500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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第36話 残り22日(1)

 朝5時半。

 A組の皆は、欠伸をしたり、目を擦ったり、船を漕いだり、眠気を隠すつもりもなく相澤先生の前に並んで立っていた。

 お茶子ちゃんと志村に至っては、ヘアセットをする余裕もなかったのか、髪がボサボサだ。

 

「お早う諸君、本日から本格的に強化合宿を始める……と、その前に、お前らに特別講師を紹介する」

 

 相澤先生がそう言うと、呼ばれた四人が前に出てきた。

 

「呼んだかイレイザァーー! お呼びじゃねーよ!」

「あらヤダ男子達カワイイ〜!」

「お前達がスタンダールのお眼鏡にかなうヒーローかどうか、見定めさせてもらう」

 

 最初に出てきた男がズザザザっと膝でスライディングしながら登場し、タラコ唇の男がぶりっ子しながら登場し、トカゲ顔の男が私達を静かに品定めする。

 そしてシルクハットを被った男は、ゆっくりと右手を肩の高さまで上げ、私達に向かって手を伸ばす。

 その挙動に何人かの生徒が警戒していると、男の袖からポンッと鳩が飛び出す。

 

「俺のマジックショーへようこそ。タネも仕掛けもございません♪」

 

 ……え?

 この人達まさか、原作の(ヴィラン)連合…?

 何でこんな所にいるの?

 

「えー、本日から君らの訓練をしていただくことになりました、特別講師の皆さんです。皆さん、順番に自己紹介をお願いします」

「俺は分倍河原仁! トゥワイスだ! よろしくな! よろしくしねーよ!」

「私は引石健磁。マグネよ。マグ姐って呼んでちょうだい♡」

「伊口秀一…スピナーだ」

「俺は迫圧紘。マジックヒーロー“Mr.コンプレス”だよ。よろしく♪」

 

 やっぱり、(ヴィラン)連合じゃん!!

 え、何、こいつらこの世界線だと皆(ヴィラン)堕ちせずにヒーローやってんの!?

 意味わかんないんだけど!?

 

「お前らには、こちらで用意したトレーニングメニューをやってもらうのはもちろん、それに加えて全員先生方に揉んでもらう。死ぬほどキツいが、くれぐれも死なないように」

 

 そう言って相澤先生は、実にいい笑顔を浮かべる。

 地獄の訓練が今、幕を開けた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

鉄哲徹鐵 side

 

「“個性”を伸ばす…!?」

「A組はもうやってるぞ。早く行くぞ」

 

 寝落ちして倒れそうになる小森の腕を掴みながら尋ねる拳藤に、ブラド先生がそう答える。

 ブラド先生は、宿泊施設裏の訓練場に向かって歩きながら話を続ける。

 

「前期はA組が色々目立ってたが、後期は我々の番だ。いいか? A組ではなく我々だ!」

 

 先生…!!

 不甲斐ない教え子でごめん!

 

「当然“個性”を伸ばすと言っても…21名21通りの“個性”があるし…何をどう伸ばすのかわかんないんスけど…」

「具体性が欲しいな」

 

 取蔭と鎌切が、ブラド先生の後ろを歩きながら声を上げる。

 どうやって“個性”を伸ばすっていうんだ…?

 

「筋繊維は酷使するほど壊れ、強く太くなる…“個性”も同じだ。使い続ければ強くなりでなければ衰える! 即ちやるべきことは1つ! 限界突破!!」

 

 ブラド先生が話をしているうちに、森を抜けて訓練場に辿り着く。

 訓練場には、地獄の特訓をしているA組がいた。

 

「何だこの地獄絵図…!!」

「もはやかわいがりですな」

 

 鱗に至っては魂が抜け、隣にいた宍田も震え上がっている。

 

「許容上限のある発動型は上限の底上げ。異形型・その他複合型は“個性”に由来する器官・部位の更なる鍛錬。通常であれば肉体の成長に合わせて行うが…」

「まぁ、時間ないんでな。B組も早くしろ」

 

