戦闘訓練の翌日、私はいつも通り学校に行こうとしていた。
するとだ。
「すみません! 雄英生ですよね? オールマイトの授業に関してインタビューお願いします!!」
「オールマイトの授業はどんな感じです!?」
「教師オールマイトについてどう思ってます!?」
正門前で待ち伏せしていたマスコミが、登校してくる生徒を捕まえてインタビューしていた。
ざっと見て100人以上はいる。
アレ捕まったら面倒だな…そうだ。
まず、物陰に隠れて『
刃の部分に市松模様が刻まれた短刀で、刃の部分にエネルギーを込めると、白い剣の輝きが透明になって、私の身体が透き通る。
この剣を握っている間は、相手は私の姿や声を一切認識できない。
さらには、あらゆる物質を透過する事ができる。
身につけているものまで透過できるので、どっかの目玉黒豆先輩みたいに全裸になる必要もない。
これだけ便利な能力だから、当然制約はある。
まず、この剣を握っている間は光や音まで透過してしまうので、何も見えないし何も聴こえない。
あと、肺が空気を透過するので、呼吸もできないし、体が剣を透過してしまうので他の剣を創造できない。
まあエネルギーの膜を使った探知は活きてるし、エネルギーの膜で身体を覆ってる間は呼吸しなくても大丈夫だから実質問題は無い。
私は、『
――学校の敷地外でしょ? “個性”使ったのがバレたら除籍されるわよ。
私が校舎に向かって歩いていると、また頭の中で声が聞こえる。
うるさいわね、『
あんたは口出ししないでよ。
◇◇◇
「昨日の戦闘訓練お疲れ」
時間通りに、ホームルームが始まる。
静まり返った教室に、相澤先生の声が響く。
「Vと成績見せてもらった。おい神剱」
「はい、なんですか先生?」
相澤先生が声をかけてくるので、私は上目遣いで小首を傾げる。
すると相澤先生は、ギロっと私を睨みつけてくる。
「昨日の戦闘訓練で、ダントツで一番成績が悪かったのはお前だ。初めての戦闘訓練で浮かれる気持ちは分からんでもないが、お前の訓練中の行動はとてもじゃないが褒められたもんじゃない。お前らはここで人の命を救う為の訓練をしてるってことを忘れるな。お前は推薦入学者なんだから、尚更気をつけろ」
「ご、ごめんなさい…」
相澤先生に注意されて、私は肩を窄めて謝る事しかできなかった。
「さてHRの本題だ…急で悪いが今日は君らに…」
相澤先生が言うと、教室がざわざわした。
もしかして臨時テスト?
「学級委員長を決めてもらう」
「「「学校っぽいの来たーー!!!」」」
よし、今度はちゃんと乗っかれた!
A組の皆と一緒にはしゃぐの、一回やってみたかったんだよね。
「委員長!! やりたいですソレ俺!!」
「ウチもやりたいス」
「オイラのマニュフェストは女子全員膝上30cm!!」
「リーダー!! やるやるー!!」
そんな感じで、次々と手が上がっていく。
見るとクラスのほとんどが手を挙げていて、挙げていないのは轟くんと志村、そして私だけだった。
私は、委員長になんかなっちゃったら、逆ハーする余裕がなくなっちゃうから御免被る。
ここは高みの見物…と。
「静粛にしたまえ!!」
いきなり飯田くんが声を上げ、全員が飯田くんに注目する。
「“多”を牽引する責任重大な仕事だぞ…! 『やりたい者』がやれるものではないだろう!! 周囲からの信頼あってこそ務まる聖務…! 民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら… これは投票で決めるべき議案!!!」
「聳え立ってんじゃねーか!! 何故発案した!!!」
飯田くんが手を挙げながら発案すると、上鳴くんがツッコミを入れた。
「日も浅いのに信頼もクソも無いわ飯田ちゃん」
「そんなん皆自分に入れらぁ!」
梅雨ちゃんと切島くんも意見を言う。
すると志村が口を開く。
「いやいや、流石に自薦はナシだろ〜。何かのマチガイでスカート膝上30cmになっちゃったらどうすんのよ」
「「「「あ〜…」」」」
志村が呆れ顔で言うと、女子皆が納得した。
「志村くん、貴重な意見ありがとう!! では彼女の案を採用し、自薦ナシの投票ということで!! どうでしょうか先生!!!」
「時間内に決めりゃ何でもいいよ」
飯田くんが相澤先生に意見を求めると、先生は寝袋に入って眠った。
さて、誰に投票しよっかな。
原作では轟くんは、八百万さんに投票してた。
だったら私も八百万さんに投票しよう。
そんなこんなで、全員分の票が集まったわけだけど…
飯田天哉:6票
八百万百:5票
緑谷出久:5票
爆豪勝己:3票
志村離珠奈:2票
……は?
どうなってんのよ。
なんで志村に2票も入ってるわけ!?
一体誰が…!?
まさか、あいつと仲が良い爆豪くんと緑谷くん…!?
あと、飯田くんが当選してるのなんで?
