500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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第28話 残り50日

 百ちゃんの家での勉強会から時は過ぎ、期末テストの日が来た。

 まずは、3日間にわたって実施された普通科目。

 普通科目は、転生者特典のおかげで1問も間違えずに解けた。

 勉強会でしっかり百ちゃんに教えてもらった上鳴くんと三奈ちゃん、そして志村の家で勉強会をしていた透ちゃんは、解けた手応えがあったらしく、大喜びしていた。

 そして、演習試験当日。

 

「それじゃあ演習試験を始めていく」

 

 演習場には、相澤先生を初めとする雄英の教師陣達が横一列に並んでいた。

 相澤先生は、教師陣と対峙する形で並んでいた私達に忠告をする。

 

「この試験でも勿論赤点はある。林間合宿行きてぇならみっともねぇヘマはするなよ」

「先生多いな…?」

「5…6……8人?」

 

 響香ちゃんがふと疑問を抱き、透ちゃんが教師陣の人数を数える。

 

「諸君なら事前に情報仕入れて何するか薄々分かってるとは思うが…」

「僕から説明しちゃうのさ!」

 

 相澤先生の捕縛武器がモゾモゾと動いたかと思うと、校長先生がヒョコッと飛び出してきた。

 

「校長先生!」

「諸君らにはこれから二人一組(チームアップ)でここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう! 人数の関係上、一組は三人一組(スリーマンセル)だけどね!」

 

 校長先生が説明すると、お茶子ちゃんが目を見開く。

 

「先…生方と…!?」

「ちょっと待ってください、先輩からはロボ演習だって聞いてたんですけど?」

「もちろんそれも仕込みだ。お前らが情報収集するのを見越して、デマを流してもらった。事前に試験内容を知ってたら、試験にならねえからな。合理的虚偽ってやつさ」

「やっぱりか、ねじれ先輩……」

 

 相澤先生が意地悪な笑顔を浮かべながら言うと、志村が顔を引き攣らせる。

 上鳴くんと三奈ちゃんは、目元をひくつかせていたけど、原作ほど狼狽えてはいない。

 っていうか、志村と仲が良い先輩って、ねじれ先輩だったんだ。

 

「尚、チームと対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度………諸々を踏まえて、独断で組ませてもらったから発表してくぞ。轟と神剱と八百万がチームで、俺とだ」

「「!!」」

 

 は?

 轟くんとチームで、しかも相澤先生が相手?

 えっ、ちょっと待って、神采配かよ。

 やば、顔が緩んできた。

 なんて考えていると…

 

「そして志村と緑谷がチーム」

「「「!?」」」

「で…相手は──…」

「私がする!」

 

 志村達の後ろには、オールマイトが立っていた。

 

「協力して勝ちに来いよ、お二人さん!!」

 

 オールマイトが言うと、志村達は互いの顔を見合った。

 

 

 対戦カード

 

 芦戸三奈&上鳴電気vs根津校長

 蛙吹梅雨&常闇踏陰vsエクトプラズム

 飯田天哉&尾白猿夫vsパワーローダー

 麗日お茶子&爆豪勝己vsラウドクラウド

 切島鋭児郎&砂藤力道vsセメントス

 口田甲司&耳郎響香vsプレゼント・マイク

 障子目蔵&葉隠透vsスナイプ

 瀬呂範太&峰田実vsミッドナイト

 轟焦凍&神剱芽華&八百万百vsイレイザーヘッド

 志村離珠奈&緑谷出久vsオールマイト

 

 

「うわぁ…」

「因縁のペアだ……」

「うっせぇ黙ってろ!」

 

 響香ちゃんと上鳴くんがお茶子ちゃんと爆豪くんを睨むと、爆豪くんが怒鳴る。

 お茶子ちゃんは原作通り体育祭で爆豪くんにコテンパンにやられているので、皆は爆豪くんとペアになったお茶子ちゃんを心配していた。

 

「嘘だろ…!?」

「お前ら、オールマイトが相手かよ…」

「HAHAHA!! 死んできます!!」

 

 切島くんと瀬呂くんが心配そうに志村と緑谷くんを見る中、志村がサムズアップをしながら満面の笑みで諦め発言をするので、その態度にイラっときたらしい爆豪くんが志村の頭にコスチュームのトゲをぶっ刺した。

 

