500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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とうとう残り50日を切りました。
天誅タイムが刻一刻と迫っています。


第29話 残り48日

 期末試験の翌日。

 学校に行くと、クラスの皆はどこか安心したような表情を浮かべていた。

 原作のようなお通夜ムードは無い。

 昨日の演習試験で、一応全チームクリア条件を満たしたからだ。

 原作では不合格だった切島くん・砂藤くんペア、三奈ちゃん・上鳴くんペアも制限時間ギリギリにクリアしていた。

 

「とにかく全員クリアできて良かったよー!」

「特に上鳴はね」

「ウェ!? 何だよ、昨日俺超頑張ったよ!?」

「皆で合宿だー!! 肝試ー!!」

 

 透ちゃんが全員クリアを喜び、響香ちゃんが上鳴くんに話しかけると、上鳴くんがビクッと肩を跳ね上がらせる。

 そして三奈ちゃんは、皆で肝試しができると大喜びしていた。

 ほんとこの二人はなんでクリアできたんだろ……

 なんて考えていると…

 

「まあでもまだわかんないよ? クリアできたら合格とは一言も言ってなかったし」

 

 志村が放った爆弾発言に、皆が一気に凍りつく。

 皆の表情を見て、志村も流石にまずいと思ったのか、「ワリッ」と小声で謝った。

 余裕そうに笑っている志村を見て、隣の席の尾白くんが話しかける。

 

「志村さんは何でそんなに余裕そうなの…?」

「アタシ? だって、試験が終わっちゃった今、一喜一憂したってどーにもなんないし。落ちてたらしゃーない、はい終わり。って話じゃん?」

「それはそうやけど…ほら、こう気持ち的に落ち着かんよ…」

 

 志村の正論に対して、お茶子ちゃんが皆の気持ちを代弁した。

 するとその時、相澤先生がカァンと勢いよくドアを開けた。

 

「予鈴が鳴ったら席に着け」

 

 相澤先生が入る頃には、いつの間にか皆席に座っていた。

 相澤先生が、教卓の前に立って話し始める。

 

「おはよう。今回の期末テストだが…残念ながら赤点が出た。したがって…」

 

 相澤先生が発表すると、自信がないらしい人達の表情が強張る。

 

「林間学校は全員行きます」

「「「「ええええええ!!?」」」」

 

 まさかの発表に、皆が驚く。

 

「筆記の方はゼロ。実技で神剱が赤点だ」

 

 ………えっ?

 私?

 はぁ!?

 何でよ、試験で役に立ったじゃん!

 

「今回の試験、我々(ヴィラン)側は生徒達に勝ち筋を残しつつどう課題と向き合うかを見るよう動いた。裁量は個々人によるが。でなければ、課題云々の前に詰む奴ばかりだったろうからな」

「本気で叩き潰すと仰っていたのは…」

「追い込むためさ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点を取った奴こそここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽って奴さ」

「「「「「ゴーリテキキョギィイー!!」」」」」

 

 相澤先生が意地の悪い笑みを浮かべながら言うと、またしても騙された飯田くんは悔しがる。

 

「またしてやられた…! 流石雄英だ!」

「飯田くんドンマイ」

 

 飯田くんが悔しがっていると、志村が口を開く。

 

「しかし! 二度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと!!」

「わあ水差す飯田くん」

 

 飯田くんがその場の雰囲気に水を差すと、お茶子ちゃんがツッコミを入れる。

 すると相澤先生が続ける。

 

「確かにな。省みるよ。ただ全部嘘ってわけじゃない。赤点は赤点だ。神剱には別途に補習時間を設けてある。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツいからな」

 

 ちょっと待ってよ、意味わかんない…

 なんで私が赤点なのよ…!!

 

「じゃあ合宿のしおりを配るから後ろに回してけ」

 

 そう言って相澤先生は、しおりを配った。

 前の席の爆豪くんがぶっきらぼうに渡してきたしおりを、後ろの席の緑谷くんに渡す。

 そして放課後。

 

「まぁ何はともあれ、全員で行けて良かったね」

「一週間の強化合宿か!」

「結構な大荷物になるね」

「暗視ゴーグル」

「み〜ね〜た〜く〜ん♪ 何に使うというのだね?」

「ヒッ!!」

「水着とか持ってねーや。色々買わねえとなぁ」

 

 尾白くん、飯田くん、緑谷くん、上鳴くんの会話に紛れて峰田くんが口を開く。

 志村が峰田くんの肩に手を置くと、峰田くんが小さく震え上がった。

 そんな中、透ちゃんがある提案をする。

 

「あ、じゃあ明日休みだしテスト明けだし…………ってことでA組皆で買い物行こうよ!」

 

 透ちゃんが手を叩いてニコッと笑うと、皆が盛り上がる。

 

「おお良い!! 何気にそういうの初じゃね!?」

「いいねぇアタシ行くー! 行く人はーい!」

「勝手に手ェ挙げてんじゃねえ殺すぞ!」

「轟くんも行かない?」

「行く」

 

