500日後に破滅する転生者   作:M.T.

41 / 45
『志村家長女のリベンジアカデミア』という作品で、瑠奈ママのお話を書いています。
こちらの転生者とは違って、真っ当に現実を生きるオリ主が主人公です。
この転生者の悪行でムカついている方は、そちらで箸休めしていただければと。


第38話 残り21日(1)

 林間合宿3日目。

 

「はぁ…はぁ…げほっ……おぇっ…」

「おい、動き止まってるぞ」

「すみません…」

「だから言ったろキツいって」

 

 私が息を整えながら剣を創造していると、相澤先生が声をかけてくる。

 昨日の就寝時間は夜中の2時。

 起床が7時だから、実質5時間しか寝れなかった。

 しかも私の場合、『癒剣(ヒールソード)』で回復できるから、『疲れたから訓練に参加できません』なんて言い訳が通用しない。

 

 なんでよ、試験で不合格になって補習受ける転生者なんて聞いた事ないんだけど!?

 なんで私だけ補習受けなきゃいけないのよ…!?

 私が地面に手をついて肩で息をしていると、相澤先生が私の前にしゃがみ込んで睨みつけてくる。

 

「何でお前だけ赤点だったかわかるか?」

「いえ…わかりません…」

「お前のような万能な“個性”は、真っ先に狙われるリスクが高い。だからこそ、常に狙われているという前提でリスクヘッジをしておけと再三言ったはずだ。なのにお前ときたら、入学当初から精神面も体力面も全く成長していない。“個性”にかまけ、相手との力量差を見誤る傲慢さ。『訓練だから』という甘え。そして何より、期末で露呈した立ち回りの脆弱さ!! お前が何故他より疲れているか、その意味をしっかり考えて動け。気を抜くなよ。皆もダラダラやるな。何をするにも原点を意識しとけ。向上ってのはそういうもんだ。何の為に汗かいて何の為にグチグチ言われるか、常に頭に置いておけ」

 

 何よそれ…意味わかんない!!

 私だって、入学してから何もしてなかったわけじゃない。

 “個性”だって、戦闘技術だって鍛えてきた。

 なのになんで私だけ寝る時間も削られてグチグチ言われなきゃいけないのよ!?

 

「轟くん大丈夫〜?」

「ああ…」

「どしたん、熱中症?」

「新技の練習してたんだが、体温調節がまだ慣れねえ」

「新技!? ねえ、どんなのか教えてよ」

 

 志村が、馴れ馴れしく轟くんに話しかける。

 ふざけんな…

 絶対あんな奴より私の方がお似合いじゃん!!

 容姿も、家柄も、学力も、“個性”も、私の方が上なのに!!

 なのに何で、この世界の人達は皆あいつに靡くわけ!?

 あいつさえいなきゃ、轟くんも、爆豪くんも、相澤先生も、ホークスも、皆私が手に入れてたのに。

 

 許さない。

 絶対殺してやる。

 

「ねこねこねこ…それより皆! 今日の晩はねぇ… クラス対抗肝試しを決行するよ! しっかり訓練した後はしっかり楽しいことがある! ザ! アメとムチ!」

 

 ピクシーボブの発表に、A組とB組関係なく皆は耳を傾ける。

 

「ああ…忘れてた!」

「怖いのマジやだぁ…」

「闇の狂宴…」

 

 一佳ちゃんが思い出したように言い、響香ちゃんが憂鬱そうに言い、逆に常闇くんは若干ワクワクした様子だった。

 

「イベントらしいこともやってくれるんだ」

「対抗ってところが気に入った」

 

 鱗くんが言うと、物間くんは悪い笑みを浮かべた。

 

「というわけで、今は全力で励むのだぁ!!!」

「「「イエッサァ!!」」」

 

 虎さんの言葉で、皆訓練にやる気を出した。

 ああこれ、原作の流れ的に私だけ参加できないんだろうな…

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 その後、私達は昨日の予告通り肉じゃがを作った。

 

