死滅回游 泳者 八百歳比名子   作:螺旋坊主

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第41話 解呪への道筋②

 

 

 

 ――数百年を生きる大妖・社美胡にかけられた「茫洋」の呪い、その解除へと方向性がまとまった呪術高専勢力の術師達。

 

 その中の一人、呪いの世界に触れた期間が八百歳比名子・日車寛見に次いで短い呪術高専1年生の虎杖悠仁が、盛り上がった空気を切り裂くように手を挙げた。

 

「応! って言ったはいいけどさ、実際どうすんだ? 解呪なんて」

 

「「「……………………」」」

 

「まあそんな反応になっちゃうよね」

 

 虎杖の質問に対し、おおむね一様に閉口してしまう術師、受肉体および妖怪。そしてそんな皆の様子を見てくすくすと笑う冥冥。横にいる弟の憂憂が、動揺をちらとも見せない姉の姿にときめいている。

 虎杖の今言ったそれを解決するための話し合いの場だ、と言ってしまえばそれまでだが、実際ここにいる者達が彼の疑問に対して何も案を提示できないでいるのは確かだ。

 

 ――否。本当は皆、案自体は持っている。それを提示できないのはただ、それが今回に限っては全く有効ではないと言いきれてしまうからだ。

 なぜなら――、

 

「呪いを解く方法って、かけた呪霊や術師を殺すのが一番手っ取り早いのよね」

 

 自身の左目を覆う眼帯の縁をいじりながら、虎杖のクラスメイト・釘崎野薔薇がげんなりと息を吐く。

 それに対し、いい提案だ! と喜色満面になる者は、生憎ここにはいなかった。釘崎も勿論それを分かって口に出している。

 

 実際、呪霊や術師の殺害は解呪方法として最もポピュラーなのは確かだ。

 理由は単純、付与された呪いが術式によるものであれば、その術式の維持は加呪者の意思に左右されるから。

 

 例えば虎杖とかつて交戦した壊相・血塗の九相図兄弟の「触爛腐術」は、対象の粘膜・傷口などから血を取り込ませ被呪者の肉体を腐触させる。

 その際、壊相達と被呪者の間には呪術的な“繋がり”が生まれる。その“繋がり”を通して、壊相達は自らの意思で「触爛腐術」を持続させることも、解除することも可能なのだ。

 

 当然、加呪者が死ねば術式を持続させる意思も消えるため、自動的に術式効果も消滅する。

 死後呪いが強まることもないわけではない。が、()()()()だけだ。多くの場合殺害が有効であることに変わりはない。

 

「でも、あざみって不死身なんだろ? それにボコって解かせようったって、ソイツ八百歳先輩並みに強いじゃん」

 

 そう、虎杖の言ったそれこそが、術師自体をどうにかしようという案が現実的ではない最大の理由。

 

 今虎杖の真下、来栖の座席の真隣で何やら微妙な表情をしている妖怪――人魚の汐莉は、かつて気紛れであざみに自らの肉を与え、不老不死にした。

 それによってあざみに文字通り死ぬほど恨まれ、巡り巡って術式に目醒め、比名子や世界を揺るがす呪詛師一派に加担し、挙句の果てに呪いへの対処法として最も有効な手段が一つ潰れるというピタゴラスイッチが生じたのだから、彼女の心境は複雑であろう。

 

 しかもその目醒めた術式というのが、世界を縛る絶対則を指先で弄ぶような空前絶後の現実改変、それを自在に操る理不尽な権能。

 呪術の才覚の()の字もないあざみであるが、この術式「茫洋」を有しているというだけで、五条悟のような呪いの世界の「天井」に指をかけるに至っている。

 彼女同様、頂点の一端に手を届かせた比名子がタイマンで戦り合った時も、結局明確な決着はつかず終いだった。

 

 その上、現在あざみはまさにその「天井」の術師である両面宿儺と共にいる可能性が高い。

 あらゆる意味で、あざみをとっ捕まえて呪いをどうにかしよう、という試みは不可能に近かった。

 

「――一応、別のプランもあるにはあるよ。有効かどうかは分からないけど」

 

