最後の第五戦、私と障子くんは、志村と轟くんのコンビと戦う事になった。
よりによって志村と轟くんがペア、しかも私の対戦相手だなんて…
…いや、でもこれは逆にチャンス。
ここでカッコいいところを見せて、皆に私の魅力をアピールするのよ。
「……おい、神剱。聞いてるか?」
私が考え事をしていると、障子くんが話しかけてくる。
「あっ、ごめん。何だっけ?」
「まず、お互いの“個性”を確認し合わないか? 俺の“個性”は『複製腕』。肩から生えた二本の触手から、口や耳といった器官を複製できる。複製した器官は元の器官より機能が強化されていて、目や耳を使った索敵ができる」
そう言って障子くんは、触手の先から目や耳を増やす。
うわ…漫画とかアニメで見てる時は何も思わなかったけど、リアルで見ると結構キモいな。
そりゃあ原作で異形差別なんてものがあるわけだ。
「わたしの“個性”は『霊剣』。剣を創造して、創った剣にエネルギーを吸収させていろんな能力を使うことができるよ。例えば炎からエネルギーを貰ったら、炎を操れたりとか」
「…強いな」
「そうかなぁ」
「作戦はどうする? 神剱は、志村と轟の“個性”を知らないか?」
「わたし知ってるよ。志村さんは『浮遊』っていって自分や周りのものを浮かせる“個性”で、轟くんは氷と炎を出す“個性”だよ。わたしは“個性”を知ってるけど、二人がどういう出方をするのかまではわかんないから、障子くん索敵お願いね」
「わかった」
正直言って、私の索敵能力の方が範囲も精度も桁違いに優れてるんだけど、この訓練では索敵は障子くんに任せる。
障子くんに何もさせないで私が全部一人で解決しちゃったら、流石にオールマイトに怒られるだろうし。
◇◇◇
そんなこんなで、訓練が始まった。
障子くんが、耳と目を複製してビルの中を索敵した。
「4階北側の広間に2人確認。どうやら防衛戦の態勢を整えているようだ」
「防衛戦か…そう来るって事は、向こうはわたし達が索敵できるのを知ってるみたいだね」
障子くんの報告を聞いた私は、轟くん達は私達が索敵できるのを知っていると結論づけた。
こっちに索敵要員がいるのを知らないなら、志村の“個性”を使って奇襲を仕掛けるはず。
奇襲したところでバレるから、防衛戦が最適解だと考えたわけね。
「OKありがとう障子くん、終わるまで外で待っててね」
そう言って私は、『
もう一本の剣を創造する。
『
『
「ッ!! 志村下がれ!!」
私が部屋の中に侵入した瞬間、轟くんが右側の氷でビル全体を凍らせた。
なんか原作より氷のスピードと範囲が広くない?
障子くん、外で氷漬けになってないかな。
轟くんは、咄嗟に自分の後ろに巨大な氷の壁を立てて、その後ろに核と志村を隠した。
うわ、かっこよ。
志村が轟くんに守られてるって構図が癪だけど、これで轟くんと二人きりになれた。
「轟くん、核は渡してもらうよ」
「させるか…!」
私が『
明らかに私を捕えるという意思を持って、無数の氷の柱が伸びる。
うわ、原作より氷の生成スピードが速いし、こんなに細かく形状操作できるもんなの?
原作の倍…いや、三倍は強いと見た方がいいな。
『
私は、その状態で『
すると私に向かって伸ばされた氷の柱が、炎のバリアに当たった瞬間に溶けて消える。
「チッ…!」
氷での攻撃が効かないと分かると、轟くんは、氷を移動手段に切り替え、今度は左手の炎を糸のように伸ばして攻撃してきた。
これって、エンデヴァーの『ヘルスパイダー』…!?
嘘でしょ、もう習得してるの!?