 ブラド先生に続けて、訓練場にいた相澤先生が声をかける。

 すると拳藤が疑問を投げかけた。

 

「しかし私達も入れると42人だよ? そんな人数の“個性”、たった6名で管理できるの?」

「だから彼女らだ」

 

 相澤先生がそう言うと、だ。

 

「そうなのあちきら四位一体!」

「「「「!?」」」」

 

 どこからか、ラグドールさんが登場した。

 

「煌めく眼でロックオン!!」

「猫の手手助けやってくる!!」

「どこからともなくやって来る…」

「キュートにキャットにスティンガー!」

「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!!」」」」

 

 そう言ってマンダレイさん、ラグドールさん、虎さん、ピクシーボブさんが決めポーズをして、実演を交えながら説明する。

 

「あちきの“個性”『サーチ』! この目で見た人の情報100人まで丸分かり!! 居場所も弱点も!」

「私の『土流』で各々の鍛錬に見合う場を形成!」

「そして私の『テレパス』で一度に複数の人間へアドバイス」

「そこを我が殴る蹴るの暴行よ…!」

 

 色々駄目だろ…

 

「だあああああああ!!! B組どいてぇええええええ!!!」

 

 どこからともなく、何か……いや、誰かが飛んできた。

 咄嗟に塩崎が蔓でネットを作ってキャッチしようとしたが、無駄だった。

 塩崎の蔓を軽々と突き破って飛んできたそいつは、地面にクレーターを作って着地した。

 

「あたたた…」

 

 よく見るとそいつは、全身ボロボロになった志村だった。

 俺達がその姿を確認したその時、どこからか笑い声が聴こえてくる。

 

「HAHAHAHAHAHA!!」

「私が来た!!」

「休憩はまだ先だぜ、志村少女!!」

「いつも言っているだろう? 更に向こうへ、“Plus Ultra”!!」

 

 振り向くとそこには、笑いながら志村に歩み寄るオールマイトがいた。

 しかも、一人じゃない。

 1…2……4……6……8……

 いや、何人いるんだこれ!?

 おい待て待て、これどういう状況!?

 

「リズナちゃ〜ん♡ こんなところで何を油売ってるのかしら?」

「に゛ゃあああああああ!!!」

 

 今度は金属製の棒を持ったタラコ唇の大男が現れ、志村に向かって金属の棒を向けた。

 すると志村はものすごいスピードで男の方へ引き寄せられ、そのまま大勢のオールマイトに担ぎ上げられて森の奥へと消えていった。

 

「志村さん…?」

「何だ今の……」

「完全にホラーだったよな…」

「ウラメシい……」

「うちのクラスの成長度合いがこちらの想定以上だったのでな。急遽特別講師を呼んで、可愛がってもらうことになった。最低でも午前・午後1回ずつ、こちらが呼んだ特別講師と戦闘訓練をしてもらう」

 

 あまりにも情報量が多すぎる恐怖映像に、心操、円場、回原、柳が震え上がる中、相澤先生が平然と説明した。

 

「あーあ、いいなぁA組は! 特別講師に揉んでもらってさぁ!」

 

 物間は、大勢のオールマイトに担ぎ上げられて森の中へ消えていく志村を見て、羨ましがるフリをして高笑いしていた。

 物間…お前今内心ホッとしてただろ。

 

「でもしょうがないよねぇ!? A組は僕達B組よりずっと優秀だもんねぇぇぇ!?」

「当然だが、B組にも同様の訓練をやってもらうからな」

 

 B組はあんな目に遭わないと勘違いして高笑いしている物間に、相澤先生が容赦無く現実を突きつけると、物間は口から魂を出してその場に倒れ込んだ。

 

「おい物間ァ!! しっかりしろォ!!」

 

