500日後に破滅する転生者   作:M.T.

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第4話 残り137日(2)

「「「「“個性”把握…テストォ!?」」」」

 

 相澤先生の発表を聞いた他の皆は、声を揃えて驚く。

 皆が困惑している中、お茶子ちゃんが相澤先生に尋ねる。

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

「ヒーローになるならそんな悠長な行事、出る時間ないよ。雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り。ハンドボール投げ、立ち幅跳び、50m走、持久走、握力、反復横跳び、上体起こし、長座体前屈。中学の頃からやってるだろ? “個性”禁止の体力テスト。国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けてる。合理的じゃない。まぁ文部科学省の怠慢だよ」

 

 そう言って相澤先生は、爆豪くんの方を見る。

 

「爆豪、中学の時ハンドボール投げ何mだった」

「79m」

「じゃあ“個性”を使ってやってみろ。円から出なきゃ何をしてもいい。早よ。思いっきりな」

 

 爆豪くんは、相澤先生が投げたボールを受け取ると、測定用の円の中に入った。

 

「んじゃまあ…ッラア!!!」

 

 

 

 ――ボオォン!!! 

 

 

 

 爆豪くんが球威に爆風を乗せてボールを投げると、ボールは三重の環状の雲を残して遥か彼方へと飛んでいく。

 

「『死ね』って言わなかった! カッチャン偉いゾ☆」

「うっせえ、てめーは俺の保護者か!」

 

 爆豪くんに志村が馴れ馴れしく話しかけると、爆豪くんが怒鳴る。

 同じ中学校だかなんだか知らないけど、距離近すぎじゃない?

 しばらくしてボールが着地し、相澤先生の持っていた端末から『ピピッ』と音がする。

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

 そう言って相澤先生が見せた端末には、『2075.2m』と表示されていた。

 え、嘘でしょ…!?

 原作の三倍近く…!?

 

「なんだこれ!! すげー面白そう!」

「2kmってマジかよ!?」

「“個性”思いっきり使えるんだ!! 流石ヒーロー科!」

 

 皆がキャッキャとはしゃいでいると、相澤先生の目つきが鋭くなる。

 

「………面白そう…か。ヒーローになるための三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」

 

 相澤先生のその言葉で、場の空気がガラッと変わる。

 

「よし。トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」

「「「はあああ!?」」」

 

 相澤先生が言うと、皆は声を荒げて驚いた。

 

「生徒の如何は先生(おれたち)の自由! ようこそ、コレが雄英高校ヒーロー科だ」

 

 相澤先生は、前髪を掻き上げて不敵に笑いながら言った。

 うっわ、イケメン。

 

「最下位除籍って…!! 入学初日ですよ!? いや初日じゃなくても…理不尽過ぎる!!」

 

 お茶子ちゃんは、またもや相澤先生に対して抗議をした。

 

「自然災害…大事故…身勝手な(ヴィラン)達…いつどこから来るか分からない厄災。日本は理不尽に塗れてる。そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったならお生憎。これから三年間、雄英は全力で君達に苦難を与え続ける。“Puls Ultra”さ。全力で乗り越えて来い」

 

 相澤先生は、挑発するように笑顔を浮かべながらクイクイっと人差し指を曲げた。

 

「さて、デモンストレーションは終わり。こっからが本番だ」

 

 こうして、“個性”把握テストが始まった。

 

 

◆第一種目 50m走

 

 私は、爆豪くんと一緒に走る事になった。

 私が見惚れていたら、爆豪くんに睨まれた。何故?

 おっと、それよりテストに集中。

 スピード系の種目だったら、『雷剣(サンダーソード)』が使えそうだな。

 私は、『雷剣(サンダーソード)』を創造して構えた。

 

《ヨーイSTART!!》

 

「爆速ターボ!!」

「『雷剣(サンダーソード)』!」

 

 スタートと同時に、雷の速度で駆け抜ける。

 

「神剱、測定不能」

「「「「測定不能とかあるんだ!!?」」」」

 

 ありゃ、速度出しすぎてエラーになっちゃった。

 これなら、別の剣でも良かったかもな。

 なんて思っていると、爆豪くんもゴールした。

 

「爆豪、1秒56」

「チッ」

 

 え、嘘でしょ…1秒台…!?

 やっぱり爆豪くん、原作より大幅に強化してる。

 何で…!?