私は、驚きつつも、炎での攻撃も全部炎のバリアで防いだ。
轟くんは、床から生み出した氷を踏み台にして空中に浮き上がると、私の死角を取って、冷気と炎を纏ったを振りかぶってくる。
多分だけど、氷の壁の後ろで志村が“個性”を使って轟くんの移動の補助をしてる。
まずい、氷も炎も効かないから、衝撃波で吹き飛ばす気だ。
私は、咄嗟に剣に溜めたエネルギーを両脚に移動させて、脚力を強化して轟くんの懐に入り込んだ。
私の創造した剣には、それぞれの固有の能力以外にも、吸収したエネルギーそのものを操作する能力がデフォルトで備わっている。
そのエネルギーを使えば、身体強化に特化した『
私は、轟くんが冷気と炎を合わせて衝撃波を放つ前に、剣の先を向ける。
ごめんね。
「がはっ…!!」
私が剣の先からエネルギーを放って轟くんに送り込むと、轟くんは後ろの氷柱を薙ぎ倒しながら吹っ飛ぶ。
私は、吹っ飛ばされて倒れた轟くんの腕に、確保証明のテープを巻きつけた。
「クソ……」
確保された轟くんは、悔しそうに顔を歪める。
これで残りは、志村ただ一人。
轟くんの時は出来るだけ傷つけたくなかったから手加減したけど、あの女には手加減しない。
私は、氷の壁を『
壁の向こうでは、志村が核のハリボテを抱きかかえた状態で宙に浮いていた。
「おいクソヒーロー!! ちょっとでも妙なマネしやがったら、この核爆破すんぞ!!」
志村は、核ごと自分を浮かせ、核を乱暴にバンバン叩きながら陳腐な脅し文句を吐いた。
「ぎゃはははは!! 捕まるくらいなら、てめーらまとめて吹っ飛ばしてやるよォ!! 誰がタダでてめーらに捕まってやるかよ、バァーーーカ!!」
完全に
バカね。私が今更そんな脅しに屈するわけないじゃない。
「そんな脅しに、ヒーローが屈するとでも?」
私が剣を構えて志村を煽り返したその時、障子くんが無線越しに叫ぶ。
『ダメだ神剱! 無闇に攻撃するな! 相手は核を持ってるんだぞ!』
攻撃するな?
冗談じゃないわ。
私は、クスリと笑って剣に炎を纏わせると、志村めがけて突進した。
「来いよオラァ! A.T.フィールド全開!!」
志村は、私を煽りながら核のハリボテを盾にしてきた。
バカね、核を盾にしたからって、私が攻撃を躊躇するとでも?
私は、剣の先から火球を放って、志村めがけて飛ばす。
だけど私が放った火球は、何故か志村に当たる前に逸れた。
「びっっっくりしたぁぁぁ〜! この状況で撃つか普通!?」
逸らした…!?
こいつ、浮かすだけの“個性”じゃなかったの!?
「だったら…『
私は、剣から炎の龍を生み出して志村めがけて飛ばした。
志村は核を抱きかかえたまま空中をふよふよ浮いて龍から逃げようとしていたけど、捕まえられないスピードじゃない。
炎の龍が、大きく口を開けて志村を飲み込む。
そのままぐっと拳を握ると、炎の龍が消え、身体の表面が黒く焦げた志村が、口から黒煙を吐きながら現れた。
空中には、志村と核がふよふよと浮いていた。
私は、すぐさま空中に浮いている核をキャッチした。
『ヒーローチーム…WIIIIIN!!』
私が核をキャッチすると同時に、オールマイトがヒーローチームの勝利を宣言した。
やった、勝てた!!
「志村、大丈夫か!?」
後ろから轟くんの声が聴こえて、振り向くと、轟くんが氷の柱を足場にして志村に駆け寄っていた。
すると空中に浮いていた志村が目を覚ます。
「あっちち、あぶね〜、髪がチリチリんなるとこだったよ」
炎の攻撃を喰らってボロボロになっていたはずの志村は、何事もなかったかのように起き上がって軟着地する。
嘘……!?
あいつの耐久力、どうなってんのよ!?
「あぁそっか…アタシら負けちゃったんだね。轟くんごめんよ〜」
「いや…俺の方こそ、悪ぃ…あっさり捕まっちまって」
「お互い精進しなきゃだねぇ」
「それより、怪我大丈夫か?」
「ん、平気よ。見た目ほどダメージ無いから」
あいつ、また轟くんと馴れ馴れしく話して…!!
でも、まあいいわ。
講評が楽しみだわ。
下品な挑発しかせずにチームの足を引っ張った志村は、ボロクソに言われるでしょうけど。
◇◇◇
「まぁ、つってもベストは轟少年だけどな!」
え…?
轟くん…?
私じゃないの?
「勝った芽華ちゃんか障子ちゃんじゃないの?」
「何故だろうな〜〜〜? 分かる人!!?」
梅雨ちゃんが尋ねると、オールマイトが手を挙げる。
挙手の勢いが強すぎて、「ボッ!」って音が出ていた。
「はい、オールマイト先生」
オールマイトが尋ねると、八百万さんは手を挙げて発言した。
「それは轟さんが一番状況設定に順応していたから。不意を突かれたにもかかわらず、ヒーローチームへの対応と核の防御を同時にこなしていたのはお見事でした」
「いや…でも、作戦を考えたのは志村だ」
「それでも、策を実行させたのは轟さん自身の実力ですわ。もっとご自分に自信を持っても良いと思います。そして次点は志村さんですね。無理にヒーローチームを確保しようとせず後方支援に徹した点。実戦であればヒーローチームが降伏せざるを得ない状況を作り出した点がプラス要因です。ヒーローチームを挑発し、核を盾にしたのも、状況設定に適応し、
はぁ!?