 真っ白に燃え尽きて膝から崩れ落ちる物間を、俺達で叩き起こす。

 

「単純な増強型の者! 我の元に来い。我ーズブートキャンプはもう始まっているぞ」

 

 宍田や回原といった増強型のメンツが、虎さんに呼び込まれる。

 この人だけジャンルも性別も違うんだよなぁ…

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

神剱芽華 side

 

「ひぃ、ひぃ…! ぜぇ、ぜぇ……お゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛…!!」

 

 私は、ゲロを吐きながらのたうち回っていた。

 私の訓練内容は、百ちゃんが撃ってくるガトリングガンの弾を避けながら、皆の訓練に使える剣をひたすら創造し続け、反応速度と剣の生成速度を高める訓練だ。

 

 三奈ちゃんの訓練に使う『蝕剣(コロードソード)』。

 梅雨ちゃん、障子くん、透ちゃんの訓練に使う『腕剣(テンタクルソード)』。

 飯田くんの訓練に使う『地剣(アースソード)』。

 お茶子ちゃんと志村の訓練に使う『重剣(グラビティソード)』。

 尾白くんと切島くんの訓練に使う『硬剣(ハードソード)』。

 上鳴くんの訓練に使う『雷剣(サンダーソード)』。

 砂藤くんと百ちゃんの訓練に使う『甘剣(スウィーツソード)』。

 響香ちゃんと口田くんの訓練に使う『音剣(サウンドソード)』。

 瀬呂くんと峰田くんの訓練に使う『鞭剣(ウィップソード)』と『実剣(グレープソード)』。

 常闇くんの訓練に使う『闇剣(ダークソード)』と『光剣(フラッシュソード)』。

 轟くんと爆豪くんの訓練に使う『炎剣(フレイムソード)』と『氷剣(アイスソード)』。

 緑谷くんとの訓練に使う『力剣(ブローンソード)』。

 そして、皆の回復に使う『癒剣(ヒールソード)』。

 

 別に剣の生成自体は、デメリットは無いからそこまで負担じゃない。

 問題は、特別講師との練習試合だ。

 “個性”伸ばしの訓練中に抜き打ちで呼び出され、トゥワイス、マグネ、スピナー、Mr.コンプレスにローテで扱き倒される。

 轟くん、爆豪くん、緑谷くん、そして志村の4人に関しては、トゥワイスが生み出す無限オールマイト軍団にリンチされる。

 “個性”伸ばしの訓練が生温く感じる程の地獄の訓練に、私のメンタルは既に限界を迎えていた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 時間が進み、時刻はPM4:00。

 プッシーキャッツ達の前には、野菜や肉なんかの大量の食材と調理器具が並んでいた。

 

「さぁ、昨日言ったね。『世話焼くのは今日まで』って!!」

「己で食う飯くらい己で作れ!! カレー!!」

 

 ピクシーボブとラグドールの陽気な声に、内心げんなりしている自分がいた。

 皆は、私が相澤先生に言われて創らされた『癒剣(ヒールソード)』のおかげで、原作とは違って体力がまだ余っていた。

 私も体のダメージは『癒剣(ヒールソード)』で癒したけど、心の疲労までは全回復しなかった。

 

「確かに…災害時など避難所で消耗した人々の腹と心を満たすのも、救助の一環……さすが雄英、無駄が無い!! 世界一美味いカレーを作ろう皆!!」

「ワァ、飯田くんチョロすぎ」

 

 飯田くんがプッシーキャッツ達の言葉を勝手に過大解釈して皆を鼓舞すると、志村が冷静にツッコミを入れる。

 こうして、楽しいカレー作りが始まった。

 

「轟ー! こっちも火ィちょーだい」

「芽華ちゃんこっち火ィおねがーい!」

 

 私は、三奈ちゃんと透ちゃんに呼ばれて、『炎剣(フレイムソード)』で窯に火をつけた。

 