 志村が爆豪くんの手を掴んで無理矢理挙げさせると爆豪くんがキレ、緑谷くんが轟くんを誘うと轟くんが即答した。

 そっか、この世界線だと、冷さんが入院してないから轟くんが誘いを断る理由がないのか。

 そういう事なら、私も一緒に行こ〜っと。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 翌日。

 

「ってな感じでやって来ました! 県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端! 木椰区ショッピングモール!」

 

 私達A組は、皆で木椰区ショッピングモールに来ていた。

 私は、ノースリーブの白いワンピースとサンダルを身につけてきた。

 私が自分のコーディネートをチェックしていると、透ちゃんが、私達A組と一緒に来ていた補助講師のトムラ先生に話しかける。

 

「トムラ先生も来てくれたんですね!」

「お前らに何かあった時誰が責任取ると思ってんだ」

「さすが兄様!」

「隣に立つな。お前デカいから俺が貧相に見えるんだよ」

「え〜」

 

 志村がトムラ先生の隣に立ってはしゃぐと、トムラ先生が志村から離れる。

 志村は、メガネと蝶ネクタイをつけた白猫の上に『バーローキティ』と書かれた襟ぐり広めのTシャツと、ストレートタイプのカーゴパンツを身につけている。

 そんなクソダサい服着て外歩ける神経どうかしてるわ。

 

「腕が6本のあなたにも! 脹脛激ゴツのあなたにも! きっと見つかるオンリーワン!」

 

 三奈ちゃんの紹介に、障子くんと飯田くんが反応する。

 

「“個性”の差による多様な形態を数でカバーするだけじゃないんだよね。ティーンからシニアまで幅広い世代にフィットするデザインが集まっているからこの集客力…「幼児が怖がるぞよせ」

 

 緑谷くんがいつものブツブツを披露すると、常闇くんが引き気味に止めた。

 その後ろでは、ブツブツ言っている緑谷くんを幼稚園児くらいの男の子が指差し、母親と思われる女の人が男の子を緑谷くんから遠ざけていたりした。

 周りにいた他の客達が、私達を指差して声を上げた。

 

「お! アレ雄英生じゃん!」

「1年!? 体育祭ウェーーイ!!」

「うおおまだ覚えてる人いるんだぁ…!」

 

 お茶子ちゃんは、他の客達の反応に打ち震えていた。

 

「とりあえずウチ大きめのキャリーバッグ買わなきゃ」

「あら、では一緒に回りましょうか」

「俺アウトドア系の靴ねえから買いてぇんだけど」

「あー私も私もーー!」

「靴は履き慣れたものとしおりに書いて……あ、いや、しかし成る程、用途に合ったものを選ぶべきなのか…!?」

 

 なんだか皆、それぞれ買いたいものが大体固まったみたいだ。

 飯田くんはいつも通りだ。

 

「ピッキング用品と小型ドリルってどこに売ってんだ?」

「み〜ね〜た〜く〜ん♪」

「ヒッ!!」

 

 峰田くんが何か言っていると、志村が峰田くんの頭をガシッと掴む。

 

「16時にエントランスの椰子の木の前に集合。何かトラブルに遭ったらすぐ俺に連絡しろ」

「「「「はーい!!」」」」

「それじゃ、解散」

 

 トムラ先生が号令をかけると、目的を決めた皆は、それぞれ自分の買いたいものを探しにバラけた。

 こういうところに慣れていないのか、何を買っていいのかわからなくて戸惑っている轟くんに、私はさりげなく近づいて話しかけた。

 

「轟くんは買いたいもの決まってるの?」

「いや…まだ決めてねえ。こういうのって、何から選べばいいのかわかんねえ」

「じゃあわたしと一緒に選びに行かない?」

 

 私がさりげなく轟くんと二人きりになろうとした、その時だった。

 

「へ〜、二人ともまだ買いたいもの決めてないの? じゃあご一緒してもいい?」

 

 いきなり志村が割り込んできた。

 はぁ!?

 何こいつ、メッチャ邪魔なんだけど。

 普通この状況で割り込んでくる?

 空気読めよ、クソ女。

 

「ああ」

 

 志村が一緒に回ってもいいか尋ねると、轟くんが秒で了承した。

 いや、今私と二人で回る感じだったじゃん!

 私が断れない空気にするのやめてくれない!?

 って、轟くんが天然なの忘れてた。

 

 結局、志村だけを追い払う事はできずに、三人で一緒に買い物をする事になった。

 まずは大きめの鞄を選ぶ事にした。

 

「鞄はどれがいいんだ?」

「このキャリーとかいいんじゃない? たくさん入るし、機能性もいいし。わたしこれにするから、同じのにしたら?」

 

 私は、ポケット付きの80Lのキャリーケースを選んで轟くんにオススメした。

 するとその時だった。

 

「へー、神剱ちゃんキャリー買うんだ。アタシはこれひとつで行くつもりだよ」

 

 志村が、アウトドア用の黒いリュックを手に持ちながら話しかけてくる。

 