 そう言って虎杖に続いて手を挙げたのは、比名子と同じ特級術師に認定されている高専2年、乙骨憂太だ。

 黒い制服姿の生徒達に混ざって目立つ白い衣装に身を包む少年の希望の言葉は、釘崎と虎杖の絶望的な会話が齎した沈黙を切り裂いた。

 自然、周りの者の視線が乙骨に向き、彼は目で急かす術師達に応えるように話を続けた。

 

「解呪の方法には、釘崎さんが言った加呪者の殺害ともう一つ――身を苛む呪いを少しずつ物に込め、手中に収める方法がある」

 

 呪いは、紐の“結び目”に例えられることがある。イメージがしやすいからだ。

 対象を幾重にも縛り付け、自由を奪う紐の結び目。と言っても呪いは蝶々結びや玉結びなど比較にもならないほど複雑で膨大だが、その何千何万もの呪力の結び目を読み、1つずつほどいていくのが乙骨の提示したやり方。

 無論、術師の命を奪うよりよほど手間のかかる作業だが。

 

「呪いは物についてる時が一番安定するからね。僕が里香ちゃんの呪いを解こうとした時にも使ったやり方だよ」

 

「……? 乙骨君、『リカ』ってその指輪を依代にした式神の事じゃないの? 呪いを解いたってどういうこと?」

 

「式神のリカちゃんは、昔僕に憑いてた特級呪霊の祈本里香ちゃんが成仏の際に遺してくれた子だよ」

 

 自身の認識と乙骨の語った過去に齟齬が生じて首を傾げた比名子の疑問、それに対する乙骨の回答に比名子は「そうなんだ」と思った。

 依代の中に身を潜めていても分かる、強大な呪いの気配。呪力量だけで言えば比名子を軽く上回る式神を乙骨がどう手にしたかは疑問に感じていたが、まさか憑依していた呪霊の名残であったとは。

 そもそも、負の感情の塊である呪霊に成仏の概念が存在していたこと自体、比名子にとっては意外であったが……それは今は関係ない話だ。

 

 重要なのは、「物への呪いの移植」という解呪方法の存在。

 物に込められた呪いの安定性が高いからこそ、呪具は存在する。それを考えれば、その方法は確かに美胡の症状への有効性が高い可能性が――、

 

「――だがそれは、呪われている本人しかできないやり方だ。社美胡は現在意識不明なんだろう?」

 

「…………」

 

 比名子がわずかに見出した希望、そこに掛けられた梯子を無情にも来栖に受肉した天使が外す。

 羽の生えた少女の頬に生じた不気味な口から発される言葉に、乙骨の表情も苦々しげに変化した。

 

「そう、ですか……」

 

 ――五条悟と並びうる才女とはいえ術師となって日が浅い比名子は、目の前で起こった呪術的事象を正確に把握する能力に長けていても、知らない概念を0から導き出すことはなかなか出来ない。それは呪術師として培ってきた年月と蓄積した経験がものを言う分野なので、どうしても仕方のない所ではある。

 

 “解呪”という概念は、死滅回游の結界内にいた15日、回游の平定にあたっていた術師達と交流した1日、そのどちらでも触れることの無かったものだ。

 故に比名子は百戦錬磨の呪術師達の会話を聞き、有効なアプローチが二つとも潰れている事実に落胆し、がっくりと項垂れてしまった。

 

「――ただこの方法は、あざみを殺すよりもずっと現実的だと思う。要はどうにかして眠っている社さんの意識にコンタクトを取ればいいわけだから」

 

 目を伏せ、顔に影を落とす比名子に、乙骨がぴっと指を立てて語りかける。

 顔を上げる比名子。その視線の先の乙骨は、彼の右斜め前、少し離れた座席に腰掛ける少年に目を向けていた。

 

「虎杖君は以前、裡にいた宿儺と対話して縛りを結ばされたんだよね」

 

「え? あー……まあ、アイツの生得領域に引きずり込まれたことはあるよ。少年院で死んだ時と、東京第1結界で天使と話してた時」

 