「それぞれステージを用意してある。10組一斉スタートだ。試験の概要については各々の対戦相手から説明される。俺のところは三人だから、制限時間などに一部変更がある。変更内容の詳細は後ほど説明する。移動は学内バスだ。時間が勿体無い。速やかに乗れ」

 

 相澤先生が説明すると、皆バスに乗り込む。

 その時、爆豪くんが緑谷くんと志村に話しかける。

 

「おいデク、デカ女」

「何、かっちゃん?」

「負けやがったらぶっ殺す」

「……うん!」

「お前もな」

 

 三人は、お互いに拳を突き合わせてから、それぞれバスに乗り込んだ。

 私も、轟くんと百ちゃんと一緒に、相澤先生の運転するバスに乗った。

 はぁ〜、推しが二人もいる空間…最高かよ。

 なんて考えつつ、試験に使えそうな剣を創造しようとすると、相澤先生が話しかけてくる。

 

「ああそうだ神剱、八百万」

 

 相澤先生は、振り向きざまに私と百ちゃんに“個性”を発動した。

 

「今からアイテムや剣を創っておくのはナシだ。実戦じゃ事前準備ができないこともある。“個性”を使っていいのは、試験開始後からだ。いいな」

「……はい」

「承知しましたわ」

 

 相澤先生が、“個性”を使いながら私と百ちゃんに念押しする。

 バスが試験会場に着いた。

 

「ここが我々の戦うステージだ」

 

 私達が連れて来られたのは、住宅地を模した試験会場だった。

 相澤先生は、試験の説明を始めた。

 

「それではこれより演習試験を始める。制限時間は本来30分だが、このチームは三人なので、通常の試験時間より10分短い20分とする。君らの目的は、『このハンドカフスを俺にかける』or『誰か一人がこのステージから脱出』。ただし、三人のうち二人以上が条件を満たさなければクリアとはならない」

「なんか戦闘訓練に似てるね」

「逃げてもいいんですか…?」

「ああ。今回は極めて実践に近い状況での試験。俺を(ヴィラン)そのものだと考えろ。会敵したと仮定し、そこで戦い、勝てるならそれで良し。だが実力差が大きすぎる場合、逃げて応援を呼んだ方が賢明な場合もある…そう、君らの判断力が試されるってわけだ」

 

 私と百ちゃんが質問すると、相澤先生が答える。

 そこで私は、原作のセリフを思い出して質問した。

 

「でも、そんなの逃げの一択じゃないですか?」

「だろうな。そこで、サポート科にこんな物作ってもらいました」

 

 そう言って相澤先生は、バングルのようなものを取り出す。

 

「何ですかそれ?」

「錘だ。これを体重の約半分を装着する。ハンデってやつさ。古典だが、動き辛いし、体力は削られる」

 

 相澤先生は、バングルの形をした錘を両手首と両足首に装着した。

 説明を終えた相澤先生は、先にフィールドに入っていく。

 しばらくしてから、私達も試験会場に入った。

 

『皆位置に着いたね。それじゃあ今から雄英高一年期末テストを始めるよ! レディイイーーーー…ゴォ!!』

 

 スタートと同時に、事前の打ち合わせ通りに、百ちゃんはマトリョーシカや武器を創造する。

 私は相澤先生の居場所を特定する為に、索敵に使えそうな剣を出そうとした。

 だけど、できなかった。

 

「……あれっ?」

「どうした?」

「剣が出ない…!」

 

 私の言葉を聞いて、轟くんが上を見る。

 

「行け、神剱、八百万!!」

「えっ!?」

「いいから逃げろ!!」

 

 轟くんが、私達を相澤先生から庇うように立ちながら叫ぶ。

 そうだ、ゲート…!!

 私と百ちゃんは、二手に分かれて逃げようとした。

 だけどその時、相澤先生の捕縛布が私の腕に巻き付く。

 

「きゃっ!」

 

 相澤先生は、私を引き寄せると、私の顔面目掛けて掌底打ちを繰り出そうとしてくる。

 先生の攻撃を見切った私は、父さんに教わった格闘術で先生にカウンターを入れようとする。

 だけど私がカウンターを入れる直前、相澤先生は掌底打ちをせずに、半歩後ろに下がった。

 

「えっ…!?」

 

 先生に予想外の動きをされて、私のカウンターは完全に殺され、私が打ったパンチは空を切る。

 その結果、私の顎に重い一撃がヒットした。

 

「がはっ……」

 