「爆豪爆発で火ィ付けれね?」

「付けれるわクソが!」

「窯壊すなよー」

「わぁっとるわ!!」

 

 瀬呂くんが爆豪くんに話しかけると爆豪くんが爆破を放とうとするので、食材を運んでいた志村が口を挟む。

 原作通り窯を壊したり…なんてする事はなく、爆豪くんは器用に爆破の炎を使って窯に火をつけていた。

 

「皆さん! 人の手を煩わせてばかりでは、火の起こし方も学べませんよ」

「………」

 

 右手からチャッカマンを創造して火をつける百ちゃんを見て、響香ちゃんが呆れていた。

 

「いや、いいよ」

 

 そう言って轟くんは、左手で火を起こす。

 するとお茶子ちゃんがピョンピョン飛び跳ねながら喜ぶ。

 

「わー! ありがとー!!」

「燃えろー! 燃やし尽くせー!」

「尽くしたらあかんよ」

 

 三奈ちゃんの発言に対して、お茶子ちゃんがツッコミを入れる。

 一方で志村は、野菜を大きなボウルに入れて、そのまま洗わずに調理台に置こうとする。

 すると梅雨ちゃんが声をかける。

 

「ケロ? 離珠奈ちゃん、野菜は洗わないとダメよ」

「んーや、そんな手間いらないよ? せーの、ほいっ」

 

 そう言って志村は、野菜の入ったボウルをドンッと調理台の上に置く。

 すると中に入っていた野菜が宙に浮き、そして一瞬で皮と食べられる部分に分かれる。

 皮だけは宙に浮いたままで、食べられる部分だけがボウルに落ちる。

 

「うわ凄っ、それどうやったの!?」

「ん〜? “個性”のちょっとした応用」

 

 志村のちょっとした手品に透ちゃんが驚くと、志村は適当に答えながら慣れた手つきで具材を刻んでいく。

 ただの家庭用包丁が、まるで名工のそれみたいによく切れる。

 一方で砂藤くんは、ほとんど料理経験がない人が多いB組のアシストをしていた。

 

「舞茸は水分多いから、先に炒めないとシャバシャバになるぞ」

「えっ、マジで?」

 

 B組の方は、砂藤くんがサポートに入っているから大丈夫そうだ。

 一方で、ウチのクラスの方はというと…

 

「どしたー?」

「なんか、味がトゲトゲしてんだよね」

「まかせなさい」

 

 響香ちゃんから相談を受けた志村は、ニヤリと笑うとプッシーキャッツのところに行って何かを貰ってくると、そのまま鍋のところに戻って、貰ってきたものを鍋の中にぶち込んだ。

 するとそれを見ていた皆が悲鳴を上げる。

 

「おい待て志村、お前今何入れた!?」

「プリン」

「「「はぁ!?」」」

 

 プリン…?

 あいつ、馬鹿なの?

 何食って生きてたらカレーにプリンを入れるとかいう頭おかしい発想になるわけ?

 

「うん、いい感じに溶けてきたぞ〜♪」

「終わった……」

 

 満足顔で鍋を掻き混ぜる志村とは対照的に、皆は絶望の表情を浮かべていた。

 砂藤くんが目を離した隙に悲惨な事に…

 

「まぁまぁ、騙されたと思って味見してみてよ」

 

 そう言って志村は、味見用の小皿にカレーを垂らす。

 志村の笑顔の圧に負けて、青ざめた顔をして渋々味見した瀬呂くんと尾白くんだったけど…

 

「う、美味え!?」

「トゲトゲしてたのが、まろやかになってる…!」

「ホントだ、イケる」

「美味しい!」

「でしょ?」

 

 瀬呂くんと尾白くんの反応を見て味見をした響香ちゃんと三奈ちゃんも好反応を示すと、志村がドヤ顔をする。

 志村は、余計な事をして怒られるどころか、志村が隠し味を足したカレーは皆に好評だった。

 

 

