そろそろ物語を畳みにかかってます。
『犯人さん聴こえてるんでしょ〜? アタシを殺せずに無駄に殺人未遂の罪を重ねることになっちゃって、残念でした〜♪』
志村が、私に聴こえているのを分かった上で煽ってくる。
轟くんと一緒にいるから私が手を下せないのをいい事に、言いたい放題言いやがって。
こっちは、あんただけを殺そうと思えば殺せるのよ。
私は、“個性”を使って増やした分身を操って、志村と轟くんを追い詰めた。
二人はとうとう逃げ場がなくなって、迫ってくる分身を前にして立ち止まる。
私は、志村に狙いを定めて殺そうとした。
本当は原作の襲撃事件を再現して、
私のチーレム生活をぶち壊した責任は取ってもらうんだから!!
死ね、志村ァ!!!
『『『『『とらあああああああ!!!』』』』』
私が志村を殺そうとしたその時、突然湧いて出たトゥワイスの分身が、私の生み出した分身を蹴散らした。
は…!?
なんで!?
なんでトゥワイスが邪魔してくるのよ!?
っていうか、なんで二人が狙われてるこの状況でタイミング良く湧いて出てきたわけ!?
私が混乱していると、他の特別講師の三人も物陰から飛び出してくる。
『リズナちゃん、ショートちゃん、大丈夫!?』
『俺は大丈夫ですが、志村が…!!』
『先生…他の皆は……?』
『全員保護した。お前らも早く行け。ここから先は大人の仕事だ』
特別講師の四人は、私の生み出した分身を相手にしつつ、轟くんと志村を逃がした。
まさかこの世界線では、連合の皆が味方だったとはね。
完全に想定外だったけど、逆に好都合とも取れる。
私の生み出した分身は、原作知識を元に、
つまりこっちの世界線では味方側だろうと、
いくら偽者とはいえ、
四人を足止めしている間に、ゆっくり志村を殺してやるわ。
元はと言えば、あんたが悪いのよ。
あんたが雄英に来て調子に乗ったりしなければ、私は楽しく過ごせてたのに。
あんたさえいなきゃ、轟くんや爆豪くんに蔑ろにされたり、体育祭で表彰台にすら上がれなかったり、期末で赤点を取ったりする事もなかったのに…!!
あんたが、私の人生をメチャクチャにした。
ただ死ぬより苦しくて惨い死を迎えてもらわなきゃ気が済まない。
あんたを殺して、やり直すのよ。
クラスの皆を洗脳して、あんたなんか最初から入学してこなかったと思い込ませて、あんたがいない教室で楽しい学校生活を送る。
あ〜、想像しただけで笑いが止まらないわ。
さて、特別講師は今頃私の分身に足止め喰らっている頃かしら?
『いやぁ、偽者だって分かってりゃやりやすくていいね』
『なんか俺らに似た奴等が混じってなかったか?』
は…!?
何これ、どうなってんの!?
私の生み出した分身達が、次々と潰されて泥の塊に変えられていく。
特別講師の奴等、原作より全然強いんだけど!?
分身に足止めをさせて、その隙に志村を殺そうと思ってたのに、足止めにすらならないじゃない!!
『志村、大丈夫か!!』
『離珠奈ちゃん!!』
ああもう、こうしてる間に、志村がクラスの皆と合流しちゃったじゃん!!
なんでこうも何もかも上手くいかないのよ!!
大体志村の奴、なんでお腹を刺される重傷を負ってるのにピンピンしてるわけ!?
あんたがゴキブリ並みにしつこいせいで、私の作戦が失敗しちゃったじゃない!!
今までも、志村を暗殺しようと何度も命を狙ったけど、暗殺は悉く失敗したし…!!
「おい」
私が次の手を考えようとしていると、不意に相澤先生が話しかけてきた。
「は、はい! なんですか先生!?」
「お前、今の話聞いてなかったのか」
「す、すみません……」
相澤先生に呆れた目で見られて、狼狽えてしまった。
そうだった、今は補習の真っ最中だった。
志村を殺すのに必死で、ちゃんと話聞いてなかったな…
で、今何の話してたっけ。
「今し方マンダレイから通信があった。肝試しに参加してた奴等が、
「ああ、任せておけ」
相澤先生は、施設の番をブラドキング先生に託すと、捕縛武器を持って森へと駆け出した。
ちょっと、何よそれ!?