なんでよ、勝ったの私じゃん!
なんで私より負けた志村の方が評価が高いわけ!?
「そして神剱さんですが…正直に申し上げて、何故あのような行動に出たのか理解に苦しみます。実戦であれば、大勢の死者を出しかねない愚策ですわ。本物の核の争奪戦を想定していれば、
何それ、意味わかんない…!
ルール通りに勝ったのに、なんで反則勝ちとか言われなきゃいけないの!?
「八百万ちゃん、それはちょい言い過ぎじゃない? 確かに神剱ちゃんの行動は本番に則してなかったかもしれないけどさ、試合には勝ったわけじゃん? ちゃんと核に攻撃を当てないように気をつけてたし、初めての訓練にしてはよくやったと思うよ。そこは評価してあげてもいいんじゃないかな」
「あっ…確かにその通りですわね。失礼しました」
志村が私を庇うような発言をすると、八百万さんがペコリと頭を下げて謝る。
「うむ、八百万少女、志村少女、見事な講評をありがとう! 皆も、こういう考え方をする
「「「「はい!」」」」
オールマイトが言うと、皆は元気よく頷く。
「それと、轟少年と志村少女は、念の為保健室に行ってきなさい」
「はい」
「わかりました」
オールマイトは、志村と轟くんに保健室利用書を渡した。
その後、私達が地下のモニタールームから出て出口の前に整列すると、オールマイトが仁王立ちして私達を褒める。
「お疲れさん!! 志村少女以外は大きな怪我もなし! しかし真摯に取り組んだ!! 初めての訓練にしちゃ皆上出来だったぜ!」
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業…何か拍子抜けと言うか…」
「真っ当な授業もまた私達の自由さ! それじゃあ着替えて教室にお戻り!!」
そう言ってオールマイトは、颯爽と去っていった。
意味わかんない…!!
こんなはずじゃなかったのに…!!
なんで私が怒られなきゃいけないのよ…!?
――自業自得でしょう? 少しは頭を冷やしたらどう?
「ッ!?」
頭の中で、
違う、私は悪くないもん!
全部あの女が悪いのよ!
大体あんた、なんでいっつも私を否定するような事ばっかり言うのよ!?
この身体は私のものなんだから、あんたは引っ込んでなさいよ!
――………。
私が頭の中で怒鳴ると、もう一つの声は聴こえなくなった。
本当になんなのよ…
「離珠奈ちゃん!」
志村が保健室から戻ってきて、お茶子ちゃんが駆け寄る。
「怪我大丈夫なの!?」
「ん、見てのとーり。無問題」
志村の怪我を女子皆が心配すると、志村はヒラヒラと手を振る。
志村は、リカバリーガールの治療のおかげで、私が負わせた分のダメージが綺麗さっぱりなくなっていた。
「油断して攻撃喰らったてめえが悪い」
「だよねぇ。まさか神剱ちゃんが
爆豪くんが志村に批判的な意見を浴びせると、志村が苦笑いを浮かべる。
暗に『核を盾にしている
その後、皆で反省会をしたけど、志村のせいで内容が全然頭に入ってこなかった。
せっかくチートを持って転生したのに、原作キャラからちやほやされないなんて、聞いてないんだけど…!?
☆破滅まで、残り136日───
本作ではデクと爆豪が完璧な立ち回りをした分、ヤオモモSEKKYOUが転生者に回ってくるという謎の修正力。
いや、いくらチートや高度な知識を持って転生したからって、本人の人格が伴ってなきゃこうなるのは当然なわけですよ。
むしろ所謂俺SUGEEE系の転生者が転生先で不相応にageられすぎな状況の方がおかしい希ガス
追記
転生者がそんなに怒られるほど間違った対応をしていないというご指摘をいただきましたが、転生者の取った行動が最悪手である理由は以下の通りです。
実戦では訓練での勝利条件に加えて『核兵器の爆破』がヴィラン側の勝利条件に含まれているので、リズナが爆破宣言しながら核をぶっ叩いたり核を持って浮いたりした時点でどのみち実質的にはヒーローチームの負けで、この時点でベストがヴィランチームなのは確定していました。
その状態でヒーローチームができる行動は、リズナに気づかれない速度で勝利条件を満たすか、投降して訓練を終了するかの二択しかありません。
転生者の能力なら、敵に気付かれずに一瞬で気絶させるのは容易な事です。
にもかかわらず、リズナの挑発に乗ってよりによって爆発物の前で火の玉攻撃をブッパし、しかも一発で仕留めきれずに核を傷つけかねない大技でリズナを攻撃したのが大幅原点の理由です。
ちなみに今回出てきた剣の解説
◆『炎剣』
能力:熱や炎を操る事ができる
イメージカラー:赤色
剣の形状:刃の部分に炎のような模様が刻まれたバスタードソード