 

「いただきまーす!」

「うめぇ! この状況も相まってうめぇ!」

「そこらの店よかうめえ!」

 

 皆は、自分達で作ったカレーをがっつき始めた。

 切島くんと瀬呂くんは、自分達で作ったカレーの味に感動していた。

 

「ヤオモモがっつくねー!」

「ええ。私の“個性”は脂質を様々な原子に変換して創造するので、沢山蓄える程沢山出せるのです」

「うんこみてえ」

「黙れェ!!」

 

 瀬呂くんの失言に百ちゃんが落ち込むと、響香ちゃんが瀬呂くんを殴って制裁した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 その後、カレーの鍋を片付けると、マンダレイが声をかけてくる。

 

「明日の夜は肉じゃがね」

「うおー!」

 

 カレーで満たされた腹でも、明日の肉じゃがを思い男子達は盛り上がった。

 でも、その後に続いたマンダレイの言葉。

 

「お肉は豚肉と牛肉だから、A組とB組でどっちがいいか選んどいてね」

 

 その言葉に多少のざわつきが上がった。

 

「肉じゃがって豚肉だよな?」

「え、牛でしょ?」

 

 肉じゃがは東日本は豚肉、西日本では牛肉が主流らしい。

 また地域とは関係なく、それぞれの家庭でも違う。

 豚だ、牛だと意見が分かれる皆を見て、飯田くんが手をグルグル回しながら立ち上がった。

 

「それでは、今決めてしまおう! いいかい、拳藤くん!」

 

 少し離れて座っていた一佳ちゃんは話しかけられ、立ち上がる。

 

「あぁいいよ。じゃあ、ジャンケンで勝った方が選ぶってことで」

「異論ない。では……」

「ちょっと待った!」

 

 委員長同士がジャンケンしようとしたその時、それを止める声が響いた。

 スッと立ち上がったのは物間くんだ。

 

「ねえ、ジャンケンなんかで決めるのつまらないだろ。ここはきっちり勝負して決めたほうがいいんじゃない?」

「は? 別にジャンケンでいいだろ」

 

 一佳ちゃんがそう言うと、物間くんはハッと鼻で笑う。

 

「何言ってるんだい、拳藤。憎きA組と直接対決できるせっかくのチャンスなんだよ? そんなジャンケンごときで決めるなんてバカなのかい」

「だから、別に憎くはないっつーの」

 

 なにかと注目を集めるA組になにかと対抗する物間くんに、近くにいたレイ子ちゃんが声をかける。

 

「べつに豚でも牛でもどっちでもいい」

「ん」

 

 その意見に隣の唯ちゃんも頷く。

 そんな女子達の意見に、鉄哲くんが男らしく言った。

 

「肉食えりゃ、俺もどっちでもいいぜ!」

 

 そんな鉄哲くんに、他の男子達も同意する。

 

「肉はなんだってうまいしな!」

「だよな!」

 

 切島くんと鉄哲くんはニッとサムズアップし合った。

 そんな意見に同化されたように、他の生徒にもどちらでもいいというような空気が広がったその時、またも物間くんが声をあげた。

 

「ハァ? どっちでもいいわけないだろう? 肉じゃがは豚肉に決まってるんだよ」

「はぁ?」

「……あぁでもA組がどっちでもいいっていうなら、ジャンケンもしないでこっちで選ばせてもらおうよ。牛肉の肉じゃがなんて僕には想像もできないけど、A組はかまわないんだろ? ねえ、爆豪くん?」

「あぁ?」

 

 爆豪くんに、物間くんはニヤリと厭味ったらしい笑みを浮かべてみせる。

 

「君は牛肉でもいいんだろ? 勝負を放棄したA組を差しおいて選んだ豚肉はきっとおいしいだろうなあぁ! A組は牛肉の肉じゃがでも食べてればいいよ」

 

 物間くんが爆豪くんを煽って強引に勝負に持ち込もうとした、その時だった。

 