飯田くん、原作ではこの時点で何の実績も無かったよね?
「じゃあ委員長飯田、副委員長は…緑谷と八百万、ジャンケンでもして決めろ」
「あの! 僕、辞退します」
相澤先生が緑谷くんと八百万さんに声をかけると、緑谷くんが言った。
「僕に投票してくれた人は、本当にごめんなさい。でも僕は、八百万さんが副委員長をやるのがいいと思います…! 戦闘訓練の時、あんなにカッコよく講評してたんだ。僕は八百万さんが相応しいと思います」
そう言って緑谷くんは、副委員長の座を八百万さんに譲った。
「うん、いいんじゃね?」
「賛成〜!」
「飯田も朝凄かったしな」
「そうそう、ロボダンス飯田」
「え、何の話?」
「いや、今朝飯田がさ〜…」
切島くんと瀬呂くんが、今朝何があったのかを説明してくれた。
なんでも、飯田くんが見事な演説とロボットダンスでしつこいマスコミを追い払い、そのおかげで飯田くん以降に来た生徒はスムーズに登校できたらしい。
あ、だから原作ではこの時点で何の実績もなかった飯田くんが、投票で1位だったのか。
…ん? ちょっと待てよ?
飯田くんがこの時点で委員長になってるって事は、これもしかして、マスコミパニック起こらない?
◇◇◇
午前中の授業も無事に終わり、私は昨日のメンバーでお昼を食べた。
「芽華ちゃん今日お弁当?」
「うん」
私は、今朝作ってきたお弁当を広げた。
するとお茶子ちゃんが私に話しかけてくる。
「芽華ちゃんのお弁当かわいいね! お母さんが作ってくれたん?」
「ううん、わたしが作ったよ」
「えっ、凄!?」
私が言うと、お茶子ちゃんと志村が驚く。
私は、皆が私のお弁当に食いついているのを確認して、ニヤリと心の中でほくそ笑んだ。
「良かったら皆で食べて?」
「え、いいの?」
「作りすぎちゃって、一人じゃこんなに食べれないし」
そう言って私は、皆にお弁当を勧めた。
今世での私は、神様に与えてもらったチートのおかげで、料理の腕もプロ並みになっている。
おまけに、“個性”で作った薬を少しずつお弁当に混ぜてある。
相手の好感度を増幅する薬だ。
これで、昨日の悪印象を帳消しにするどころか、皆から好感を得る事ができる。
まずはいつものメンバーにお弁当を振る舞って警戒心を解いてから、他のクラスの皆にも同じ事をして、少しずつ好感度を上げていく。
我ながら完璧な作戦だわ。
「わーい、じゃあアタシこの美味しそうな竜田揚げ食べちゃお!」
志村は、他の皆が箸を伸ばす前にずいっと箸を伸ばして弁当箱に箸をぶち込み、唐揚げを掻っ攫った。
別にこいつの為に作ったわけじゃないんだけど…
なんて思っていると、志村が私のお弁当の唐揚げを食べる。
「めっっっちゃ美味しい! これ本当に神剱ちゃんが作ったの!?」
「そうだけど…」
「店出せるくらい美味しいよ! ランチラッシュ先生の料理にだって負けてない! この魚の照り焼きも、筍の煮物も、きんぴらも、卵焼きも、全部美味しい!」
そう言って志村は、私のお弁当のおかずを全種類ちょっとずつつまんでがっついた。
こいつ、意地汚いな…
全部のおかずつっついてんじゃねーよ、どんだけがめついのよ。
他の皆の分がなくなるだろうが。
「ねぇ、どうやったらこんなに美味しく作れるの?」
「う〜ん、お手伝いさんに教えてもらったからかな?」
「え〜、いいなぁ。アタシも自炊してるんだけど、こんなに上手く作れないよ。隠し味何か入れてる?」
「えへへ、秘密!」
志村の質問を、笑いながらはぐらかす。
とっておきの隠し味なら入れてるわよ。
あんたには真似できないでしょうけど。
志村の反応を見て、他の皆も私のお弁当の具材を食べた。
「本当だ、これは美味いな」
「お米美味ぁ」
「すごく美味しいよ、神剱さん! この竜田揚げ、味がしっかり染み込んでるのに衣はザクザクで、揚げてから結構時間立ってるはずなのに全然べとべとしてなくて「出久〜、神剱ちゃん引いてんぞ」
私のお弁当は、皆にも好評だった。
緑谷くんの分析がちょっと怖かったけど。
そして我が推し、轟くんの反応は…
「…美味え」
よっしゃあああ、正義は勝つんや!!
「ああそうだ、飯田くん委員長当選おめでとう」
「ありがとう。正直、まだ実感が湧かないが…皆に選ばれたからには、全身全霊をもって務めさせてもらおう」
「飯田くんなら大丈夫だよ。僕、飯田くんに投票したんだ」
「アタシも」
飯田くんに投票した6人のうち2人は緑谷くんと志村か…
って、あれ…?
緑谷くん、飯田くんに投票したの?