「爆豪くん包丁使うのうま! 意外やわ…!!」

「意外って何だコラ包丁に上手い下手なんざねぇだろ!!」

 

 お茶子ちゃんが、物凄いスピードで野菜を切っていく爆豪くんを見て驚いていた。

 その近くでは、志村が玉ねぎを切っていた。

 

「とほほ…アタシまで肉じゃが肉抜きかい…」

「そもそも男子達を焚き付けたのがあんただからでしょ」

「ぴえんヶ丘どすこい之助」

「泣いてんの?」

「泣いてないよ、玉ねぎが目に滲みただけ」

 

 志村が肩を窄めていると、響香ちゃんがツッコミを入れる。

 男子は、昨日の枕投げで大暴れしたのが原因で、肉じゃがを肉抜きにされたらしい。

 そしてついでに、男子達を焚き付けて喧嘩させた志村も肉抜きにされた。

 ざまあみろ、いい気味だわ。

 

 

 

「「「「いただきまーす!!」」」」

 

 今日のご飯は、肉じゃがとご飯と味噌汁だ。

 昨日と同じように、お腹が空いた皆が肉じゃがをがっついていた。

 そんな中、先に肉じゃがを食べ終わった志村が、他の女子達の肉じゃがのお皿を羨ましそうに眺めていた。

 するとお茶子ちゃんが、志村に話しかける。

 

「ねえ離珠奈ちゃん、肉じゃがおかわりする?」

「……ふぇ?」

 

 お茶子ちゃんの言葉に志村がキョトンとしていると、透ちゃんも続けて言った。

 

「私達、作りすぎちゃって。良かったらなんやけど、食べてくれへん?」

「男子もどうぞー!」

「「「………女神!?」」」

 

 お茶子ちゃんと透ちゃんが言うと、志村や男子達がバッと顔を上げる。

 

「美味え、美味え!!」

「有り難え…!!」

「ありがたや〜、ありがたや〜…」

 

 男子達は、ありがたがりながら女子の鍋から肉じゃがを取り分けた。

 志村も女子の分の鍋から肉じゃがを取り分けて自分の席につき、肉を食べようとした。

 は!?

 何こいつ、相澤先生に肉抜きって言われてんのに、何勝手に肉食ってんの!?

 てか他の女子の皆も皆だよ!

 何こいつに肉を差し出してんの!?

 

「ちょっと待ってよ皆! 志村さんは、男子の皆を焚きつけたのを反省するために罰を受けてるんだよ!? そんなことしたら、志村さんの為にならないよ!」

「確かに、そうですわね…」

 

 私は、皆を説得して、志村に肉をあげるのをやめさせようとした。

 私の説得に、真面目な百ちゃんが納得しかけた、その時だった。

 

「でも、余らせちゃうのももったいなくない?」

「そうだそうだー!」

「「「食品ロスハンタイ!」」」

「皆も反省してると思うし、それくらい許してあげようよ!」

「してる! メッチャ反省してる!」

 

 お茶子ちゃんや透ちゃんの意見に、志村や男子達が同調する。

 私ばっかり先生に怒られて、志村だけやらかしてもお咎めなしなんて、そんなの許さない。

 ええい、こうなったら…!!

 

「先生!! 志村さんが勝手に肉じゃがのお肉食べてます!!」

 

 私は、志村が勝手に肉を食べてるのを相澤先生に言いつけた。

 すると相澤先生は、女子の鍋から肉じゃがを取り分ける男子達を睨みつける。

 

「おいお前ら、何勝手に肉食ってんだ?」

 

 相澤先生が地を這うような声で怒ると、男子達が震え上がり、志村も「ヒュッ」と喉を鳴らす。

 ざまあみろ、いい気味だわ。

 男子達はいいけど、志村、お前だけは肉食うな。

 

「私達があげたんです」

「多く作りすぎちゃったから、食べてもらおうと思って…」

 

 女子の皆は、男子と志村を庇った。

 すると相澤先生は、女子達の気持ちを汲んでか、ため息をついて“個性”を解除する。

 

「……しょうがないな。おまえら、これに懲りたらしっかり反省しろ」

「「「「ハイ!!」」」」

 

 相澤先生の許可が出ると、男子達と志村が返事をする。

 は!?