相澤先生とのマンツーマンもお預け!?
せっかく肝試しに乗じて志村を殺してやるつもりだったのに、これじゃあ私が自作自演の襲撃をした意味が無いじゃん!!
こうなったらもう、最後の手段を使うしか…!!
私は、ブラドキング先生に見張られながら、森の中にもう一体分身を出した。
するとその直後、森が一瞬にして吹き飛ぶ。
私は、森の中にオール・フォー・ワンの分身を出した。
予定は少し早いけど、ここで神野の悲劇を再現して、どさくさに紛れて志村を殺す。
手始めに、オール・フォー・ワンの分身を操って、邪魔な特別講師を全員蹴散らす。
邪魔者を倒してから、志村目掛けて指先から散弾を放つ。
するとその時、爆豪くんが掌から爆破を放って散弾を吹き飛ばし、志村を守った。
『カッチャン…!』
『ぼさっとしてんじゃねえ!!』
『いや、アタシ怪我人…!』
『先生、僕達にも戦闘許可を! このままだと、宿泊施設にいる皆も危ないです!』
『先生達が戦っているのに、俺達だけ黙って見ていることなんてできません。俺達も加勢します』
緑谷くん、爆豪くん、轟くんは、戦闘に参加しようとする。
『ザコは引っ込んでろ! クソ
『おい待て爆豪! そんな言い方ねーんじゃねえのか!?』
『私達だって、ヒーロー志望なんだけど!』
『大事な友達を傷つけられて、引っ込んでなんかいられないよ!』
三人が戦闘に参加しようとすると、他の皆も名乗りを上げた。
なんでよ、なんで皆志村なんかを守ろうとするわけ!?
私の言う事を信じて志村の事を嫌いになるように薬入りの料理を食べさせて、洗脳も仕掛けてるのに、全然効いてないし!!
志村は私の人生をめちゃくちゃにしたのに、皆にチヤホヤされてのうのうと生きてて、マジでムカつく!!
もう志村を殺す為には、なりふり構ってられない。
轟くんと爆豪くんと相澤先生さえ生きてれば、他は全員死んでもいい。
何なら、殺しちゃってもまた生き返らせればいいだけだし。
私は、オール・フォー・ワンの分身が持ってる“個性”を使って、森を焼き尽くした。
森に火が広がって皆が足止めを喰らっている隙に、志村を殺そうとする。
だけどその時、私が燃やしたはずの森が、一瞬にして凍りつき、森全体が氷で真っ白になる。
「な……!?」
見ると、轟くんが体に白い炎を纏っている。
轟くん、まさかもう『燐』を使えるの…!?
原作では、使えるようになったの最終決戦の直前じゃん!!
緑谷くんといい爆豪くんといい、成長速度がおかしすぎるでしょ!?
二人ほどではないにしろ、ほとんど皆、原作の全面戦争編か最終決戦の時と同レベルにまで成長している。
他の皆は、私の生み出した分身を倒そうと、それぞれ死力を尽くして立ち向かってくる。
私が先生に怒られてる間、なんで皆こんなに成長してるわけ!?
あり得ない……!!
どいつもこいつも、私の思い通りにならないばかりか、私の知らないところで急速に成長して私を追い詰めてくる。
なんでよ、こんなはずじゃなかったのに…!!
クラス最強の私が、皆にちやほやされて逆ハーレムを築くはずだったのに…!!
こんな事になったのも、絶対志村のせいよ!!
あの女が何かしたから、皆が私の思い通りにならない…そうとしか考えられない…!!
志村殺す、殺す殺す殺す殺す殺す!!
私は、お腹を怪我してプッシーキャッツ達に介抱されている志村目掛けて、遠距離系の“個性”を全部使って総攻撃を仕掛けようとした。
だけど、その時。
突然、私が操っていた分身の右腕に、ビシッとヒビが入って末端から崩れ始めた。
「え……!?」
私が混乱している間にも、分身の両腕が塵になって少しずつ崩れていく。
それだけじゃない。
志村を攻撃しようとして発動しようとした“個性”が出ない。
なんで何もしてないのに急に分身の腕が崩れたの…!?
こんな事ができる“個性”の人は、ここにいる原作のキャラにはいない。
まさか、志村の仕業…!?