 顎に一撃入れられた私は、その場に膝をついた。

 うぅ、気持ち悪い…頭がぐわんぐわんする……

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

轟焦凍 side

 

「神剱さん!!」

 

 神剱が相澤先生に倒されると、八百万が相澤先生目掛けてマトリョーシカを投げつける。

 俺が目を瞑り耳を塞ぎながら回避行動を取ると、その直後、スタングレネードの激しい光と音が炸裂する。

 すると相澤先生の“個性”が解けたので、俺は相澤先生に右側の冷気で攻撃を仕掛ける。

 だが先生は、俺の攻撃を難なく避ける。

 

 くそっ、開始時点で既にマークされてたのか…!!

 試験開始と同時に俺達を見つけた時点で、神剱の“個性”だけ消したのは、接近を俺達に悟らせない為か…!?

 

 神剱の方を見ると、神剱は地面に蹲ったまま動かなかった。

 大したダメージも無えのに、何で起き上がらねえ!?

 

「おい、神剱!! さっさと起きろ!! 何でもいいから剣を創れ!!」

「無駄だ。脳を揺らしたからな。しばらくは復帰できないよ。こいつに一度でも“個性”の発動を許せば、簡単にクリアされてしまうからな。試験終了までこうしててもらう」

 

 そう言って相澤先生は、神剱を捕縛武器で拘束する。

 すると八百万が、その隙に創造したサブマシンガンを相澤先生目掛けて撃ちながら口を開く。

 

「試験終了まで“個性”を封じ続けるなんて、そんなことできるはずないでしょう…!?」

「ああ。だからこうする」

 

 相澤先生は、八百万の問いかけに一切動揺せずに答えると、神剱の体を捕縛武器で引き寄せて盾にした。

 

「なっ……!?」

 

 相澤先生は、神剱を盾にしたまま家の屋根の上へ飛び上がると、ゲートのある方角へ一直線に走り出した。

 

「これで俺はいつでもこいつを視界に入れられる。俺はこいつを拘束したまま、ゲートの前から動かない。ゲートを潜るにしろ、俺にカフスをかけるにしろ、必ずお前らは俺の視界に入る。さあどうする?」

「「っ……」」

 

 相澤先生は、そのままゲートに向かって走っていく。

 俺は、神剱を連れて逃げる相澤先生を追いかけようとした。

 すると、その時だった。

 

「ダメです、轟さん!!」

 

 八百万が、俺の左腕を掴んでゲートとは逆方向に走り出した。

 

「考えがありますの! こちらへ!」

 

 そう言って八百万は、俺を連れて物陰に隠れた。

 

「八百万、早くしねえと相澤先生が……」

「追いかけても無駄ですわ。今から追いかけても、先程のように神剱さんを盾にされてしまえば、こちらは迂闊に手を出せません。そうでなくても、十分な装備が無いまま相澤先生に挑んでも勝ち目はありませんわ」

「けど先生にゲート前に居座られちゃ、ゲートを潜ろうにも、カフスをかけようにも、必ず先生の視界に入る」

「逆に考えるんです。相澤先生がゲート前から動かないということは、先生を探す手間が省けるということ。時間さえあれば、こちらにも勝機はありますわ」

 

 八百万は、説明しながらもアイテムを次々と創造した。

 創り出された数々のアイテムを見て、俺は気付いた。

 八百万は、さっき言ってたオペレーションをやるつもりだ。

 

「八百万。お前がさっき言ってたオペレーション、上手くいきそうか?」

「ご安心を。私、こうなることは既に想定内ですのよ」

 

 俺が尋ねると、八百万は自信満々に微笑む。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

相澤消太 side

 

 三人の中で一番厄介な神剱を初手で潰した俺は、いつでも視界に入る電線に吊るし、電柱の上に登って上から試験会場全体を索敵した。

 俺は、電柱に縛りつけられて動けない神剱に目をやる。

 

 轟は、一通りは申し分ないが、搦手よりは力押しを好む傾向にある。

 八百万は、“個性”が万能な反面、接近戦に弱い……と思っていたが、さっきのサブマシンガンの生成速度には正直驚かされた。

 接近戦に持ち込まれた場合を見越して生成速度を上げる訓練をしていたとは、合理的な判断だ。

 