「そんなに豚肉が良ければ豚肉食べればぁ? それでイーブンになるならね」

「……はぁ?」

 

 頬杖をついて話し合いを見ていた志村が、席から立ち上がってニヤリと笑う。

 

「気づいてないの? A組(みんな)B組(キミら)のために、好きな方の肉を譲ってやるつもりだったんだよ。A組の方が何かと目立っちゃってるから、肉くらい選ばせてやらなきゃ()()()だろうって。それとも、そういう()()は余計だったかなぁ?」

 

 志村がお得意の煽りで物間くんから主導権を奪うと、物間くんの顔が引き攣る。

 志村の物言いには鉄哲くんもカチンときたようで、声を荒げた。

 

「何だと! 上から目線で物言ってんじゃねー!!」

「すまねえ、鉄哲! おい志村、あんま怒らせるようなこと言うなって!」

 

 志村の挑発に乗って怒りを露わにする鉄哲くんに対して、切島くんがフォローを入れようとする。

 だけどその時、爆豪くんが切島くんの肩に手を置き、押しのけるように前に出た。

 

「面白え。どっちが上かわからせてやるよ」

 

 爆豪くんが勝手に勝負に乗ると、驚いた飯田くんが腕を激しく上下させながら抗議する。

 

「爆豪くん! 今は神聖な合宿中なのだぞ!? それを勝負とは……!」

「カンケーねえよ! 売られた喧嘩は買ったらァ!」

「喧嘩売ってんのはそっちだろーが!」

 

 骨抜くんが食ってかかり、他のB組の男子達も志村の挑発や爆豪くんの態度にいつの間にか火をつけられていた。

 そしてB組に対抗する形で、爆豪くん以外のA組男子も闘争心に火をつけた。

 一方で、男子達を焚き付けて喧嘩させた志村はというと…

 

「グワハハハ!! そうだ戦えい!!」

 

 しれっと自分の席に戻って、実にいい笑顔を浮かべてジュースを飲みながら観戦していた。

 こいつ、最初から男子達を争わせて見物したかっただけか…

 

「志村さん、何故焚き付けるようなことを言ったんですか!」

「えーだって人の喧嘩って面白いじゃん」

「いい趣味してるわね」

 

 百ちゃんの追及に対して志村が悪びれずに笑いながら答えると、梅雨ちゃんがツッコミを入れる。

 

「先生!」

 

 百ちゃんが相澤先生に制してもらおうとするけど、相澤先生は静観するばかりだ。

 

「やらせとけ」

「でも」

「訓練時間以外は自由だ。周りに迷惑かけるなら論外だが」

 

 その言葉に、飯田くんがハッとする。

 

「確かに、自由時間は各自の自由……だが、その中で自主性を重んじつつ、生徒同士で切磋琢磨するのもヒーローとして闘争心を養う特別な時間……そういうことですね、先生!」

「……そういうことだ」

 

 夕飯のあとで相澤先生が多少まったりして面倒くさくなった事など知らず、飯田くんは深く納得して声をかけた。

 

「それでは諸君、腕相撲で勝負を決めるというのはどうだろう!」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 その後、私達はお風呂に入った。

 お風呂の時間は、昨日の峰田くんの一件で男子と女子の入浴時間がずらされる事になり、二日目はA組男子、B組男子、A組女子、B組女子の順に入る事となった。

 先にパパッと入らされた男子達は、何やらA組B組合同でガヤガヤやっているらしく、私達はちょうど風呂から上がったところだった。

 男子達は15分しか入浴時間を取らされなかったのに対し、女子達は30分と長めに入浴時間が確保されていた。

 その事に対し不平を言う男子達だったけど、その怒りの矛先は全ての元凶である峰田くんに向けられた。

 

「早いね。もうA組全員上がったんだ」

「うん」

「お待たせしてしまい申し訳ありません」

 