 

「緑谷、1秒53」

 

 緑谷くんは、緑色のオーラのようなものを纏って、現状2位の記録を叩き出した。

 

「轟、1秒91」

 

 そして轟くんは、氷での移動に加えて、左の炎を推進力にして現状4位に躍り出た。

 どうなってんのよ…

 緑谷くんは既にフルカウルを使いこなしてるし、轟くんは普通に左の炎を使ってるんですけど!?

 …まさかこの世界線の轟くん、エンデヴァーに虐待されてない?

 何それ、私が轟くんの心を救ってあげるつもりだったのに!

 だったら左側の火傷はなんなの?

 

「志村、2秒68」

 

 私が混乱している間に、志村が走り終えた。

 まさか…あの女が変な事をしたせいで、三人の未来が変わった?

 あの女だけは、原作にはいない。

 あの女が三人に何かしたとしか考えられないよ。

 

 

◆第二種目 握力

 

 私は、今度は『力剣(ブローンソード)』を創造した。

 全長2mを超える斧の形をした剣で、刃の部分には稲妻のような模様が刻まれている。

 剣を握ってエネルギーを込めると、剣が白から山吹色に輝き、髪の色も鮮やかな山吹色に変わる。

 その状態で握力計を握ると、握力計がバキッと音を立てて壊れた。

 

「おい神剱、備品を壊すな」

「あっ、ごめんなさい」

「罰として反省文3枚な」

「はい」

 

 私が握力計を壊すと、相澤先生には怒られ、他の皆は驚いていた。

 一方で、浮遊系“個性”仲間でお茶子ちゃんとペアを組んだ志村はというと。

 

「あはは、なんか凄い人がいるなぁ」

「220kgw!? 凄!」

 

 志村は、笑いながら素の力だけで化け物じみた記録を叩き出す。

 あいつマジで何なの?

 

 

◆第三種目 立ち幅跳び

 

「先生、アタシの場合どうすればいいですか?」

 

 志村はそう言って、“個性”を発動する。

 すると志村の体がふわりと宙に浮いた。

 

「どれだけ続けられる?」

「眠くなるまでですね。寝たまま浮いてるとどっか行っちゃうので」

「じゃあ無限で」

「「「無限!!?」」」

 

 ここに来て初めて、志村が1位に躍り出た。

 私は志村の記録を横目で見つつ、次の種目に使えそうな剣を創造した。

 次に使うのは『翔剣(フライソード)』、鍔の部分が翼になっていて、刃の部分に風をイメージした模様が刻まれた剣だ。

 剣を握ってエネルギーを込めると、剣が青緑色に光り、髪の色も青緑色に変わる。

 そのまま上へジャンプすると体が浮き上がり、空を飛ぶイメージをすると体が鳥のように空を飛んだ。

 記録はもちろん無限。

 でも先に志村が無限を出したせいで、私の無限が霞んだ。

 

 

◆第四種目 反復横跳び

 

 さて…

 どうしよっかな。

 『雷剣(サンダーソード)』か『力剣(ブローンソード)』でいけそうだけど、違う能力をお披露目したいからなぁ。

 かといって、この種目に使えそうな能力は今無いし…

 そうだ、新しく作っちゃおう。

 

「ひゅううう〜♪」

 

 私は、両側にもぎもぎを置いてブヨンブヨン跳ねている峰田くんに目をつけた。

 

「上鳴くん峰田くん、わたしもまぜて」

 

 私は、峰田くんと、彼とペアを組んでいる上鳴くんに声をかけた。

 私が両腕で胸を寄せるポーズをしながら言うと、二人は顔を赤くして頷く。

 

「お、おう!」

「もちろんいいぜ!」

 

 予想通り、二人は私を混ぜてくれた。

 二人が私を仲間に入れてくれた理由は明白だけど。

 

「うひょおおお、デカパイが揺れるところを間近で見られるぜぇ…!」

 

 私は、新たに剣を創造して、峰田くんの“個性”のエネルギーを剣に吸わせた。

 刃の部分にブドウの実のような模様が刻まれた、小型のナイフだ。

 ナイフにエネルギーを込めると、刃の部分が紫色に輝き、髪が紫色に変わる。

 この剣を握っている間は、峰田くんの『もぎもぎ』を使う事ができる。

 そうだな、『実剣(グレープソード)』とでも名付けておこう。

 『実剣(グレープソード)』でラインの外側を斬ると、何もない空間から球状の物質がモコモコと湧き上がる。

 ラインの両側に球状の物質を置いてから、もう一本剣を出す。

 