ふと志村の方を見るとそこには、眼帯を外して、右の瞳を月のように青白く輝かせた志村がいた。
志村が左手の指を動かすと、それに合わせて分身が空中に拘束され、一切身動きが取れなくなる。
は……!?
あいつ、一体何をしたの!?
ちょっと前まで、浮く事しかできない雑魚だったくせに!!
ふざけんな、ふざけんなふざけんなふざけんな!!
つくづく私の邪魔をしやがって!!
『行け!!』
轟くんが叫ぶと、緑谷くんと爆豪くんが前に出る。
緑谷くんと爆豪くんは、オール・フォー・ワンの分身の前へと飛び上がると、オール・フォー・ワンの分身目掛けて大技を放つ。
『デトロイト・スマァアアアアッシュ!!!』
『
緑谷くんは『ワン・フォー・オール』100%の『デトロイト・スマッシュ』を、爆豪くんは原作とは比にならない威力の『
二人の攻撃を喰らった分身が、木っ端微塵に吹き飛んで泥のように溶けて消える。
『溶けた…!?』
『このクソ
オール・フォー・ワンの分身を倒す為に限界まで“個性”を使った二人は、分身が溶けたのを見て驚いていた。
嘘でしょ…!?
オール・フォー・ワンの分身がこんな簡単に倒されるなんて…!!
せっかく合宿襲撃と神野の悲劇を再現して、そのどさくさに紛れて志村を殺してやろうと思ってたのに…!!
でも、今の攻撃で轟くん、爆豪くん、緑谷くんは限界まで“個性”を使ってしまった。
最後の最後に邪魔してきた志村も、“個性”がキャパオーバーしたのか、呑気に眠っている。
もう一度分身を出して襲撃すれば、誰にも私を邪魔できない。
だったらもう一度…!!
「う゛…!?」
私が剣を創造してもう一度オール・フォー・ワンの分身を生み出そうとしたその時、ビキッと腕に痛みが走って“個性”の発動を阻害される。
何、この感覚…!?
“個性”が使えない…!?
どうなってるの…?
今まで何の心当たりもなく“個性”が急に使えなくなった事なんて、一度もなかったのに…!!
相澤先生は生徒達の救出に向かってるのに、なんで急に“個性”が使えなくなったの…!?
「大丈夫か、お前達!!」
後ろからブラドキング先生の声が聴こえて、我に返る。
振り向くと、ブラドキング先生が、ガスで気を失って施設に運び込まれたB組の皆を介抱していた。
原作ほどガスの被害が深刻じゃなかったからか、ほとんどの生徒が既に目を覚ましていた。
「ブラド先生…」
「ここどこだ…?」
さっきまで気を失っていた切奈ちゃんと骨抜くんが、頭を押さえながら起き上がる。
そうしている間に、A組の皆や、ガスで気を失わなかったB組の人達、そして教師陣やプッシーキャッツ達も宿泊施設に戻ってきた。
志村と特別講師の4人以外は全員大きな怪我は無く、一番重傷だった志村も命に別状は無いとの事だった。
志村は救助ヘリでセントラル病院へと救急搬送され、ガスの被害を受けたB組の皆も病院で検査を受けた。
全てが終わった後、マッスルフォームのオールマイトが合宿施設へと駆けつけてきた。
「もう大丈夫!! 私が来……あれ? もう終わってる?」
「来るのが遅いですよ、オールマイト……」
事件が解決した後で駆けつけてきたオールマイトに、相澤先生が呆れ顔で言い放つ。
今回の事件を受けて、合宿は中断し、生徒達は不要不急の外出を控え自宅待機をする運びとなった。
結局、あれからも志村を暗殺しようとしたけど、発動しようとする前に発動を阻害されて、志村を殺す事は叶わなかった。
それにしても、なんで“個性”が出なくなったんだろう…?
普通にちょっとした用で剣を出そうと思った時は出せるのに、志村を殺そうと思って“個性”を出そうとした時だけ剣が出ない。
志村の仕業……?
いや、そんなはずはない。
だったら何で……?
……そういえば、私の脳内に現れてはいちいち小言を言ってきてたあいつ、最近私に声をかけてこなくなったな。
あれだけうるさく小言を言っていたのに、なんで何も言ってこなくなったんだろう。
☆破滅まで、残り21日───