 私達が部屋に戻ろうとすると、一佳ちゃんが声をかける。

 まだB組女子の入浴時間じゃなかったけど、私達が早く出てきたので、B組の女子達は温泉に入りに行く事にした。

 

「じゃあまだ早いけど、私らも入っちゃおっか」

「あーちょっと待って。峰田くんが昨日みたく覗いてくるかもしんないからさ、念の為見回りしようよ。アタシに考えがあるんだ」

 

 志村は、また性懲りも無く覗きをするかもしれない峰田くんを警戒して、B組の女子達に作戦を話した。

 作戦はこうだった。

 百ちゃんがドライアイスを創造して煙を出し、B組の女子達が風呂場に行って演技をし(もちろん服を着たまま)、壁の向こうから峰田くんが何かしらのアクションを起こしてくるのを待つというものだった。

 作戦の段取りを確認した皆は、服を着たまま風呂場に向かった。

 風呂場に行くと、段取り通り、皆がドライアイスを持って露天風呂に行き、大量の煙を作り出した。

 煙で完全に視界が塞がれると、一佳ちゃん、茨ちゃん、唯ちゃんの三人が演技を始めた。

 

「あー、やっぱ露天っていいな」

「疲れがとれますわね」

「ん」

「あれ? 唯、背中に傷あるよ。ちょこっと」

「ん?」

「もしかして私の蔓がさっき当たってしまったから……申し訳ありません!」

「んーん」

「大丈夫だってさ」

 

 B組の女子達が演技をする中、穴から息を吹き込む音が聴こえてくる。

 

「っ……フーッ!!」

 

 峰田くんの呼吸音を聴き逃さなかった響香ちゃんは、穴の位置を特定し、イヤホンジャックで穴を指した。

 

「あー……こんなところに穴が……塞がなきゃ」

「その前におしおきでしょ」

 

 響香ちゃんは、壁に開いた穴からイヤホンジャックを差し込んだ。

 容赦なく注入される爆音に、悲痛な叫び声が聴こえた。

 

「うぎゃあああ!!」

 

 響香ちゃんの攻撃に叫び声を上げながらのたうち回る峰田くんだったけど、今ならまだ証拠不十分で逃げきれると思ったのか、ふらふらしながら出口に向かおうととしていた。

 でも、猛追の手はゆるまない。

 三奈ちゃんが覗き穴から酸を噴射し、峰田くんが怯んだところを、志村が“個性”で峰田くんを浮かせたり地面に叩きつけたりして餅つきをした。

 

「ぎゃあああ!?」

 

 二人の攻撃に峰田がのたうち回っている間に、A組女子とB組女子が全員集合した。

 

「やはり警戒しておいてよかったですわね」

「ほんと、ありがとね」

 

 百ちゃんが嘆く横で、一佳ちゃんが私達にお礼を言う。

 

「峰田くん、覗きはあかん!」

「いつか捕まるわよ、峰田ちゃん」

「あっ、ドリルとか持ってきてるよ! 用意周到すぎっ」

「み〜ね〜た〜く〜ん♪」

 

 透ちゃんは、峰田くんが持ってきていた小型ドリルについて言及していた。

 峰田くんは、ピッキングで風呂場の鍵を開け、小型ドリルで壁に穴を開けて女子風呂を覗こうとしていたのだ。

 詰め寄る女子達に、逃げようとしていた峰田くんの女子達を見る顔がゆっくりと歪んでいく。

 あっという間にそれは憤怒の表情になった。

 そして叫ぶ。

 

「風呂場で服着てるなんざ、ルール違反だろうが!!!」

「……はぁ!?」

 

 女子達は、当然服を着ていた。

 警戒して見回りにきたのだから、当たり前である。

 

「オイラは旅番組の温泉で、バスタオル使うタレントは認めねえ派なんだよー!!!」

 

 反省よりも性欲。

 勝手極まりない峰田くんの言い分に、女子達の導火線に火がついた。

 

