500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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第3話 残り137日(1)

 4月某日。

 目を覚まし、前世で使っていたものとは比べ物にならない上質なシーツから体を起こす。

 天蓋付きのキングサイズのベッドから降りて大窓を開けると、雲ひとつない晴天と満開の桜が見えた。

 部屋の中に冷たい風が吹き込み、キャミソールタイプのワンピースの裾がパタパタと舞う。

 今日は、雄英の入学式。

 ヒーローを目指す者にとっての第一歩だ。

 

 

 

「これが憧れの雄英の制服…!」

 

 広いダイニングで朝ごはんを手早く済ませ、シャワーを浴びた私は、この前採寸した雄英の制服を持って鏡の前に移動した。

 鏡には、レースのついた純白の下着を身につけた自分の姿と、新品の雄英の制服が映る。

 雄英生になるという実感に浮かれつつ、制服に着替える。

 真っ白なワイシャツを着て緑のミドルスカートを履いて、朱色のネクタイを締めネクタイピンをつける。

 肩に金色のボタンが一つ付いた緑のエポレットが付いていて、襟と袖に二本の緑のラインが入ったグレーのジャケットに袖を通す。

 最後に、絹糸のような白銀の髪を頭頂部で括ってリボンをつければ、身支度完了。

 

「似合ってるぞ〜、芽華!」

「今日から雄英生ね」

 

 制服姿の私を、父さんと母さんが褒めてくれた。

 今日は初登校という事で、家政婦の実田さんが車で送ってくれるって言ってたけど、私はあえて自分の足で学校に行く事にした。

 

 

 

「わぁぁ、広…」

 

 学校に到着して、自分のクラスを確認した私は、教室に向かう。

 私のクラスはA組。轟くんや爆豪くんと一緒のクラスだし、担任は相澤先生だ。やったね。

 だけど原作とは違う事に、A組は21人だった。

 私が合格した分、クラスがひと枠増えたのか。

 私の代わりに消えた人がいないのはいいけど、21人だと授業やりづらくない?

 まぁいいや、教室行こ。

 

「あの、すみません」

 

 校舎に入って、原作の記憶を辿って教室を目指していると、突然後ろから声をかけられた。

 後ろには、青紫色の髪を逆立てた背の高い男子が立っていた。

 

「1年B組の教室って、どこにあるかわかりますか?」

 

 後ろにいた男子が、首の後ろを手で押さえながら気怠げに話しかけてくる。

 ……え、誰?

 

「……ごめん、誰?」

「は?」

 

 私が片眉を上げると、男子が怪訝そうな表情を浮かべる。

 ヒーロー科にこんなキャラいたっけ?

 そもそもB組のキャラなんて、拳藤さんと物間くんくらいしか知らないし。

 

「いや、誰って…新入生ですけど。ヒーロー科の」

「そうなんだ…実はわたしもなんだ」

「なんだ、あんたも新入生だったのか。全然迷わずに進んでくもんだから、在校生だと思ってた」

 

 男子が緊張を解いてため息をついた、その時だった。

 

「心操く〜ん!」

 

 廊下の奥から、背の高い女子がこちらに向かって走ってくる。

 私は、その女子に見覚えがあった。

 海浜公園で爆豪くんや緑谷くんと一緒にゴミ掃除をしていた、姫◯先輩のそっくりさんだ。

 

「あぁ、ごめん。お取り込み中だった?」

「いや、別に」

 

 姫◯先輩のそっくりさんが尋ねると、男子が首を横に振る。

 彼女は、私に微笑みかけてきた。

 

「はじめまして。アタシ、志村(しむら)離珠奈(りずな)。キミは?」

「神剱芽華よ。よろしく」

「うん、よろしく」

 

 姫◯先輩のそっくりさん…もとい志村さんは、笑顔で握手を求めてくる。

 握手をする時、ほんの一瞬だけ、志村さんの表情が険しくなった気がした。

 

 …ってか、あれ?

 “志村”って…どこかで聞いた事あるような…?

 

「心操くん、入試の時はほんと助かったよ〜、ありがとう!」

「いやいや、こちらこそ」

「キミも入試受かったんだね。良かった良かった」

「キミ『も』ってことは、志村さんも受かったんだ」

 

 二人のやりとりを聞いて、やっと思い出した。

 心操人使、原作では普通科だった男子生徒だ。

 確か原作では、『洗脳』っていうぶっ壊れ性能の“個性”を持っていながら、火力重視の実技入試と相性が悪くて落ちちゃうんだっけ。

 道理で思い出せなかったわけだ、原作ではヒーロー科にいなかった生徒だもん。

 『洗脳』なんかどう考えてもポイント稼げないのに、なんで心操くんがヒーロー科の入試に受かってるの?