 次に出すのは、瞬発力を高める『駆剣(ダッシュソード)』。

 刃の部分に突風をイメージした模様が刻まれたレイピアだ。

 レイピアにエネルギーを込めると刃の部分が明るいオレンジ色に輝き、私の髪は紫色から明るいオレンジ色に変わる。

 『駆剣(ダッシュソード)』を握りながら横に跳ぶと、体が球状の物質に跳ね返り、猛スピードで横移動を繰り返す。

 

「ざ、残像が見える…」

「ぬああああああああ!!!」

 

 私が峰田くんを軽く凌駕する速度で反復横跳びをすると、上鳴くんは測定するのを諦め、峰田くんはorzのポーズを取って喚いた。

 記録は測定不能。

 一方の志村の記録は147回。

 相変わらず化け物じみた記録だった。

 

 

◆第五種目 ハンドボール投げ

 

 この種目では、志村とお茶子ちゃんが無限を叩き出した。

 せっかくだから、全種目で1位を取りたいところ。

 でも今は二人の無限と並べる能力がないので、新たに能力を作るしかない。

 

 私は、新たに剣を創造して、今度はお茶子ちゃんの“個性”のエネルギーを剣に吸わせた。

 湾曲した刃に土星のような模様が刻まれたレイピアで、エネルギーを込めると刃の部分が桜色に輝き、髪の色も桜色に変わる。

 『浮剣(フロートソード)』とでも名付けておこう。

 私が『浮剣(フロートソード)』を握ったまま円の中に入り、ボールを手放すと、ボールがふわっと宙に浮いてそのままぐんぐんと上に上っていく。

 

「「「また無限!!?」」」

 

 記録はもちろん無限、お茶子ちゃんの“個性”を使ったから当然なんだけどね。

 私が人の“個性”を吸収して創造した剣は、本人の火力を下回る事はない(精度はともかくとして)。

 志村にドヤ顔してやると、志村は一瞬感情がごっそり抜け落ちたような無表情になったかと思うと、すぐに笑顔になった。

 

「にゃはは、これなら神剱ちゃんに勝てると思ったんだけどなぁ」

 

 

◆第六種目 持久走

 

 50m走の時と同じように、『雷剣(サンダーソード)』を使って走った。

 記録は0.05秒。

 この種目は轟くんと爆豪くんが2位争いをしていて、その二人を緑谷くんが猛スピードで追いかけた。

 またしても飯田くんがorzになっていた。

 

 そして志村の記録は、1分53秒。

 流石に今回は飯田くんと八百万さんに負けてたけど、充分人間離れした記録を叩き出していた。

 

 

◆第七種目 上体起こし

 

 反復横跳びの時と同じように、『実剣(グレープソード)』と『駆剣(ダッシュソード)』を使った。

 速すぎて生身だと私の体を押さえられないので、八百万さんに頑丈な拘束具を創造してもらって足を押さえてもらい、ついでに測定器を創造してもらった。

 記録は測定不能。

 私の叩き出した記録にまた峰田くんが泣き喚き、近くにいた尾白くんが若干ショックを受けていた。

 どうやら、私が測定不能を出すまでは、尾白くんが1位だったらしい。

 

 志村の記録は59回。

 いよいよ次で最後か。

 

 

◆第八種目 長座体前屈

 

「離珠奈ちゃん、柔らかいね」

「そうかなぁ」

 

 志村は、筋肉でバキバキなのに意外と柔軟性もあるらしく、80cmと、“個性”を使っていない女子の中ではダントツ1位の記録を叩き出していた。

 さてと…私はどうするかな。

 

「障子くん、常闇くん、一緒にやらない?」

「ああ、構わないが…」

 

 私は、ペアで測定していた障子くんと常闇くんに近づき、新たに剣を創造して障子くんの“個性”のエネルギーを吸収した。

 刃の部分に吸盤のような模様が刻まれたフランベルジュで、エネルギーを込めると刃の部分がペールオレンジに輝き、髪の色がペールオレンジに変わる。

 『腕剣(テンタクルソード)』とでも名付けよう。

 私が『腕剣(テンタクルソード)』を身につけた状態で測定器に手を置くと、掌から腕が生える。

 ハ◯ハナの実みたいな感じで、腕を起点にして無数の腕を生やし、測定器を前に押し出す。

 その光景を見て、他の皆はギョッとしていた。

 現状1位の梅雨ちゃんの記録の2倍近く伸ばしたところでダルくなって、そこで伸ばすのをやめた。

 

