相澤消太 side
ブラドキングの通報により、
生徒42名のうち
プロヒーローは10名のうち4名*4が重・軽傷を負った。
一方
身元不明の
全員が跡形もなく消えていた事、そしてオール・フォー・ワン、マスキュラー、ムーンフィッシュの三名は事件前に死亡が確認済みである事から、襲撃に来た
特別講師のトゥワイスと似た“個性”を持つ犯人による犯行と思われるが、トゥワイスは事件当時、犯行が不可能だった事が証明されている。
多くの謎を残したまま、林間合宿は幕を閉じた。
そして、合宿襲撃事件から3日後。
あれから、3日という時間があっという間に感じるほど慌しく事が進んだ。
事件の翌日、校長、ブラドキング、そして俺の三人は、今回の事件の謝罪会見に出席した。
世論は雄英へのバッシング一色かと思われたが、良識的なジャーナリストやネット民のおかげで、ようやく雄英への非難が下火になってきた頃だ。
「林間合宿中の襲撃事件とは…前代未聞だぜ、こりゃあよ…」
「何者かの“個性”で複製された偽者だったとはいえ、凶悪犯の侵入を許してしまった時点で、僕達の認識は甘かったということだね」
「要は知らず知らずのうちに平和ボケしてたんだ、俺ら」
スナイプ、根津校長、マイクが口を開く。
「己の不甲斐なさに心底腹が立つ…彼らが必死で戦っていた頃、私は…半身浴に興じていた…っ!!」
オールマイトは、その場にいる事ができなかった自分を恥じ、拳を握りしめながら項垂れていた。
誰も、オールマイトを責められなかった。
というよりむしろ…もし俺の憶測が正しければ、これは俺の失態だ。
唯一犯行が可能だった奴を、そこにいながらちゃんと見張っていなかったんだから。
「頭を上げてください、オールマイト。これはむしろ、みすみす犯行を許してしまった俺のミスです」
俺は、頭を下げて自分を責めるオールマイトに声をかけた。
「相澤…?」
「俺のミスって、どういうこと?」
俺が言うと、マイクとミッドナイトをはじめ、他の教師陣が俺に注目する。
俺は、全員が注目しているのを確認してから、自分の憶測を話した。
「ここからは憶測になりますが…合宿の場所を知ることができ、尚且つ処刑済みの
今回の襲撃事件を引き起こす事が可能だった人物が、ひとりだけいる。
合宿の場所とスケジュールを把握し、生徒達が森に行く肝試しのタイミングを狙って、オール・フォー・ワンの偽者をピンポイントでその場所に送り込む事が可能だった人物が。
もちろん、無関係な
だが俺の推測通り、そいつが犯人だとするなら、全ての辻褄が合う。
ただ、唯一わからないのが動機だ。
そいつは何故、生徒達の命を狙う必要があったのか。
生徒達の命が危険にさらされる事件が起こってしまった以上、二度と同じ失敗は許されない。
何故あの事件が起こったのか、原因から考え直す必要がある。
◆◆◆
神剱芽華 side
林間合宿から一週間後。
林間合宿は、私が起こした事件が原因で中止になり、私達ヒーロー科生徒は各自家で過ごす事になった。
ちなみに私が殺そうとした志村は、病院での処置を受け翌日には退院したらしい。
B組も含めて、私以外の皆はお見舞いに行きたがっていたけど、状況が状況だからと相澤先生に止められたそうだ。
そして今日は、お気に入りの白いワンピースを着て、父さんや母さんと一緒にオールマイトと相澤先生を家に迎え入れていた。
そう、今日は家庭訪問の日だ。
ちなみに家庭訪問は、原作通りA組はオールマイトと相澤先生、B組は校長先生とブラドキング先生が担当するらしい。
オールマイトはマッスルフォームでいつもの黄色いスーツを着ていて、相澤先生は長い髪をハーフアップにして無精髭を剃って黒いスーツを着ている。
ひゃあああ、相澤先生めっちゃイケメンだぁぁ…!