 何それ、意味わかんない!!

 なんで私の時はグチグチ怒られたのに、志村はあっさり許されてるわけ!?

 相澤先生、絶対志村を贔屓してるじゃん!!

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「…さて! 腹もふくれた皿も洗った! お次は…」

「肝を試す時間だー!!」

 

 ご飯の後、私達はプッシーキャッツの指示で森の前に集まった。

 肝試しを楽しみにしていた三奈ちゃんがはしゃぐ。

 だけどその時だった。

 

「その前に大変心苦しいが、神剱はこれから俺と補習授業だ」

 

 相澤先生の捕縛武器が私を捕らえ、強制的に引き摺った。

 

「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってたので、こっちを削る」

 

 そう言って相澤先生は、私を引き摺って宿泊施設に戻っていく。

 私は、『音剣(サウンドソード)』で肝試しの様子を把握しながら、一人で相澤先生の授業を受けた。

 なんで私だけ補習受けなきゃいけないのよ…

 …いや、でも逆に考えれば、推しを独り占めできてラッキーだったのかも?

 

『三組目! ショートキティとリズナキティ、レッツゴー!!』

 

 ………は?

 なんで志村と轟くんがペアなの?

 意味わかんない。

 なんで!?

 なんで、なんで、なんで!?

 

『結構暗いな』

『手、繋ぐ? アタシ結構夜目利くから』

『おう』

『ワァ、あったかい。ところでちょっと前から気になってたんだけどさ、轟くんて右手と左手で温度違ったりするの?』

『わかんねえ』

 

 ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!

 ふざけんなふざけんなふざけんな!!!

 本当は私がそこにいるはずだったのに!!!

 志村死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!

 

『あっ、違う! 右手は冷たい!』

『そんなに違うか?』

『全然違うよ! いやぁ、いいこと知った』

『……そんなこと言われたの、初めてだ』

 

 ……あー……

 もういいや、志村を殺そう。

 ちょっと予定は早いけど、今実行してやる。

 どのみち、原作の事件のどさくさに紛れて林間合宿中に志村を殺すつもりだったし。

 

「先生、ちょっとトイレ行ってきてもいいですか?」

「何だ、まだ10分しか経ってないぞ」

「すみません…どうしてもお腹が痛くて…」

「さっさと行ってこい。寝る時間削りたくないならグズグズするな」

「はい…」

 

 相澤先生の許可を貰った私は、早速トイレに向かった。

 そしてトイレの中で、剣を創造する。

 今回想像したのは『増剣(デュープソード)』、泥を思わせる波模様が刻まれた双刀だ。

 トゥワイスの“個性”を元に創った、いろんなものを殖やす事ができる剣だ。

 これで(ヴィラン)連合のダミーを森の中に創造して、原作での(ヴィラン)連合の襲撃を再現する。

 そして、そのどさくさに紛れて志村を殺す。

 

 元々剣は作ってあったから、合宿中にこの計画を実行するつもりだったけど、この合宿にトゥワイスも特別講師として参加してるのは嬉しい誤算だった。

 別に元になる人が近くにいなくても、イメージさえできれば好きな剣を創れるんだけど、本人からエネルギーを吸収した方がクオリティの高い能力が創れる。

 トゥワイスの複製からエネルギーを吸収して、剣の養分にさせてもらった。

 

