死滅回游 泳者 八百歳比名子   作:螺旋坊主

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 鹿紫雲一の過去は呪術原作でも詳細には描写されていないため、本作ではわたたべと絡め、原作のイメージと乖離しない(と作者が独断する)程度には好き勝手に盛っています。
 それに付随して、今回の話は極めてキツい描写がされています。
 ですが、この後の展開には絶対に必要な描写ですので、手は抜けませんでした。



第30話 泳者 社美胡について

 

 

 

 ――かつて、社美胡は実に悪逆非道であった。

 

 取るに足らぬ野狐が人の味を知り、生きるために喰い続けるうち、逃げ惑い泣き叫ぶ者達を引き裂くようになった邪悪なる妖怪。

 気紛れに命を毟って貴族の血筋を途絶えさせ、妊婦やその夫を戯れに喰い千切り、積み重ねた外道の所業は数知れず。

 愉快だったから、楽しかったから――幼子の目の前で、その親兄弟を惨殺した理由もその程度だった。

 

 言うなれば天上天下唯我独尊、己の快・不快のみが生きる指針。まさに悪意に牙と爪の与えられた、善き心が腐り落ちて消えたかのようなケダモノ。

 そんな穢らわしく唾棄すべき、この世全ての罵詈雑言を叩きつけられて然るべきひとでなしであった美胡は、如何なる奇縁か愛媛の片隅で住民に愛され、親しまれている。

 

 そこに至るまでには勿論、多くの人間や出来事が絡まっている。

 例えばとある清貧な坊主との出会い。坊主との交流の果てに人々と縁を繋げたこと。縁を結んだ人々が美胡の在り方を変え、過去の所業を心から悔やむようになったこと。その過去を聞かされてもなお自分を好いてくれる人間――比名子に出会えたこと。

 まあ、とかく色々である。

 

 だが美胡が人間と関わっていられる最大の要因は、身も蓋もないが、非道を重ねていた頃から年月が経っているからだろう。

 あの血に塗れた醜悪な鬼畜を、誰も覚えていない。覚えていないから、実感がない。

 それよりも今を生きる人々は、自分たちに献身してくれる優しくお節介な少女としての面を尊ぶものなのだ。

 

 ――しかし、それは、誰からも石を投げられぬことを前提に作り上げられた砂の城にすぎない。

 

 あらかじめ、考えておくべきだったのかもしれない。

 邪悪なる羂索の悍ましき好奇心により、かつての乱世を生きた呪術師達が現世に解き放たれ。過去と現在が交差したその中には、美胡の所業を知る者がいないとは限らないと。

 

『400年前にオマエが八つ裂きにした家族、その時に残されたガキだよ』

 

 ――こうなるかもしれないことも、予想すべきであったと。

 

 

--------

 

 

「――――ぁ」

 

 喉が鳴る。意味のある音声に成りそこなった呻きが、美胡の口からまろび出る。

 呼吸の仕方すら忘れたかのように、唇だけが微かに震えている。

 

 ――鹿紫雲一のその言葉を聞いた瞬間、美胡の顔から色が消えていた。

 

 血の気が引く、などという生易しいものではない。頬に宿っていた生者の色彩が根こそぎ奪われ、残されたのは死人の蝋細工みたいな白さのみ。

 今にも砕け散りそうな罅割れた磁器の仮面が皮膚の代わりに張り付いていると例えるしかない有様だ。

 

「懐かしいなぁ」

 

 拍子抜けするような軽い声音は憎しみに狂った者のそれではなく、偶然街中で知り合いと会ったような気安さだ。

 それでも、その声に美胡は肩を跳ねさせる。かつて人々の命を好き勝手に弄んだ大妖が、今は生まれたての小鹿の様だ。

 

「どっかの山奥の小せぇ家で暮らしてた俺達家族のもとに、ある日唐突に押し入ってきたんだったよな」

 