 問題は神剱だ。

 こいつは、推薦入試を過去最高記録で合格した才女だ。

 “個性”や座学の成績はもちろん、身体能力も、志村や芦戸に比べれば劣るが、例年の合格者のレベルを考えれば十分高い水準にあると言える。

 だがこいつには、ヒーロー科で生き残るには致命的な欠点がある。

 立ち回りの脆弱さ、そして精神的な不安定さだ。

 定石通りの動きしかできず、その定石が根底から覆されると途端に冷静さを失う。

 きっとこいつは、“個性”と家庭環境に恵まれ、今まで挫折を知らずに生きてきたんだろう。

 なまじ才能があるだけに、傲慢になっているように見受けられる。

 そういう強くて万能な“個性”を持つ奴ほど、“個性”に振り回されない為の対策が必要なのに、こいつはその対策を一切していない。

 捕まった時点で何かしら抵抗してくると思っていたんだが、自分では何もせずただただ轟と八百万が来るのを待っているだけ。

 俺が拘束したのが他の二人だったら、絶対諦めずに勝てる可能性を探し続けていただろう。

 そもそもあいつらなら、こんなにあっさり捕まらなかっただろうがな。

 なんて考えているとだ。

 

「っ!?」

 

 突然、フィールドが一瞬にして凍りつく。

 轟の仕業か…

 だがこれは、氷結とすら言えないような、地面や住宅を薄く覆うだけの霜だ。

 こんなもんで俺を足止めできない事はわかっているはず。

 一体何がしたい?

 俺が轟の攻撃の意図を読めずに眉を顰めたその時、二つの人影が曲がり角から出てくる。

 

「布かよ」

 

 俺の“個性”の対策なのか、二人は全身を黒い布で覆って移動していた。

 確かに見えなきゃ消せねえが……

 

「デメリットのがデカいだろそれ」

 

 屋根から飛び降り、手にした捕縛武器で一気に二人を拘束する。

 だがその時、ガシャン! と、人の頭がぶつかったのとは違う音が聴こえる。

 

「マネキンかい」

 

 捕縛武器を緩め、布を取り払うと、頭部が壊れたマネキンが二つ見えた。

 そして、ちょうどマネキンがあった位置には、台車付きのガトリング砲を抱えた八百万がいた。

 

「相澤先生、お覚悟を!!」

 

 俺が回避行動を取った直後、無数のゴム弾が放たれる。

 そしてそれとほぼ同時に、別の方向から火球が飛んでくる。

 轟か……

 居場所はわかってるが、八百万の攻撃を回避しつつ、神剱を視界に入れながらだと、“個性”を消してる余裕が無い。

 せめて八百万の攻撃が止めば……

 俺は、常に神剱を視界に入れつつ、ゴム弾と火球を回避した。

 休む暇もなく襲ってくる弾幕を避けている間に、婆さんからのアナウンスが鳴り響く。

 

『報告だよ。条件達成最初のチームは、麗日・爆豪チーム! それから、志村・緑谷チームもたった今クリアだよ!』

 

 条件達成最初のチームは麗日と爆豪…そしてそれとほぼ同時に志村と緑谷もクリアか。

 オールマイトと、そのオールマイトを除けば教師陣の中で最強の白雲を相手に最速でクリアするとは、大したもんじゃないか。

 …っと、他のチームの事を考えるのは後だ。

 今はこっちに集中しねえとな。

 なんて考えていると、八百万の攻撃の密度が落ちてきた。

 

「弾切れか」

 

 俺は、八百万の弾切れの瞬間を狙って、轟を視界に入れて“個性”を消す。

 神剱が視界から逸れたが、神剱は既に俺が視てある。

 瞬きをする前に神剱をもう一度入れれば問題ない。

 そして、捕縛武器を両手に構えながら、轟に飛びかかる。

 

「悪くない作戦だったが、詰めが甘かったな」

 

 そう言って、轟を捕縛しようとする。

 だが轟は、やけに落ち着いていた。

 

「いいえ、俺達の粘り勝ちです」

 

 轟がそう言った、その時。

 俺は、すぐに異変に気付いた。

 

「何だこれは…?」

 

 少し離れた所には、濃い霧が立ち籠めていた。

 霧……?

 何で急に……

 ……!