 クラスの皆や先生方を味方につけて志村を雄英から追い出してやる作戦は、悉く失敗した。

 どんなに志村の悪い噂を吹聴しても、志村がオールマイトの弟子だからって理由で、皆志村の事を信じきってるし。

 私が作った好感度を上げる薬も、何故か皆に効かない。

 志村の評判を下げる為にSNSにばら撒いた写真も、すぐにフェイクだってバレて、拡散されて志村が炎上するどころか、ネット民の間でフェイク写真をばら撒いた犯人探しが始まっちゃったし。

 これ以上目立つ行動をしたら逆に私が追い詰められるからしばらく大人しくしてたけど、もう我慢の限界。

 だったらもう、志村を陥れるには殺しちゃうしかないじゃん。

 

 とはいえ、普通に狙っても、あの反射神経オバケの事だから失敗する。

 だから、既に仕掛け人として森の中に入っているB組を使う。

 まずは、ガス(ヴィラン)(名前忘れた)のガスを森の中に散布して、B組の動きを鈍らせる。

 

『唯! 吸っちゃダメ!』

『ん!?』

『この煙、有毒!!』

 

 んーと、志村と轟くんの近くにいるのは、唯ちゃんと一佳ちゃんか。

 普通に志村を狙っても、避けられるだろうからなぁ。

 原作キャラを死なせるのは心苦しいけど、志村を殺す為に死んでもらおう。

 とりあえず、マスキュラー、ムーンフィッシュ、荼毘のコピーを創造して、逃げ場のない広範囲攻撃を繰り出す。

 

『唯!!』

 

 一佳ちゃんが、咄嗟に拳を大きくして唯ちゃんを庇おうとする。

 するとその時、志村が飛び出して二人を庇った。

 ムーンフィッシュの歯が、志村の脇腹に刺さる。

 

『志村!!』

 

 志村が血を流しながら倒れ、轟くんが志村に駆け寄る。

 

『おい志村、しっかりしろ!!』

 

 轟くんは、志村を抱えてその場を離れ、先生達に連絡しようとした。

 だけど、携帯は繋がらない。

 まあ、私が携帯が繋がらないようにしてるからなんだけどね。

 

『しつけえ…!!』

 

 轟くんは、志村を連れて連合から逃げようとしていた。

 ああもう、轟くんと一緒にいるから志村を殺せないじゃん!!

 轟くんは無事に帰して志村だけ殺したいのに!!

 

『何だ…? 狙ってこねえぞ』

『だろうね。あいつらは、君を殺すつもりがないから』

『志村、お前意識あったのか…!?』

『なんとかね〜、血は止まったから大丈夫。心配かけてごめんよ〜』

 

 ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!

 あとちょっとだったのに!!

 あとちょっとで、志村の体を真っ二つにしてやれたのに!!

 

『俺を殺すつもりがないって、どういうことだ…?』

『あいつら、アタシのことは殺したいけど、君の事は生け捕りにしようとしてるんじゃないかな。だからアタシと君が一緒にいたら、迂闊に行動できないんだよ』

『なんでそんなことお前にわかるんだよ?』

『そりゃあまあ、こいつらを裏で操ってる黒幕が誰だかなんとなく分かってるから。いやぁ〜、思い通りに事が運ばないからってこんなことするなんて、ほんと信じらんないよね。あ、信じらんないって、頭悪すぎって意味ね。犯人さん聴こえてるんでしょ〜? アタシを殺せずに無駄に殺人未遂の罪を重ねることになっちゃって、残念でした〜♪』

 

 志村が、轟くんに抱きかかえられながら煽るような発言をした。

 何よこれ、完全に私へのあてつけじゃん!!

 何よ、宣戦布告ってわけ?

 そっちがその気なら、お前なんか八つ裂きにしてやるわよ。

 

 

 

 

 




仮免取得前に転生者を除籍させる事にしたのは、こいつにだけは仮免取らせちゃいけねえという謎の使命感が働いたのと、エリちゃんに汚物を接触させたくなかったからです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。