 宿儺の言によれば、生得領域は“心の中”と言い換えることが出来る。

 あざみの術式は概念的に「境界」に干渉する権能だが、流石に精神をどうこうすることまではできない――「茫洋」を直接受けた比名子や汐莉が今この場にいることが何よりの証左である――故に美胡の肉体はぐずぐずであっても、心の中は無事であるはず。

 であれば、心に干渉する何らかの方法があれば……というのが乙骨の考えだ。

 

「そういう事なら、私も心当たりがあるぜ。私が真依に呪力を持ってかれた時、私と真依が海岸にいる夢を見たんだ」

 

 今思えば、あの時見た光景は真希と真依の生得領域だったのかも知れない。

 あの場で真依は言っていた。――一卵性双生児は、呪術では同一人物として見なされると。

 

 その2例を踏まえると、心の中に複数の意思が存在する状況は、その者の間に極めて深い“繋がり”が存在する必要があるように思える。

 虎杖と宿儺は受肉による二心同体の関係。真希と真依は一卵性双生児。呪術的観点では、共に同一の肉体を共有する間柄だ。

 

「とは言っても、私と真依がそんなことになったのは本当にあの時、二人とも死ぬっていう瞬間になって初めてだった」

 

「それは……俺の『赤血操術』と似たようなものかもな。俺と血が繋がった弟の異変を、俺は術式によって感じ取ることが出来る」

 

 九相図兄弟長男・脹相の有するその能力は、血が繋がった者の死の瞬間にとりわけ強く発動する。

 死とは、生物にとって最大の異変。死に際には非術師であっても強い呪力を放出するように、人が死ぬ瞬間、呪いの力は須らく強まるものだ。

 一卵性双生児という極めて強い呪いの繋がりも例外ではない。その呪術的結合が死によって強化された結果、同一の生得領域における最期の語らいということが出来たのだろう。

 

「でも、宿儺はちょっと違うかも。アイツはアイツの意思で、いつでも俺を生得領域に引き込めた。胸糞悪いけどな」

 

 顎に手を当て、わずかに渋面になりながら虎杖がその時の状況を思い返す。

 

「……汐莉さん、汐莉さんの肉の摂食は、呪術的には“受肉”の一種なんだよね。だったら宿儺と同じこと、美胡ちゃんにもできる?」

 

「……難しいですね。悠仁達の話を聞くに、おそらくその現象は本当の意味で二心同体でなければ起こり得ない。美胡と私は摂食・被摂食の繋がりこそあれど、肉体も精神も別個の存在。美胡の心に干渉する方法など、私には見当もつきません」

 

 第一、美胡と接触出来たところで、私にはかける言葉も思い浮かびませんよ。汐莉はそう言葉を締めた。

 

 人魚の肉を喰らうことによる不死化は、厳密に定義すれば「受肉による肉体変化」である。

 そのことを踏まえれば汐莉と美胡は呪物と被受肉者の関係であるため、比名子は汐莉の生得領域に美胡の意識を引き込めるのではないかと考えた。だが、当てが外れたようだ。

 

「あー……気を悪くしたら済まねぇんだが、禪院のやり方は試せねぇのか? 要は互いが死ぬ寸前になったら心の中で会話できたわけだろ? なら、近江と社を限りなく死に近づければコンタクトが取れるかも知れねぇ」

 

「……うーん、不死身の汐莉さんと美胡ちゃんには瀕死なんて概念は無いと思いますけど……」

 

「俺だって制限時間付きで不死身になれるけど、脳に攻撃されたら流石に死にかけるぜ。すぐに再生するにしても、その間だったら……」

 

「私達の不死は反転術式に寄らないので、完全に頭部を失ったところで死なないし治ります。時間は相当にかかりますが」

 

「……そうか、悪かった」

 

 少し言いにくそうに切り出された秤による非人間的な提案も、不死身のなり方の違いから比名子と汐莉に却下される。

 秤としてもかなり非道いことを言っていることは自覚的だったのか、理路整然と反論されたらあっさりと引き下がった。

 

 ――――まずい。

 

 術師達が次々と提案を出し、話を深めていく中、未だ何も提示できていない伏黒は内心で歯噛みしている。

 