 それは、かつて実際にあったであろう話。

 400年以上も前に巻き起こった在りし日の出来事を、彼は目を閉じて手繰り寄せている。

 

「口が裂けたかってくらいひしゃげた笑顔で、涎もだらだら垂らしててよ。クソデケエ姿よりもまずその顔が目に入って、俺達全員固まっちまってたっけ。なあ?」

 

 ゆっくりと穏やかに、かつての惨劇、それが起こる寸前の感情の遷移を美胡に語り掛ける鹿紫雲。

 武器を構えているわけでもない、殺気を放っているわけでもない、ただ、話しかけているだけ。

 それだけなのに、美胡の心は壊れかけている。

 

 忘れたわけではなかった。過去の自分がやったことを。

 なかったことにしたわけではなかった。気の向くままに散らした尊い命の数々を。

 だからこそ、美胡は。縁を結べた人間たちを大切に守り続けて。自分を変えることのできる機会を、決して逃さないようにして。

 

 ――けど、ああ、何故だろう。

 心のどこかで、美胡は、あの時のことを、()()()()()だと、思い込んでいたのだ。

 

 罪の重さは決して消えない。

 それでもきっと今の時代で起こり得るのは、あの時子狸が比名子の前でやったような、口だけで過去をほじくり返されるくらいだろうと。

 

 ――何百年もの時を越えて、美胡が過去に傷つけた人間が、再び目の前に現れるなど、思ってもいなかった。

 

「――どうする?」

 

 お喋りを続ける鹿紫雲とガタガタと歯を鳴らす美胡の横で、真希が比名子に目配せする。

 死滅回游の広島結界、まだ未完成であった比名子との死闘の後の話し合いにて、真希はかつての美胡が極悪だったことを聞いている。その知識もあって、鹿紫雲一が美胡の暴虐の被害者であるということも、話の流れから冷静に推測していた。

 

 ――目配せした先の比名子は、美胡に負けず劣らず顔色を悪くしていた。

 目を見開き、顔を蒼褪めさせ、唇の近くに寄せた手はぶるぶると震えている。

 比名子は、真希よりもずっとよく分かっていたからだ。

 

 社美胡という妖怪が、どれほど過去を悔いてきたのか。どれほど自分を変えようと努力してきたのか。その全部を知っているからこそ。

 ――そして、家族を理不尽に奪われることが、どれほど人を壊すかも知っているからこそ。

 

「……………………だめ」

 

 喉が潰れたと錯覚するほどに弱弱しく掠れた声。

 比名子は胸元を押さえながら、苦し気に息を吐く。

 

「私、は…………何も、できない」

 

 言葉が途切れる。肺に空気は入っていても、それを声に変えるだけの力が無い。

 寒空に凍えるように、指も、唇も、瞳も、ひたすらに震えていて。

 

「だって……家族を、みんな殺されて。1人だけ残されて……その気持ちが、痛い程、分かるから」

 

 ――10年前のあの日。家族が海に沈んでいった光景は、今もなお少女の心を苛んでいる。

 

 だから分かる。誰よりも分かる。目の前の男が失ったものの重さが。

 その喪失がどれほど深く、どれほど人生を捻じ曲げるものだったかが。

 そして、もしそれが何者かの悪意によって齎されたものだったら――決して、その者を許せないだろう。

 

 だから比名子は何も言えない。美胡が積み重ねた鬼畜の所業は、この世界に消せぬ傷として刻まれているから。

 慰めることも、鹿紫雲の言葉を止めることも……比名子には、できない。

 

 ――真希はそんな比名子を一瞥し、小さくため息を吐いた。

 

「……だってよ。美胡に一番近しい奴が言うんだ、オマエらも手ぇ出すな」

 

 振り返った視線の先。虎杖、釘崎、日車、そして汐莉に伝える。

 言葉短で、しかし有無を言わせぬ声音だった。

 