「お暑い中わざわざお越しくださり、ありがとうございます」
オールマイトと相澤先生を応接間に通すと、ソファーに横並びに座って二人に挨拶をする。
応接間には、フカフカの青いソファーに、アンティーク調の白いローテーブルが置かれている。
周りには、母さんの趣味でいろんなアンティークが置かれていて、中には値段がつけられないようなものまである。
実田さんが、オールマイトと相澤先生に、アイスティーと蜂蜜レモンゼリーを振る舞う。
二人は、実田さんが出したお茶とお菓子には手をつけず、母さんに視線を向けた。
すっかり痩せて顔も青白くなった母さんを見て、二人は複雑そうな表情を浮かべる。
「失礼ですがお母様、お体の具合はいかがでしょうか? 無理をせず、ゆっくりお休みになられては?」
「ケホッ…お気遣いありがとうございます。今日は体調が良いので…大丈夫です」
相澤先生が話しかけると、母さんは咳をしながら答える。
今年に入ってからというもの、母さんは体重が20kg近くも落ち、今では一人でトイレにも行けないほど衰弱している。
父さんは、そんな母さんにつきっきりになって、私に冷たく当たるようになった。
そんな家庭事情を察したのか、相澤先生の表情が僅かに険しくなった。
そんな空気を変えるべく、オールマイトがオホン!と咳払いをしてから話し始める。
「えー、既にお話はいっているかと存じますが…」
「全寮制の件…ですよね」
オールマイトの話を遮って、父さんが口を開く。
そう、この家庭訪問は、全寮制の許可を得る為のものだ。
原作通り、林間合宿での事件が原因で入寮が決まったらしいけど、原作とは違う点がひとつある。
それは、この全寮制が、林間合宿の事件が解決するまでの一時的なものだという事だ。
事件の捜査がひと段落ついたら全寮制は解除する予定だそうで、ヒーロー科以外は訓練もないので、寮に残るかどうかは任意だという。
全寮制になるって事は、一緒に寮で暮らせるって事じゃん。
合宿襲撃が無かったら全寮制にならなかっただろうし、合宿襲撃して良かったわ。
「私達三人で話し合いました」
「娘を寮に入れることに同意します」
父さんと母さんは、あっさり全寮制に賛成した。
するとオールマイトと相澤先生は、少し驚いたような表情を浮かべる。
「どうかしましたか?」
「あっ、いえ…やけにあっさり了承してくださったものですから…」
父さんが話しかけると、オールマイトが少し戸惑った様子で答える。
そんなオールマイトと相澤先生を見て、父さんと母さんが顔を見合わせて頷く。
そして、母さんがポツポツと話し始めた。
「実は私、不安だったんです。娘はなまじ何でも出来てしまうから、今までの先生は皆この子の外面だけを誉めそやしてばかりで、正してくれる人が誰もいませんでした。ですが、きちんと娘のことを叱ってくれる先生がいると知って安心しました」
母さんの言葉を、オールマイトと相澤先生が真剣な表情で聞く。
だけど…
「それにA組には、娘よりも強い子もいるようですし」
父さんが、水を差すような発言をかました。
「ちょっ…父さん!?」
「ご存知の通り、この子は“個性”や才能に恵まれ、雄英に入るまでは一度も挫折を味わうことなく生きてきました。これから先も、一度も挫折を味わわずに、傲慢で自意識過剰な性格になってしまうのではないかと不安でした。でも体育祭を見て、雄英はこの子に必要な『試練』と『挫折』を与えてくれる良い環境だと思ったんです」
「娘より強い子がいるなら、この子もいい方向に成長できると思います」
「「どうか、娘をよろしくお願いします」」
父さんは、私の頭を後ろから掴んで、母さんと一緒に頭を下げた。
父さん、何言ってんのよ!?
わざわざ先生の前で私の印象を下げるような事を言わないでよ!!
あああ、もうイライラする!!
せっかく相澤先生が家庭訪問に来てくれたのに!!