「え、リュック…? そのサイズ、そんなに容量入らなくない?」

「これならそんなに嵩張らないし移動も楽かと思って」

「でも、合宿は1週間あるんだよ? 服とかどうするの?」

「……まさか神剱ちゃん、日数分服を持ってくつもり?」

「え、志村さんはそうじゃないの?」

「いやいや、6泊分も持っていかないよ? 日中はずっと訓練だから、私服着るのってせいぜい夜の数時間だけでしょ? そんなに服持ってく必要無くない? 昨日先生に確認したら、向こうで洗濯できるって言ってたし」

 

 志村に論破されて黙っていると、轟くんは志村の言い分に納得したのか、志村と色違いのリュックを選んだ。

 

「サイズはどれ選べばいいんだ?」

「40でいいんじゃない? そんなに荷物持って行かないなら30でも十分だけど、お土産買ったりとかするかもしれないからね」

「じゃあこれにする」

 

 志村は、私に取って代わる形で轟くんにオススメのバッグを教えた。

 志村死ね。

 その後も、私達は合宿に必要なものを買い揃えた。

 服、水着、運動靴、日用品、虫除けに制汗剤…

 大方必要なものを買い揃えて、どこかでお茶でもしようという話になった、その時だった。

 

「志村…これは何だ?」

 

 轟くんが、ハ◯ーキティのポップコーン自販機の前で立ち止まって指差す。

 

「ああ、ポンポンパック? ポップコーンの自販機だよ。なんかね、このハンドルを速く回すとポップコーンが早く出来上がるらしいよ」

「そうなのか?」

「うん、仲の良い先輩が言ってた。どっちが早くポップコーン作れるか競争しない?」

 

 志村と轟くんは、二人でキ◯ィカスポップコーンRTAをやった。

 ……何これ、なんか思ってたのと違うんだけど。

 轟くん、心なしか私よりも志村と一緒にいる時の方が楽しそうなんだけど。

 てか、何が「仲の良い先輩が言ってた」だよ、しれっと大嘘つくなよ。

 

 その後、フードコートを見つけて、二人がポップコーンRTAで手に入れたポップコーン(うすしおとキャラメル)を三人で食べた。

 私はアイスカフェラテを、轟くんはお茶を、志村はメロンソーダを買って飲んだ。

 轟くんがお茶の途中でトイレに行ったので、私と志村はフードコートに取り残された。

 

「神剱ちゃん、次どこ行く?」

「わたしは特に決めてないけど……」

 

 こいつマジで邪魔なんだけど。

 ちょうど轟くんいないし、何か適当に理由つけて撒けないかな…

 なんて考えているとだ。

 

「あれ雄英じゃね!?」

「すっげぇ、サインくださ〜い!」

 

 大学生くらいのチャラチャラした男三人が、私達に声をかけてきた。

 

「最初はお姉さんからサイン貰ってもいい?」

「えっ?」

 

 金髪の男が、私にサインを求めてきた。

 男達の視線は露骨に私の胸に注がれていて、咄嗟に席を立とうとしたけど、遅かった。

 さりげなく私の後ろに立った茶髪の男が、私の胸に手を伸ばす。

 だけど男の手は、私の胸に触れる事はなかった。

 

「いだだだだだだ!?」

 

 茶髪の男が、涙目になりながら悲鳴を上げる。

 見ると、志村が男の右手首を掴んで握っていた。

 志村の爪が男の皮膚に食い込み、ミシミシと嫌な音がする。

 志村は、男の手首を握りながら、ニッコリと笑顔を浮かべる。

 

「します? サイン」

「「「…………」」」

 

 志村が尋ねると、男三人は素早く首を横に振り、その場を去っていった。

 するとその直後、轟くんがトイレから戻ってくる。

 

「わりぃ遅れた」

「ずいぶん時間かかったんだね。トイレ混んでた?」

「いや、帰りにすげぇ声かけられて…」

「お疲れ様。途中までついて行ってあげればよかったね」

 

 轟くんが言うと、志村が苦笑する。

 轟くんは、トイレから戻る途中、女性客に捕まって声をかけられてしまったらしい。

 さすが天然イケメン…そっちはそっちでナンパされてたんだ…

 

「それより、大丈夫か? さっき絡まれてたようだが…」

「うん。思ったより話のわかる人達でさ。ちゃんと話したらわかってくれたよ」

 

 轟くんが心配すると、志村はニコニコ笑いながら答える。

 何が「話したらわかってくれた」、よ。

 思いっきり手首捻り上げてたじゃん。

 

「まだ時間あるしさ、せっかくだから探検しない?」

「おう」

 

 集合時間まであと1時間以上あったので、志村が轟くんを連れてショッピングモールを探検した。

 結局、どうやっても志村と轟くんを引き剥がす事はできなかった。

 意味わかんない、なんでこうもうまくいかないわけ…!?

 ちょっとずつ好感度を上げる薬を盛ってるのに、クラスの皆は全然私に対する好感度が上がらないし…

 

 ……まさか、誰かが先回りして邪魔してる?

 いや、そんな事できるはずない。

 私が少しずつ薬を盛ってる事なんて、誰にも気づきようがない。

 じゃあ何で好感度が全然上がらないの…!?

 こうなったらもう、最後の手段を使うしか……

 

 

 

 ☆破滅まで、残り48日───

 

 

 

 

 

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