「コレは、アイツらのケジメの問題だ」

 

 空気が、重く沈む。

 事ここに至りて美胡と鹿紫雲の因縁を察せないような鈍い人間はこの場にはいない。

 

 虎杖は奥歯を噛み、釘崎は眉間に皺を寄せ、日車は目を伏せる。

 誰も納得しているわけではない。だが比名子の意思がそうである以上、それに反するのは比名子に対する冒涜だ。

 

「…………………………まあ、比名子がそう言うなら」

 

 ただ一人、汐莉だけが軽い口調で肩をすくめる。

 美胡への心配など存在しない。ただ、比名子とその意思を汲み取っているに過ぎない。

 どこまでも比名子本位。それだけだった。

 

「――オイ」

 

「ひっ…………」

 

 鹿紫雲が軽く、本当に軽く呼びかけただけで、数百年の時を生きる妖怪たる美胡の口から、年恰好相応の少女のような悲鳴が漏れる。

 目の前の人間が言葉を発する、呼吸している、立っている、こちらを見ている、それらすべてが美胡にとっては耐えられないものなのだ。

 

 自らの過去の過ちの象徴が、今この瞬間に存在している。

 無かったことにはできずとも、それを受け入れ変わらなければと藻掻いておいて。いざその過去が眼前に現れれば、気が狂いそうなほど取り乱す――そんな自分が、どうしようもなく嫌になる。

 

「――――」

 

 肋骨を砕いて逃げてしまうのかと錯覚するほど心臓を跳ねさせ、ガタガタと震える美胡。

 それを静かに見下ろす鹿紫雲が――ふっ、と。息が漏れるかのように小さく笑い。

 

 ――次の瞬間、美胡の横面に鹿紫雲の裏拳が叩き込まれた。

 

「ぁ」

 

 苦鳴すらまともに上げられぬ、強大無比な鹿紫雲の拳撃。

 電撃の爆ぜる音と共に美胡の小柄な体が吹き飛び、骨が悲鳴を上げながら視界が回転。

 道場の壁をぶち破る轟音が響き渡り、木片をまき散らし、地面を何度もバウンドする。

 

「……かひゅ、こふっ、がはっ……」

 

 ようやく止まった時には、美胡の顔面の半分は原型をとどめないほど崩壊していて。

 そして、もう立ち上がる力すら残っていなかった。

 

「――八百歳比名子は、なんか勘違いしてるみたいだったが……」

 

 鹿紫雲一が歩いてくる。

 ゆっくりと、確実に、死神みたいな足取りで。

 

「俺は別に、オマエを恨んでるわけじゃねぇ」

 

 鹿紫雲に潰されていない、無事な方の瞳が揺れる。

 意味が分からない。

 頭が回らない。

 殴られた衝撃で意識が霞んでいる以上に、自分に家族を殺された相手がそんなことを言う意味が分からない。

 

 激痛と狼狽に支配される美胡の様子に、「そりゃあそうだろ」と鹿紫雲はため息を吐き、

 

「400年も前の話だぞ? 呪物になってた期間を除くにしたって、そもそも呪物になった時点でまあまあ年食ってたしな。そこに至るまでの人生で、復讐心なんざ擦り切れてる」

 

 怒りは、摩耗する。憎しみも風化する。

 数十年、数百年、そんな期間を経れば、燃え盛っていた感情もいつしか灰になる。

 それほどの長い期間、激情の炎に薪をくべられるようには、人間は設計されていない。

 

「――ただまあ、輪郭はなくしても、その面影は消えねぇもんでな」

 

 無様に地に伏す美胡の前に屈み、そう話す鹿紫雲。

 その言葉に、美胡の胸の奥で何かが崩れる。

 心の底に沈んでいた腐りきった記憶が、鮮明に蘇る。

 