 まぁいいや、確か心操くんは、“個性”が(ヴィラン)向きなのがコンプレックスなんだよね。

 ここで“個性”を褒めてあげれば、好感度が上がるはず。

 

「二人とも、入試頑張ったんだね! おめでとう!」

 

 私は、とびきりの笑顔で二人に話しかけた。

 だけど心操くんは、私の発言を好意的に受け取るどころか、むしろ「何言ってんだこいつ」みたいな顔をしていた。

 

「頑張ったって…あんたも受験したんじゃないのか?」

「多分あれだよ、推薦で入ったんじゃない?」

「ああ、そっか…」

 

 志村さんが説明すると、心操くんが納得する。

 

「一般入試って、どんな試験だったの?」

「ウチらは、筆記とグループワーク型の実技演習だったよ」

 

 え、グループワーク?

 どういう事?

 これ、もしかして原作と試験内容違う?

 

「グループワーク? どんなのだったの?」

「マネキンを使った救助演習だよ。会場に一人ずつプロヒーローがいて、そのヒーローが(ヴィラン)役として救助を邪魔してくるから、先生に邪魔されないようにできるだけ多くのマネキンを救出するって内容」

「心操くんが先生を洗脳して逆に救助に協力させてくれたおかげで、ウチら大助かりだったんだよ〜」

「へ、へぇ、そうなんだ…」

 

 原作と全然試験内容違うじゃん。

 原作の期末試験や仮免試験を先取りしてる感じか。

 だから心操くんがヒーロー科にいるのか…

 あれ?これ、もしかして原作とクラスメイト違う?

 

「俺、B組(こっち)だから。じゃ、また後で」

「うぃ〜」

 

 心操くんは、私達と別れてB組の教室へ向かった。

 私と志村さんは、1年A組の教室の前に立つ。

 バリアフリーのためか、巨大なドアが設置されていて、ドアの高さは最低でも7mはある。

 別の動力で動いているのか、ドアは思ったより軽い力で動いた。

 

 教室に入ると、既に生徒が何人かいた。

 えーっと、梅雨ちゃんと、飯田くんと、八百万さんと…

 

 あっ、轟くん!

 嘘でしょ…!?

 推しが目の前にいる…!!

 いや、わかってはいたけど…

 やばい、眼福すぎて呼吸止まる。

 って、第一印象は大事だよね、ちゃんとしないと…

 印象を少しでもよく見せようと、今私にできる最高クオリティの笑顔を浮かべた、その時だった。

 

「おっはよ」

 

 私が轟くんに話しかける前に、志村さんが轟くんの隣の席に座って話しかけた。

 

「お隣さんだね。えっと、轟くん…で合ってるよね?」

「ああ」

「アタシ、志村離珠奈っていうの。よろしく」

「…おぅ」

 

 志村さんは、馴れ馴れしく私の轟くんに話しかけて距離を詰めた。

 うっわ…何こいつ、すごい邪魔なんだけど。

 しかも轟くんと席が隣とか…

 って、何ムキになってんのよ私。

 まだ志村さんが恋敵だって決まったわけじゃないじゃん。

 仮にそうだったとしても、私の方が可愛いんだし焦る事ないわ。

 

「あ、この子は神剱ちゃん。さっきそこで会ったんだ。ね?」

「あ、うん。そうなの。よろしくね」

「あぁ」

 

 志村さんに紹介されて、私は轟くんに向かって今できる最高クオリティの笑顔を見せた。

 轟くんの反応は薄かったけど、それはそれで尊いからいい。

 むしろ、こんな素っ気ない態度を取られるのも今だけだと思えば、塩対応感謝祭。

 

「おはよ〜。アタシ、志村離珠奈。キミ達は?」

 

 自己紹介を終えた志村さんは、梅雨ちゃんと飯田くんの所に行った。

 はぁ……やっと行ってくれた。

 

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「ウン、よろしく梅雨ちゃん」

「ボ…俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」

「聡明かぁ、え〜めっちゃ良いとこじゃん」

 

 志村さんは、持ち前のコミュ力ですぐに二人と打ち解けた。

 私はその間に、轟くんと交流を深めた。

 

「轟くんは食べ物何が好きなの? わたし、冷たいおそばが好きなんだ〜」

「同じだ」

「えぇ、ホント? すごい偶然だね」

 

 好物が同じな事にシンパシーを感じたのか、轟くんは少し心を開いてくれた。

 良かった、ざる蕎麦が好きなのは原作と一緒だ。

 別に嘘はついてない。

 私も蕎麦が好物なのは事実だ。

 元々そんなに好きじゃなかったけど、轟くんの好物が蕎麦だってのを知ってから食べるようになって、食べてるうちに少しずつ好きになった。

 前世ではお金がなかったから、学食のしか食べてなかったけど。

 

 私が轟くんと話していると、爆豪くんが教室に入ってきた。

 え、爆豪くん、生で見るとメッチャイケメンなんだけど。

 まぁ、一番の推しは轟くんだけどね。

 

「おぃ〜っすカッチャン」

「んだよ、てめぇもA組かよ」

「おいおい、上司が同じクラスになったんだぞ? もっと喜べよ」

「誰が上司だ」

 

 私が二人目の推しにときめいていると、志村さんは今度は爆豪くんに馴れ馴れしく話しかけた。

 は? 何あいつ、意味わかんないんだけど。

 あの女、そういえば爆豪くんと一緒に海浜公園にいたよね。

 同じ学校か何か?