 虎杖のように何かに受肉されたことも、真希のように誰かと深い繋がりを持っていたことも、秤のように不死身としての知見を持っているわけでもないので、ある種仕方のないことではある。

 ――が、せっかく自分達姉弟の大恩人に対して何かを返せるかもしれない好機、座学の成績だけはいい自分が何も言えないのはいただけない。

 

「――二心同体だったり一卵性双生児だったりしたら、どうして一つの心の中に共存できるんだ?」

 

 そうした思いから知恵を絞って出てきたものが、伏黒の今の発言だ。

 苦し紛れであるが、実際気になるところでもある。先ほどの議論では、極めて深い“繋がり”とやらが存在すると心の裡でコンタクトが取れるということは分かった。

 だが、その“繋がり”とはいったい何の“繋がり”であるか、伏黒は微妙に理解できていない。肉体的な繋がりなのか、精神的な繋がりなのか、はたまた魂の繋がりなのか。

 

「そりゃあ……魂の繋がりを辿ってるんだろ。 真人っていう呪霊も、術式で宿儺の魂に触れちまったから反撃を喰らったって、ナナミンが言ってたし」

 

 それに、虎杖の与り知らぬところだが、真人はその際宿儺とわずかに言葉を交わしている。宿儺の生得領域内でだ。

 

 ――――魂の繋がり、か。

 

 実際に同体に二つの魂を同居させていた虎杖の感覚だ。信憑性はある。

 話を総合すると、受肉する、あるいは一卵性双生児が死の淵に追い詰められるなどして形成された極めて強い魂の繋がりがあれば、生得領域内でのコンタクトは成るらしい。

 

「だが、言うまでもなく、社と近江の間ではどちらの方法も不可能だ」

 

 受肉による繋がりの形成は、二心二体である以上不可。

 死に近づくことによる繋がりの強化は、どちらも不死であるため、これも不可。

 伏黒達が社美胡とコンタクトを取るには、何か別の、第三のアプローチで魂の繋がりを創造せねばならない。

 

「第三の、選択肢……?」

 

 そんなものがあるのか。伏黒は前髪をぐしゃりと掴み、眉間に皺を寄せる。

 魂に関しては一日の長がある虎杖や釘崎、それに天賦の呪いの才を有する比名子が何も案を出せていない時点で、伏黒が頭をひねったところでたかが知れていることは分かっている。

 だが、それでも諦めきれない。比名子が津美記に手を差し伸べたように、気持ちの沈みゆく比名子に対し、伏黒も手を差し伸べたい。

 

「俺が八百歳さんに勝っているのは、呪術に触れてきた年月……」

 

 その年月を思い返し、伏黒は思案する。

 思い出せ。何かないか。日下部などに比べればずっと短い間でも、伏黒が経験した魂に触れる何かが。

 できるだけ満遍なく、頭に残る記憶をさらう。五条と共に呪いの知見を深めた数年。高専に入学てから数ヶ月。そして、死滅回游に入ってからの数日まで、くまなく――、

 

「――ぁ??」

 

 高速で脳内を反芻し、死滅回游内の出来事に差し掛かった時、伏黒は握りしめた前髪から手を離し、顔を上げた。

 そして離した手で己の口を塞ぎ、目を見開く。

 逡巡する。こんなことが可能なのかと。僅かに脳裏をよぎっただけの、誰に保障されたでもない机上の空論を、果たして言ってしまってもいいのか。

 

 ――否。伏黒が言い淀んだのは、そんな理由ではない。

 

 ただ、今思い浮かんだ考えがあんまりにもバカみたいだから、というだけであって。

 

「………………虎杖、近江、それに来栖と天使」

 

 ふー……と深く息を吐き、顔を手で覆って天を仰ぐ伏黒が4人の名を挙げる。

 呼ばれた四人は首を傾げる――正確には来栖と天使は二心同体であるので、首を傾げたのは3人だが――何の共通点もない4人を何故名指ししたのか、理由がわからなかったからだ。

 

 ――いや、違う。この4人は確かに共通点がある。伏黒と、この場にはいないもう一人を含めれば、皆東京第1結界にいた術師達だ。

 