 幼子の泣き声。両親の悲鳴。血の匂い。骨が砕ける音。自分の醜怪な哄笑。全て、全て、吐き気がする。

 自分がどれほど下らない理由で人を喰らっていたか。その浅ましさと汚さを改めて実感し、呪いのように心が引き裂かれる。

 

 ふと、鹿紫雲が空を見上げた。

 

「――オマエに家族を殺されてから、俺はずーっと戦い続けてきた。その起点は……さて、何だったか。オマエに復讐するためとか、そんな感じだったのかもなぁ」

 

 ま、今となっちゃ思い出せやしねえけど。

 唐突に、独り言のような鹿紫雲の自分語りが始まる。

 

「数えきれない術師と戦った。数えきれない呪霊と戦った。必然的に、俺は沢山の存在と出会った。――でも、分からなかった。どう他者を慈しむのか」

 

 美胡の眼前に指先を持ってくる。親指と人差し指の間に、ぱちり、と小さな雷が弾けた。

 

「俺は、弱さを知らない。気が付いた時には強かったからな。――俺の持つ雷の呪力は、触れれば人を容易く壊す。俺にとって自分以外の人間は、脆い土塊でしかなかった」

 

 強さとは孤独なのか、そう考えたこともあった。

 際限なく力の発露を求め、彷徨い続けることが、強者に課せられた罰なのかと。

 

 ――しかし今、かつて家族を屠った張本人を前にして、思う。

 

「だが、もし。俺の側に家族がいたのなら。オマエが家族の命を戯れに毟らなければ――」

 

「俺は、触れ合う手段を知れたかもしれない」

 

「誰かを慈しむ方法を教えてもらえていたかもしれない」

 

「弱さを、知れていたかもしれない」

 

 心の底からそれを求めていたのだろうと、そう容易く理解できるほど、一言一言を噛み締めるように、鹿紫雲は話す。

 

 その一つ一つが美胡の心を千々に乱すような言葉。それを最後まで言い切り、鹿紫雲は沈黙する。

 永遠にも感じられる数秒。十数秒。精神が摩耗する音を鼓膜に感じながら過ごしたその時間が、漸く終わった時、

 

 ――鹿紫雲のこめかみには青筋が浮かび、目が血走っていて。

 

「…………………………そう考えてみたら」

 

 

「やっぱ、なんかムカついてきたな………………」

 

 

 ――瞬間、美胡の体がくの字に折れ曲がる。

 

 呪力の籠った鹿紫雲の蹴りが、美胡の胴体に突き刺さったのだ。

 衝撃を逃がさないよう手首を掴まれていたこともあり、バンと風船が破裂するような音と共に美胡の内臓が爆砕。消化器が爆ぜたために口から大量の血反吐を噴き出す。

 

「ごぼっ――」

 

 鹿紫雲は掴んだ手首を握り砕きながら、勢いよく美胡を地面に叩きつける。伝播する衝撃に全身の骨が砕け、数か所で皮膚を突き破る。

 

「ぉ、ぁ、ぅっ」

 

 形成されたクレーターの真ん中に横たわる美胡の体を、腕を、脚を、鹿紫雲は強く踏み躙り、踏み砕く。体に踵が落ちる度に落雷の轟音が木霊し、焼け爛れる皮膚の下で潰れた骨と肉が攪拌される。

 

 そうして積み重なった打撃によって美胡に移動した電荷に、鹿紫雲の持つ電荷が引き寄せられる。

 大気を引き裂く、稲妻の速度を持った呪力放出――それが美胡の左腕に直撃し、根本から爆ぜ飛ばした。

 

 もはやピクリとも動かない美胡の体が、電撃で生じた衝撃によってぐちゃぐちゃに転がりまわる。

 

「つらそうだな」

 

 とてつもなく凄惨な暴行を受け、糸の切れた操り人形のように頽れた美胡。

 鹿紫雲はそれを恐ろしく冷たい目で見降ろし、恐ろしく冷たい声でそんな言葉を言い放つ。

 