 爆豪くんと親しげに話す志村さんを観察していると、次々とクラスメイトが教室に入ってくる。

 そして最後に、緑谷くんとお茶子ちゃんが教室に入ってきた。

 この二人が教室に入ってきたって事は…

 

「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここは…ヒーロー科だぞ」

 

 寝袋に入った相澤先生が、寝転がったままゼリー飲料を啜った。

 キタァァァ、相澤先生だ!

 推し三人目!!

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君達は合理性に欠くね。担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 相澤先生は、寝袋を脱ぎながら自己紹介をした。

 推しが三人もいるとか、このクラス神じゃん。

 

「早速だが、体操服着てグラウンドに出ろ」

 

 相澤先生が、寝袋から体操服を取り出しながら言い、そそくさと去っていった。

 待ってました、この展開。

 

「と、とにかく我々も移動しよう!」

 

 飯田くんが声をかけて、皆が移動を始める。

 私も女子更衣室に行こうとした、その時だった。

 

「神剱ちゃ〜ん」

 

 志村さん…いや、もう志村でいいや。

 志村が、私に話しかけてきた。

 

「一緒に更衣室行こ♪」

 

 志村の後ろには、他の女子の皆がいた。

 いつの間に他の女子と仲良くなってんの…?

 

「……うん」

 

 私は、他の女子達と一緒に更衣室に向かった。

 更衣室に向かう途中、芦戸さんが手を挙げて発言する。

 

「ねぇ、せっかくだしさ! 自己紹介しようよ」

「え?」

「私達はさっき女子同士で自己紹介済ませたんだけどさ、まだ自己紹介してない人もいるでしょ? 皆で改めて自己紹介したくてさ」

「いーね、やろやろ!」

「アタシも賛成〜」

 

 芦戸さんの提案に葉隠さんと志村が乗って、女子皆が自己紹介を始めた。

 

「アタシ芦戸三奈! よろしく!」

「私は葉隠透! よろしくね〜」

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「ウチ、耳郎響香。よろしく」

「八百万百ですわ。よろしくお願いします」

「私は麗日お茶子! よろしく!」

「アタシは志村離珠奈だよ。“個性”は『浮遊』。よろしく〜」

「志村さん、ウチと“個性”似とるね。離珠奈ちゃんて呼んでもいい?」

「ウン、じゃあアタシもお茶子ちゃんって呼ぶね」

 

 志村とお茶子ちゃんは、似た“個性”を持つ者同士、すぐに仲良くなっていた。

 『浮遊』……?

 どっかで聞いた事ある“個性”だな。

 

「んで、この子は神剱ちゃん」

「わたしは神剱芽華。“個性”は『霊剣』よ。よろしくね、皆」

「レイケン…?」

「どんな“個性”なの?」

「まぁそれは、学校生活が始まってからのお楽しみってことで!」

 

 そんな会話をしつつ、皆で女子更衣室に入る。

 私が制服を脱いで体操服に着替えると、耳郎さんがすごい視線を向けてくる。

 

「うわっ、発育の暴力…!!」

 

 耳郎さんが、私の99cmのバストを見てギョッとした表情を浮かべる。

 

「芽華ちゃんメッチャスタイル良いよね!」

「髪もお肌も綺麗で羨ましいですわ」

「え〜、そんなことないよぉ」

「背は同じくらいのはずなのになんで…」

 

 私の上質な髪や肌、そして抜群のスタイルを皆が褒めちぎってくる。

 一方で、耳郎さんは自分の胸に手を当てて落ち込んでいた。

 そんな中、志村が耳郎さんに声をかける。

 

「耳郎ちゃんだってスタイル良くて可愛いじゃん。アタシ羨ましいよ」

 

 振り向くとそこには、腹筋がシックスパックに割れた筋肉バッキバキの巨漢…もとい巨女が立っていた。

 うわ…こいつ本当に高校生?

 おっぱい付いてなかったら完全に男じゃん。

 ここまで来ると引くんだけど。

 

「離珠奈ちゃんすごいね」

「何したらそうなるの?」

「や〜、アタシ“個性”が戦闘向きじゃないからさ。筋トレしてプロテインばっか飲んでたらこうなっちゃった。えへへ」

 

 葉隠さんと芦戸さんに話しかけられた志村は、照れ臭そうに話した。

 そんな彼女を見て、私は彼女を警戒していたのが馬鹿馬鹿しくなった。

 こいつ完全に女捨ててるし、私が敵視するまでもなかったわ。

 

 着替え終わった私達は、グラウンドへ向かう。

 そこで最初の試練があるのを(私以外)誰も知らずに…

 

 

 

 




席の並びはこうです。
ヤオモモはみ出ちゃった。

      教壇

葉隠  障子  上鳴  芦戸

爆豪  耳郎  切島  蛙吹

神剱  瀬呂  口田  飯田

緑谷  常闇  砂藤  麗日

峰田   轟  志村  尾白

八百万
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