 まさか…

 

「そういうことか…」

 

 轟が大雑把な攻撃をしてきた理由が、ようやくわかった。

 このフィールドは、さっきの氷結で氷に覆われている。

 そこに炎熱を放てば、地面や住宅を覆う氷の一部が蒸発して水蒸気が発生し、冷えて凝結する。

 霧の発生場所は、ちょうど神剱がいる場所の真下だ。

 俺を狙って火球を打っていたのは、これに気づかせない為のカモフラージュ。

 最初からこれが狙いだったのか…

 

 全て気付いた時には、もう手遅れだった。

 突然、強烈な眠気が襲いかかる。

 さっき神剱を吊るした場所を振り向くとそこには、ウルミを手に持った神剱がいた。

 そこで俺の意識は、完全に途絶えた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

神剱芽華 side

 

 轟くんが発生させた霧のおかげで“個性”が使えるようになった私は、『眠剣(スリープソード)』で相澤先生を強制的に眠らせた。

 眠って動かなくなった相澤先生に、轟くんと百ちゃんがカフスをかける。

 すると、その直後だった。

 

『轟・神剱・八百万チーム、試験クリアだよ』

 

 リカバリーガール先生のアナウンスが響き渡る。

 試験は無事クリアしたので、私は『眠剣(スリープソード)』を解除して相澤先生を起こした。

 

「やった、クリアできた!」

 

 私が試験をクリア出来た事を喜ぶ中、轟くんと百ちゃんは私を見て何とも言えない表情を浮かべていた。

 

「轟くん、百ちゃん、どうしたの?」

「……いや、別に」

 

 私が訊くと、轟くんは私からふいっと視線を逸らす。

 ようやく目を覚ました相澤先生は、百ちゃんに話しかける。

 

「八百万、ひとつ聞きたい。俺の視界を塞ぎたいなら、さっきみたいにスタングレネードでも投げれば良かったはずだ。何故あんな方法を取った?」

「その方法で目眩しをしようにも、おそらく同じ手は二度通用しなかったでしょう。目眩しに使うなら私の“個性”ではなく、轟さんの“個性”だと考えました。先生なら、不確定要素の多い私のアイテムや神剱さんの剣に対しては警戒しても、読みやすいシンプルな攻撃はさほど警戒しないだろうと考え、轟さんにあえて単調な攻撃をさせて先生を欺く作戦を思いついたのですわ」

「俺の考えを全部計算した上での作戦ってわけか…大したもんだ」

「ええと…実は、ひとつだけ想定外だったことがあるのですが……いえ、何でもありませんわ」

 

 素直に称賛する相澤先生に対して、百ちゃんはどこか歯切れ悪そうに言った。

 そんな百ちゃんに怪訝そうな表情を浮かべつつ、相澤先生が立ち上がる。

 

「まぁいい。試験の採点は明日発表する。ドキドキしながら待っとけ」

 

 そう言って相澤先生は、ひと足先に試験会場から去っていった。

 こうして、私達の試験は無事終わった。

 私達もバスに戻る途中、少し気になった事があったので、私は百ちゃんに話しかけた。

 

「あの、百ちゃん。ひとつだけ想定外だったことって、何?」

 

 私が尋ねると、百ちゃんが私の方を振り向く。

 

「……神剱さん。散り散りになる前に私が渡したアイテム、どうしたんですか?」

 

 アイテム……?

 あっ、そういえば相澤先生に奇襲される前、百ちゃんに咄嗟にアイテムを渡されてたっけ。

 

「…ごめん、忘れてた…」

 

 私が謝ると、百ちゃんが呆れ顔でため息をつく。

 轟くんも、明後日の方向を見ながら頬を掻いていた。

 で、でもクリアできたんだからいいじゃん!

 最後の最後で私が先生を眠らせたおかげでクリアできたんだし!

 これでとりあえずは、赤点回避だよね!

 

 

 

 ☆破滅まで、残り50日───

 

 

 

 

 




相澤先生が後遺症を負っていない上に、お荷物を抱えてしまった轟くんとヤオモモちゃんの試験難易度がベリーハードになってしまいました。
アニメでは1組ずつスタートですが、本作では原作通り一斉スタートです。
最初の組ほど不利になってしまう上に、試験時間的にA組とB組の試験を同日にできない非合理な試験方式を相澤先生が取るかな、と思ったので。

ちなみに本作の白雲ですが、本人は相澤先生やマイク先生と一緒にワイワイやりたいからビルボードチャートトップ10に入っていないだけで、実力はトップヒーローと遜色ありません。
原作の世界線では、ハイエンドに改造されて(ヴィラン)連合の生命線になっていたお方なので、弱いはずがありません。
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