時は流れ、21XX年1月下旬。
私は、推薦入試の実技入試を受けに雄英に来ていた。
推薦入試は、筆記、実技、面接の三つの試験で評価される。
前日に受けた筆記試験は、自己採点で満点近い点数を取れていた。
あとは今日の実技でトップの成績を取れば、多分合格できると思う。
6人ずつバスで移動して、試験会場に到着した。
ジェットコースターや滝が流れる崖、ロープが張り巡らされた岩山などなど、アトラクションのようなコースが目の前にある。
試験官のミッドナイトが、ピシャッと鞭を打ちながら説明をした。
おお、生のミッドナイトだ…
さすがアニメのキャラ、現実にはまずいない超美人だ。
「実技は3kmマラソンよ! 今からこのコースを走ってもらうわ。ただし走っても完走できないコースになってるから、“個性”を上手く使ってゴールしなさい♡」
そう言ってミッドナイトが、色っぽくウインクする。
ゲートに設置された赤いランプが、1つずつ消える。
原作だと推薦組の女子は、八百万さんと、あともう一人B組の子が受かってるんだよね。名前知らないけど。
悪いけど、私が推しと一緒に過ごす為にも、B組の子には落ちてもらおう。
なんて考えていると、ランプが全部消え、それと同時に他の5人が走り出した。
前を走る他の5人を見て、思った。
ああ、この試験楽勝だな。
マラソンだったら、あの剣が使えそうかな。
私は、右手を前に出し、何もない空間から剣を生み出した。
刃の部分に雷をイメージした模様がついた剣だ。
刃の部分が白く輝いている剣を握ってエネルギーを込めると、剣の輝きが黄色に変わる。
次の瞬間には、体の周りに電気が迸り、白銀色の髪が鮮やかな黄色に変化した。
雷のエネルギーを吸収した、『
この剣を出している間は、雷や電気を操る事ができる。
イオノクラフト効果で体を数センチ浮かび上がらせ、雷の速度でコース上を一気に駆け抜ける。
最初に5秒くらいロスしたけど、ダントツの1位でゴールした。
「え、嘘…!?」
私がゴールすると、タイムを測っていたミッドナイトが目を見開く。
今回のトップどころか、歴代トップの成績のはず。
そんでもって、次は面接。
面接官は、根津校長、相澤先生、あとB組のブラドキング先生の三人だった。
なんで雄英を志望したのか、入学したらどんなヒーローになりたいのかを聞かれた。
私は、面接対策として事前に用意しておいた答えを言った。
実技であれだけの好記録を叩き出したんだし、よっぽど変な事言わなきゃ問題ない。
「そろそろ入試の結果発表の日だな」
「芽華、自信はどうですか?」
「んー、どうだろうね。多分受かってると思うけど」
試験から一週間後、私は両親と先日の推薦入試の話をした。
ドキドキしながら待っていると、家政婦の実田が雄英からの封筒を持ってくる。
封筒の中には、書類と小型のプロジェクターが入っていた。
裏のスイッチを押してプロジェクターを起動させると、映像が空中に映し出される。
映像の中で、ミッドナイトがセクシーポーズをしている。
『はぁい、神剱芽華さん♡ この一週間、ドキドキしながら過ごしてたかしら? 早速合否の発表しちゃうわよ。筆記は満点。面接も問題ナシ。そして実技は、過去最高記録だったわ。文句なしの合格よ』
結果を発表したミッドナイトは、私に向かって手を差し伸べてきた。
『ようこそ、ここがあなたのヒーローアカデミアよ』
そこで映像が終わった。
振り向くと、父さんがすごく嬉しそうな顔をしていた。
「やったよ、父さん、母さん!」
「ああ、今年からお前も父さんの後輩だな!」
「良かったわね、おめでとう」
私は父さんに抱きついて、一緒に合格を喜んだ。
父さんも母さんも、私の合格を祝福してくれた。
これで4月から、推しと一緒に雄英に通える!
逆ハー目指して頑張るぞ〜!
☆破滅まで、残り204日───
◆◆◆
相澤消太 side
少し遡り、推薦入試終了直後。
「どうしたものか…」
「実技のタイムは、僅かに取蔭の方が上ですが…」
俺達教師陣は推薦入試の採点をしていた。
男子の方は、2位の夜嵐が辞退したので、1位の轟と3位の骨抜が合格。ここまではいい。
問題は、女子の方だ。
1位の神剱は言うまでもなく合格として、取蔭と八百万、もう一人の合格者をどちらにするかが問題だった。
実技の結果は100分の1秒の差で取蔭の方が上だが、筆記と面接の評価は八百万の方が上だ。
例年なら実技の結果が優先されるんだが、八百万は筆記と面接で満点近い点数を叩き出しているし、実技であと一歩及ばなかったから不合格だと切り捨てるには惜しい成績だった。
どちらを合格にするべきか、教師陣の間でも見事に意見が真っ二つに割れた。
ったく、ガヤガヤと…全く合理的じゃない…
「簡単な事さ! どちらも合格にすればいいのさ!」
俺達が悩んでいると、根津校長が手を挙げて発言する。
確かに、二人とも合格にしてしまえば、この問題は解決するが…
「しかし校長、推薦入試の合格枠は男女2名ずつと決まっています。合格者を一人増やしてしまうと、一般枠から一人減らさなくてはいけなくなるのでは?」
「いいや、一般枠は減らさない。本来受かるはずだった子を落とすのは、あってはならないことなのさ。来年度の1年ヒーロー科は、1クラス21人にするのさ!」
「ですが…教材などはもう既に20人学級の想定で用意されています。今から1人増やすのは難しいかと…」
「大丈夫、諸々の問題は全部僕が対処しておくよ。それに、クラスの人数が増えたケースは前例があるさ」
校長は、思い切った決断の正当性を示す事で、俺達を説得した。
校長がそう言うならという事で、意見がまとまった。
なんか皆納得しているようだが…担任を請け負う側の負担ってもんを、少しは考えてもらいたいもんだ。
今回出てきた剣の解説
◆『雷剣』
能力:雷や電気に関する能力が使える
イメージカラー:黄色
剣の形状:稲妻模様が刻まれたバスタードソード