「今必要なのは、受肉や死にかけること以外で社と魂のバイパスを繋ぐことで間違いないよな?」

 

「ああ、まあ、そうだな」

 

「……で、だ。東京第1結界の中、()()()に引き起こされた現象は魂が繋がったからである可能性は、ひょっとして、あったりするのか?」

 

 ――瞬間、四人の間に流れる時が凍り付く。

 

 それは、伏黒の今の言葉に対する無理解から生じるもの。

 ほどなくその意味を読み解いた天使は「なるほど……!」と口にし、その数秒後に伏黒の言わんとすることに行きついた虎杖が「……あーーーーっ!!」と大きな声を出す。

 

 ――そして汐莉は、見たこともない程顔を蒼褪めさせ、滝のように汗を流しながら、

 

「待って、待って、待ってください。ねえ、嘘でしょう? いくら何でも、そんな、そんな、馬鹿みたいな……」

 

「えっ? し、汐莉さん、急にどうしたの?」

 

 広島結界の病院屋上で邂逅した時とは全く違う、いつものイメージとは全くかけ離れたうろたえ方をする汐莉の様子に、比名子は目を白黒させる。

 

「いやでも! あの時はハチャメチャなことが起こったけど、別に心の中に入るなんてことは無かったぞ!?」

 

「だからあの時以上に術式を長く発動し、より強くより深く魂を同調させるんだ。有効だと思われた手段が軒並み崩れている以上、試してみることは無駄ではない」

 

 だが、その直後に続けられた虎杖と天使の言葉、それを比名子は聞き逃すことが出来ず、汐莉には申し訳ないが比名子は視線を二人にやってしまう。

 先程まで議論されていた内容、それらよりも明確に色濃い希望。その仔細を一刻も早く聞きたいと、汐莉は目で彼らにせがみ――、

 

「――この場にはいない術師に、髙羽史彦という者がいる」

 

「――――」

 

 きょとんと、天使の提示した人物に対して、比名子は呆けた反応をしている。

 なぜ急にあの目のやり場に困る芸人の名が出てきたか、比名子は理解できていないのだ。

 

 当然だ。いくら異次元の才覚とはいえ、思いつくわけがない、こんなもの。

 これは実際に影響下に置かれた……というか、被害を受けた者にしか導き出せない可能性だ。

 

「八百歳比名子。髙羽の術式は、おそらく自分が()()()と思った事象の創造および強制。そして最大の特徴は、術式の影響下にある対象のイメージをも取り込み反応(フィードバック)する事。――つまり、魂が共鳴するんだ」

 

 ――投じられた第三の可能性、それが比名子の脳内に入り、染み渡り、芽吹き――比名子の沈んでいた顔色も、みるみるうちに明るさを取り戻していく。

 

 伏黒が発想し、天使が補強して編み出した、社美胡の魂を繋ぐ新規の案。

 それは――、

 

「髙羽さんの、術式を使って……!!」

 

「――極限まで魂を共鳴させ、眠りについている社に対しコンタクトを試みる」

 

 あまりにも馬鹿馬鹿しい上、そもそも本当にそんなことが可能かどうかわからない、伏黒の妄想の産物に近い発想。

 だが、現状自分達が魂に干渉する方法としては唯一と言っていい手段であるのは確かだ。

 

 何より、この方法にはリスクが無い……無い……無いかな…………。

 だがそれはともかく、不要な傷を負う心配がないことだけは確かだ。

 

 髙羽の術式について天使が言った程度の事しかわからない比名子は、初めて提示された明確に美胡を助け得る方法に両手の拳を胸の前で握りしめ。

 

 そして、髙羽の術式をよくよく知る汐莉は。

 

「あぁ…………あぁ……………………」

 

 ――もう間もなくであろうボケ地獄の再来に、無意識に人魚化させた手で顔を覆っていた。

 

 

 

 




 はい。次回、皆さんお待ちかねの髙羽ワールドです。
 私は通常月水金に次話投稿するんですが、髙羽ワールドはマジで頭をひねる必要があるので、もしかしたら金曜には投稿できないかも知れません。
 そうなったら次話は来週月曜になりますので、ご承知おきを。

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