「神剱、41m」

 

 結果は、もちろん1位。

 全種目で1位を叩き出し、全ての測定が終わった。

 峰田くんは顔面蒼白になっていて、葉隠さんも(見えないけど)落ち着かない様子だった。

 流石に最下位じゃないだろうけど、上鳴くんと耳郎さんも他人事じゃないのか少し焦っている。

 まあ、全種目1位の私には関係ないけど。

 

 

「んじゃパパっと結果発表。トータルは単純に各種目の評点を合計した数だ。口頭で説明すんのは時間の無駄なので、一括開示する」

 

 そう言って相澤先生が、結果を表示する。

 

 

  1位 神剱芽華   11位 切島鋭児郎

  2位 緑谷出久   12位 芦戸三奈

  3位 爆豪勝己   13位 麗日お茶子

  4位 轟焦凍    14位 口田甲司

  5位 志村離珠奈  15位 砂藤力道

  6位 八百万百   16位 蛙吹梅雨

  7位 飯田天哉   17位 瀬呂範太

  8位 常闇踏陰   18位 上鳴電気

  9位 障子目蔵   19位 耳郎響香

 10位 尾白猿夫   20位 葉隠透

            21位 峰田実

 

 

 なんとか1位を取れたけど、オリジン組三人は原作より大幅に強化していた。

 2位から5位の4人は僅差で、誰が2位になってもおかしくなかった。

 特にあり得ないのが、志村だ。

 浮くだけの“個性”のくせに、素の身体能力だけで他の三人と渡り合っていた。

 

「お、オイラが最下位…」

 

 最下位の峰田くんは、真っ白に燃え尽きてorzになっていた。

 原作では相澤先生が緑谷くんに可能性を感じて除籍を無かった事にしたけど、この世界線では最下位が峰田くんだから、普通に除籍される可能性も充分にあるんだよなぁ。

 

「ちなみに除籍は嘘な」

 

 そう言って相澤先生は、空中に表示された順位表を消した。

 皆がポカンとしていると、相澤先生はハッと笑って言った。

 

「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

「「「はーーーーーー!!!!??」」」

 

 相澤先生の言葉に、主に飯田くん、お茶子ちゃん、緑谷くんの三人が驚愕する。

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない…ちょっと考えれば分かりますわ…」

 

 驚愕している三人を見て、八百万さんが呆れ返る。

 これが嘘じゃないんだなぁ。

 今回は峰田くんを見込みアリと判断して除籍を無かった事にしたけど、見込みが無かったら普通に除籍する先生だからね?

 

 “個性”把握テストが終わった後、私達女子は反省会を兼ねた女子会をした。

 

 

 

 




青山不在をしれっとスルーする転生者ェ…
こいつ、心操くんを普通科だからって存在ごと忘れてましたし、推し以外は基本的に興味ないです。


今回出てきた剣の解説

◆『力剣』

能力:筋力を増強する
イメージカラー:山吹色
剣の形状:稲妻模様(雷剣とは若干違う)が刻まれた斧


◆『翔剣』

能力:空を飛ぶ事ができる
イメージカラー:青緑色
剣の形状:風をイメージした模様が刻まれ、鍔の部分が翼になったアーミングソード(片手剣)


◆『実剣』

能力:峰田実の『もぎもぎ』が使える
イメージカラー:黒紫色
剣の形状:ブドウの絵が刻まれたナイフ


◆『駆剣』

能力:瞬発力を増強する
イメージカラー:柑子色
剣の形状:風をイメージした模様(翔剣とは若干違う)が刻まれたレイピア


◆『浮剣』

能力:麗日お茶子の『無重力』が使える
イメージカラー:桜色
剣の形状:土星の絵が刻まれた、レイピアとショテルを足して二で割ったような形状の剣


◆『腕剣』

能力:障子目蔵の『複製腕』が使える
イメージカラー:ペールオレンジ
剣の形状:タコの吸盤が描かれたフランベルジュ


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