「さいっ……てー!!」

「ルール違反はお前だ!!」

「餅つきが足りなかったかな〜」

 

 透ちゃんと三奈ちゃんが峰田くんを責め、志村は今にも“個性”を使おうとしていた。

 でも峰田くんは、そんな女子達を前にしても一切反省していなかった。

 

「あぁ!? 何ならオイラが脱いで見本をみせてや──」  

 

 言いかけた峰田の視界に、巨大な手がフルスイングでやってきた。

 一佳ちゃんの大拳だ。

 

「ぶごっ!!」

 

 トラックに突っこまれたような衝撃とともに、峰田くんの体と意識が飛んだ。

 その後、百ちゃんが創造したロープで峰田くんをぐるぐる巻きにして、プッシーキャッツ達に突き出した。

 峰田くんが性懲りも無くプッシーキャッツ達のお風呂を覗こうとして、虎さんにお仕置きを喰らったのはまた別の話。

 

 

 

 

 




トゥワイス作中最強キャラ説。
身体情報さえあればサッドマンズパレードで全盛期オールマイトを無限量産できるの怖すぎる……
原作AFOさん、これ見たら原作トゥワイスとトガちゃんがヴィラン側で良かったって内心ホッとしてそう。

◆剣の解説

蝕剣(コロードソード)

能力:強い酸と塩基性の液体を出してあらゆるものを溶かす剣
イメージカラー:赤紫色
剣の形状:鎖で繋がれた二本の短剣。右の剣からは酸、左の剣からは塩基が出る。

硬剣(ハードソード)

能力:あらゆるものの硬度を高める
イメージカラー:メタリックレッド
剣の形状:右腕を覆う形状の鉤爪

重剣(グラビティソード)

能力:重力を操る
イメージカラー:藍色
剣の形状:渦のような模様が描かれたショテル

鞭剣(ウィップソード)

能力:鞭状の物質を出して操る
イメージカラー:ベージュ色
剣の形状:蛇のような模様が刻まれた蛇腹剣

闇剣(ダークソード)

能力:闇を操る
イメージカラー:紫紺色
剣の形状:悪魔の羽根のような模様が刻まれたバスタードソード


◆A組の訓練内容

これに加えて、志村、轟、爆豪、緑谷の4人は無限オールマイト軍団によるリンチを、他の皆はトゥワイス、スピナー、マグネ、Mr.コンプレスとの特訓をローテでやります。
トゥワイスがそれぞれの訓練相手を増やせるので、複数人を同時に指導できます。
これには合理主義者の相澤先生もニッコリ。

芦戸三奈:酸の強度や粘性を素早く切り替える訓練
蛙吹梅雨:ベロや脚の筋肉を鍛える筋トレ
飯田天哉:悪路を走り込む訓練
麗日お茶子:三半規管を鍛えて負荷を減らす訓練
尾白猿夫:切島との組み手
上鳴電気:電撃の操作性を高める訓練
切島鋭児郎:尾白との組み手
口田甲司:一度に操れる動物の数や精密性を上げる訓練
砂藤力道:我ーズブートキャンプ
志村離珠奈:浮力の操作性を高める訓練
障子目蔵:複製腕の生成速度、数、精度を高める訓練
耳郎響香:索敵精度や音波の威力を高める訓練
瀬呂範太:テープの生成速度や操作性を高める訓練
常闇踏陰:黒影の操作性を高める訓練
轟焦凍:炎と氷の操作性を高める訓練
葉隠透:気配を消す訓練
爆豪勝己:爆破の威力と指向性を高める訓練
神剱芽華:他の生徒の訓練に使える剣を創り続けて剣の生成速度を上げる訓練
緑谷出久:我ーズブートキャンプ
峰田実:もぎもぎの生成数や粘着度を上げる訓練
八百万百:創造物の生成速度やクオリティを高める訓練
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