 ――美胡の状態はもはや、動物としての原型を損なった肉塊であった。

 

 全身の骨は踏み砕かれたシャープペンシルの芯のようにバラバラになり、内臓や筋肉もグズグズのミンチに近い。外側は余すところなく血と泥に塗れ、とりわけ失った左腕部から夥しい血が流れている。

 

 それでもさすがは妖怪、ここまでされてもまだ虫の息は残っている。

 

「オマエは、なんとなく、気が向いたから、俺の家族を殺した」

 

 言葉を区切り、一言一言を強調するように言い放つ鹿紫雲。

 その指先が、死刑を宣告する死神のごとく、美胡の頭へ向けられる。

 

「だったらオマエも、なんとなくムカついたから殺されても、文句は言えねぇよな?」

 

 その指先と頭の間に、パリパリと電気が走る。

 さっき美胡の左腕に落とされた必殺の雷撃、その兆候だった。

 

 

 

 ――美胡の壊れた喉の奥で、渇いた笑いが鳴る。

 

 ああ、そうだ。そうだった。あたしはそういう奴だった。

 何百年もかけて、必死になって、人と話して。人を助けて。誰かのために尽くせるようになって。

 

 どんなにそれを頑張っても結局、あたしが喰った人たちは戻ってこない。

 あたしが壊した家族は元に戻らない。

 あたしが壊した人生は、一つだって返せない。

 

 ごめんなさい。ごめんなさい。

 喰べてしまってごめんなさい。弄んでしまってごめんなさい。

 

 どれだけ謝っても、どれだけ後悔しても、どれだけ善行を積んでも、あの時のあたしは頭の中で嗤っている。

 血塗れの口を開き、何百年も積み上げた今の自分を嘲っている。

 

 ――――なあ、坊主。お前、やっぱり人選を間違ったんじゃないか?

 

 お前は、結んだ縁を大切にしろと言ったし、確かにあたしはそれを大切にすることが出来た。

 けど見ろよ。たった一人、たった一人、過去に傷つけた人が現れただけで。

 あたしはもう立っていられない。胸を張って生きることが出来ない。

 

 結局あたしは、忘れられていることに甘んじていたんだ。

 誰も覚えていないから、誰も責めないから、だから平気な顔が出来ていた。

 

 ――あの子狸にしてやられた時、比名子の前で過去をほじくり返された時。たったそれだけであんなに狼狽えたんだから。

 目の前に被害者が現れたなら、そんなの、もっとずっと、取り乱すに決まっているのに。

 

 ――ごめんね、比名子。あたし、格好つけてた。

 

 比名子を守るだの支えるだの言ってたくせに。

 比名子はあたしの万倍強くなっちゃった上に、自分はここで惨めに罰され、死ぬんだから。

 

 ああ、いや。これは罰なんかじゃないか。

 きっとこれは、順番が回ってきただけだ。

 何百年も前に受けるはずだった報いが、ようやく――本当に漸く、あたしまで届いただけなんだ。

 

 途切れかけた意識の中、美胡は後悔と自嘲と謝罪を、延々と繰り返し続けて――、

 

 

 

「——領域展開」

 

 

 

 

誅伏(ちゅうぶく)()()

 

 

 

 ――瞬間、空間が反転する。

 

 砕けた大地も、散乱する瓦礫も、全てが消える。

 代わりに現れたのは、巨大な法廷。

 証言台、裁判席。罪を裁くために存在する空間。

 

「――ここでは、あらゆる暴力行為は禁止されている」

 

 ――鹿紫雲の正面には、一人の男がいた。

 

 覚悟と苦悩の両方を顔に刻みながら。

 これで本当にいいのかと、自らの選択に心を引き裂かれそうになりながら。

 それでもここへ駆けつけた男が。

 

「お互いにな――鹿紫雲一」

 

 ――日車寛見が、立っていた。

 

 

 

 




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