じゃあ志村に投票したの、誰?
「お茶子ちゃん誰に投票した?」
「私はデクくんだよ。芽華ちゃんは?」
「わたしは八百万さんに投票したよ。講評の時怒られちゃったけど、言ってる事はもっともだなぁって思ったし。轟くんは?」
八百万さんだよね、知ってるよ。
期末の時のアニメ、何回も見たもん。
私も八百万さんに投票したんだ。
「俺は志村に投票した」
………は?
「え、何で?」
「戦闘訓練の時、志村が作戦を考えてくれたんだ。そういうのに向いてる奴だと思ったから投票した」
え、ちょっと待ってよ。
なんでそうなるわけ!?
そこは八百万さんに投票する流れでしょ!?
なんでよりによって志村に…!?
「飯田くんは誰に投票したの?」
「僕は緑谷くんに投票した。緑谷くんのここぞという時の胆力や判断力は、“多”を牽引するのに値する。だから君に投票したのだ」
「ちょっと思ったけど、飯田くんて、坊ちゃん!?」
「坊!!!」
お茶子ちゃんがストレートな物言いをすると、飯田くんが冷や汗をかく。
「…………そう言われるのが嫌で、一人称を変えていたんだが…俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ」
「ええーー凄ーー!!!」
「ターボヒーロー『インゲニウム』は知ってるかい?」
「もちろんだよ!! 東京の事務所に65人の
「詳しい…」
飯田くんが尋ねると、緑谷くんはペラペラと早口で解説をした。
すると飯田くんは、メガネをくいっと上げてドヤ顔する。
「それが俺の兄さ」
「あからさま!!! すごいや!!!」
「規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!! 俺はそんな兄に憧れ、ヒーローを志した」
飯田くんは、笑顔を浮かべながら言った。
「なんか初めて笑ったかもね。飯田くん」
「え!? そうだったか!? 笑うぞ俺は!!」
緑谷くんと飯田くんが、そんな会話をする。
そんな中、志村が日替わり定食のトンカツを箸で摘みながら口を開く。
「じゃあアタシと一緒だね」
「一緒ってことは、離珠奈ちゃんの家族もヒーローなの?」
「うん、ママがね。でも多分知らないと思うよ? Ms.フェザーってヒーローなんだけど」
「Ms.フェザー…? ごめん私知らない」
「俺も知らないな…申し訳ない」
「だよねー」
……え?
今、なんて言った?
志村の発言を聞いた私は、驚きのあまり、お弁当の鰆の照り焼きを飲み込む時、照り焼きソースが気管に入ってしまった。
「う゛っ!? ゲホッ、ゲホッ!!」
「ちょい神剱ちゃん、大丈夫!?」
「ゴホッゴホッ、あ、ありがとう」
私が激しく咳き込むと、志村がコップの水を差し出してくる。
水を受け取って口の中に流し込みながら、頭の中で状況を整理する。
ようやく、点と点が繋がった。
道理で、原作には登場しないイレギュラーキャラがここにいるわけだ。
結局、いくら待ってもマスコミパニックは起こらなかった。
お昼時に雄英の門の前にいたマスコミは、相澤先生とマイク先生が追い払ってくれたらしい。
相澤先生がその場で通報したら、あっさり退いたそうだ。
いや、冷静に考えたら、マスコミパニックが起こるわけないじゃん。
だってこの世界線では、オール・フォー・ワンはもう死んでるし。
なんなら、ワンチャン死柄木と黒霧が存在してない可能性すらある。
せっかくUSJ事件で相澤先生を助けて死柄木と脳無ぶっ飛ばして私TUEEEEしようと思ってたのに、もしそうなら予定ぶち壊しじゃん!!
まさか志村が、Ms.フェザーの娘だったなんて…
Ms.フェザーは、志村瑠奈……もう一人の転生者のヒーローネームだ。
☆破滅まで、残り135日───
今回出てきた剣の解説。
◆『透剣』
能力:物質を透過できる。光も透過できるので、周りから見えない。
イメージカラー:透明
剣の形状:刃の部分に市松模様が刻まれた短刀
それと、投票結果です。
芦戸三奈→八百万百
蛙吹梅雨→緑谷出久
飯田天哉→緑谷出久
麗日お茶子→緑谷出久
尾白猿夫→飯田天哉
上鳴電気→爆豪勝己
切島鋭児郎→爆豪勝己
口田甲司→飯田天哉
砂藤力道→八百万百
志村離珠奈→飯田天哉
障子目蔵→飯田天哉
耳郎響香→八百万百
瀬呂範太→爆豪勝己
常闇踏陰→緑谷出久
轟焦凍→志村離珠奈
葉隠透→八百万百
爆豪勝己→飯田天哉
神剱芽華→八百万百
緑谷出久→飯田天哉
峰田実→緑谷出久
八百万百→志村離珠奈
志村、デク、爆豪の三人に関しては、仲が良いからってお互いに投票するのは違うなって思って、ロボダンスでマスコミを追い払った飯田に投票したって感じです。