ちゃんにノートを渡した。
「はい、これ出久の分析ノート。時間が無いから、試験日までに対処できるところだけピックアップしておいた。付箋貼ったページ自分用にコピーしてよく読んで。そうすれば、少なくとも赤点になることはないと思う」
「女神…!!」
「ありがとうリズナぁ〜!!」
「お礼なら出久に言いな〜」
上鳴くんと三奈ちゃんが泣きながら大喜びすると、志村が手をヒラヒラ振る。
他の皆も志村に頼みに行く中、峰田くんは土下座して頼み込むフリをして志村のスカートの中を覗いていた。
「何で短パン穿いてんだよ…せめてブルマかスパッツにしろよ…!!」
峰田くんが志村にセクハラをすると、梅雨ちゃんが峰田くんを舌で引っ叩く。
ブレないな峰田くん…
☆破滅まで、残り60日───
今回の話の中でチラッと出てきた一般入試ですが、もう1人の転生者は雄英の教師でもあったので、彼女の提案で本作では有用で実戦向きの“個性”を取りこぼさないための合理的な試験になっています。
内容としては、仮免試験の二次試験に近いものになっています。
具体的には、
・筆記試験の成績上位10%のみが実技試験を受けられる
・出願時に提出した“個性”届をもとに、できるだけ“個性”を活かしやすい試験会場に割り振られる
・受験生は、試験会場から要救助者に見立てたマネキンを探し出して救助エリアへ運ぶ。制限時間は20分間
・マネキンを1体救助エリアに運べば+2ポイント(A)
・救助のサポートをすれば、マネキン1体につき+1ポイント(B)
・試験時間半分経過時点で試験官が各会場に1人ずつ
・試験官を行動不能に追い込めば+20ポイント(C)
・戦闘のサポートをすれば+10ポイント(D)
・制限時間内に会場内の全てのマネキンを運び終えれば、ボーナスで全員に+5ポイント(E)
・最終的に、試験中の行動がヒーローとして正しかったかどうかが1〜5点の5段階で評価される(F)
・(A+B+C+D+E)× Fの成績上位36名(本年度は例外的に37名)が合格
◆中間テスト順位
1位 神剱芽華
2位 八百万百
3位 志村離珠奈
4位 飯田天哉
5位 爆豪勝己
6位 緑谷出久
7位 轟焦凍
8位 蛙吹梅雨
9位 耳郎響香
10位 尾白猿夫
11位 峰田実
12位 障子目蔵
13位 口田甲司
14位 砂藤力道
15位 麗日お茶子
16位 常闇踏陰
17位 切島鋭児郎
18位 葉隠透
19位 瀬呂範太
20位 芦戸三奈
21位 上鳴電気