何よ、プロヒーローでイケメンな父親と美人で金持ちの母親で、親ガチャ大当たりだと思ったのに…!!
母親は勝手に弱って
父親は職場体験で娘の活躍の機会を奪っていじめてくるわ、ババアの介護に夢中になって全然私を見てくれないわで、
◆◆◆
相澤消太 side
「本日はありがとうございました」
神剱の母親、刀華さんが、玄関まで俺達を見送ってくれた。
神剱の家に家庭訪問に来て、この人の姿を見て、俺は思わず目を疑った。
授業参観に来てくれた時の第一印象は、綺麗で聡明な人だという印象だった。
だが俺の目の前にいる彼女は、あの頃からすっかり変わり果てている。
体は痩せ細って頬は痩け、見るからに毛量が減り、生気がまるで感じられない。
おそらく、最低限の栄養補給すらできていない日々が続いているはずだ。
彼女が何故こうなってしまったのか、俺には全てを理解する事はできないが、彼女やマーリンと話していて何となく察してしまった。
彼女がこうなってしまった原因は、十中八九神剱だ。
俺があいつの問題行動を報告する度に、刀華さんは泣きながら何度も謝っていた。
授業参観に来てくれた時の彼女は、優しくも厳しくもある親という印象で、放任主義だったり過度に甘やかしたりする親には見えなかった。
マーリンが志村の話をした時の不貞腐れた顔を見るに、家で何度注意しても反省しなかったんだろう。
どんなに親が真摯に向き合っても本人が反省しないんなら、それはもう親の問題じゃなくて、本人の問題だ。
難のある性格を外面と実力で誤魔化してきたから、今まで誰もあいつの本性に気づけなかったんだろうな。
なんて考えつつ靴を履いていると、刀華さんが話しかけてきた。
「相澤先生」
刀華さんは、俺の顔をまっすぐ見て口を開く。
どこか覚悟を決めたような表情だった。
「芽華の母親として、先生にお願いがあります」
彼女は、真剣な眼差しを向けながら俺に頼み事をしてきた。
内容は……俺の胸の内に留めておこう。
「娘のこと、どうかよろしくお願いします」
そう言って彼女は、深々と頭を下げた。
俺は、次の訪問先へ向かう車に乗って、これからの事を考える。
次は志村の家だ。
このまま行けば、あと20分くらいで到着する。
「今日は志村少女、爆豪少年、緑谷少年のお宅で終わりだね」
「はい」
オールマイトの言葉に頷きつつ、刀華さんに言われた言葉を思い出す。
母親としてのお願い…ねぇ。
随分と思い切った相談だ。
神剱の授業態度が目に余るとはいえ、実の娘に対してあんな判断を下せるもんかね。
それだけの事をしてでも、あいつが道を踏み外す前に止めてほしいって事なんだろう。
「あ、ハイ。よろしくお願いします」
次の訪問先に行って説明すると、志村の父親の離壱さんがあっさり全寮制に承諾した。
志村はあの事件で命を落としてもおかしくない重傷を負ったというのに、離壱さんは雄英や俺達を責めるどころか、志村が寮に入る事を快諾してくれた。
「雄英に行きたいって言ったのはこの子の判断ですし、先生方は悪くないじゃないですか。それに、リズナは友達と一緒に寮に入りたいんだよね? えっと、確か神剱さんだっけ?」
「そうそう、神剱ちゃん」
志村は、離壱さんと顔を見合わせて笑う。
犯人のクソと大人の不手際のせいであれだけの重傷を負ったというのに、こいつは誰を責める事もなく、未来を見据えて笑っている。
俺の憶測は、胸の内に秘めておこう。
神剱が合宿襲撃の最有力容疑者だって事。
そしてこの全寮制の目的が、あいつを監視する為だって事は。
☆破滅まで、残り14日───
原作で全寮制になった本当の理由を知らずに喜んでるバカ転生者ェ…
全寮制になった本当の理由は、犯人が雄英生の誰かだって教師陣が勘付いてるからなんですよねぇ…